154●BOY A
これは、思ってもみない拾い物だった。
丁寧に描かれた、ズッシリ来る物語。
それなのに、どこか瑞々しく感じられるのは、この少年ジャックを演じたアンドリュー・ガーフィールドの魅力のおかげもあってね。
ストーリー・・・
24歳のジャック(アンドリュー・ガーフィールド)は、子供の頃に犯した犯罪により少年院に入れられ、14年間の刑期を終え再び外の世界へ出ようとしている。ソーシャルワーカーのテリー(ピーター・ミュラー)から仕事とアパートが与えられ、彼は過去を隠し、名前も変え新しい生活を始める。運送業の会社に就職した彼は、同世代の青年クリス(ショーン・エヴァンス)とコンビを組むことになる。職場にはミシェル(ケイティ・リオンズ)という気になる女性もいた。ある日ジャックは、クリスに後押しされてミシェルを誘う・・・
’07年、イギリス
ジョン・クローリー監督作品。
少年が新しいスニーカーを渡されるシーンが忘れられない。
いかに重い犯罪を犯したのかが分からずとも、彼がこれから全くの別人として生きる・・・
新しい自分として、もう一度生きてみるのだ。生まれたての赤ん坊のように。
まず、このシチュエーションからして、出来がいいと思った。
まるで現代のジャン・バルジャンのようではないか?
罪を犯すのも人間だけれど、そこから這い上がっていく姿の人間を描いた作品というのもまた、見ごたえのあるテーマだ。贖罪の物語。
でも、この作品が描いているのはそこだけではなくて、もっと底が深いところを掬い上げている。
人は、本当に変わることが出来るのかどうか。
それを手伝うソーシャルワーカーはどのように彼らに接するのが正しいやり方なのか?
さらに、少年院から社会に出たはいいが、ではそれを受け入れる社会の目はどうか。
様々に今日的な問題も取り扱いながら、青年一人の心情というものも、まっすぐに伝わってくる。
等身大の彼の青春の1ページが、爽やかに描かれてもいる。
友人、そして初めての恋・・・。
ちなみに、映画の冒頭で、初めに注意書きが現れる。
「これを見た人は、彼の行った犯罪については、語らないでください」・・・。
だから、私もここで語ることは出来ないけれど。
一つ言えるのは、この物語の製作者が、この主人公の少年について、
初めから色眼鏡で彼を見て欲しくない、ということのようだ。
彼が行ったことで彼を判断するのではなくて、彼が今居るこの姿で、彼を判断するように・・・。
彼が自分とどのように違うのか、それともどのくらい共通する部分があるのか。
描き方一つで、彼のことを信じることも出来なくなり、気軽に他人事にもなりうる話だった。なのに、少年の描き方に一切のブレがない。
これは、かなりポイントの高い傑作だ。
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コメント(24件)
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『BOY A』
シネトレさんの公認ブロガー試写会で、渋谷のシネカノン試写室に『BOY A』の試写を観に行ってきました。
精神的にダメージの大きい作品だけれど、すごく色々なことを考えさせられる映画だと思う。
********************
彼は未来のために名前を失った・・・・・・。
とらねこさ〜ん、こんにちは〜。
いいな〜いいな〜。この映画すっごい観たいんですけど、こちらでは「12月27日よりモーニングショー」なんですよ!
厳しいですよ〜。そんな押し詰まった頃にねぇ。。
神戸では、もう上映しているのですが。
だから感想はスルーしたのですが、もし、もし観れたらまたお伺いしますね。
でもとらねこさんが「拾い物」ってことで、ますます観たくなりました!
ではでは、また来ますね〜。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おお、嬉しいですね!真紅さんがこの映画、注目されているなんて!
これ、是非真紅さんもご覧になっていただきたいなあ!
リアルに描かれた人物設定と、問題提起を含んだ作品で、なかなかにズッシリ来る良作でしたよ。
見ている人が少ないのかな?なんて思うんですが・・
モーニングのみなんて、キツイですね・・
でも、ちょうどお正月の時期なので、見れることは可能!?・・・だといいんですが。
見られたら、是非またお話しさせていただきたいです!
初めまして。
この作品を暗いとか重いで片付けた人が多いみたいですけど、本当になんかジンワリとくるものでしたよね。犯罪がどうとかこうとかより、彼が本当に良かった。本物の人間を観た感じがします(意味不明かな?)。
ちなみに、もし宜しければ相互リンクをお願いしたいです!また来ますね。
アヤさんへ★
はじめまして!コメントありがとうございます。
そうですね、この作品、重いと感じる人は多いかもしれません。
人一人が更生するんですもの。
軽い話ではないですよね。
でも人一人の命の重さですよね。
この作品を気に入ったと聞くのはとても嬉しいですね。
実はこの作品、今年のベストに入れようと思ってるんですよ。
相互リンク申請、ありがとうございます。
ただ、今は正直、ずっとサイトにログインしていないんですよ‥
いつになるか分からないのですが、次回ログインした時でよろしいでしょうか?
『BOY A』
ズシリと響き、せつないけれど、きらめきを放つ。
イギリス、マンチェスター。BOY A(少年A)と呼ばれた過去を持つ24歳の若者がジャックという名前で再出発をしようとしていた。舞台がマンチェスターだからか、『マイ・ネーム・イズ・ジョー』のピーター・ミュランが出演…
そうなんですかー!ベストは他に何が入っているのでしょう?楽しみにしてます。こういうメジャーじゃない作品の方が個人的にはベストに入るのに、一般的に流行らないのが悲しいですよね、、、。
あと、リンクはいつでもいいですよ!ありがとうございます☆
アヤさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございます。
こちらから訪問するのが遅れ、申し訳ありませんでした。
そうなんです!これ、私はかなり満足してしまって。
描き方がとても好きだったんですよ。
私の今までのベスト、すごく自己流なものだったりしますので、もしお暇だったら、横←のサイドカラムにある、カテゴリの「とらねこのオレアカデミー賞」のところをご覧になっていただけると、とっても嬉しいですー^^*
私のベストは毎年、誰も全部見た人が誰一人居ないのが自慢の、超マイナーテイストが自慢なんですyo〜♪
こちらからも早速遊びに行きますね♪
リンク、少し時間がかかりますが、こちらからもリンクに加えさせていただきますので、ちょいお待ちを★
Boy A (2007)
監督:ジョン・クローリー
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ピーター・ミュラン、ケイティ・ライオンズ、ショーン・エヴァンス、アルフィー・オーウェン、シヴォーン・フィネラン、ヴィクトリア・ブレイジャー、スカイ・ベネット、ジョセフ・アルティン、ジェレミー・…
「BOY A」
「Boy A」 2007 UK
犯罪を犯した少年が大人になって出所し、新たな生活を始めるヒューマン・ストーリー。
ジャックに「大いなる陰謀/2007」のアンドリュー・ガーフィールド。
ジャックの保護司(ソーシャルワーカー)テリーに「トゥモロー・ワールド/2006」のピー…
確かにこの作品描き方が秀逸でしたね〜。
とっても入り込んで観ちゃいました。
あ、↑で真紅さんがコメントされているように
モーニングショー限定だったのですが、
なかなかの客入りでしたよ。
朝イチにも関わらず先に上映されている地域での
感想や評判を聞いて皆さん期待していたんでしょうね。
BOY A
『僕はここにいても、いいの?』
コチラの「BOY A」は、11/15公開となった”胸が痛いほどにエモーショナル。瑞々しく衝撃的なブリティッシュ・インディーズの感動作”なのですが、観て来ちゃいましたぁ〜♪脚本家のマーク・オロウが「映画のタイトルから想像できるが….
miyuさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おお、早速見に行かれたのですね、モーニング限定だったのですか。
それは残念ですが、本当に良作でしたので、これを見られたmiyuさんのチョイスが、私はとっても嬉しいです。
なかなかの客入りだったのですか、素晴らしいです!
こんちは♪
エンドロールの入り方に鳥肌たったのは『デス・プルーフ』以来かな(笑)
あそこで暗転すんのにはズーンときちゃいました
でも絶妙だなぁ、と
>少年が新しいスニーカーを渡されるシーン
「エスケープ」って、テリーとんち利き過ぎだろー!と感心してたのに…
いかに酔って寝かぶってたとしてもあそこで名前間違っちゃいかんですな
そりゃニート息子もマジギレするわー
そしてPCにはちゃんとロックかけときなさいよ!
絶対バラしちゃなんね!とか言ってた割には脇の甘さが気になりましたね
例の犯罪行為は事象の不可逆さ故に贖罪できない罪だろうと個人的には思てる(なので極刑や晒し者になって茨の道歩むもやむ無し派)
ですが、ジャックの意思と行為がどの程度介在してたかは直接描かれないのと助けられた女の子の手紙で気持ちがグラグラ揺れました〜
監督の狙い通りかな…
良作ですね
みさま
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
『デス・プルーフ』のエンドロールの入り方、私も大好きでした!こっちでは悲しくなりましたけど、絶妙でしたよね。
>エスケープという名のスニーカー
はは確かにとんちでしたね、ちょっとその演出狙いすぎ?って思ったりしましたけど、まいいや。
確かに、この物語で、腹が立つ一番のポイントは、あの個人情報が息子から流れちゃうところで、
悲劇のポイントがそこに終着してしまう辺りには、この作品の論点がスリ替えられてしまうのでは?と危惧を感じました。でも、「追い詰めたのは世間」、そこなんですよね。
ところで自分は前半ずっと、
ジャックは実は主犯の少年の方だったのか(スタンドバイミーのリバー・フェニックスを凶悪にした感じの少年)、もう一人の少年だったのか、
それがどちらなのか分からなかったので、サスペンスフルに物語に惹き込まれました。
ジャックの意思はこの主犯の少年にほぼ引きずられていたので、気持ちが揺れましたよね。
主犯の少年が死んでしまうことで、ジャックは彼の罪まで一身に背負うことになってしまったのですね。
でも世間はそんなことは知らない。
犯罪を憎む気持ちも当然ですが、更生の道が閉ざされてしまったら、社会で生きていくことは出来ないですし、死しか道が残っていないなんて、少年法で
カバー出来ない部分が心に残り、参りました。
生き直すということ〜『BOY A』
BOY A
長い長い年月、少年刑務所に収監されていた青年(アンドリュー・ガーフィールド)。
保釈が決まった彼は、保護監察官テリー(…
とらねこさん、こんにちは。
遅くなりましたが、やっとTBしに来ました。
瑞々しさ、感じましたね〜。外の世界に出たジャックが、すっごく無垢に見えましたから。
私も、今更ですが昨年のベストに入れてもよかったな〜、と思える映画でした。
こういう映画を、もっと大々的に公開して欲しいですね。。
社会全体で考えるべきことのような。。学校で上映会するとか。
2週間限定、モーニングまたはレイトの単館上映なんて寂しすぎるよ〜(@大阪)。
アンドリュー・ガーフィールド、いい演技でしたね。沁みました。
ではでは、また来ます〜。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
お返事が遅れてしまって、すいませんでした!
そうですね、少年院から出たジャックは、本当にヨ弱々しい感じがしちゃいましたね。
ベストに入れてもいいとお考えになりましたか?嬉しいです。
大阪では2週間限定のモーニング・レイト上映のみだなんて、見る機会が少ない人も大勢居るでしょうね。
こちらにもこんばんは
DVDで観たのですが,傑作ですね。
とっても重いテーマですが
アンドリュー君の瑞々しい演技が作品を不思議と爽やかなカラーにしていました。
でもやっぱり答えの出ないテーマはずっしりと来ましたが。
少年犯罪を犯した人間を世間は受け入れるかどうか・・・というより
自分は受け入れることができるのかな?って
しばらく考え込んでしまいました。
ななさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございあmした。
そうですね、これすごくいい作品でしたよね!
ななさんもこちらご覧になられたのですね!これはすごいですよね。
この映像表現力、テーマ性の深さは、自分はすごくすごくツボにハマってしまいましたね。
こういう作品こそ、自分は本当に心から好きです。
まだそれほどたくさん撮っていない監督さんのようなんですが、驚くべき作品をいきなり初期の頃から撮れる人もいるんですよね。
本当、素晴らしい作品ですね。
考え込む、それで正しい反応だと思いますよ。
すぐに答えなんて出ないんですよね。
BOY A
ボーヤ(BOYA)だからサ(違)
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「BOY A」
これは感想の書きにくい映画で・・
mini review 09385「BOY A」★★★★★★☆☆☆☆
重く暗い過去を背負う青年が、新たな人生を歩み始めるヒューマン・ストーリー。イギリスの若手作家ジョナサン・トリゲルの同名小説を、『ダブリン上等!』で高い評価を受けたジョン・クローリーが映画化。『大いなる陰謀』の新星アンドリュー・ガーフィールドが、秘密を抱え…
「BOY A」 DVD
この映画はココロがずたずたになっていく若者を描いた映画。少年A(少年期に犯罪、しかも殺人)を犯した者が社会に復帰する姿を描き、この青年はある年輩の男性の手ほどきにより、名前を変えて社会に出て別人として生きていく。この映画は凶悪少年犯罪の処罰うんぬんとか本当…