58●ウルトラ・ヴィクセン
ヴィクセンシリーズ、『ヴィクセン』、『スーパー・ヴィクセン』と来て、この作品、『ウルトラ・ヴィクセン』。
タイトルの原題は、“Beneath the Valley of the Ultra Vixen”。シリーズ最後の作品に当たる。
そしてこの作品は、ラス・メイヤーのキャリアにとっても、事実上最後から二番目の作品だ。
ストーリー&説明・・・
日々性交を怠らず、自身の苦悩や欲望と葛藤しながら生きてゆく・・・。巨乳教祖の宗教放送なるラジオが流れるアメリカの片田舎で、変わった性癖を持つ夫(ケン・カー)と性に奔放すぎる妻の、ラヴォニア(キトゥン・ナティヴィダッド)を中心に送る、ハイテンションな不条理コメディ群像劇。ユーモアと皮肉も絶妙に効いたポップな一本。
ラス・メイヤーの良きパートナー、キトゥン・ナティヴィダッドも大活躍!(シネマヴェーラ説明より)
’79年アメリカ。ラス・メイヤー監督・脚本・製作・撮影。
思い起こしてみれば、『ヴィクセン』が’68年、『スーパー・ヴィクセン』が’75年。
『ヴィクセン』は、インディース作品ながら、スマッシュ・ヒットとなった作品だったが、その後は、ハードコア・ポルノの流行に押され、ラス・メイヤーのソフトな本番ナシのエロは、下火になってしまう。
『ヴィクセン』は、ラス・メイヤーにとってとても大事な作品。このシリーズには、彼にとって格別の思い入れがあるのではないかな?と思う。
日本で、『UP!メガ・ヴィクセン』というタイトルの作品は、原題では“ヴィクセン”は使われてはいなくて、『UP!』という作品だ。そして、副題の方にも特に“ヴィクセン”とは使われていない。(そしてIMDbで見る限り、人名にもヴィクセンの呼称もない)。
だが、この作品でも、ヴィクセンとは呼ばれてはいなかった。要するに、過剰な性欲を持っている女性、それをヴィクセンと呼んでいるようだ。だが、こちらの作品ではタイトルにヴィクセンの名が使われている。そういうことだ。
だからと言って3部作とは言い切れないと思うが・・・。
IMDbのこの作品の一言レビューで、気に入ったのがあった。「Lesser still Gem」。
私も、この作品は、他の作品より落ちるかもしれない、とは思う。だけど、相変わらずラス・メイヤーの輝きを放っていて、ラス・メイヤーらしさは健在。
それは宝石だ。
この作品の中で、何度も「Gimme some old time religion,Gimme some old time religion」と、連呼しているのだが、これは彼の貫いた主義のような気がした私だった。
Old Russの巨乳イズムと性欲万歳!!精神。
これだけをエッセンスに作られた作品、そしてそれらに余計なものをゴチャゴチャかき混ぜて、セックス、セックス、巨乳巨乳巨乳と連呼すればこの作品の出来上がり。
アメリカの片田舎では、相も変わらず、みんながセックスに励んでいる。
それでいいし、それ以上のものは、全部ウ○コなのだ。
もちろん、「通信教育で、勉強しようなんて、そんな考えは犬の餌にしてしまえばいい」。(勉強なんて、馬鹿のするこった!って言ってるみたいにね!)
性の過激さを売りにするでもなく、本番ナシの、セックスと、巨乳、車、女性の愛らしいファッション。
そうしたものにこだわったオールド・ラスは、一般的アメリカ風物詩を、楽しく、愛を持って描いた。
彼の映画は、陽気で、楽しくて、そして巨乳ばっかり出て来る。
なんと言っても、素敵な映画人だった。
古き良きアメリカの匂いがする。
知る人こそ少ないかもしれないけれど、ラス・メイヤーは“私の好きな”アメリカの、光の部分だ。
cf.※他のラス・メイヤー作品↓
・『ヴィクセン』
・『スーパー・ヴィクセン』
・『ウルトラ・ヴィクセン』
・『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』
・『チェリー、ハリー&ラクエル』
2008/04/15 | :カルト・アバンギャルド
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コメント(6件)
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>ラス・メイヤーは“私の好きな”アメリカの、光の部分だ。
ふむふむ。感想・レビューにするのが難しい映画だと思うのですが、熱い思いが伝わってくる記事ですね。
>(略)………この作品の出来上がり。
さすが、面白い表現でレシピを書かれましたね!
セックス以外は全部ウ○コってのも!
ウケます!ウケます!
アンバーさんへ
こんばんは☆コメントありがとうございました。
アンバーさんの絵文字を考えちゃいました〜。
アンバーさんはね、「お風呂に入ってる女」ですよ。どう?
アハ♪
ウ○コと言いつつ、ハンバーガーの絵文字!
さすが分かってくれてる〜、アンバーさんたら♪
それって、『ファーストフード・ネイション』のことを指し示しているのでしょうか?
だとしたら、やっぱりYouはグレイトですわーん!w
さぁ〜!ヴィクセニアンが続々と!
…て、3作の記事ともコメ欄がアンバーさまとわたくしだけなのに笑えました
か、過疎学級か…
でも皆勤賞目指してがんばりますヨー
笑撃の説教オチにやられました
もはや、おっぱい導師に言うことは何もありますまい
「ラス監督、豊穣の象徴としての女性の胸へのこだわり、それはつまりはディオニュソス的な…」
「んぁ?おまえさん、おっぱい好きけ?ごちゃごちゃ言うとらんとそれでえーんちゃう?」
きっと導師ならそう答えてくれる筈!
>それは宝石だ
賛辞同意でございます(笑)
ところで、とらねこさまは、キトゥン主演、W・ウィンクラー監督作の『ダブルDアベンジャー』はご存知かしら?
乳(ニュー)ヒロイン誕生!その名もメガパイレンジャー!必殺技はオッパイビンタ百連発!
そんな作品(笑)
覚悟が出来たらご賞味あれ(笑)
みさま「おっぱい」って言いながら、こう、手を使って言ってそう。実は結構、ボキャブラ貧困だったりして、出てくる言葉もおっぱいがいっぱい(笑)つか、それだけかい!かもしれない(爆)
こんばんは〜♪過疎学級への出席、まことにありがとうございます〜
>笑撃の説教オチ
楽しそうでしたね〜!エロ説教。
アメリカの田舎村は、拡声器のついた電柱で、エロ洗脳されちゃうんだ〜!へえ〜♪
オッパイ伝道師・・あれ?導師って、英語で言うと「マグワル」だっけ?ん?「マグル」?
>おまえさん、おっぱい好きけ?ごちゃごちゃ言うとらんとそれでえーんちゃう?
この単純明快さ、素敵ですね〜!
>ダブルDアベンジャー
アハ♪これ実は、シメにやるつもりでした。もう出来上がってますよ
100のキリ番てのは引っ張りすぎでしょうかw
>ダブルDアベンジャー
お〜!既に待機中でしたか、しかもキリ番狙いで
素晴らし過ぎるそのセンスに軽く失禁です
もうねハルンケアが手放せない程に(笑)
では、とらねこさまも修羅の門のコチラ側の住民に決定でよろしいですか(笑)
>ボキャ貧
ウハハ、でも韻は踏むんだ
「ラス監督、色紙に一言頂けますか」
「うむ『でっかいおっぱいいっぱい』」
いやもうその色紙家宝でしょ(笑)
>導師
普通に「guru」か「evangelist」では
「マグル」てハリポタ語で魔法の使えない普通の人々の意じゃなかったかな?
PS
フランツ女史ご紹介ありがとうございます
『永遠の少年-星の王子さま』読了しました
めちゃ面白かったです!
E・フロムは『〜逃走』『愛するということ』『悪について』が既読
て、フロム好きそうな感じします?好きですけど(笑)
みさま
>もうねハルンケアが手放せない程に(笑)
( ̄◇ ̄;)
>でかいおっぱいいっぱい
うひゃひゃー!た・・・確かに韻は踏んでるますねw
>導師
分かりにくくてごめんなさい・・。「グル」にかけて「マグワル」って言いたかっただけなんですが、
文字数大目だったので、マグルもかけてみました。面白くなかったですね。
こういうのって、面前で言うから通じ合うギャグでしたwごめんなさい☆
で、早速フォン・フランツ女史も読まれたのですか〜。
とっても嬉しいです!この方、なかなか素敵な女性みたいで。
『永遠の少年〜』の方は私は読んでないんですよね。読んでみようかな?
ちなみに、フロムも結構読まれていたんですね!
『自由からの逃走』は、かなり面白いですよね。
自分は、『破壊』も好きです。『es』の映画が出来る前に読んだので、スタンフォード大学の心理学実験なんかは、フロムの本で知ってた、って感じでしたよ