永遠のこどもたち ▲1
怖ろしくて、美しくて、感動すらする。
さすがスペインのダーク・ファンタジー、単なるホラーの一言では片付けられない。
ストーリー・・・
子ども時代を過ごした海辺の孤児院に30年ぶりにラウラ(ベレン・ルエダ)が戻ってくる。閉鎖されて久しい古い屋敷を買い取り、障害を持つ子どもたちのホームとして再建する計画だ。気がかりなのは、難病を抱えた7歳の息子シモン(ロジャール・プリンセプ)が空想の友だちに夢中になっていることだったが、怪しげな老女ベニグナ(モンセラート・カルーヤ)の突然の訪問がラウラの不安を一層掻き立てる。そして、子どもたちを集めたパーティの最中にシモンは忽然と姿を消してしまう・・・
’07年、スペイン
監督・J.A.バヨナ (’75生)
製作・ギレルモ・デル・トロ
ギレルモ・デル・トロに才能を見出された新鋭の監督、J.A.バヨナ。今後も楽しみな監督がまた出来て嬉しい。
ギレルモ・デル・トロ製作ということで、『パンズ・ラビリンス』を気に入った人達は、期待して見ることが出来そうだけれど、
その期待にそぐわぬ快作!
本当に怖いし、だけど魅惑的で、次の展開をハラハラしながら一気に見ることが出来る。
「あれは何だろう?」と思えたシークエンスが、後で繋がってくるところなんかもう、手に汗握りながら見れてしまった。
前述の『パンズ・ラビリンス』ばかりでなく、同じスペインの監督であることと、ストーリーとの類似性から、アレハンドロ・アメナーバルの傑作ホラー、『アザース』を思い出す人も居るだろうし、
どことなく同じくギレルモ・デル・トロの監督作、『デビルズ・バックボーン』なんかも思い出しような物語。
物語構成がとても丁寧で分かりやすいので、多少複雑なはずの展開にも、置いてけぼりを食らう人は居なそう。
それにしても本当にこの手のスペインのホラーって、しっくり来るし、手ごたえも感じるし、なんて出来がいいんだろう。
霊媒師(ジェラルディン・チャップリン)が家で交霊術を行うシーンの映し方には、どことなく『リング』も思い出したけど、
あんまり楽しくて、そして怖くて、引き付けを起こしそうなほど興奮度満点。
トマス(オスカー・カザース)も、スケキヨか!エレファントマンか!
と言いそうになりながらも、本当に怖かった。
皆が集うお祭りの最中に、トマスがふと現れたり、さらにシモンが居なくなる辺りも、リアリティを重視した、自然光で撮った描写なのに、真剣に怖くて。
「うう、そう来たか〜」と言いながら、怖がりながらも感嘆。
「ああ〜、大好き。大好き大好き。」
とか心の中で言いながら、マジでビビりながら、座席から飛び上がらんばかりになってました。ああ忙しい。
「ホラーが嫌い、苦手」という人にも、見てみて欲しい傑作だと思う。
この先、ネタバレです::::::::::::::::::
ところで、最後のシーン、ちゃんと数えたら7人居たよ。
見た時は私、暗い洋服の女の子を、数えはぐっていたみたい。感動してたので・・・。
トマスの袋を取った顔のシーンは、ラウラから見て左横顔から映されていたから、こちらから見てのシーンはちゃんとラウラの左手に居るね。
物語前半の台詞で、私は背筋が凍りそうに怖かったんだけど、
「ピーターパンたちが成長しない理由」・・・。あの時、もしかして!と思いきや、
ラストをこんなに美しくまとめるなんて、あの台詞が生きていたね。
2009/01/05 | 映画, :とらねこ’s favorite, :ホラー・スプラッタ
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コメント(70件)
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こんにちは。
怖かったですねぇ。じわじわとくる恐怖が満載で、かなりキツかったです。
事故のシーンと直後に主人公の腕が掴まれるシーン、終盤の「だるまさんが転んだ」が本気で怖かったです。あの演出は見事すぎますよ。
怖いだけでなくアートとしても美しく、じんわりと心に染みる物語でした。
こんにちは。
怖かったですねぇ。じわじわとくる恐怖が満載で、かなりキツかったです。
事故のシーンと直後に主人公の腕が掴まれるシーン、終盤の「だるまさんが転んだ」が本気で怖かったです。あの演出は見事すぎますよ。
怖いだけでなくアートとしても美しく、じんわりと心に染みる物語でした。
みさま★
おはようございます〜♪コメントありがとうございます!
わーい♪みさまもこちら、気に入られましたか!
うーん、どうやらみさまは『フォーガットン』を何かと思い出しちゃう輩のお一人の様ですね!
私も『フォーガットン』は自分の中で、“物語の内容を投げっぱなしにして終わる上に、文字通り人までどんどん投げる”という、記念碑的な作品として刻み込まれていますが、
みさまほど詳細を噛み砕いて、この作品を愛している、とは言えない私が居ます!
>だるまさんが転んだ
うん、本当怖かったですよね〜!一人目なんて「ヒッ!!」て怖い思いをしちゃったんですけど、二人目以降は「あ、集まって来た〜★しめしめ」なんて。
でもでも、だるまさんが転んだで振り向くたんびに段々近づいて来て、手をチョンと肩に置かれる瞬間は、「(分かっていても)ギャーーー!」って怖かったぁ。
私は幽霊とは楽しく遊べないかも・・
いや本当、シモンの居場所の「灯台下暗し」は皆思うところでしょ〜☆
しかしシモンも居なくなった当日に言ってたしね、と
あと階段の場所が分かったところはなかなか良かったな〜。最初に出た子どもの霊が消えた場所でしたもんね。あそこ、震えるゾ、ハート!な伏線っぷりでしたね〜。
えめきんさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
事故のシーンは、堂々たる本格ホラーな貫禄でしたよね!
手を掴まれたところは、劇場の椅子から飛び上がらんばかりに驚きましたよー。チビりそうでした!
かなり完成度の高い今作でしたよね!
目には見えないもの〜『永遠のこどもたち』
EL ORFANATO
孤児院で育ったラウラ(ベレン・ルエダ)は、自らも孤児院を開こうと閉鎖されて
いた海辺の屋敷に戻ってくる。誰もいな??.
とらねこさ〜ん、こんにちは!
この映画ね、とらねこさんが「1月の評価別INDEX」で唯一★5つにしてたでしょう?
だから、駆け込みセーフで観てきました。
普段はホラー観ないんですが、本当に観てよかったです。
(というか、こんなにもホラーだとは知らなかった)
これ、昨年中にご覧になった方は年間ベストに入れてらしたりするんですよね。
う〜ん、わかるなぁ。。
ラスト↑、私も何人いるか数えましたわ。
ではでは、また来ますね〜。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
はい、★5つにしてました!チェックしてくださり、ありがとうございます!
おー、真紅さんて確かにホラーを見ないイメージです。
私もこれ、去年に見たんですが、間に合いませんでした。
年末の忙しい時期にUPするのは難しいですよね。
確かに、これ何人かの人がベストに入れてましたよね♪
私も面白かったです。
「永遠のこどもたち」
向こう岸へ渡ろうか渡るまいか。霊の存在を信じていないのは霊感がまったくないからである。世界観は嫌いじゃない。物語の舞台は、かつて孤児院が経営されていた古い屋敷。主人公のラウラはこの孤児院で育ち、よそへ引き取られた。もう思い出も遠い記憶の彼方だったが、病…
永遠のこどもたち
1月20日(火) 21:20?? 109シネマズ川崎4 料金:1200円(レイトショー料金) パンフレット:未確認 『永遠のこどもたち』公式サイト 泣けるホラーだと聞いている。 ただ、あまりにスピリチャアル過ぎて、いまいち解釈ができないところも多々あり、評判ほどの感動具…
【映画】永遠のこどもたち
▼動機
「パンズ・ラビリンス」が面白かったから
▼感想
ホラー?ファンタジー?サスペンス?
▼満足度
★★★★★☆☆ なかなか
▼あらすじ
孤児院で育ったラウラ(ベレン・ルエダ)は、長らく閉鎖されていたその孤児院を買い取り、障害を持つ子どもたちのホームと…
永遠のこどもたち
『パンズラビリンス』や「ヘルボーイ」シリーズのギルレモ・デル・トロ製作の作品。監督はフアン・アントニオ・バヨナ、そして主演はベレン・ルエダ。スペイン映画ですが、ここ最近の私はどうもスペイン語率が非常に高かったり。(笑)見過ごしてしまったのでDVD待ちのつ…
こんばんは!
とらねこさんは,きっとこれはお好きだろうなぁと思ってお伺いしたら案の定!
おまけに私の大好きな「デビルズ・バックボーン」も取り上げてくださって!
いいですねー,この監督(今回は製作ですが)のホラー。
ホラーでありながらこんなに癒されるって
霊魂や「あの世」の存在を恐怖の対象と捉えずに
そこで現世では叶わなかった幸福を成就するという考え方は
とてもスピリチュアルで,美しくも感じてしまいます。
ジャパニーズ・ホラーも似たような風情はありますよね。
ただ騒いで怖がらせるだけのアメリカン・ホラーに比べたら。
伏線も見事に効いてて,秀逸だったと思います。
ななさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
いやいや、私の趣味をバッチリ見抜いてくださり、ありがとうございますです〜
その通りでございます!
ブハハ、私これ大好きでした。
いやー、上手いこと伏線を回収してくれちゃって、それだけでも「おお!おお!」と言いながらうれしい気持ちになってしまったものでした。
そうなんですよ、『デビルズ・バックボーン』をつい思い出すと思いませんか?
だって、あちらもアルモドバルが故郷に帰って製作に携わった、後輩(?)の作品。今をときめくギルレモ・デル・トロが、まだ駆け出し時代にスペインの若手監督を手伝った、そんな作品だったんですもの〜。
あちらはホラー度はそれほど高くはないですが。
スピリチュアルな世界観、おっしゃるとおりですね。
ちゃんと怖かったのもまたツボでした。
永遠のこどもたち / 71点 / EL ORFANATO
かなり作りこまれた良質な作品やけど、ラストはどーも納得できない・・・
『 永遠のこどもたち / 71点 / EL ORFANATO 』 2007年 スペイン/メキシコ 108分
監督 : J・A・バヨナ
脚本 : セルヒオ・G・サンチェス
製作総指揮 : ギレルモ・デル・トロ
出演
【映画感想】永遠のこどもたち(ベレン・ルエダ)[2009-071]
久々にホラータッチの映画を観ました。しかも珍しいスペインの作品で、タイトルは『永遠のこどもたち』です。
突然失踪した息子を捜し求める母の姿を中心に描かれた本作。怪しい老婆の存在や、周囲で起こる霊的現象によって、サスペンス&ホラーの怪しい世界観が描かれてい…
mini review 09373「永遠のこどもたち」★★★★★★★★☆☆
『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロをプロデューサーに迎え製作されたスペイン発のホラー映画。短編映画やミュージックビデオ制作で活躍するJ・A・バヨーナが初の長編監督を務め、主演は『美しすぎる母』のベレン・ルエダ。『クライムタイム』のジェラルディン・…
Tbありがとう。
ジャパンホラーも世界で持て囃されてはいるけど、スペインホラーのような抒情というか余韻というか、そういうものはないですね。
怖がらせるということのなんか文法が違うのかしらねぇ。
kimion20002000さんへ
こんばんは〜♪こちらこそTBありがとうございました。
そうですね、Jホラーとは完全に違う作りをしていますよね。
スペイン産の魅力を十分に感じることの出来る良質な作品でした。
だるまさんがころんだ
「永遠のこどもたち」を観た。 調子に乗って言葉を連ねていたら、いつの間にかネタを割っていた。本作をま…
永遠のこどもたち
EL ORFANATO/THE ORPHANAGE
2007年:スペイン・メキシコ
監督:J・A・バヨナ
製作:ギレルモ・デル・トロ
出演:ベレン・ルエダ、ジェラルディン・チャップリン、フェルナンド・カヨ、マベル・リベラ
海辺の孤児院で育ったラウラは、障害を持つ子どものホームにする…