104●若者のすべて
’63年、イタリア
ルキノ・ヴィスコンティ監督、脚本
音楽:ニーノ・ロータ
出演:アラン・ドロン、アニー・ジラルド、レナート・サルヴァトーリ、クラウディア・カルディナーレ
ストーリー・・・
パロンディ一家は長男のヴィンチェンツィオを頼り、田舎町南部から大都市・ミラノへと移住を決意する。次男のシモーネ(レナート・サルヴァトーリ)はボクサーとなり、名を上げるも娼婦のナディア(アニー・ジラルド)に夢中になり、次第に身を持ち崩す。やがてナディアは三男のロッコ(アラン・ドロン)と愛し合うようになり・・・。
イタリア南部の移民問題に焦点をあて、ある家族の崩壊を描いたルキノ・ヴィスコンティの傑作(シネマヴェーラ説明より)。
希望に溢れた、都会生活の始まり・・・。
というような楽観的なものではなく、波乱含みの幕開けだ。
兄ヴィンツェは、家族ぐるみで婚約相手の家族と喧嘩になってしまうし、
職もなく、住む家もなく、
都会に家族ぐるみで路頭に迷ってしまう。だが、きっと何でも出来る。
そんな冒頭だった。
そこへ雪が降るシーンが好きだ。
若いばかりで何の取り得もなく、ただ若さを持て余していたところへ、真っ白な雪が降り、
ようやく仕事が出来た、と、野良犬みたいに外へ飛び出していく。
シモーネは寝坊をして、それを皆にからかわれたりして・・。
だんだんのし上がっていく若者たちと、その転落。
放蕩と恋、兄弟の葛藤。
夢中になって見れたけれど、180分という長尺、これはやっぱり長かった・・・。
青春の1ページを描いた物語、というより、大河ドラマのよう。
特にラストの辺りに関しては不満で、大仰なテイストが少々鼻につき、楽しめなかった。
シモーネに対するロッコの態度も疑問だし(結果的には、シモーネとナディアをさらに追い詰めてしまう)、さらには、
ロッコが聖人のようになってしまい、家族に対する“責任”を一身に負ってしまうところ、犠牲的精神が、あまり人間的に思えなくて、思い入れを感じることが出来なかった。
つまり、その善と悪の描き分け、この辺りが正直好みとは言えなかった。
自分にとっては、『ベニスに死す』以来、2作目であるヴィスコンティの作品。
また、アラン・ドロンを見たのも、これが初めてでした。
アラン・ドロンは、なかなかに美しい、存在感のある美男子でしたね、今更だけど。
自分には、なんとなくガエル・ガルシア・ベルナルに似てるように思えちゃった。
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コメント(4件)
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この映画じゃないけど、「山猫」だったかの軽快なアラン・ドロンを見た時、確か、ガエルくんに似てるーって思いましたよー。
かえるさんへ
こちらにもありがとうございます♪
アラン・ドロン、やっぱガエルくんに似てると思いました??
かえるさんは『山猫』がオススメでしょうか?
アラン・ドロンて、美しいですね。
この作品では、偽善者なまでに良心の塊という役だったので、もっと複雑な人間性の役がみたいでっす。
『太陽がいっぱい』を見なくちゃー。
わたし一時期アラン・ドロンがアイドル的存在だったんですよー♪
で、これもビデオで観ました。
不良姐さんなアニー・ジラルドが彼とちゃんと恋するようになったのに、彼の目の前で襲われるのが辛くて辛くて。。
でも映画の出来や善悪などの部分はほとんど忘れてしまいました…。本当の若者だったからあまり考えてなかったのかも、です。
アンバーさんへ
おはようございます〜♪コメントありがとうございます。
アラン・ドロンが大好きだった時代があるんですね!
私、子供の頃母親が好きだって言ってたの覚えてるんですが、もっと男男した人と想像してました。
自分好みのタイプじゃないんだろうな〜って勝手に思ってたんですよ〜。
そしたら、意外にも好み系でビックリしました。
アンバーさんは元々お好きだったんですね〜。
>不良姐さんなアニー・ジラルドが彼とちゃんと恋するようになったのに、彼の目の前で襲われるのが辛くて辛くて
私はこの辺りの描写でガッカリしてしまったんですよね。「シモーネをそんなに簡単に悪役に描いてしまうんだ」と。
少し下品で、堕落しがちな弱い人間だけれど、憎みきれない放蕩者、として描いていたら、物語に深みが出たと思うんですよね。