37●いつか眠りにつく前に
女性たちの人生を、静かに描いた作品。
男性にはあまりオススメできないかもしれないけれど。
『ビッグ・フィッシュ』を女性版にした、みたいな感じ。
『めぐり逢う時間たち』や『キルトに綴る愛』が大好きだった私には、これらを超えはしないけど、『イン・ハー・シューズ』と同じくらいかな、という好き度でした。
ストーリー・・・
死の床にある老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)を、枕元で見守る二人の娘。混濁した意識の中でアンは、娘たちの知らないハリスという男性の名前を何度も口にする。意識と無意識の狭間を漂うアンの記憶は、1950年代のある週末の出来事へと遡っていく。歌手になる夢を持った24歳のアンは、親友ライラの結婚式でブライズメイドをつとめるために、ロードアイランドの海辺の町を訪れ、そこで運命の恋に落ちたのだ。だがその恋には悲劇的な結末が待っていた。・・・
’07年、アメリカ。ラホス・コルタイという、『マレーナ』、『海の上のピアニスト』で撮影監督を務めた人が、監督。
何より、この名だたる女優たちの共演ぶりが、なかなかに目を見張るのでは。
メリル・ストリープ、グレン・クローズ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、トニ・コレット・・・
うん、そうそうたるメンバー。
女性が、死ぬ間際に、それまで知られざる、禁じられた思い出を語り出す・・・という設定は、なかなかに魅力的。
自分の母親が知らない男の話を出したら、娘としてはやはりどこか複雑な思いがあるのかもしれない。
母親に対して、とことん優しさを見せる、長女のコンスタンス(ナターシャ・リチャードソン)には癒されるし、
反対に、抵抗を示す素直でない次女のニナ(トニ・コレット)の、自分の人生に対して、自信が持てない気持ちもよく分かる。
病床のアンの若い頃の、少しの罪の話。そんな思い出部分が上手に組み込まれていて。
薬のために少々現実感覚が薄れていて、幻想も見るのだけれど、それも分かりずらくはないので、ごっちゃになる人は多分いないです(笑)
自分の人生を愛するということ、母親の人生を、等身大に受け止めるということ、
そんな機会が持てたら、自分も大人になった、ということなのかもしれないね。
私も、母親がかつて美しかった時代、というものを是非とも見てみたい。
そして、母親が今まで言えなかった話、というものをしてくれることがあるなら、
私はきっと感激するだろうと思う。
そこに少しの罪があったとしても・・・。
たった一度の出会いが特別だった、というのは、ちょっとだけ『マディソン郡の橋』を思い出さないでもなかったけれど、
女たちの人生を、丹念に織り上げるような、そんな物語は決して嫌いにはなれない。
ただ、少々冗長で、ラスト部分の丁寧すぎる描き方が今ひとつにも思えてしまったので、もしかしたら中にはこれがダメだ、という人もいるかなーと思ったりもします。
2008/03/11 | :ヒューマンドラマ
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コメント(18件)
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いつか眠りにつく前に
『すべての女性の人生が、 美しい一瞬を持っている。』
コチラの「いつか眠りにつく前に」は、スーザン・マイノットのベストセラー同名小説を豪華女優陣の競演で映画化した2/23となった感動作なのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪
死の床に伏したアン(ヴァ….
映画館で『いつか眠りにつく前に』見てきました!
昨日の'''『いつか眠りにつく前に』'''の初日に
もう一度映画を見ました。
場所は'''川崎チネチッタ'''。
'''チネグランデ'''というチネチッタのいつもの映画館の前にある
…
映画「いつか眠りにつく前に」
原題:Evening
いつか眠りにつく前に、人生に過ちなんてなかった、と開き直る気持ちはよく分かる・・後悔は先に立たず、人生は長いようで短い、夢と希望を繋ぐものは・・
イブニング、輝くように美しい、まるで絵に描いたような、いや、絵にも描けない美しさという…
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真・映画日記(2)『いつか眠りにつく前に』
JUGEMテーマ:映画
(1から)
「シネマロサ」2階の劇場を出て、
今度は地下の劇場で『いつか眠りにつく前に』を見る。
病床の60代の母親アンが娘二人に「ハリス」という男性の名をうわごとのように口にする。娘のコリーとニーナは母からそんな男性の名前を聞く…
いつか眠りにつく前に
女性の映画ですね、完全に。
『いつか眠りにつく前に』を観たよ。
感動的なのかもしれないけど、私には薄味。
『いつか眠りにつく前に』
“EVENING”
2007年・アメリカ&ドイツ・117分
監督:ラホス・コルタイ
??.
とらねこさん、こんばんは! トラバありがとうございました★
女性の生きかたをダイレクトにターゲットにしている作品なので、とても興味深く観ることができました。でも……、
>少々冗長で、ラスト部分の丁寧すぎる
>描き方が今ひとつにも思えてしまった
同感です。ちょっと噛みつききれない部分が私にはありました。モチーフ的には好きなのですが、描ききれていないように思えて、「惜しいなぁ」と思ってしまいました。
香ん乃さんへ
こんばんは★コメントありがとうございました。
>噛みつききれない
(笑)。最後はちょっとまとめ下手な感じがありましたよね。
『ボルベール』みたいに、見事な作品があるので、それと比べると落ちてしまいます。
自分の場合は、女手一つで育ててくれた母親のことを考えて、彼女の輝いていた時間、というものを考えてしまったので、思わず点数が上がってしまいました・・。
いつか眠りにつく前に
アン役ヴァネッサ・レッドグレーヴの娘役を実の娘ナターシャ・リチャードソンが、ライラ役メリル・ストリープの40年前を実の娘のメイミー・ガマーが演じ、二組の母娘共演を果たした本作。感動作だということだが・・・【story】死の床にある老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグ…
いつか眠りにつく前に/ヴァネッサ・レッドグレーヴ
本当は「ライラの冒険」を真っ先に観に行きたかったんだけど、他のスケジュールとの兼ね合いでこれが先になっちゃいました。どっちみち観る予定ではあるからいいんだけど、「ライラの冒険」が早く観たいよォ、と思っていたらまさかこの映画にもライラが登場してたなんて・・….
母の若い頃、それも恋愛について深く考えたこともなかったです。聞いてみたいけど、もうさすがに恥ずかしくってムリって感じ(笑)。
私もたぶん許しちゃいますね。
かのんさんへ
そうですよね!母親の恋愛話や、若い頃のお話って、「一般的にどこの家庭でもする話」ではきっとないですよね。
私は学生の頃、若い頃の母親が、オードリー・ヘップバーンみたいな髪型にしていた写真を見て衝撃を受けたことがあります。
「色気づいてるなあ」と!
いつか眠りにつく前に☆母の隠された40年前の愛
死の床にある母が語った物語は、娘たちが知らない40年前の愛の記憶
2月26日、東宝シネマズ二条にて鑑賞。キャストの顔ぶれは、凄い親子で共演という女優さんもいます。その一人がメリル・ストリープのお嬢さん、メイミー・ガマー。メリル演じるライ…
『いつか眠りにつく前に』’07・米・独
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