165●ベガス
東京フィルメックスにて鑑賞。
上映終了後に、アミール・ナデリ監督のQ&Aもあり。
会場には、黒沢清監督、諏訪敦彦監督が来ていたよ。
ストーリー・・・
ラスベガスのはずれ。エディ・パーカー(マーク・グリーンフィールド)と妻、トレイシー(ナンシー=ラ・スカラ)は、12才になる息子のミッチ(ザック・トーマス)と半分トレイラーハウスを改造した、小さな家に住んでいた。ギャンブルがその生活の中心になるエディだったが、彼自身は一度もジャック・ポットにめぐり合ったことはない。妻トレイシーは、自分たちの生活を少しでも落ち着いて安定したものにしようとするが如く、自分の庭を大切にしていた。だがある日、とある訪問者が来て、彼らの生活は一転する。彼らの庭に、何かが埋まっているというのだ。・・・
’08年、アメリカ。
イラン出身のアミール・ナデリ監督。
ヴェネチア映画祭コンペ部門に出品、賞を受賞。
監督本人が言うように、人間に取り憑いて離れなくなる、強迫観念について描かれた作品。
「ラスベガスを描いた作品は多くあれど、大体はラスベガスの真ん中で、スタイリッシュにギャンブルを描いたものが多い。だが、自分はそういう当たり前な手法を採りたくなかった」、という。実際、この作品では、ラスベガスのありきたりな映像が流れることは一度もなく、代わりに映し出されるのは、郊外の殺伐とした風景が描かれるのみ。
だがそれでいて、“人間の強迫観念の有り様”についてはキリキリと伝わってくる。
砂塵の舞い散る、砂漠に住む彼らブルーカラーの生活、というものは、監督が目にした「これもまたアメリカなのだ」、という観察眼。こうしたものが窺える、なかなかの作品だった。
何かが埋まっている、という訪問者の言葉。主人公は気でも違ったかのように、自分の庭を掘り続ける。その姿は次第に痛々しい。だが、その訪問者の言葉をただ真正直に信じて、こうした行動を取ったのではないのかもしれない。
訪問者の言葉は、嘘であったと告げられる。だが彼の狂信的な態度は変わらず、何か取り憑かれたように、自分の行動を止めることが出来なくなってしまう。
そもそも、賭博者というのはそうした性質の持ち主なのかもしれない。
端から見ていると、なぜそんな行動をするのか、まるっきり理解に及ばない。彼らからすると、当たりが出るまで、行動をもはや止めることが出来なくなってしまう。
止め時。彼にとって、見つからないものは、宝ではなく、こちらなのだ。
会場に来ていた外国人女性で、普段翻訳の仕事をしている方から質問があったのだが、「この庭から教会が見えた」、という。
監督も、教会が一つの画に収まる家、このロケーションを探すのに、一番苦労したのだ、と嬉しそうだった。
私もこの庭から見える風景については、映った時に目を凝らして見たのだが、
自分には悲しいかな、見つけられなかった。あの森はなんだろう?と思ったけれど。
そうした質問が彼女から上がって、ちょっと悔しい思いをしてしまった。映画好きとして、そんな大事なことに気づかないなんて。自分は大したことないな、とガッカリだ・・・。
後でこうして今になってポスターを見つけたのだが、(上にUPした画像参照↑)教会の部分だけが、確かに黄色く光り輝いていた。
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コメント(3件)
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〔第9回東京フィルメックス〕―『ベガス』を観た。
「強迫観念」の極端な一例。
とらねこさん、こんばんは。
もう1本はこれだったんですね!
この時も会わなかったですね。
私、Q&A聞かずに、シネカノンに向かっちゃったし。
教会は私も気づかなかったなぁ。
デス・レースはもちろん観なかったので大丈夫!
でも、とらねこさんのレヴュー読んだら、ちょっと観たくなりましたわよ♪
かえるさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
もう1本ですが、今日UPした『クラウド9』のはずだったんですが・・
こちらでもニアミスしていたのですね。
ということで、ニアミス率が、半々になりました!
W:L=3:3ですー。
デス・レース見なかったのですね。
でも、『ワイルド・ガン』は結構オススメだったりします♪