11●セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ
B級映画の、B級映画による、B級映画のためのB級映画!
これぞまさにここにあり
’00年、ジョン・ウォーターズ監督作品。
ストーリー・・・
ボルティモアの映画館。とある映画のプレミア舞台挨拶に訪れたハリウッド女優ハニー・ホィットロック(メラニー・グリフィス)は、突如謎の一味に誘拐される。その一味とは、セシル・B・ディメンテッド(スティーヴン・ドーフ)率いる映画狂集団スプロケット・ホールズ。メンバー全員が敬愛する監督の名前を体に刻み込み、拝金主義、良識主義の腐った映画を撲滅しようと唱えるテロリスト・グループだ。彼らは自分たちの映画『狂える美女』の製作を企て、主演女優としてハニーに白羽の矢を勝手に立てたのである。その後、彼らは究極のリアリティを求めて決死のゲリラ撮影を繰り広げていく。・・・
うひょ〜っ!この炸裂するB級魂、最〜高!
やっぱ、やっぱ、拝金主義も商業主義は全員、みんな死んだ方がいいよね!そうだよね!ウハハハハ!!
「ハリウッド映画に死を〜」なんて、嬉しくなって、叫びたくなってしまったり。
ハニー・ホイットロック(メラニー・グリフィス)が初めに誘拐して連れて来られた場所が、これまた、『ロッキー・ホラー・ショー』に出てくる場所にソックリ。
そしてそして、この映画狂いの集団スプロケット・ホールズは、団員全員に、信奉する映画監督の名前のタトゥーが入ってるの。
一人目から、
オットー・プレミンジャー
アンディー・ウォーホル
ハーシェル・ゴードン・ルイス
サム・ペキンパー
スパイク・リー
デビッド・リンチ
ウィリアム・ケイジー
ケネス・アンガー
ペドロ・アルモドヴァル
ファスピンダー
サムフラー
う〜ん、団員が次から次から現れ、「映画館の中で、喋る人に死を!」とか言いながら、一人ひとりが上記の監督の名前のタトゥーの入った部分を、見せるわけ。もうね、私には、知らない名前もあったんだけど、マイナーなタイプの映画を好む私たちのような人には、絶対嬉しくなっちゃうこと、間違いなしさらには、知らない名前の監督さんは、調べたくなったりしちゃいました。
ちなみに、映画館に襲撃する先で、「私QTが好きなの」と言う映画館の店員さんがいるんだけど、その女の子は、「それはまだ新しい!」みたいな言い方をされてしまう。・・・そんな’88年の作品。
後でジョン・ウォーターズのインタビューを見ると、彼自身、上記に載せた監督さんは、敬愛する人達だ、と言っていました
それにしても、よくメラニー・グリフィスも、自身をパロったような役柄をOKしてくれたこと。なかなか太っ腹ぶりを見せた、ってとこなんでしょうか?
ハリウッド映画、金満主義の映画を代表する存在としてそこにいたのに、いつの間にかインディペンデント集団に交じって、これまでなかったように生き生きとしてくる姿が嬉しい。
・・・・・・・・
とか言いつつ、作品自体の完成度はかなり低く、さらに本当は、イっちゃってる、セシル・B・ディメンテッドというインディペンデント映画の監督(スティーブン・ドーフ)。これ、かなり阿呆に描かれているんですよね。
観ている我々も、本気で、「ヤレ〜ヤレ〜」と、映画狂集団のテロ活動を、本気で応援する気にはなれない。
つまり、監督が自分自身や、無心になりすぎてる、ファンとか映画マニア自体の姿も、サーカシズムを交えて、滑稽に描いてみせたという訳でしょうね。
だって、ジョン・ウォーターズは、そこまで馬鹿ではないし、つまり馬鹿を装っているだけのような気がする。
この映画のキャッチコピーが、「・・・そんなに映画が好きですか?」というようなものだったらしい。
ううーん耳の痛い話です。こうして、映画中毒になっている、私たちのような人には。
「ハイそ〜なんです、そんなに映画が好きなんです!」と答えてしまうかも・・・。
やはり「ちょっとイっちゃってるよなあ」、って(この映画に)言われた気もする。
しかしその一方で、ここにある映画愛、これは本物なんですね。
そして、監督自身が、最初に映画を作りたかった頃の思い、そんな本能的情動を大切にしたい、・・・その気持ちは本当のように思う。
要するに、ここまで「若い」作品が作れるか、っていうのがこの映画の命題でもあったかなあと思うわけです。もう若くない監督が、もう一度しっかり、B級魂と向かい合ってみた、という。
そんな時、表現はこれやっぱり、パンクなんですよね。
3コードの退屈なコードだろうが、未熟だろうがなんだろうが、若さとバカさ溢れるパンク精神。
この映画でもって、そういう馬鹿みたいな若さに、ジョン・ウォーターズは戻ってみたくなった。そんな風に思いましたね。
監督も、年老いると、やたらと老成して、難しくなったり、難解になったりするであろう危険、それに対し自ら反抗したが故のB級魂の炸裂。
そう思うと、やっぱり素敵な、オールド・パンクな作品なのでした。
ところで、映画狂のアナタ、もし体に誰か監督のタトゥーを彫るとしたら、
一体誰の名前を彫る?
・・・私ならやっぱ、「リンクレイター」かな。
いやいや、「三池崇史」も捨てがたい。
2008/01/27 | 映画, :アクション, :カルト・アバンギャルド
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コメント(10件)
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こんばんわッス
>>ところで、映画狂のアナタ、もし体に誰か監督のタトゥーを彫るとしたら、
一体誰の名前を彫る?
ボクは「サム・ライミ」か「ジョン・カーペンター」
・・・う〜ん、悩むなー。二人とも彫ろう♪
サイさんへサイさん、そんなにジョン・カーペンターがお好きだったのですね!
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
おっ
ジョン・カーペンター、喋るとすごく知的で素敵ですよね!
サム・ライミもそんなに好きだったんだ!?
サイさんの趣味がだんだん分かってきて嬉しいw
こんばんは
この記事良いですね!
仰るとおり、作品的にはイマイチなんですが通底音として流れてるマインドにグっとくるんですよね
ま、方向性はどうあれ俺イズムをひとに強制した時点でダメだろ〜とは思いますが…
「ハリウッド映画」も嫌いじゃないしなぁ
>若さとバカさ溢れるパンク精神
RAMONESがライブで訪れた街には雨後の筍のようにバンドができるってエピソードが好きなんですよ
ステージと客席の敷居低い分そそのかし引力が強いあたりもパンクの魅力じゃなかろうかと(笑)
>一体誰の名前を彫る?
こゆネタ大好き!
んと…「リンクレイター」とられちゃってるから「アラン・スミシー」で!(笑)
という冗談はさておき、誰ともかぶらなそうなところで「セルゲイ・パラジャーノフ」でお願いしまッス!
>「・・・そんなに映画が好きですか?」
残念ながら未見なので“そんなに”がどれぐらいの事を指しているのか分からないのですし、マニアック的&カルト的に知識は無いけれど、そう聞かれちゃうと「とにかく好きです」と答えたくなりますね(笑)
>映画狂のアナタ、もし体に誰か監督のタトゥーを彫るとしたら
基本的に、監督で実事はほとんど無いのですが、それでも“お気に入り”としてあげている監督が3人ほどいます。
右腕に“真面目に映画を愛して作っている”イメージの強いあの人。
左足首に“映画で遊んで楽しみたいから作っている”イメージの強いあの人。
そしてハートの上には“オタク的に映画を作る事を愛している”イメージの強いあの人。
って、3人も入れちゃ駄目ですか?
こんにちは。
あ、これ最後にデブが爽やかな笑いするんで、すごくガッカリした映画じゃないか。
と思ったら、キャストに該当者のデブ(確かマット・デイモンの友達)がいない。
共通点は、CINEAMUSEと映画を撮る映画。
必死になって調べました。「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」と混ざってしまっていたんですね。
すまん、ジョン・ウォータズ。
で、
> 映画狂のアナタ、もし体に誰か監督のタトゥーを彫るとしたら、
一体誰の名前を彫る?
ジョン・ウーかドン・シーゲル
ところで、この作品は2000年以降でなかったかと・・・
みさま
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
わーい、お褒めの言葉ありがとうございまーす☆
B級好きには楽しめてしまう、ある種の爽快感がありました!
>ま、方向性はどうあれ俺イズムをひとに強制した時点でダメだろ〜とは思いますが
うーん、自分としては、セシル・B・ディメンテッド=ジョン・ウォーターズとは思ってないんですよ・・。
限りなく知的なジョン・ウォーターズのことだから、この表現には諷刺精神もあるなじゃないかなって思ったりしました。
>RAMONESがライブで訪れた街には雨後の筍のようにバンドができるってエピソード
ああーいいですよね〜^^
ステージと客席との敷居の低さが、イコール「バンドやろうぜ」になるっていう広がりがまた心躍ります♪
>アラン・スミシー
あ、一本取られたw 単なるジョン・ドゥーではないんですし☆
セルゲイ・パラジャーノフ、知らなかったです『ざくろの味』名前だけ聞いたことがあるぐらいで。今度、見てみたいです☆
リンクレイターも、そんなにお好きとは嬉しいです☆
哀生龍さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>マニアック的&カルト的に知識は無いけれど、そう聞かれちゃうと「とにかく好きです」と答えたくなりますね
哀生龍さんは立派なマニアだと思いますw
で、右腕ですが、私も大好きなスペインのあの方ではありませんか?
そしてハートの上。場所が場所だけに、もしやここが一番なのでしょうか♪
この方は、最近幸せそうなあの方ではっ。
で、左足首、この方だけちょっと分かりません。
もしや、ジョン・カーペンターでしょうか?違う?
と、ここだけ何故か名指し(笑)
で、ポジショニングですけど、私のタトゥーは左腕と足首にあるので、それとちょうど反対ですね♪
タイでは、タトゥーの値段がかなり安いんだそうです。海外からの人もたくさん来る場所があるのですよ♪
今度、良かったら一緒にタイへ、彫りに行きますか(笑)
バラサ☆バラサさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』
この映画が、バラサ☆バラサさんの中でいつしか一緒になっていたのですね★
へえ〜、シネ・アミューズで映画を撮る映画、と二つも共通しているのですか。それは確かに勘違いしそうです。
で、ジョン・ウーそんなにお好きだったのですね!
ドン・シーゲルは『SF/ボディスナッチャー』の人ですね☆
教えていただき、ありがとうですー。
先日のコメントは、誤字脱字で失礼しました(^^ゞ
3人の監督ですが、名前を伏せたお2人は“当たり”のはずです(笑)
右腕はAA、ハートの上はRR。
そして謎の3人目は、俳優業をやったりアメコミがらみだったりの、KSです。
もっと言えば、この作品の一連のコメントの中に、その方の撮った作品の名前が出て来ていたり(爆)
>今度、良かったら一緒にタイへ、彫りに行きますか(笑)
折角のお誘いですが、パスポートが必要な場所に行く予定はないので・・・( ̄∇ ̄;)ハッハッハ
アレコレ偽っているので、パスポートが取れないんです。
嘘です。
哀生龍さんへ
>誤字脱字で失礼しました
あ、アレ!?どちらに誤字・脱字がありました?焦っ
気づかなかったのかと、何度も読みましたが、やっぱり見つかりませんけど?(笑)
>AA、RR、KS
二人は当たり・・まあ、当然ですね★
最後の人はケヴィン・スミスだったのですね〜。へえ〜。
自分は『ドグマ』辺りで名前を覚えていたのですが、その後、あまり注意を払っていませんでした。
『デアデビル』、コリン・ファレルにばっかり注目してましたが、監督さんがそれほどお好きだったとは。教えていただき、ありがとうです♪
海外は行く予定ないのですか・・それは、もったいない。海外旅行はいいですよ〜。
それはおいといて、本気でタトゥーを入れたかったら、日本の彫師をご紹介します〜。
私も、三池さんと握手が出来たら、「崇史」と入れようかと本気で考え始めています