34●アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
才能のあるアーティストって、見ているだけで、なんて心が浮き立つの。
素敵なドキュメンタリーだった。・・・
何より、芸術性と商業主義を両立させた、偉業を成した人。
ストーリー・・・
ヴォーグ誌の依頼で、マリー・アントワネットの衣装に身を包んだキルスティン・ダンストの写真を撮る女性写真家、アニー・リーボヴィッツ。彼女が写真を撮るなら、どんなセレブでも喜んでやってくる。彼女の写真家としての人生は、1970年にローリング・ストーン誌の写真を撮ることから始まった。ミュージシャンたちの素顔を収め成功し、やがてヴァニティ・フェア誌に移籍。よりメッセージ性の強い写真を撮るようになる。・・・
アニー・リーボヴィッツの名前を知っていたのも、ここに出てくる何枚もの写真を見たことがあったのも、
私にとって全部ぜ〜んぶ、「Cut」という雑誌のおかげ。
Cutは、季刊だった、創刊号の頃ぐらいから買っていたのだけれど、Rolling Stone誌をお手本にしているのか?大きさも写真のインパクトもあって、誌面がかなりアーティスティックだった。(今は読まないので知らないけれど)
その時に、よく写真家の特集なんかもあって、もちろん、ブルース・ウェーバーとか、それにもちろん、アニー・リーボヴィッツの特集などで、写真をよく見ていた。
ミック・ジャガーの、病院での写真も、映画の中で使われていたけれど、あれもCutで見たことあったし、他にもたくさんの写真を見たことがあったよ。
普通にみんな覚えているんじゃないかな?と思うのは、あの、デミ・ムーアの妊婦のヌード写真。
あれは当時、かなりニュースで話題になってたもんね。
私も、見た時はすっごくビックリした。かなり昔のことだけど。あれは衝撃だったなー。
アニー・リーボヴィッツという、才能に溢れたお騒がせな女史の様々な伝説を、次から次へと映し出す。
ローリングストーン誌に雇われることになった経緯や、ストーンズとぴったりついて回ったツアーなどは、キャメロン・クロウ監督の実人生を思い出しちゃった。
『あの頃ペニー・レインと』で、16歳でローリングストーン誌の雑誌記者に抜擢された少年。
アニー・リーボヴィッツの方も、『あの頃ペニー・レインと』の話に負けず劣らず、どんどんチャンスをものにしていったんだろうな。
私にしてみれば、後のセレブの写真なんかどうでも良くって、この頃のローリングストーン誌での体験の方が、よっぽどためになっただろうなんて思った。そんな、心の踊るエピソードだったんだけど?
全くの新人カメラマンの才能を見抜いたローリングストーン誌は素晴らしい!ってね。
しかし、本人の発言にもあるように、ストーンズとツアーに出てドラッグと無縁で居るなんて・・・なんて無謀!w
だけど、男と女の垣根を越えて、そういう世間で渡り合っていくことの出来るアニーは本当スゴイな。
キース・リチャーズが登場して褒めていたけれど、本当、当時のドラッグカルチャーにドップリ浸かっていながら、命を落とさずに居れて、本当に良かったと思う。あそこではさらっと描かれていたけれど、かなり大変な入通院だったと思う。
彼女の人生のターニングポイントが、Vanity Fair誌への移籍、ということになるのだけれど、それを見抜いたローリングストーン誌は、本当に偉い。それだけ人気の写真家になっていたのにね。
「表紙は、むしろ広告、雑誌を売るためのものであって、自分の“作品”ではない。自分の本当の作品は、むしろ中にある」と言ったアニー。
映されるものを見ていても、その価値は歴然としていた。
Vanity Fair誌の表紙だけみると、なんだかいまいちに思えてしまったもの。
でも、単なる雑誌の中の「写真」が、「作品」である、ということ自体、日本の雑誌から考えればあまり考えられないことかも。
写真が単にポートレイトではなくて、アートに格上げになる、という様を見ているのは痛快だった。
胸がすく思い、というか、見ていて心が浮き立ってくるというか、
アーティストの目線をそのまんま感じることが出来るような、写真撮影の場面なんかは、全く退屈しなかった。
アーティストって、本質は絵も本も写真もやっぱり同じなのね。
フォトグラファーその人自体を被写体にした、という面白いドキュメンタリーで、大満足だった。
映像として現れたものを、次の瞬間に写真になった時なんかは、
その現実と写真との差が出ていて、なんて面白いんだろう!と目を見張ってしまう。
アニーの妹その人がカメラに収めていた、画質のあまり良くない映像もあったけれど。
「同じ時代の同じ空気を感じている映像なんだ」、なんて嬉しくってさ。
ホームビデオだわ!なんていう、さすが妹ならではの映像なのよね。
この映画が全く退屈しない大きな理由は、アニー・リーボヴィッツという人自体が、刺激的で退屈しない人だからかな。
テキパキとした指示と、相手を褒め称える賞賛を交互に繰り返しながら、手際のよい素早い仕事ぶりを見せる。
クリエイティブな人が、思いっきり自分の才能を伸ばす様を見ているのは、胸のすく思いがした。
・アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生@映画生活
2008/03/07 | :ドキュメンタリー・実在人物
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アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
アニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)はセレブを撮りまっくってセレブになった写真家。というか、セレブな写真家に撮られてセレブがセレブになったのかよく分からなくなる。色々なセレブが彼女についてコメントしているが、彼女の写真を凌ぐようなコメントはなかった。彼…
『アニー・リーボヴィッツレンズの向こうの人生』 (2007) / ア…
原題:ANNIELEIBOVITZ:LIFETHROUGHALENS監督・製作:バーバラ・リーボヴィッツ出演:アニー・リーボヴィッツ、オノ・ヨーコ、デミ・ムーア、キルスティン・ダンスト、ジョージ・クルーニー、パティ・スミス、ミック・ジャガー、ミハイル・バリシニコフ公式サイトはこちら…
『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
□作品オフィシャルサイト 「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」□監督・脚本 バーバラ・リーボヴィッツ □キャスト オノ・ヨーコ、デミ・ムーア、ジョージ・クルーニー、キルスティン・ダンスト、ウーピー・ゴールドバーグ、ベッド・ミドラー、ミハイル・…
アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
写真家アニー・リーボヴィッツの名前は知らなくても、映画ファンだったらデミ・ムーアの妊娠中のヌード写真を記憶されてるんじゃないでしょうか?あの写真を撮影したのがアニー・リーボヴィッツです。
写真には興味あるほうだけど、私の場合は撮ることよりも作品自体をさ….
「Cut」は美容院やカフェに置いてあるときによく眺めてました。写真の奇麗な雑誌を買っちゃうと後で捨てられなくなっちゃうですよねぇ。「Number」でさえもそうなんです(笑)。
「マリーアントワネット」の時のキルスティン・ダンストらが何度か登場してましたけど、あの撮影風景や作品自体に映画では感じなかったゴージャスな優雅さを感じたのが印象的でした。映画はポップな作風だったというのもあるんでしょうけど、あの写真の中のキルスティン・ダンストが一番マリーアントワネットに思えちゃいました。
アニーの仕事は言うなればアーティスト同士の魂と魂が1つになって生まれるコラボレーション作品でそういうリアルな現場がこうして映像で観られるのってスゴイことなんですよね。
かのんさんへ
こんばんは☆コメントありがとうございます。
かのんさんも、美容院に行くと、雑誌を差し出されて「映画の雑誌ありますか?」って聞かれる人ですか??
私もですー。私の場合、「Cutとか、映画の雑誌ありますか?」って聞きますw
そうすると、美容師さんは、「映画好きなんですか〜?」とか言って、自分が見た好きな映画の話をしてくれるし、一石二鳥でいいんですよね☆
目の前の人が何の映画が好きか、いつも聞きたくてたまらない私なので〜☆
あ、そうそう、マリー・アントワネットの衣装をまとった写真。あれ、すっごくイイですよね〜♪
かのんさんもそう、お感じになられましたか!
私もあれまた、Cutで見ました♪
あれは、美しさに目を見張りましたね。最近、一番印象に残ったアニーの写真の一つですよね。
さすがかのんさん!
おっしゃる通り、被写体とのコラボみたいですよね、アニーの写真て。
●アニー・リーボヴィッツ/レンズの向こうの人生(Annie Leibovitz: Life Through A Lens)
大学時代に履修した写真の授業ので先生から言われた言葉
「レンズを通しての世界だと、間接的に世界を観ることになり心に焼き付けられない、…
コメントありがとうございました!
私もかつて「Cut」を買っていましたよ〜
それでアニーの写真に魅せられたわけですが(^^)
コチラの作品「面白くはあったけど、、」というニュアンスの感想が多くて悲しかったので、トラネコさんの記事を読んで嬉しかったです。
私はアニーという人物のオーラと生き様に圧倒されて最後まで魅入ってしまったという感じでした。
『あの頃ペニー・レインと』のキャメロン・クロウもローリングストーン誌でしたね〜そう思うとロックアーチストへのアプローチだけでなく才能あるスタッフを見出しそして開花させているという意味でも凄い会社ですよね!
コブタさんへ
こんばんは☆コメントありがとうございました。
おおっ!コブタさんもやはり、Cutでアニーの写真を知っていたクチですか!
本当、Cutを読んでいた人に言わせれば、ここにある写真て、本当に見たことあるものばっかりでしたよね!
あれも、あれも、エッ、・・・これも!?
なんて感じで、本当に嬉しくなってしまいました。
コブタさん、こちらこそ、コブタさんの書かれた記事、とっても嬉しかったですよ!
お話させていただくのはちょっとお久しぶりでしたが、でも黙っていられませんでした(笑)
そうなんですよ、ローリングストーン誌って当時きっと、企画力がズバ抜けていたんじゃないかと思います。
「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」 被写体の一部になる
アニー・リーボヴィッツという名前は、この映画の予告を観るまでまったく知りませんで
とらねこさん、こんばんは!
アニー・リーボヴィッツという名前は知らなかったのですが、彼女の撮った写真のいくつかはしっかりと記憶にありました。
それってすごいですよねー。
>芸術性と商業主義を両立させた
これができる人というのは、なかなかいないですよね。
(アーティストでなく)クリエイターはアートであることが優先であるかのように思われがちですが、商業主義=誰かの想いを代わりに伝える、といったことも実は大事なんですよね。
被写体の一部になる、という言葉にそれが集約されている気がしました。
はらやんさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね!名前を知らなくても、彼女の写真は、あちこちで目にしますよね!
これがアメリカ人だったら、もっともっと、しょっちゅう目にするものだったのかもしれませんよね。
>商業主義=誰かの思いを代わりに伝える
そうですね、商業主義的な部分は、ある種一般人の目線に立っている、ということであるのかもしれませんね♪
>被写体の一部になる
確かに、被写体の何かを確実に取り込んでいる、魂がそこに表れているのですよねえ。ウン。納得です。
『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
静と動を行き交うエモーションとパッション。
女流写真家、アニー・リーボヴィッツを描いたドキュメンタリー。大きなお腹の妊婦デミ・ムーアのヌード写真や、殺害される数時間前にベッドに横たわってヨーコを抱きしめる裸のジョン・レノンの写真を撮ったアメリカの名写真…
生ける伝説〜『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
ANNIE LEIBOVITZ: LIFE THROUGH A LENS
「死にゆくその日も、写真を撮っていたい」
アメリカで最も有名なフォトグラファー、「リビング・レ??.
とらねこさま、こんにちは♪
私も、キャメロン・クロウをちょっとだけ思い出しました。
『あの頃、ペニーレインと。』大好きです。
CUTは、いまだに買ってしまいます。さすがに毎号は買わないですが。。
本当に、有名な写真ばっかりでしたよね〜。
ところで、「勉強熱心」ってたまに言われるのですが・・。
自分としてはビックリです。映画を観ることや読書って、私には勉強と一番遠いところにあるので。
勉強から逃げるために、ずっと現実逃避してる感じです。
果たして、いつまで逃げ続けられるでしょうかね・・。
ではでは、また来ますね。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
Cut、私も大好きでした!真紅さまもお好きだったとは、嬉しいです。
Cutって、昔から、写真の大きさにこだわった、紙面作りをしていましたよね。
Cutのおかげで、写真家の個展を見に行ったことあります。
『あの頃、ペニー・レインと』いいですよね。16歳でローリング・ストーンの雑誌記者になれるなんて、夢みたいです。
真紅さまって、真剣に映画を見ているお方、というイメージがあって、「勉強熱心」なんて言ってしまったのですよ、。
勉強とは遠いイメージですか。そうですね、私も映画は現実逃避の手段です。
お気を悪くされたら、ごめんなさいでした。
【映画感想】アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 (セレブ様ご一行 大集合!)
【鑑賞映画】
アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
カメラマンライダー
「イージー・ライダー」
「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」
『アニー・リーボヴィッツ/レンズの向こうの人生』(2007)
世界で一番有名な女流写真家、ということだそうですが、彼女のことは何も知りませんでした。
でも彼女が撮った写真を幾つか見ていると、こんな自分でも知っている写真が何枚も。それが彼女の凄さなんでしょうね。
カメラは撮影現場を追い、彼女自身のインタビューをさらい…