124●コッポラの胡蝶の夢
フランシス・フォード・コッポラ、10年ぶりの新作。
『ゴッドファーザー』という傑作を世に送り出した・・・という説明は最早不要ですよね。
ところで、今月、10月31日に閉館になる、新宿プラザ。ここでクロージングイベントが、11/1(日)〜7(金)にかけて行われるんだけれど、その際にこの『ゴッドファーザー』三部作が上映されます。
タイム・テーブルもようやく、(もーず〜っと待ってたんですけど!)発表になったので、ついでながら挙げときますね。
・11/3(月)『ゴッドファーザー』PartⅠ
・11/4(火)『ゴッドファーザー』PartⅡ、PartⅢ
HP URL → http://www.tohotheater.jp/theater/061/index.html
残念ながら、せっかく新宿プラザの説明としてWikipediaに載ってる、
「スターウォーズ全6話を上映した唯一の映画館」、というからには、スターウォーズだけ(!)上映してくれちゃったりする方が、企画としては面白かったのになあ・・・なんて思っちゃうんだけど。
『タイタニック』がラストだそうですけど。
ま、この作品とは関係ないので、それはおいといて。
ストーリー・・・
第二次世界大戦前夜のルーマニア。年老いた言語学者のドミニク(ティム・ロス)は、一生をかけた研究も未完のまま、かつて愛した女性ラウラ(アレクサンドラ・マリア・ララ)のことばかり想い続けていた。そんな日々に耐え切れず自殺を決意した日、彼を落雷が直撃する。全身火傷の重傷を負いながら、彼は奇跡的に一命をとりとめたのだった。驚異的なスピードで回復していくドミニクの身体―。不思議なことに肉体と頭脳は驚異的に若返り、さらに超常的知能を発揮するようになる・・・
人間と魂、輪廻やカルマ、といったパラダイムは、日本人には割と馴染みのある、誰しもが一度は遠く思い描くテーマかと思うのだけれど、
こういうのこそ東洋思想の神秘的な部分なのかもしれませんね。
荘子の「胡蝶の夢」こそ、魂ということを人が考える上で、大昔から挙げられてきた命題であるのにも関わらず、コッポラの描くこの物語には、およそそこまでの深みはありません。
私も、長年付き合った人が、ある日突然、酒を飲みながら
「自分の人生は、誰かが見ている夢なのかもしれない」
と言ったことがあって。
あまり普段そういうことを言わない人だったので、少々驚いたことがありました。自分の深層心理の奥深くで、いわく言いがたい気持ちから、唯識論的な思考を思いついたのかな。そんな風に、どこかで日本人の考え方に馴染むような思想が、荘子の「胡蝶の夢」にはあるようです。
そんな風にコッポラも、東洋思想への漠然とした憧れから、この物語に着手したのかもしれませんね。
自分はこの手のテーマであれば、ダーレン・アレノフスキー監督の『ファウンテン』の方がずっと楽しめましたけど。
映像から拡がりを持つ哲学的的思考が、ウパニシャッド的思想に結びついて、ブラフマンとアートマンの一体を成すラストには感激。
ですが、この作品の方は、とっつきやすく(?)、理解可能な映像詩として、断片的に映像を楽しむことは出来るかもね。
ティム・ロスという才能ある俳優を使っているからこそ、楽しめる作品かな。
ブルーノ・ガンツが出て来たのも嬉しかったし。
2008/10/15 | 映画, :SF・ファンタジー
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コメント(11件)
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>『ゴッドファーザー』という傑作を世に送り出した・・・
実は、見たことがありません。
コッポラ自身が監督した作品は、「アウトサイダー」と「ドラキュラ」しか見ていないかも・・・(大汗)
ファウンテンも(-ω-;)ウーンだった哀生龍は、この作品も(Θ_Θ;)ウーン
理解できないと言うか、ピンと来ないと言うか・・・
口惜しいと思いつつ、“頭”で見るのは早々に放棄しちゃいましたよ(苦笑)
映像の美しさと、ひたすらティムの演技を楽しみました。
ブルーノ・ガンツとのシーンは、特に好きなシーンです♪
「コッポラの胡蝶の夢」フランシス・F・コッポラ
コッポラの胡蝶の夢
2007アメリカ/ドイツ/イタリア/フランス/ルーマニア
監督・製作・脚本:フランシス・F・コッポラ
原作:ミルチャ・エリアーデ
音楽:オスバルド・ゴリホフ
出演:ティム・ロス、アレクサンドラ・マリア・ララ、ブルーノ・ガンツ
こいつは大…
きた〜!ワタシこの作品好きです〜
テーマは東洋的とは思いませんでした。むしろ非常にヨーロッパ的な神秘主義を感じました。
エリアーデの原作のせいかもしれませんが、言語の原初の姿の探求、超越思考を記述する言語などのロゴス的側面と、馮移のような神秘主義が組み合わさるあたりは、いかにもヨーロッパ宗教の源流を思わせ、コッポラはそういう伝統を持つヨーロッパへの憧憬を持っていたのだろうと思います。
それをスペクタクル、謎解き、どんでん返し無しに=非映画的に撮ってしまったその距離感もワタシにはふさわしく思えましたし、それでかえって、今後のコッポラのスタンスに期待が持てるような気がするのです。
東洋との繋がりがあるとすると、いきなり仏教/儒教ではなくて、ヘブライズムとヘレニズムとの出会いなんぞにさかのぼって考えるのも面白いかもですね。
なにやら熱くなってしまってすみません。ぴったし400文字です〜
哀生龍さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
自分の場合、『ゴッドファーザー』は長年、何度見ても最後まで見れなかったんですが、
アル・パチーノファンと言いつつ、ゴッドファーザーシリーズが見られないなんて・・
と、一発奮起して見てみたら、ある日突然ガツーン!と良さが分かりました。
ティムの演技はさすがでしたよね。
ブルーノ・ガンツはさすがでした。
私も『アウトサイダー』『ドラキュラ』好きでした!
ドラキュラは映画館で号泣した記憶が。
manimaniさんへ
こんばんは。コメントありがとうございました。
私はあくまでも、映画しか見ていませんので、原作体験と映画でお感じになったことが互いに補完し合い、より深く楽しむことが出来た、manimaniさまとは、随分意見が違っているかと思ってしまったり。
>言語の原初の姿の探求、超越思考を記述する言語などのロゴス的側面
ただ単に、そうした名前を映画中で列挙しているだけに思えてしまったんですよね・・。その繋がりをあまり感じられなくて。
原初の言語の研究も、彼女が憑依しなかったら進まなかったんですよね・・すいません、自分はなんだか都合が良く物語が進むものだなあ、と思ってしまって。その研究方法も随分と原始的で、「なぜ」とか「どのように」と質問する気持ちを拒否するところが自分にはちょっと・・。
てっきり前世の話について語り始め、彼女がラウラとの繋がりや魂の不変や愛の話になるのかと思いきや、そうでなくどんどん時代が逆行していく辺りで結構冷めてしまいました。
でも、私も、途中まではかなり面白く見れたのですよ。正直言って、オチでやっぱり、ダメな人はダメかもしれません。
語りついでにしつこくコメントしてしまうと、
>てっきり前世の話について語り始め、彼女がラウラとの繋がりや魂の不変や愛の話になるのかと思いきや
あらー、↑こうなってたら今度はワタシのほうが引いていたかもしれません(笑)
意見が違いますね〜
そうそう、ワタシは原作は読んでおりませんです。紛らわしい書き方ですみません。なにしろあの原作本は敷居も高いが値段も高い^^;
失礼しました〜〜
manimaniさんへ
>こうなってたら今度はワタシのほうが引いていたかもしれません
あら、そうでしたか。意見が違って残念ですね・・^^;
私は、ラウラにソックリな女性の姿にドミニクが出会えたのは、単なる偶然ではなく、「魂を追い求めたから」、と考えたのですよ。
そして、前世を語り出すのも、輪廻の話であろうと、そしてウパニシャッド的思想に結びつくのかと思いを馳せ・・
台詞にチラと出て来てましたしね。
誤解しないでいただきたいのですが、私はこの作品、見ている間は結構楽しめたのですよ。
ただ、ラストがちょっとだけ不満だっただけです・・。
コッポラの胡蝶の夢/YOUTH WITHOUT YOUTH
大監督フランシス・フォード・コッポラの、10年振りの最新作{/ee_1/}
先月の観たいリストに入れ忘れてた。
期待はしてなかったけど、コッポラの新作はどんなか確かめるつもりで劇場へ。
ティム・ロスも好きな俳優だし♪
原題は「YOUTH WITHOUT YOUTH」
幻想文学の鬼才…
とらねこさーん♪
どこですれ違ったのかな??
おとといは渋谷&青山にいましたよ〜
もしそうだったら今度は声かけてね!
^^
これ、まさにコッポラの夢でしたね〜★
そうそうティムロビンスだから良かったの、
ティムロス好きなので割とこの作品好きですー
とらねこさーん♪
どこですれ違ったのかな??
おとといは渋谷&青山にいましたよ〜
もしそうだったら今度は声かけてね!
^^
これ、まさにコッポラの夢でしたね〜★
そうそうティムロビンスだから良かったの、
ティムロス好きなので割とこの作品好きですー
migさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おーそうですか!わざわざ前売りを買いにアチラまでー♪
ブログを見て喜んでおりました。
あの作品は、自分も見る予定なんですー。ぐふ。
初日は用事があって行けませんでした。
今度、migさんかなっ??と思ったら、ヒッソリ、もしもーし!と声をかけてみようと思います!
うん、そうですね、これ、ティム・ロスの魅力たっぷりな作品でした〜♪
私にとっては『レザボアドッグズ』や『the Legend of 1900』ほどじゃないですけど^^*
ティム・ロスの魅力がいっぱいでしたよね〜!