107●赤い砂漠
’64年、イタリア
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ
出演:モニカ・ヴィッティ、リチャード・ハリス、カルロ・キオネッティ、ゼニア・ヴァルデリ
ストーリー・・・
工場技師の夫と息子の3人暮らしのジュリアーナは、交通事故に逢って以来、夫との関係が疎遠になり、精神も不安定になっていった。彼女は夫の出張を機に不倫に走るが・・・。
高度成長時代のイタリアの殺伐とした工業都市を舞台に、人間の心の空洞と愛の不毛を描いたアントニオーニの初のカラー作品。(シネマヴェーラ説明より)
物語が始まってすぐに、頭で考えて理解しようとする自分が居たけれど、
だんだんに心で共感していくことが出来た作品。
ジュリアーノの寂しさ、孤独、病んだ精神世界、どうしようもなく自分自身の心の中を覗きこんでいるような気持ちになってきた。
冬の重苦しい空、噴出す近代的な工場の煙突・・・
対して、バラックのような弱々しい住み家。こちらの方はまさに、自分たちの心を表しているかのようだった。
いつしか沈み込んでいるかのような感覚に襲われる、というジュリアーノ。
海のほとりで、そこにタンクカーが停泊していたが、
水の中というものと、人の心というものを、重ね合わせて表現しているようだった。
それから、赤い部屋。
現代社会に馴染めずに居る主人公は、心の空白を埋めるためにセックスをするけれど、しかしそれは慰めには決してならない。
なんだろう、そういったことは、物語の間で表現しようとしたら、逆に簡単なのかもしれない。だけどこちらは、そうではなくて、映像で表現しようとしているようで、そこが驚きだった。
見ている自分には、そうした手法が何とも不思議にすら思えてきた。
頭ではなく、心で共鳴する感覚と言おうか、言葉に出してはつまらない、ある種の感情というものがそこにあって、
それは文学で表現するものではなく、映像でしかありえないのだった。
そこがすごい。
2008/08/16 | 映画, :文芸・歴史・時代物
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とらねこさんのすごく素敵な感想&評価、わたしも大好きなので嬉しいです!!!
そうそう、画面にうつる様々な物象・事象で、心の状態を透けて見えるように表現してくれる。だから観てると自然に入っていって共感してしまう。
特に「赤い砂漠」はキャラの造形や映し出される出来事がわかりやすく整理されてる(良い意味です)と思うので、アントニオーニファンにも非常に人気ですわぁ〜い。
なんか良さそうデスネー♪♪
ジャケットにも惚れたし、内容も惹かれるものがある♪♪
こう言う作品は見て見たいデス☆
チェックしておきまぁす☆
アンバーさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
アンバーさんは、アントニーニファンなんですね。
自分には、初めの辺りは、難しく思えたんですが、だんだんに感性で見ることができました。
というか、頭で見ずに、感性で見るべき作品、と言えるのかな?
これ、分かりやすい作品だったんですね。ムム、そうですか・・
Maryさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
Maryさん、最近コメントくださり、ありがとうございます〜、嬉しいです☆
こういうの惹かれるところもあるんですね、Maryさんは・・
結構難しい昔の作品、という感じで、自分はそれほど詳しくはないんですが、
最近は、昔の名作も見たいなーなんて考えてます☆
ああ、
ヴェーラではみられなかったんですけど、フィルセンでみますた。赤サバ!
ちょっとウツラウツラしちゃったけど。
「夜」も見たかったのに、満員で入れなかったのでした・・・。
どうなんだろう、ミケさん。
アンバーさんに、アントニオーニ作品は何が好きかって聞こうと思ってて、忘れてたー。
かえるさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
かえるさんはフィルセンでご覧になったのですね★
ミケさん、なかなか人気なんですね!満員で入れないなんてスゴイ。そう言われるとみたくなってしまいますね。
私がヴェーラ好きなのは、やっぱり2本立てなところなんですよ〜。
「何気なく見たのがいい映画だった」、って最高〜!
タルコフスキーを見に行って、今回みたいについでにアントニオーニを見れたり。
ところで、かえるさんは例の作品、日曜にご覧になったのでしょうか?
私は今日行くつもりだったんですが、疲れてしまったので、取りやめに・・金曜に行く予定です♪