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140●ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

ピアノチューナー・オブ・アースクエイク双子の天才映像作家、ブラザーズ・クエイの実写映画。彼らの大ファンだというテリー・ギリアムを製作総指揮に迎えた、’05年の作品。イギリス/ドイツ/フランス。


ストーリー・・・
美しい歌姫マルヴィーナ(アミラ・カサール)の声に魅せられた天才科学者ドロス(ゴットフリード・ジョン)は、彼女を誘拐して、自らが発明した奇妙な演奏自動人形のコレクションに加え、それによって破壊的なオペラ演奏を行おうと企てていた。自動人形の調整のために呼ばれたピアノ調律師フェリスベルト(セザール・サラシュ)は、その恐ろしい計画に気づき、マルヴィーナを助けようと試みる・・・。


出演:アミラ・カサール、ゴットフリード・ジョン、セザール・サラシュ、アサンプタ・セルナ


幻想的で美しい映像の耽美な不条理作品。ストーリーだけ考えると、ちょっとだけリンチ風?きっとリンチ好きには「エッ?なんで?」とストーリーを不思議がる人は、最早いないかも。

ここに使われている様々な小道具は、ブラザーズ・クエイの過去作品を彷彿とさせるものが多い模様。
森の中の幻想的な映像は『櫛』を思い起こせたり、彼らに仕える庭師たちは、『ベンヤメンタ学院』の生徒と酷似。
『ベンヤメンタ学院』の他に、実写映画を撮っていなかったブラザーズ・クエイに、テリー・ギリアムが製作総指揮に。
ベンヤメンタ学院校長が、ここでも一筋縄ではいかない役の、ドロスを演じていたのに、ちょっぴり満足。

撮影監督は、『ベンヤメンタ学院』と同じ、ニック・ノラウンド。
ブラザーズ・クエイのインタビューで、彼ら自身が語るところによると、ベンヤメンタ学院においてフレーミングを厳密にこだわっていたのと違って、今回は自由に動かした、とのこと。
そのせいで自分には『ベンヤメンタ〜』の、あの緊張感に溢れたモノクロの迫力映像とはちょっとイメージが違ってしまったのかなあ。
私は、あの『ベンヤメンタ〜』でのフレーム・イン、フレーム・アウトが余りに素晴らしくって、言葉にならないくらい感激してしまったのよね。今回もそれを期待してしまったので、ここでの流れるような幻想的な映像は、ちょっと眠気を誘われてしまった。ああ、『ベンヤメンタ』がもう一度見たいなあ!とこの作品の間中、考えてしまったのは、明らかにマイナスポイントだったかな。


自動人形、オートマトンの恐ろしさは今回は、さほど感じず。
ストップモーション・コマ撮り人形映画の作品では、おっそろしいほど緻密で丹念に構成された完璧かつ非人間的で無機質な世界だったので、そこから考えると少し映像が“拡がりを持って”感じてしまった。
パペットの登場シーンは、森の中の木こりのところだけだったから、もっと見たくなってしまった。


とは言っても、やっぱり美しい映像美。
オペラの舞台上で、ドロスの肝計によって罠に掛けられ、マルヴィーナの靴が、白百合の花咲く映像と抱き合わせで魅せるところがとっても美しい。
そして純真を意味する白百合から、囚われの姫シンデレラを思わせる靴に変わり、気づけば女陰の形を形成してゆくアートワークには、うおっ、とヨダレが出そうになった。


*ブラザーズクエイ*
ブラザーズ・クエイの幻想博物館 プログラムB 《書物のカフカ的迷宮》
ブラザーズ・クエイの幻想博物館 プログラムD 《執事養成室》『ベンヤメンタ学院』
ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

ピアノチューナー・オブ・アースクエイク@映画生活

 

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コメント(13件)

  1. 「ピアノチューナー・オブ・アースクエイク」ブラザーズ・クエイ

    2005イギリス/ドイツ/フランス
    監督・脚本:ティモシー・クエイ、スティーヴン・クエイ
    製作総指揮:テリー・ギリアム、ポール・トライビッツ
    出演:アミラ・カサール(マルヴィーナ)ゴットフリード・ジョン(ドロス博士) アサンプタ・セルナ(アサンプタ)セザール…

  2. とらねこさまこんばんは。
    また寝たんですよ(笑)
    9割がた。
    で二度目リベンジでやっと寝ないで観れました。
    女陰かとおもいきや声帯の図だったりと、怪しいイメージの交錯があちこちに潜んでいて、とても文章では書ききれない作品だったと思います。
    ワタシもちょっと物足りないかな〜と思ったんですけど、反芻するうちに結構好きになりました。

  3. manimaniさんへ★
    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    manimaniさんは雪辱戦行かれたのですね!素晴らしい!そして気に入られたのですね。
    私もも一度見たら印象変わるかなあ?
    ああなるほど、確かに女陰の図からまた様変わりして、奇妙な瘤を持つ咽頭の形に変わったかも
    捕らえられたオペラ歌手の運命を表現してたんだ。うん素敵。
    私は期待が大きすぎたのかもしれません。
    「コレ×コレ」が「エッそれになる?」っていうところで下がってしまった感じ‥
    変に他の人の手を入れずに、兄弟だけで濃密な世界を作って欲しかった感じです。

  4. ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

    10月25日(土) 16:30?? シアター・イメージフォーラム2 料金:2000円(会員更新料金+会員料金) プログラム:700円 『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』公式サイト ブラザーズ・クエイの「ペンヤメンタ学院」に次ぐ2作目の実写作品。相変わらず訳がわからな…

  5. 雁屋哲、池上遼一の偏向暴力漫画「男組」の映画を観にいったところ、同時上映だったのが、何故か「ペンヤメンタ学院」でした。
    以外にも「ペンヤメンタ学院」の妖しい雰囲気が気に入り、これも見たわけですが、兎に角眠い。かなり辛かったです。
    しかし、兄弟のアニメーションは観ていないのです。せめて「ストリート・オブ・クロコダイル」くらいは、観たいですね。

  6. バラサバラサさんへ
    こちらにもコメントありがとうございます〜♪
    おお、そうだったんですね、ベンヤメンタを気に入られたとは!
    私もベンヤメンタは、すんごく気に入ったんですよ〜!
    >ストリート・オブ・クロコダイル
    見て欲しいですねー^^また短編上映してくれないかな・・♪
    一つ見るとゲッソリ疲れますが、時間が経ってみれば、なぜもっと行かなかったんだろうって後悔し始めてます。

  7. こんにちはー。遅くなりました
    クエイの過去作品の特上を見逃してしまった私;
    (そういえばかえるさんと会った?…と聞いていたわー。)
    とらねこさんの記事を読んだら、やっぱり後悔;;
    でも、、、ストップモーションアニメな部分がもう少しあるのかな…なんて思ってはいても、私は本作が初めてだったからむしろ楽しめたのかしら。
    寝なかった、いや目は閉じたけどw結構頑張った。笑
    美しかったですよねー。こんなアート作品もっと見たいです。よ、よだれ・・・爆

  8. ピアノチューナー・オブ・アースクエイク

    地震を調律したい;笑

  9. シャーロットさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ハイ、かえるさんには、クエイの特集上映の時と、今日、今さっきUPしたばかりの『アンナと過ごした〜』でもバッタリお会いしました〜☆
    シャーロットさんとは活動時間が違うので、お会いできなかったのでしょうか(泣)
    こういうの、映像だけで楽しめてしまうシャーロットさんが素敵♪
    私も、これを初めて見てたらもっと楽しめたかも、と思います。
    期待が何しろ大きすぎたのがいけなかったんです・・。

  10. 『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』&ブラザーズ・クエイの幻想博物館

    この妖しき幻想世界の味わいを言葉になんてすることができない。2008年、やっとやっとブラーズ・クエイ-BROTHERS QUAY- 作品を堪能することができて感無量。
    その監督作品は観たことがなくて、ブラーズ・クエイという名前をちゃんと認識したのもブログを初めてからだったか…

  11. ピアノチューナー・オブ・アースクエイク:「外界と隔絶された小さな空間」ならではの心地よさ

    ★監督:ブラザーズ・クエイ(2005年 イギリス・ドイツ・フランス) 京都みなみ会館にて。 ★あらす…

  12. こちらにもお邪魔します。
    さすがクエイ兄弟!いやあ本当にすごい作品でしたね!!と高揚した気分でコメントをするつもりでしたが、またしても眠気に襲われてしまい、とくに前半部分はとぎれとぎれの記憶になっております。ほんとにクエイの映画はやばいくらいに催眠効果があるもんだから、その部分ですごい!すごい!と言いたくなったりもします(苦笑)。とはいえ「女陰」のくだりとか、マルヴィーナの胸が透けて見えるところとか、そういう部分はしっかり覚えていたりして、ああ情けない情けない。
    D・リンチ作品との共通点でいえば、私は初期短編作品の気持ち悪い感じが『イレイザーヘッド』に似ているような気がしました。それはともかく、とらねこさん絶賛の『ベンヤメンタ学院』をもう一度見てみようかな。

  13. 椀さま★
    おはようございます〜♪こちらにもコメントありがとうございました!
    そうですね、眠くなるんですよね、この作品。
    でもそんなエロチックなシーンだけはしっかり覚えているなんて‥、椀さまも隅に置けませんね!いや違うか‥
    ところで椀さま、私、諸々のパペットアニメを用いた短編作品群と、実写の長編映画『ベンヤメンタ学院』とはだいぶ違いがあったように思っています。
    ギリアムも「あのベンヤメンタを再び!」という、たっての願いがあったんじゃないかな?なんて勝手に想像してるんですよ。
    パペットアニメーションの方だと、「そもそも何を映すか?」という被写体そのものにこだわりを感じられて面白いんですが、
    実写『ベンヤメンタ』だと白と黒のエクスタシーと言いますか、光と影の陰影だけで、驚くような視覚効果を様々に用いていて、
    私はそれを見逃すまいと異様な緊張感で見てしまいました。おかげで“フレーミングの恍惚”というようなものを自分は感じて、身悶えしてしまいました。
    パペットアニメは怖くてたまらなくて、そこが面白かったんですけどね。
    ところで、『イレイザーヘッド』ですか‥
    なるほど、そう言われてみれば、似てる部分ありますよね。
    私、リンチの作品の中でも、これはよく分からなくて、昔何度も見てしまいましたよ。




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