153●サウンド・オブ・ミュージック
あまりに有名なので、逆に「いつでもいいかな」と思って、後回しにしてしまってたの。
新宿プラザの閉館イベントにて、何と生まれて初めて見てしまいました。
噂にたがわぬ名作中の名作!
ストーリー・・・
見習い修道女のマリア(ジュリー・アンドリュース)は、お転婆が過ぎて外の世界へ送り出される。家庭教師となったマリアは、規律を重んじるトラップ大佐(クリストファー・プラマー)と、7人の子供たちに迎えられた。大佐は、亡くなった妻を思い出させることをすべて禁じ、音楽さえ許さない。マリアは、大佐の留守中に子供たちを山に連れ出し、歌う喜びを教える。帰宅した大佐は、子供たちの美しい歌声に胸を打たれ、再び、豊かな心を取り戻していった。・・・
’64年、ロバート・ワイズ監督
いやー、こんなに素晴らしいとは!これ、まだ見たことない人は、絶対必見ですよ・・・なんて今更過ぎ?
もう、最初のシーンからして、鳥肌が立ちそうだった・・・そんな自分に驚いてしまったの!
いきなりジュリー・アンドリュースが歌いだすのかと思いきや、最初の音は鳥の声だったのね。
そんな細かいところまで、全て計算された美しさ。
なんたって、スコアの完璧さ!これに尽きる。
こんな素晴らしいミュージカルがあったら、他の後続するミュージカルなんて、逆に作れないわ・・・
そう思わせるほどの素晴らしさ。
「ポニョの歌」が今年の夏、頭の中で忘れられなくなった人も大勢いたと思うけど、これはその比にもならないくらい、忘れられなくなる曲揃い。
マリア(ジュリー・アンドリュース)のオテンバが素敵なの・・・。
今見ても、「ああ、これって昔の映画って感じだなあ」なんて思わせるところは皆無。
一つひとつのシーンも全て嬉しくて、見ているだけで幸せな気持ちでいっぱいになってきて、なんだか涙が溢れてしまって仕方が無かった。
それぞれの曲は、たとえ知らない曲があったとしても、そのメロディの美しさですぐに虜になる。
メロディと映像との融合というものは、極上のものなのね。
そして、演出がまた素晴らしいの。
尼僧たちが「マリアは困った子だわ」という歌を歌う、この冒頭近くのシーンは、おそらくこの映画の中ではそれほどの盛り上がる場面というほどでもないに違いないのに、そこだけでも十二分に楽しめてしまったの。
そういえば村上春樹が、あるコラムの中で、
「私の好きなものは、ヌードルを添えたウィンナシュニッツェル」という話をしていたことがあって、
「やっぱりウィンナシュニッツェルはヌードルが添えられていないと」って言っていたのは、この映画のことだったのね。
そうそう、ウィンナシュニッツェルというのは、日本語で言うとビーフカツレツのことなのですって。
とっても有名な「ドレミの歌」が何度も出てくるんだけれど、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」と歌わないで、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・ティ・ド」って歌うの。
なんで「ティ」って言ってるの?って初めは思ったのよね。
このシーン、最後になってようやくそういうことだったのか!って分かるの。
この曲、このミュージカルから有名になった曲だったんだ!あまりに有名な曲だったので、かえってビックリしちゃった(ビックリしてばっかり)。
「ドはドーナツのド」って日本だと始まるんだけど、英語版だからモチロン違うのね。
Doe(ド)はdear,my female deerなんて、「deer(鹿)」と「dear(親愛なる)」というのをかけていて、
Ray(レ)はa drop of Golden Sun(太陽の光)、Me(ミ),what I call myself(私を呼ぶときのミ)、
なんて風に続くんだけど、そのシの部分は、Tea(ティ)drink with jam and breadっていうの。
「ティー(お茶)はジャムとパンと一緒に召し上がれ」って言うのね、字幕だと「ジャムとパン」の部分が音数的に多くなってしまうからだろうけど、抜けていて、「パンと一緒にどうぞ」っていう風になってたかしら、とにかくここの部分が肝心なのよ。
なんでかっていうとね、後でナチに占領され、政局が変わるその最中にあって、トラップ一家が演奏会に出るんだけれど、その時にこの歌を歌うの。
オーストリアの同胞に向けて、「ティはDrink with jam and bread」っていうその部分が、「ジャムアンドブレッド」じゃなくて、「ジャーマンブレッド」「ジャーマンブレッド」と聞こえるの(続けて発音してみると分かるでしょ?)、
つまり「ドイツのパンを飲み込め」になってしまうの。
さらに、この演奏会の場面では、ここの部分だけが流れるので、この皮肉さは、英語圏の人だけでなく、すぐに分かる部分なんだけど、でも字幕だとちゃんと訳しきれてないかなあ・・・。有名だから、みんなこんなこと知ってるだろうけど。(私ほら、初めて見たものだから。)
そんな風に、実はこれってば、ちゃんと作品の中でもメッセージがこめられているものだったの。そんなことも、今更ながら驚愕してしまった・・・。あああ。
後は、以前Anthraxの曲で、『Aufwiedersehen』(アウフヴィーダーゼーエン)ていう曲があって、その時にAnthraxのメンバーが、「ドイツ語でもこの言葉ぐらいだったら皆知ってる」と言ってたんだけど、私は知らなかったので、へえ、なんでだろう?なんて思ってたのね。そしたら、やっぱりこのミュージカルからだった。
『So Long , Farewell』という、トラップ家の子供たちが皆でサヨナラするかわいい曲なんだけど、「Dood-Bye, So long, Farewell Aufwiedersehen」て歌ってたの。
これなんかも、一発で覚えて、今すぐ歌えてしまうぐらい。
なるほど、この曲のおかげで、ドイツ語でサヨナラを、アメリカ人は知ってるわけねーと気づいたのでした。
人々が何度も見たくなる気持ちが、ようやく今にして分かったのでした。
何度見ても楽しめそう。
2008/11/29 | 映画, :崇拝映画, :音楽・ミュージカル・ダンス
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コメント(16件)
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すごいなあ
ジャーマンブレッドには全く気がつかなかったですよ
観てて気づいたんですか?
すごすぎる。
アウフヴィーダーゼーンは気づいてましたけど。
で、この作品をスクリーンで観たのは幸運でしたね
(ワタシはTVとDVDのみ・・・)
こんにちは♪
>生まれて初めて見てしまいました。
遅い!遅すぎ!けしからんな全く…。
何年か前に近所の区営の映画館で2週間限
定くらいでレイト上映(1000円)やってて
3日連続で観に行ったことありますよ。
なんせ本作はマイベスト映画で「大脱走」と
ともにトップ争いをしてるくらい大好きなん
でね〜♪ (゚▽゚)v
「ドレミの歌」「もうすぐ17歳」「私のお気
に入り」等の名曲の数々は到底一言ではです。
個人的に一番気に入ってるのは「エーデルワ
イス」の大合唱のシーンなんですよね。
その国を代表する歌と言えばいいのかな?
…愛国心を掻き立てられるあたりが好きだっ
たりもするもんで。
manimaniさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>ジャーマンブレッド
あの舞台上では、「ジャーマンブレッド」の部分しか歌ってないので。はい、見てて気づきましたよ。
ドイツ軍を前に、「ジャーマンブレッド」と
歌いまくるシーンなんて、あるとは思わなかったんですよ。
>アウフヴィーダーゼーン
ですよね♪日本語で有名なドイツ語って言ったら、
「Ich liebe dich」と「アイン、ツヴァイ、ドライ」ぐらいですよね、きっと。
アウフヴィーダーゼーエンてあんまり知られてなさそうですよね。
風情さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
うおー、そうだったんですか!風情♪さんは、この作品が、生涯のベスト(しかもトップ間近!)に入るほどのお気に入りでいらっしゃったんですね。
さすがです!いやー、自分はあんまり有名すぎて、逆にナメてました!こんなに素晴らしいとは思わなかったです。
きゃーごめんなさいっっっ★
区営の劇場で見られたんですね♪
新宿プラザでも、千円で見られましたよ。
私が見たのは夜の回だったんですが、結構入ってて、すごく嬉しくなりました!最後、拍手している人も居ましたし。
しかし、途中のインターバル、まさか10分ないとは思わなかったので、トイレ休憩に行ったらもう後半が始まってたんですよ・・(悲)
お気に入りの曲がたくさんで、とても言い切れない気持ち、分かります〜!
まさか、ドレミの歌とかエーデルワイスって、私、童謡かと思ってて・・子供の頃習った歌ですし。
まさかこの映画から有名になったとは、思うだにしなかったなあ!
>エーデルワイス
そうですね、祖国を思う歌、として描かれてましたね。
で、私は小学生の時、音楽の授業でこの曲習って、夜中に大声で歌うほど大好きな曲だったんですが(近所迷惑)、勝手にスイスの歌かと思ってました。
だって、『小公女ハイジ』にエーデルワイスって花が出てきませんでした?
勝手にスイスの歌だと思ってました。思い込みって怖い♪
はじめまして。
映画が作られた年に生まれ、10歳で初めてテレビで映画を観て以来の大大大ファンです。
ザルツブルグへも行きミラベル庭園で手を広げました。
最近、ウガンダ出身の友人ができました。
私がこの映画が好きだと言ったら、彼はステキな歌とダンスで”Maria”を披露してくれました♪
音楽に国境なし!
”The Sound of Music”is Number 1 for me☆☆
norikoさんへ
初めまして!訪問ありがとうございました。
コメントもありがとうございます。
この映画の大ファンの方なのですね!とても嬉しいです、ようこそお越しくださいました。
ウガンダ出身のご友人も、この歌をダンスつきで披露されるなんて、なんて素敵なんでしょう
その方のダンスを見たnorikoさんは、きっととっても嬉しい気持ちになったでしょうね!
私もその風景を頭に思い描いて、とっても嬉しい気持ちになりましたよ。
素敵なコメント、ありがとうございました。
本当、この映画素敵でした!!大好きになりました。
サウンド・オブ・ミュージック
コチラの「サウンド・オブ・ミュージック」は、AFI(アメリカ映画協会)が選ぶ名画百選にも選出されている不朽の名作ミュージカル映画です。ミュージカル映画好きとしては、外せませんでしょう♪
主演は、「プリティ・プリンセス」、「プリティ・プリンセス2 ロイヤル…
わぁ〜いいなぁ〜。
これ劇場で見られたんですか?
あたしは初めてではなくすんごい久し振りの鑑賞だったのですが、
本当素晴らしかったです〜!
今更なのですが、それでも見てよかったです!
miyuさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうなんですよ、これ劇場で見れて本当に幸せな体験でした。
私、『ムーラン・ルージュ』でこれがボヘミアン讃歌として歌われた時に、「なんて素晴らしいメロディなんだろう!」とウットリしまして。
それから、絶対一度は見るゾ!って思ってたんですよね。
通りすがりの者です。「ジャーマンブレッド」のところ、楽しく読ませていただきました。たしかに、ここってなにかありそうな感じですね。で、ちょっと違った解釈をしてみました。
はじめのほうでドレミの歌が出てくるところでは、ぼくには「ジャーマンブレッド」と聞こえていました。
ナチスの前で歌うときにはじめてはっきり jam and bread と聞こえて「あれ?ここってジャーマンブレッドじゃなかったんだ」と思いました。
「それにしてもなんでしつこくこの部分を歌い、聞いているナチスの兵隊が繰り返し映されるのかな〜」と疑問に思って思いついた解釈は…
最初はこの部分の歌詞は Tea, I drink with German bread オーストリアではドイツ式の黒パンではなく、白パンが一般的です。お茶もコーヒーに比べて一般的でない。そこで、「ティーっていうのは、私(マリア)がジャーマンブレッドを食べるときに飲むものよ」と歌っていたと考えてはどうでしょうか。(Tea, “a” drink… が正しい歌詞とされているようですが、僕は ”I drink” と解釈してみました)
で、ナチスが来たのでこの部分を(他の人にはだれにもわからないような)ナチスに対する嫌がらせとして、jam and bread に変えて歌った、というのがもうひとつの解釈としてありえるかもしれませんね。
いずれにしても、感動的ないい映画ですね。そのなかにこのようなちょっとした謎や仕掛けがあったりしたら、ますます面白いですね。
通りすがりの者ですさんへ
コメントありがとうございました。
なるほど、もともと「ジャーマンブレッド」だったのに、それをナチスの前で歌う時に「ジャムアンドブレッド」と変えて歌った。
それも十分ありえますね!これは是非、もう一度見て、検証しなければ。
私は最後に聴いたミュージカルパートの記憶しかないのかもしれませんもの。
ナチスにとっては、「ジャーマンブレッド」と歌われたら、ん?なんて引っ掛かるところかもしれないのですが、
それを検閲をいかにも考慮に入れたかのように「ジャムアンドブレッド」と歌っている。しかしその癖、しつこく何度もその部分のリフレインを繰り返している‥
そんなシーンだったのかもしれません。
Tea , I drink with〜の部分も、解釈をお伺いして納得いたしました!
白パンが一般的なオーストリアの生活習慣のくだりなど、知らないことを教えていただきました!ありがとうございます。
この作品は何度見ても楽しめるミュージカルですよね、きっと。魅力がこんなに褪せないなんて、本当に素敵だと思います!
さて、他にも仕掛けはあるんでしょうか?
INDEXでサスペリアさがそうとサ行をみたらこのタイトルみつけたので思わずコメント。
最高ですよねこの映画!自分もとらねこさんと全くいっしょ、最近になって初めて観たんですけど、滅茶苦茶感動しました。ソッコーDVD買いました(笑)オープニングの空からカメラがぶわーっと緑の中の歌うマリアに寄っていくシーン、何度みても癒されます。
内容もけっこう骨太なメッセージが込められていたり、大人になってから観たからこそわかる内容もありますよね。
そうそう、プリティ・プリンセスにジュリー・アンドリュースが出てるんですよ。少しだけど彼女が歌うシーンもあったりして、「うおおマリアだー!」って何か興奮してしまいました(笑)
サウンド・オブ・ミュージック
「サウンド・オブ・ミュージック」を観た。
修道女見習いのマリアは、修道院では問題児だった。そこで院長は、マリアをトラップ大佐の家に鮮.
baohさんへ
こちらにもコメントありがとうございます〜♪
そうだったんですか!『サスペリア・テルザ』を見に来て、ここへ!
ふふふ、嬉しいなあ、baohさんもこれ、感動しましたか!
私もね、これはあまりに気に入ってしまった作品だったんです!!これは何度も見たいなあ〜
あのオープニング!!見た瞬間から涙が止まらなくなりますよね・・・。
見ている間もずっと涙が止まらなくなってしまいました!
プリティ・プリンセス、全然ノーチェックでした。ジュリー・アンドリュースが歌ってる、って聞いたら、思わず見たくなりますね!
チェックしときます〜♪ありがとう。
そうなんです、骨太なんですよね!驚きました。ラストにかけて、物語がよくある感じの展開にならないところもまた良くて。
本当は、こういう作品が、ハリウッドの良さなんですよねえ・・・。というのをこの映画からはひしひしと感じますね!
とらねこさん☆
ポニョの年に劇場でやったのねー?
もしかしたらミラノの閉館の時もやったのかな??
サヨナラの歌の時の、「ジャーマンブレッドと一緒に飲んで」は気付かなかったわ~~っ
字幕を読むのが忙しいと、なかなか映像に集中できなくて、同じ歌の2回目の時はつい顔とか見ていたわ(笑)
ほんと、何度も見たくなる映画!やっぱりもう一度見直してみよう♪
ノルウェーまだ〜むさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ミラノの閉館の時はやってなかったと思いますよ。ミラノの閉館の時はアクションものが多かったかな。最終日はETでした。
「ジャーマンブレッド」は、「tea with jam and bread」で、シの音の時にこう歌ってたんですよ。teaは“シー”には聞こえませんよね?へえ〜元はこんな歌詞だったんだって、じっくり聞き耳を立ててたんです。
ドイツ軍の侵略傘下のオーストリアで、ドイツ軍を前に歌うのですが、あのシーンではこの部分のみを執拗に繰り返すんですよ。これは、完全に意図的ですよね。
でもこの映画のこの部分て、字幕でそうした意図が分かるように書かれてなかったから、日本人は気づかないのかなあ…。英語を聞く習慣の無い人には分からないのかしら。
良かったらもう一度見てみてください!