105●崖の上のポニョ
ステキ・かわいい・感激!!!!!

海を臨む崖の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、瓶に入り込んで動けなくなっていたさかなの子・ポニョを助けた。一緒に過ごすうちにお互いのことを好きになる2人だが、ポニョの父親・フジモトによってポニョは海へ連れ戻されてしまう。それでも宗介を想い、人間になりたいと願うポニョは、妹たちの力を借りてフジモトの蓄えた魔法の力を盗み出し、再び宗介の元を目指すが・・・。
’08年、宮崎駿監督・脚本・原案。
4年ぶりの新作。
CGを使わないアニメ映像のみで描かれた、優しいタッチに癒される。
アンデルセンの『人魚姫』、というのはチラと聞いていたものの、
魔法使いのを力に頼らずに、自分の力で変身しちゃうとは想像してなかった。
「ポニョ、宗介、好き!」
そんな自分の純粋な思いだけで、魔法の力を体現し、自ら変身を遂げる。
頼もしいヒロインのポニョ。
自分の姿すら変えてしまうし、その“思い”だけで荒らしの海を渡ってしまう。
スタスタ、荒らしの海を走っていく一途なポニョ。
思いだけで、世界を変えてしまうポニョ。
その姿はまるで、『雪の女王』のヒロイン、ゲルダを思い出した。
純粋な思いだけで、それが全て。
それ以外のことは何もヒロインには関係してこないし、煩わしいことで迷ったりしない、
その気持ち一つで世界を冒険し、旅立っていくヒロインのゲルダにポニョはそっくりだった。
ポニョがゲルダにそっくりなら、自然界を体現しているような、全てを包み込む海の女王、グランマンマーレも、雪の女王にソックリ。
だけど、そんな海を人間が汚している・・・。
たくさん取れる海のゴミと、グランマンマーレの対比とは、心が痛むよ。
私も、こんなに純粋になれたら素敵なのにナ。
そう思ったら、胸がいっぱいになって、荒らしの海を越えるポニョの姿に、
嬉しくて何度も何度も感激してしまった。
宮崎アニメのヒロインは皆強い、というけれど、
このポニョも、やっぱり強い。そして、純粋で。
それに対して、ポニョに好かれる、宗介の方も、とっても好きだったな。
ポニョに好かれて、素直にポニョを好き、という宗介。
愛され上手で、カワイイ男だ!
そう、男は、愛され上手じゃなくっちゃいけない。
いちいち疑ったりしない、まっすぐな宗介。
アンデルセンの『人魚姫』では、がっかりしちゃったんだよね。
「愛する」というのに、王子さまには、条件が必要なんだ。
・・・そう思ったら、寂しい気持ちになってしまったんだよね。あの物語には。
この物語は、単純明快そのもの、何の奇もてらいもなくて、ちょっぴり物足りない大人はいるかも。
前作の『ハウルの動く城』が、すごく難しくて、大人でも楽しめなかった人がいるから、
その反動なのかな?
自分からしてみるとね、クリエイターとして、こんなに注目されて、
そんな大きすぎるプレッシャーの中で、物づくりをするのって、なんて大変なことだろう!って、私は思うの。
子供も楽しませなきゃいけない、大人も楽しませなきゃいけない、
ちょっと難しいと「難しすぎる!」と言われ、
単純だと「適当に作ってる!」って言われる。
『雪の女王』の冊子でも、宮崎監督の言葉が載っていた中、「観客は本当にウルサい。」って言ってたけど、きっと大変な気苦労だろうなって思う。
ところで、宮崎アニメについて。
私は、このブログを始めて以来、アニメをたくさん見ているし、まるでアニメが好きな映画ブロガー、のように思われるカナ?なんて思うんだけれど、
実は、子供の頃は特にアニメなんて、好きな人ではなかったのでした。特にジブリ映画なんて、苦手でしたよ。
『ナウシカ』なんて、小学生だった自分には、全く興味が湧かなかったし、『ラピュタ』はもっとどうでも良かった。
『トトロ』も面倒くさくて全くダメだったし、『魔女の宅急便』もイヤイヤ見た。
(とは言え、猫バスとジジだけは好きだった。悔しかったけど。)
そんな風に、自分にはそれほど興味ない分野だったのでした。アニメも、宮崎映画も。(少女漫画は好きだったけど。)
そんな中、大人になって『紅の豚』を見て、「アレ?面白い」と初めて思ったら、その後、『カリオストロ〜』も宮崎アニメと教えてもらい、二度ビックリ。
ジブリ映画の良さがようやく分かって来たのは『もののけ姫』から。
それまでのジブリファンがいったん、気持ちが離れるような、そんな作品、影のある作品を作って、初めて自分に近く感じた。
アシタカはまるで『ゲド戦記』(オリジナルの原作のことですyo)の主人公、ゲドのように思えたし、
その後の、『千と千尋〜』は、これまでで最高傑作だと思った。『ハウル〜』も大好き。
これで、宮崎アニメに対する自分の評価は決定した、と思ったのでした。
そうして初めて、他の作品の良さも、ようやく見つめ直すことになったのでした。
一度この話をしようと思ったのは、「ジブリ映画だったら何でもOKなんだろう」と思われると嫌なので。
一度自分のジブリ映画に対するスタンスを、語ろうかな、と。
私は、宮崎駿がアニメで目指すことの志の高さ、それこそ、『雪の女王』や『チェブラーシカ』といった、そんな大傑作アニメに、日本アニメが近づこう、という試みそのもの、これらがなんだか頼もしく思える。
志が高すぎて、その風景はもっと上にあるものだから、
今見えている周りの風景や、外野の余計な批判など、
そういった余分なものが聞こえなければいいのにナ、と私は思ってたりします。
この『崖の上のポニョ』という作品は、“世紀の大傑作”とは思わないけれど、
素直に、「ああ、面白かったね〜」って言える、カワイイ作品だと思う。
うん、それで十分。
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コメント(65件)
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白鬚タン。
ワンバンコ〜♪オイーッス!もいっちょ、オイーッス
白鬚タン、どうだった、面白かったー?
うんうん、コメント欄でも、白鬚スタイルがやっぱ効いてんよ〜
うん、そうね、海の中の魔物、なんかいろいろあったね。深い海、氾濫すると、人間にとって脅威になる海。俺(駿)の海、か!ニャハハハハ♪
鳥類になってブサイ子になった時、あれはおっかなかったシーンだよね。
どういう反応を、宗介がするかな?と固唾を呑んだところ、次にカリアゲだもんね・・いや、違う違うw
本当、宗介はビビってなかったね。
あれ、大事なポイントだった。ウン。見た目じゃないんだ、この王子さまにとってはね。
スペルマ乱舞も、あれ、わざとやってんよ、駿っち。大人にはそう見えるかもしれんね。
同様に、親の呼び捨ても、イマ風だか知らんけど、大人怒らそうとしてんじゃないかと、私は思ったよ。
うるさいファン、口やかましい大人のファンは、蹴る行為だね。
きっとモノ作りにとっては、勘に触る存在ってのが、難しい大人たちなのかな。
コナンは、昔見たことあったかな、いやないかな。とにかく、走るわw
ありがとう白鬚タン♪
崖の上のポニョ を観ました。
ポニョポニョポニョ魚の子♪あの歌が朝から耳について…昨日観ちゃいました。
崖の上のポニョ 2008-41
「崖の上のポニョ」を観てきました〜♪
海辺の街、崖の上の家で暮らす宗介(声:土井洋輝)は、ある日ジャムの便にはまり込んだ魚の子ポニョ(声:奈良柚莉愛)を助け出す。お互いに惹かれあう宗介とポニョだったが、ポニョの父親に手によってポニョは海に連れ戻されてし…
崖の上のポニョ
期待値: 92% 宮崎駿の4年ぶりの作品 声の出演:奈良柚莉愛、山口智子、長嶋一茂、天海祐希、奈良柚
「崖の上のポニョ」はまだ見ていませんが、アニメは(古いのばっかりですが)好きです。
でも、ジブリは基本的に好きじゃないです。
何かディズニーのように「そこいらの子供向けアニメとは違うんだぞ。私らは程度の高いアニメを作っているんだ。」って言ってるみたいで。
これでも「風の谷のナウシカ」は結構好きだったんですよ。
環境破壊と終末戦争により、生態系が狂って、巨大な虫と王蟲が繁殖し、毒ガスを吹き出す腐海に覆われた世界はハリウッドでも、そうそう表現できるものではないでしょう。
余談ですが、「ロマンアルバム」という、映画のパンフを分厚くしたようなムックがありまして、ナウシカのんは割と高い値で売れました。
「もののけ姫」はほとんどナウシカで、何これ?って感じでした。
確かに見ているときは面白いと感じるんですが、自然と人間の関わりを深く描くのは、もうナウシカでやり尽した感があります。
腹に深手を負った人間が、大人数でも開けることのできない扉を開けてしまうシーンはリアル感皆無で、こういう不思議なシーンをやれば観客は喜ぶとでも思ったのでしょうか、宮崎監督は。
できれば「ナウシカ2」をやってほしいですね。私としては。
なにわオタさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
なにわオタさんは、わいさんかな?w
>ジブリは基本的に好きじゃないです。
>何かディズニーのように「そこいらの子供向けアニメとは違うんだぞ。私らは程度の高いアニメを作っているんだ。」って言ってるみたいで
なにわオタさん、私もかつて、ジブリ映画の良さが分からない人間の一人だったんですよ。
子どもの頃の自分には、ジブリは、「説教臭い」ところが嫌いでした。
環境破壊について描かれているところに、胡散臭ささえ感じていました。
今は、環境破壊についてこそ一番描くべきテーマだと思ってますが、その頃の自分にはイマイチ分からなかったんですよね。
自然と人間の係わり合いについては、宮崎駿が一生をかけて取り組むテーマなのでしょうね。
しかし、人間と自然というテーマは、宮崎駿氏ばかりでなく、近代機械文明が進むようになって以降の、文学の中心的なテーマとして、色々な人が描いていますね。
宮崎駿氏にとって、これは十分やり尽くしたテーマでしょうか?私はそうは思いません。
地球の未来を考えると、暗澹たる気持ちになりませんか?
環境問題という人間にとって一番大事なことを考えずに、彼はもう人類を描くことが出来ないのではないでしょうか。
>ロマンアルバム
これは知りませんでした。わいさんは本当にいろいろなことをご存知ですね!
ナウシカ2も見てみたいですね!
おそらく、今後何を作っても、彼が死ぬまで、観客が正当に評価することはもうないように思えます。
しかし、にも関わらず、『ポニョ』の去年の日本の興行収入は、本当に凄かったですね。
【映画感想】崖の上のポニョ(山口智子×天海祐希)[2009-095]
嫁さんが「ぽにょ、面白いよ!」って薦めてきたんですよ。で、宮崎駿監督作品『崖の上のポニョ』観ました。
う??ん、どこが面白いんでしょう?!なんか、ディズニーのファンタジアっぽい雰囲気がでまくりで、「こんな感じ!わかるでしょ!」ってアバウトに感性に訴えかけら…
崖の上のポニョ
今日、DVDで観賞しました、ポニョ。夫も小学生だったムスメも映画館で観たというのに、私だけ未見だった。何故か今頃...急に観たくなったギ..
そうか、「ナウシカ」で小学生だったのですね。若い〜
私もとりあえず学生ではありましたが(笑)あの作品はちっとも心に響かなかったのです。
確かに宮崎監督、国際的に日本を背負ってるとゆう感じで大プレッシャーでしょうね。一度は引退宣言したのに連れ戻されたり。この作品はやりたいようにやってる感じがするのです。監督の最初で最後のワガママのような。だからこそ私にはナチュラルでじーんと来たのかもしれません。
シリキさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
私も何故か当時は、ナウシカの良さが分からなかったんですよ・・・。
でも、不思議と昔の作品が好きだった人ほど、最近の作品をケナす傾向があるんですよね。
あれはなんででしょう?
おお、「最初で最後のワガママ」でしょうか?それは寂しいなあ・・・。
私としては、今後も精力的に作品を作り続けて欲しいです!
巷では作品の評価が真っ二つなこの作品ですが、おっしゃるとおり「ナチュラルでじーんと来る作品」ですよね。
私は、この作品は、「破綻しているからこそ、愛しい」作品のように思っているんですよ。
『崖の上のポニョ』(2008)
最初にポニョのキャラを見た時、「なんじゃこりゃ?」「キモチワルーイ」と思い、次にフジモトをはじめとする主要キャラのデザインを見て、「あー、こりゃダメだ。どうしても好きになれない??」と結局映画館に行きませんでした。
生理的な嫌悪感というんでしょうか、自分で…
『崖の上のポニョ』’08・日
あらすじ海辺の小さな町。崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、ある日クラゲに乗って家出したさかなの子・ポニョと出会う・・・。感想早く観たかったけど、しばらく待ったらジブリ作品はTVで、放送してくれるからお金もったいないし、一昨日まで我慢してきたポニョ…
とらねこさん、こんばんは!
宮崎駿監督のヒロインはみな強いですよね。
一途で純粋で。
実際そんな人はそうそういなかったりはするので、アニメでもリアリティのあるキャラクターで描かれることが多いですが、やはり宮崎監督の作品はこういう強さとまっすぐさを持っていますよね。
おなじジブリでも他の監督の作品はそのあたりの出し方はやはり違っていて。
この人ならではなのでyそうね。
はらやんさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
本当、こんな真っ直ぐで一途なヒロインはなかなかいないですよね。
でも女の子は意外に一途なもんですよー。とか言ってみたりしてw。
そうそう、宮崎駿の作るヒロインはみんな、強くてまっすぐで。
でも私は、『コクリコ坂〜』の、等身大なヒロインも結構好きでしたよ。
男が弱すぎる!ってパヤオに言われちゃったらしいですけどw