157●ウェルカム・トゥ・サンパウロ
東京フィルメックスにて鑑賞。
ブラジルはサンパウロを舞台に、17話のオムニバス作品から成る。
舞台挨拶は、レオン・カーコフ&ダニエラ・トーマス。
’07年、ブラジル。
もとはサンパウロ映画祭の呼びかけにより、様々な視点から、この大都市を捉えたショートフィルム集。
都市サン・パウロの、450周年を記念して作られた。
そして、今年はブラジル移民100周年記念でもあるという。
監督は、アモス・ギタイ、ツァイ・ミンリャン、ミカ・カウリスマキ、レオン・カーコフ、ダニエラ・トーマス、レナタ・デ・アルメイダ、吉田喜重、カタリーノ・ヴェローゾ、レナタ・デ・アルメイダ、マリア・デ・メディロス、ハンナ・エリアス、ジム・マクブライド、ウルフガング・ベッカー、フィリップ・ノイス、アンドレア・ベキアート・・・etc。順不同。
ナレーションは、カタリーノ・ヴェローゾ。
プロデューサーは、カタリーノ・ヴェローゾ、レナタ・デ・アルメイダ。
同時上映は、ジャ・ジャンクー監督の『河の上の愛情』と、マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『可視から不可視へ』。
オリヴェイラ監督の一編は、携帯を中心にしたコミカルな諷刺の利いた作品。
大都市サンパウロの中心部パウリスタ通りで久しぶりに出会った友人同士だが、携帯電話に次から次に電話がかかって来て、なかなか目の前の相手と話が出来ない。そこで、互いに相手の電話番号を尋ね、1コールして、そこで話を始める。
大都市サンパウロを紹介するかのような、アド街っくテイストの短編集。サン・パウロを俯瞰した風景が多いが、大都市の風景はまるで東京にそっくりだと思った。
この日に舞台挨拶に来た、レオン・カーコフの作品は、少し風変わりなテイスト。
「これから、ウォルター・サレスが君を気に入って、映画を撮りに来るかもしれないから、」と街の真ん中で働く人に向かってカメラを向ける。
撮影は実際には行われず、そのライブなやり取りがノンアポで映されるのみ。
ダニエラ・トーマスの作品『オデッセイ』は、サン・パウロの高速道路を走る風景。
ただひた走りに車を走らせる映像。主観カメラによって、大都市で車を運転する内に、何となく寂しさを感じる作品。
高速を降りると天気が晴れ、気分が晴れる。
彼女曰く、20年前に東京に来た時に、首都高を走っていたら、3時間の大渋滞に遭遇し、その時に思いついた作品だという。
吉田喜重の作品は、サン・パウロで日本料理屋を営む、日系三世のウェイトレスの人のインタビュー。戦前にブラジルで多くの日本人が珈琲栽培に働きに行き、そのまま戦争が始まり、帰って来れなくなってしまったという。
そのために、サンパウロの日本料理屋には、珈琲は置いてないそうだ。
一番面白かったのは、ウルフガング・ベッカーの最後の作品。
音楽と都市の動きとがピッタリ合っていて、いかにも楽しげな映像の中、サンパウロの街並が映し出される。音楽に合っているリズミカルな映像は、それだけで楽しく、大都市の持つテンポを感じさせる。
アナログ盤の置いてあるレコードショップで、レコードを探す映像は、私には新宿西口の中古レコード店を思い出させたけど。
レコードに針が落ちた途端、都会の持つテンポから音質が変わりムーディーで温かな音楽に変わるところも好きだ。アナログレコードの持つ温かい音、針が終わる瞬間に灯りが点り、ブラジルの地図から、地球へ、宇宙へとカメラが遠くへ拡がっていく。
2008/12/04 | 映画, :ドキュメンタリー・実在人物
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コメント(4件)
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あ、言われてみると東京みたいですね。高層ビルや首都高速とか、雑多なかんじも。
リオのカーニバルかなんかの祭りの準備のところ、好きでした。夜にカップルが仲良くしてたり、ワイワイと気分が高揚してて。
舞台挨拶があったってことは日曜にご覧になったんですね!
アンバーさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
あ、アンバーさんもこれ見ましたか★
祭りのシーン、私もワクワクしちゃいましたよ。
やっぱ、ブラジルって言ったらリオのカーニバルですよね〜♪
これも、死ぬまでに一度は行ってみたいとこです!
あの衣装を着てみたいなんて前は思ってたけど、今はさすがに無理ダナ。。。
二年前ぐらい前だったら・・・イヤイヤ・・・
そうです、舞台挨拶があった日でしたよ。
アンバーさんは違う日だったのかな?
とらねこさん、ぼあたるぢ。
私もこれは日曜に観ましたよー。
お会いしませんでしたね。
この日の上映作は全部観た私・・・。
私も最後の『グッバイ、レーニン』の監督のやつが気に入りました。
>レコードに針が落ちた途端、
の描写がステキでしたよねー♪
かえるさんへ
こんにちは〜♪ぼあたるぢ・・えへ。
コメントありがとうございました。
かえるさんもこれ、日曜にご覧だったんですね。
あと、かえるさんとはもう一つカブっていまして。
『クラウド9』なんですが・・やはり、お会いしませんでしたね。
私一人で来てたんですが、早めに着いてサッサと帰ってしまったからでしょうか・・
今のところ、お会いしたのが3回、ニアミス2回で、勝敗は
W-3,L-2ってとこですね^^*
>『グッバイ・レーニン』の監督のやつ
ああ、そうですね、グッバイ・レーニンの監督。
吉田喜重が言及した、サン・パウロの街の花。この花の正式名称を入れて、淡々と詩を語る作品も、頭に残りました。