rss twitter fb hatena gplus

*

107●赤い砂漠

赤い砂漠’64年、イタリア
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ
出演:モニカ・ヴィッティ、リチャード・ハリス、カルロ・キオネッティ、ゼニア・ヴァルデリ


ストーリー・・・
工場技師の夫と息子の3人暮らしのジュリアーナは、交通事故に逢って以来、夫との関係が疎遠になり、精神も不安定になっていった。彼女は夫の出張を機に不倫に走るが・・・。
高度成長時代のイタリアの殺伐とした工業都市を舞台に、人間の心の空洞と愛の不毛を描いたアントニオーニの初のカラー作品。(シネマヴェーラ説明より)


物語が始まってすぐに、頭で考えて理解しようとする自分が居たけれど、
だんだんに心で共感していくことが出来た作品。

ジュリアーノの寂しさ、孤独、病んだ精神世界、どうしようもなく自分自身の心の中を覗きこんでいるような気持ちになってきた。

冬の重苦しい空、噴出す近代的な工場の煙突・・・
対して、バラックのような弱々しい住み家。こちらの方はまさに、自分たちの心を表しているかのようだった。

いつしか沈み込んでいるかのような感覚に襲われる、というジュリアーノ。
海のほとりで、そこにタンクカーが停泊していたが、
水の中というものと、人の心というものを、重ね合わせて表現しているようだった。
それから、赤い部屋。

現代社会に馴染めずに居る主人公は、心の空白を埋めるためにセックスをするけれど、しかしそれは慰めには決してならない。

なんだろう、そういったことは、物語の間で表現しようとしたら、逆に簡単なのかもしれない。だけどこちらは、そうではなくて、映像で表現しようとしているようで、そこが驚きだった。
見ている自分には、そうした手法が何とも不思議にすら思えてきた。
頭ではなく、心で共鳴する感覚と言おうか、言葉に出してはつまらない、ある種の感情というものがそこにあって、
それは文学で表現するものではなく、映像でしかありえないのだった。
そこがすごい。

赤い砂漠@映画生活

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

2,170

コメント(6件)

  1. とらねこさんのすごく素敵な感想&評価、わたしも大好きなので嬉しいです!!!
    そうそう、画面にうつる様々な物象・事象で、心の状態を透けて見えるように表現してくれる。だから観てると自然に入っていって共感してしまう。
    特に「赤い砂漠」はキャラの造形や映し出される出来事がわかりやすく整理されてる(良い意味です)と思うので、アントニオーニファンにも非常に人気ですわぁ〜い。

  2. なんか良さそうデスネー♪♪
    ジャケットにも惚れたし、内容も惹かれるものがある♪♪
    こう言う作品は見て見たいデス☆
    チェックしておきまぁす☆

  3. アンバーさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    アンバーさんは、アントニーニファンなんですね。
    自分には、初めの辺りは、難しく思えたんですが、だんだんに感性で見ることができました。
    というか、頭で見ずに、感性で見るべき作品、と言えるのかな?
    これ、分かりやすい作品だったんですね。ムム、そうですか・・

  4. Maryさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    Maryさん、最近コメントくださり、ありがとうございます〜、嬉しいです☆
    こういうの惹かれるところもあるんですね、Maryさんは・・
    結構難しい昔の作品、という感じで、自分はそれほど詳しくはないんですが、
    最近は、昔の名作も見たいなーなんて考えてます☆

  5. ああ、
    ヴェーラではみられなかったんですけど、フィルセンでみますた。赤サバ!
    ちょっとウツラウツラしちゃったけど。
    「夜」も見たかったのに、満員で入れなかったのでした・・・。
    どうなんだろう、ミケさん。
    アンバーさんに、アントニオーニ作品は何が好きかって聞こうと思ってて、忘れてたー。

  6. かえるさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
    かえるさんはフィルセンでご覧になったのですね★
    ミケさん、なかなか人気なんですね!満員で入れないなんてスゴイ。そう言われるとみたくなってしまいますね。
    私がヴェーラ好きなのは、やっぱり2本立てなところなんですよ〜。
    「何気なく見たのがいい映画だった」、って最高〜!
    タルコフスキーを見に行って、今回みたいについでにアントニオーニを見れたり。
    ところで、かえるさんは例の作品、日曜にご覧になったのでしょうか?
    私は今日行くつもりだったんですが、疲れてしまったので、取りやめに・・金曜に行く予定です♪




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑