rss twitter fb hatena gplus

*

163●ブロークン

ブロークン最近、ホラー映画も、“ホラーという特別なもの”として、脇によけられるべきジャンルではなくなって来たような気がする。


ストーリー・・・
ロンドンの病院に勤務するX線技師のジーナ(レナ・ヘディ)と家族が父親(リチャード・ジェンキンス)の誕生日を祝っている最中に、大きな鏡が突然割れて粉々になる。翌日、自分と同じ赤いチェロキーを運転する自分に瓜二つの女を見かけ、ジーナは衝動的に跡をつける。すると、その女は自分とまったく同じ部屋に住んでいた。ショックを受けたジーナは誤って交通事故を起こし、事故前後の記憶を失う。以降、ジーナの周りで不可思議な出来事が起こり始める・・・


’08年、ショーン・エリス監督。


初めにエドガー・アラン・ポーの一節が引用されると思ったら、そうか、これってば『ウィリアム・ウィルソン』。
いや、原作がこれだ、という訳ではなく、あくまでもこれに“触発”されて、という程度だと思うのだけれど、いやさすが、イギリスという伝統の国。
そういえば、『ミラー(Mirrors)』という作品にエドガー・アラン・ポーが携わったこともあったっけ、なんて、Wikipediaを見ながらボンヤリ思い出した。


ホラーも、もっとゴシックテイストになると、また格調高いものに感じられて私は好きなのだけれど、そこは若手・ショーン・エリス。
描くのは、都市生活であって、ビルの谷間や、サブウェイの寒々しい風景、上から見た都市部の風景など、都会の孤独さが身に沁みるよう。


独自の映像作りとしては、すでに前作で立証済み。監督第一作目である『フローズン・タイム』でなかなかの手腕を見せつけ、その映像美には評価されているこの人。
今回の、こんなサスペンスタッチのホラーでも、切り取られた画の美しさを感じることが出来るのでは。


前作が、当たり前な青春群像を描いた物語ではなかったのと同様に、
今回のこのホラータッチの作品においても、普通の物語とちょっと違う、毛色の違う不思議さがあって、最後まで見ると、「へえ〜」なんて、ちょっと驚く仕掛けもアリ。


この先ネタバレで語ります:::::::::::::::::::::


 


 


 


 


特にラスト、最後に起こった出来事が描かれずに、主人公がスリ変わっているところは、なかなか関心してしまったな。
主人公の記憶喪失が面白い具合に使われていたなあ、なんて安心した後だっただけに、あの終わり方は怖ろしや。
なぜあれが起こり得るか、ということを考えると、それは、「中の人」が一人ではないからだよね。
レントゲンもそう来るか、と。
そして次はダニエル(アシエル・ニューマン)の番?

ブロークン@映画生活

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

2,514

コメント(12件)

  1. うはー
    コレ怖かったですよね。
    全く予期してなかっただけに心臓バックンバックンいってしまいました。
    これに対してキーファー・サザーランドの「ミラーズ」
    が、どこまでみせてくれるか楽しみです。

  2. yesさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    そうですね、まさかホラーを見に来た、というつもりではなかったので、嬉しい裏切られ方でした♪
    『ミラーズ』は、上記記事中に私が言及した、『Mirrors』とは違って、韓国ホラーのリメイクということですが、
    そこはアレクサンドル・アジャですからね〜。
    せっかくのアレクサンドル・アジャも、ハリウッドで仕事をして、どこまで本領発揮できるのでしょうか?少しそこが不安要素ではありますけど、楽しみです!

  3. 『ブロークン』

    昨日は配給会社のリベロから、試写会のお誘いを受けて一ツ橋ホールに『ブロークン』の試写会に行ってきました。
    仕事が若干押したので間に合うか心配だったけど、どうにか開映15分前くらいには会場到着。
    祝日開催もよかったのか、結構入りはよかったみたいです。
    *****…

  4. 映画ってなに?

  5. とらねこさ〜ん、ごぶさたしてます!いよいよ本格的に寒くなってきましたね、もう毎食温かいものしか食べる気がしません!
    転職されてから、だいぶたちましたが、もうすっかり落ち着かれましたか??肩凝りや頭痛とは無縁になりましたか??とらねこさんは、とても気を遣われる方なので、大変だと思います。たまには、パ〜ッと騒いでくださいね、ちょうど年末だし!!
    ところでホラー。これ面白そうですね!スプラッター系は苦手ですが、地味なB級ものを好んで観たりします(笑)先日「ギャザリング」というクリスティーナ・リッチ主演のを観たのですが、これがなかなか面白かったです。贖罪の話というか。一部残酷な描写がありましたが、最後は救われるし。ホント、おっしゃるとおり、最近のホラーは味わい深いので、けっこう見逃せないですね!またまいりま〜す、今度はもっと短い間隔で(^v^)/

  6. JoJoさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
    JOJOさんはお元気でしょうか?新型ウィルスや、ノロウィルスが流行っているようですが、JOJOさんは体調は大丈夫でしょうか?
    私のご心配もしてくださり、ありがとうございます!
    そうなんですよ、自分はこれまでやったことのない職種に就いてしまったせいで、おっしゃる通り、結構苦労しました。
    今まであんまり頭を使っていなかったからか(ぉぃ)、
    はたまた細かさが要求される仕事のせいもあってか、脳味噌が時々、ジュワジュワーっと音を立てて回線がシュートするのを感じます(笑)
    今では、偏頭痛は持病になってしまいました。
    文系なので、映画とか本とか、言語に関する分野に接していると、全然疲れないので、それが不思議ですよ。
    なので、相変わらず、映画を見ると頭痛が治っちゃうんです。
    自分の話ばっかりして、ごめんなさい。
    JOJOさんの方こそ、耳はもうすっかり大丈夫なのでしょうか?
    私なんかより、JOJOさんの方が人に気を使われる繊細な方ですよ・・。
    『ギャザリング』は、まだ見てないです。クリスティーナ・リッチ主演なので、私も見たいですね!
    今度、借りてみようと思います♪
    最後の一言がとても嬉しいですね!
    わーい、もっと遊びに来て来て♪お待ちしています!

  7. ブロークン The Broken

    公式サイト。ショーン・エリス監督、レナ・へディ、リチャード・ジェンキンス、ミシェル・ダンカン、アシエル・ニューマン、メルヴィル・プポー、ダレン・エリオット・ホームズ、ウルリク・トムセン、スタン・エリス。全てはけたたましいガシャーーン!で始まる。この映画の….

  8. こちらにもお邪魔します♪
    以前とらねこさんとお話した時に、「エドガー・アラン・ポー作品を読んでみたいです」と言っていたのですが、、、実その後ポーの全集をつらつら読んでいました(笑)
    これって『ウィリアム・ウィルソン』が元ネタですか〜面白そうですね〜いや怖そうかな?
    公開中は観に行けないかもですが、DVDになったら鑑賞してみたいです♪

  9. 由香さんへ
    こちらにもコメントありがとうございますー♪
    へえ、由香さん、とうとうエドガー・アラン・ポーも読み始めたんですか!しかも全集?うわー、素敵
    『ウィリアム・ウィルソン』は、ネタバレしちゃいますが、ドッペルゲンガーという概念が目新しかった頃に書かれたものだから、当時の人々がとても驚いたのではないでしょうか。
    そんなに怖くないですよ、でもなかなか面白く見れます。
    由香さんも、もし見たら感想聞かせてくださいね♪

  10. 普通に考えて、主人公だけでなくほかの人たちもダブルがいた時点で、超常現象とは関係ない主人公の妄想だと思いました。だからその時点でホラーでなくなりました。

  11. 佐藤秀さんへ★
    こんばんは!コメントありがとうございました。
    んーそうですね、私は、「鏡の中が別世界」という話かと思いましたね。
    さらに、「自分とよく似た人に出会うと、それは自分の死ぬ時」という、迷信を物語にしたのではないかと。
    また、ポーの一説が引用されていて、自分によく似た姿ということで『ウィリアム・ウィルソン』だなあと。
    これらそれぞれを混ぜ合わせた物語になっていると思います。

  12. ブロークン

    鏡よ鏡 もうひとりの そこに自分
     ファッション・フォトグラファーとして活躍するショーン・エリスが2004年に手掛けてその年のアカデミー賞にもノミネートされた短編作品を長編化した異色のロマンティック・ストーリー、それが「フローズン・タイム」。原題「CASHBACK…




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。

前の記事:

次の記事:

Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑