143●昼顔
’67年、フランス
監督:ルイス・ブニュエル 原作:ジョセフ・ケッセル
脚本:ルイス・ブニュエル、ジャン・クロード・カリエール
出演:カトリーヌ・ドヌーブ、ジャン・ソレル、ミシェル・ピコリ、ジュヌビエーヴ・パージュ、ピエール・クレマンティ
(以下、シネマヴェーラ説明より)
美しく清楚な人妻、セヴリーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。彼女は幸せな結婚生活を送っていたが、友人アンリ(ミシェル・ピコリ)から上流階級の夫人たちが秘密の家で売春をしているという話を聞く。興味をそそられた彼女は、昼は売春婦、夜は貞淑な人妻という二重生活を送り始める。
ちなみに、この38年後を描いた『夜顔』というマノエル・ド・オリヴェイラ監督作品が去年、日本で公開された(私は見てないけど)。’06年の作品。
うーん、あらすじを読んで面白そう!と期待が少し大きかったかも。
公開された’67年当時には、一大センセーショナルな映画だったとのことなのだけれど、自分には何とも物足りない感じがしてしまった。
不感症で、セックスレスの関係を夫に強いる美しい人妻の持つ、密かな欲望は、縛られ、ムチで打たれ、卑しい男に強姦されるというもの。
この夢のシーンが差し挟まれている割に、物語の中でそうした妄想のシーンが調和することなく、乱暴に差し挟まれている、という印象。
売春婦をして働く場面が、特にエロティックさがないからか、余計物足りなく思えてしまう。
こういうのは、この辺のフランスの上品な作品では、描ききれないのかもしれませんけど(笑)
あと、若いチンピラに惹かれるものを感じつつ、体だけ与えて、心は与えない・・・
この辺りも、もう少し濃密に、情感たっぷりに描いてくれれば楽しめたんだけど。
あっさり描かれていたため、あまり主人公の気持ちが伝わらなくて、何とも思えずに、「このチンピラって強引だな」、ぐらいな印象にしか思えなかったのが勿体無い。
ラストの悲劇に関係してくるのだから、この辺重要なように思えてしまった。
そうそう、ヒロインの心理描写、もっとプリーズ!っていう。
え、これは主人公が不感症だから、あくまで冷めた目線、という設定なのかな?
んー、自分は貪欲なのかもしれません・・・(笑)
カトリーヌ・ドヌーヴの演技にも、特に感じるところがなかったし。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でのドヌーヴは大好きなんだけど。
ちなみに、オリヴェイラの『夜顔』では、ヒロインに売春宿の存在を教え、偶然に会ってしまった、友人のアンリ役、ミシェル・ピコリがまた登場しているとのことでした。
・昼顔@映画生活
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コメント(4件)
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困った時のブニュエル頼み・・・・ルイス・ブニュエルの女たち
おっとー!油断していると単なるエログになってきました
あきません、あきません、当初の予定ではエロは禁じ手にしていたんですがついつい安易な方向に走ってしまいがちな弱い僕
こんな時の救いの神はやはりルイス・ブニュエルでしょう
なんつっても「芸…
すみません!ごめんなさい!ブニュエル弁護人として言い訳をさせてください。
フランスの上品な作品なので描ききれなかったのではなく、粗野で野卑で乱暴者で大雑把なブニュエルの男らしさから、このやうんな按配になってしまったんだと思います。雑なんです、心理描写とか言ってあげないで下さい、天然なんです、イイ子なんです、そこがあの子のエエとこなんです。ごめんなさい、悪気はないと思います。
天然でわけのわからないドシュールリアリストのブニュエルが無理して「普通のサスペンスチック」に挑戦したので、ここまで普通に頑張ったんだから、ようやったようやったと褒めてあげて下さい。
僕は好きです、この「昼顔」の大雑把さ。
弁護人さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
アハ、そうなんですか!
なるほど、この匙加減が大雑把なところが、逆にこの作品の魅力なんですね!
へえ、シュールリアリストなのに一生懸命普通にしようとしてしたんですね。
うむー。
でも確かに、この時代の背景を考慮したり、この監督さんの流れでもっと汲み取れるところがあるってことなんですね★
『昼顔』’67・仏
あらすじ若い外科医の妻セブリーヌは、外見は貞淑な女性だったが内面には激しい情欲が渦巻いていた。淫らな妄想に駆られたあげく、彼女は、昼間だけの娼婦として欲望に身をまかせるようになる・・・。感想ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞した変態映画なんたって、殆…