155●ダイアリー・オブ・ザ・デッド
“ジョージ・A・ロメロの最新ゾンビ”
去年から何かと『ゾンビ』周辺が騒がしい昨今。今年夏に公開された『デイ・オブ・ザ・デッド』は、未だ未見だったっけ・・・。いやぁでも、順番的にはこれで正しいんですっ。だって、こっちが前半なんだもの。そんな御大の『〜オブ・ザ・デッド』モノ。
ストーリー・・・
元はドキュメンタリー作品の監督志望だったが、大学の映画科の卒業制作には、ホラー映画を撮ることを選択し、ちょうど撮影中だったジェイソン(ジョシュア・クローズ)。
死体が生き返り始めたのは、折りしもそんな時だった・・・。
作り物のホラーではなく、今こそ、リアルの世界の恐怖をカメラに収めようとする時がやって来た。
撮った映像を、YouTubeなどで、すぐに発信し、彼のHPのアクセスは怖ろしいぐらいのうなぎのぼり。
「真実も、カメラに収めなければ、決して真実ではない」。そう言うジェイソンは、その恐怖映像を撮り続けることを自分の使命のように感じ始めていた。・・・
’08年、アメリカ
ゾンビ映画に社会派のメッセージを加え、単なるホラーに陥らないロメロゾンビの、新たなる挑戦。
P.O.V(主観撮影)手法を用いたところは、ロメロにとって、二重の意味を持っているようだった。
一つには、『クローバーフィールド』や、『●REC』を初めとする、擬似ドキュメンタリーの手法。これを用いて、単に「映画の中の世界」ではなく、その枠組みを外し、よりリアルであることを主張する。そして、そうなった未来というものを、身近に感じさせるものである、という、今をときめく手法である、ということ。
もう一つ重要なのは、素人の様々な映像が世界中のあちこちでバラ撒かれることにより、誰もが簡単に事実を発信することが出来るようになった、昨今のネット事情。
映像で発信される、素人蒐集家によって、それぞれの“主観そのもの”が簡単に発信されるようになってしまったが、では、映像に流れれば、真実であるのか否か?
カメラが何を隠し、そこに何を表現するか。
それこそ、マスコミが垂れ流す“報道”の中に、真実だけが映し出されているとは、言い難い。真実を隠し、虚偽だけがそこに映し出されているかもしれない。
報道の自由とは裏腹の、映像によって“作られる事実”、“隠される事実”の可能性も、ないとは言えない、とロメロは警告する。
こちらの後者の方が、むしろ後半のメッセージだったようだ。
ただ、全体的な作風としては、悲しいかな、今風であっただけに、その斬新さにおいて、他の作品と頭一つ劣ってしまう印象なのが残念。
他の作品というのは、『クローバーフィールド』と『●REC』なのだけれど、
こちらが、余りに見事に構成され、リアルなP.O.V(主観映像)として、今にも手に届きそうな恐怖を描くのに「お見事!」と唸るほど、成功していたのに対し、
御大のP.O.V手法は、もう少し改善が必要だったように思える。
映像の粗さや、ブレ、全体的な画像の質等が下がってしまうことを恐れ、
手持ちカメラの揺れなどには耐えられない、老練の姿が向こうに居る。
ゾンビ映画をP.O.Vの手法にする、というのはとても面白いアイディアであったし、そこに社会的メッセージを投げかけるのにも、ほぼ成功している本作だっただけに、
少し勿体無い印象がしてしまうのだった。
ところで、
「ロメロゾンビは走るか?」
「なぜ、ゾンビがノロノロ動くのか?」
この答えが映画の中で見つかる。
その瞬間に思わず私は笑ってしまった。
ロメロファンの姿が目に浮かぶような気がした。
2008/12/01 | 映画, :ホラー・スプラッタ
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(18件)
前の記事: 154●BOY A
次の記事: 156●トロピック・サンダー 史上最低の作戦
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」ジョージ・A・ロメロ
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
2007アメリカ
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
出演:ミシェル・モーガン、ジョシュ・クローズ他
非常に面白かった。
よく出来た映画だった。
感動した。
*****
宣伝文句に「新感覚:体験型サバイバルムービー」とあったが、そのよ…
むふふ
この作品は流行のPOVではない、というのがワタシの解釈でございますよ〜^^
で、結構気に入っているのです。これ。
ゾンビ映画を再度はじめから開始したようなリフレッシュ感があると思うんですね。まるで今初めてロメロ的ゾンビを発見したかのような。
もう一回見ちゃおかな〜
manimaniさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>この作品は流行のPOVではない
ですね!私としては、もっと“主観映像”であるというところの臨場感を感じたかった、という感がなきにしもあらずでしたが、
この作品の狙ったところは、おっしゃる通り目線が少し違っていたんですよね。
今初めてロメロゾンビを見たかのようなリフレッシュ感、ですか!
素敵な感想ですね!
なかなかに気に入られたようですね^^*
どっもですー♪
ボクもとらねこさんとほぼ同意見です。
臨場感が感じられなかったんですよねー。
POVなのにナレーションや音楽入りだからかなーなんて
思ったりもしたんですけどね
ことの始まりの現場からのシーンは良かったのになー。
ま、アップされた動画を見ているということなんだろうけど
『クローバーフィールド』と『●REC』を知っているだけに
この2作と比べるとパワーダウンは明らか
ボク的には閉塞した状況下での対立みたいなのがなかったのも
イマイチ感が強いひとつの要因です。
やっぱゾンビ映画っていったらエゴとエゴのぶつかり合いからくる自滅っていう
シチュエーションが欲しいッス(笑)
サイさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
サイさんも同意見ですか!嬉しいです
>POVなのにナレーションや音楽入りだからかなーなんて思ったりもしたんですけどね
私もここ、ちょっと気になりました。『クローバー〜』とか、『●REC』があまりに良く出来ていたせいで、ちょっと御大には損になってしまったかな、と可哀想に思わなくもないんですけどね。
ナレーションや音楽といった、当たり前の手法はいっそやめて、頭を切り替えて欲しかった気がします・・。
この二つが凄すぎたのかもしれませんね・・。
>ことの始まりの現場からのシーンは良かったのになー
うん!私も冒頭は気に入ってます。
「ゾンビはノロノロなのか」談義も、「頑固でイイゾ!」なんて嬉しかったし。
>閉塞した状況下での対立
そうですね、人間やゾンビをもっと描いて欲しかったですね。
まあやりたいことは分かるんですが、頭で少し考え過ぎなんじゃ?、と思わざるを得ませんでした。
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
12月2日(火) 21:30?? TOHOシネマズ六本木ヒルズ4 料金:1300円(シネマイレージデイ) パンフレット:不明(確認せず) 『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』公式サイト ゾンビ大将のロメロ先生の新作ゾンビは、「クローバー・フィールド」や「REC」で使われたPOV方式…
とらねこさんのレビューまってましたよっ★
ゾンビの創始者ロメロだからこその警告でした。
もともと娯楽性ある映画だけどそんな現代社会に訴えかけるような部分も
ロメロらしい。
ラストショットはちょっとぞっとするけどなるほど~って感じでした^^
ダイアリー・オブ・ザ・デッド/GEORGE A.ROMERO’S DIARYof theDEAD
ここ数年、ゾンビも多様化。
ペットになったりストリッパーになったり3D(←これ失敗)になったり。
そんな中、ゾンビ映画の第一人者、ジョージ・A・ロメロ監督/脚本の傑作いよいよ日本上陸{/atten/}
ゾンビの夢まで観ちゃうほど自他共に認めるゾンビ好きのmigですが(笑…
migさんへ
こちらにもコメントありがとうございます〜★
そうですね!ゾンビの創始者だからこそ、ここまでゾンビにこだわって、新たにゾンビが表現する、また別の社会派の概念を提唱することができたんでしょうね。
ラストも、狙いが定まってましたしね。
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」、観てました。
ゾンビ映画の生みの親であるジョージ・A・ロメロの、最新ゾンビ映画。世界中で発生した殮.
コメントありがとうございました。
けんてーごっこは簡単に作る方が難しいように思います。独りよがりになってしまう傾向があるようです。
この映画、手持ちではないところが構図が堅すぎて、全体的にマジメに思いました。
クマノスさんへ★
おはようございます〜♪こちらこそ、TBありがとうございました。
けんてーごっこ、クマノスさんの作ったものは、すごく面白かったですよ!
なるほど、難易度なんかも考えながら質問の内容を決めるの、難しそうですよね。
この作品は、確かに手持ちじゃない部分で退屈さを感じちゃいました。
真面目過ぎるんですよね。
『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
世界の終わりに、生き残れるか――。
■森で卒業制作のホラー映画を撮影していた映画学科の学生たちのもとに、世界各地で死者が蘇えっているという衝撃ニュースが飛び込んでくる。錯綜する情報に混乱した彼らは、家路を目指すことに。だが、町に出た彼らが目にし
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
ダイアリー・オブ・ザ・デッド プレミアム・エディション [DVD]
¥2,680
Amazon.co.jp
(2007)
出演 ミシェル・モーガン (デブラ)
ジョシュ・クローズ (ジェイソン)
ショーン・ロバーツ (トニー)
エイミ…
少年の日記
「BOY A」
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」 社会を冷笑したい時に
「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」
観客視点の社会派ゾンビ映画。
【原題】DIARY OF THE DEAD
【公開年】2007年 【制作国】米 …
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
2008年11月15日上映 監督:ジョージ・A・ロメロ 主演:ミシェル・モーガン 世界の終わりに生き残れるか?・・・・・・・さすがはロメロ監督。変わらぬゾンビへの愛情を感じるなぁw…
映画『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』を観て
95.ダイアリー・オブ・ザ・デッド■原題:DiaryofTheDead■製作年・国:2007年、アメリカ■上映時間:95分■字幕:川又勝利■鑑賞日:12月6日、シネパトス(銀座)スタッフ・キ…