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【舞台】座頭市

座頭市三池崇史演出『座頭市』をコマ劇場にて、千秋楽を見て来ました!
今年の最後に、三池監督はやってくれた。
すごく感動したし、自分の見た三池作品の中で、これは個人的にイキナリ上位に食い込む作品となった。
・・・今月の三池さんコーナー


ストーリー・・・
己の腕だけを頼りに旅を続ける座頭市(哀川翔)は、旅の途中、耳の聞こえない琵琶弾き、神撥(かんばち)の八(阿部サダヲ)と出会う。意気投合した二人は次の宿場町へと旅を共にすることになる。一方、別の宿場町では、旅芸人一座の女座長、朱太夫(あけのだゆう・朝路サキ)が市の手配書を見ていた。この三人を軸に、市の敵となる浪人・竜之介(遠藤憲一)や、宿場町の墓堀り・吾六(長門裕之)などがからみ、図らずも運命に翻弄される人間たちのドラマが描かれていく。・・・


子母沢寛原作、勝新太郎の超ロングヒットのこの物語、とのことだけれど。
私は残念なことに、一度も見たことがありません。しかも、舞台劇というものは、それほど何度も見た経験があるほどではなくって。

あらすじも知らないし、座頭市が目が見えないということも知らなかった。
いつも観る映画と全く同じように、前知識一切ナシで挑んでしまいました。
そんな訳で、的はずれな発言がたくさんあるかもしれないけど、その点、ご了承を。
三池さんの舞台作品は、DVDで見た『夜叉ケ池』があまりに素晴らしく面白かったので、それで今回、見に行きたくなっちゃって。

まず、自分自身、よく舞台の見方というのに慣れていなくて、始まった途端に、正直不安になってしまった。
「役者があんなに遠いよう」とか、「顔が見分けがつかないよう」とか、自分がキャストを知らないで来たというのも、あらすじを知らないのも、勉強不足じゃないと見れないってのも、どれもこれも困った出だしだと思った。


初めに見ていてすごく面白かったのは、やっぱり阿部サダヲの存在。
「そこにアベサダが、生きて動いている」、っていうのが、こんなにすごいことだなんて、全然知らなかった。あれはちょっと衝撃でしたね。(個人的には、「舞台あらし」の異名を取った、北島マヤを思い出しちゃった〜。)
だけど、一挙手一投足、彼の動きだけ全く違って生き生きとして見えたし、台詞回しはなんて聞いていて心地がいいんだろう。
話がよく分からなくても、アベサダを見れたってだけで、今日はいいやって思えたし。


それに、舞台のセットがどんどん変わるのが、面白くて仕方がないなあ!
そこにあるのは無限の世界なんだって、舞台って本当にスゲエって思った。
想像力があるからこそ、無限になる。何より、ライブでは、役者が台詞を噛んだりするしね、感激。
観劇に感激。ヒデキ、感激!なんて思いながら見ていた。


三池さんの作品の今年のものって、『クローズ ZERO』、『スキヤキウェスタン ジャンゴ』、『龍が如く 劇場版』、『探偵物語』、これらは悪くないんだけど・・・。
三池さんが「決して本気を出さない監督」なんて思われたら、居心地が悪いんですよ私。「遊びっぽくごちゃごちゃしたやつを作る、なんとなく最近はタランティーノのテイストに似てきた監督」なんて思われたら、悲しくなっちゃう。

でもぶっちゃけ、今年の三池さんはつまんね〜な〜って思ってたんですよね。
クローズ ZERO』はみんながあれだけ絶賛して、興行収入も良かったし、まあ、儲かって良かった、今年の三池さんは良い年末を迎えられるかな?とかは思ってましたし。
『スキヤキウェスタン ジャンゴ』では、タラちゃんなんかとコラボっちゃって、まるでGRINDHOUSEの三番目みたいで、「三池さんにいい風が吹いてる!」って私嬉しかったから、駄作だって気にしなかった。
龍が如く 劇場版』では、ヤクザものに定評のある三池さんが、自らのキャリアを(『極道恐怖大劇場 牛頭』でぶっ壊したみたいに)またやってくれて、楽しかった!
だけど、去年のどれもツボったラインナップに比べたら(→コチラ参照)、それほどハマる作品は私にはなかったんですよね。


そう思ってたら、とうとう年末に来ましたよ〜!
特大のが。
これは、本当に面白かったし、最高に気に入った!
良い年末を迎えられそうで嬉しいよ〜


たけしの『座頭市』とは、ぶっちゃけ全く別物となっています。
別物で良かったな、と思うし、同じ題材をこうまで違う、というのが面白い。
なので、以下少し比べてみますね。
まず大きく違うのは、たけしの座頭市は、人間的でないまでに強すぎるのね。
比べて、三池さんの座頭市の方は、それほど強くは無い。強くはないけれども、代わりに、バディもののようになっているのです。琵琶弾き、神撥(かんばち)の八との。
つまり、「イチとハチ」で、イチかバチか。
一人の男そのもの対、世間、ではなく、バディもののように感じてきます。
加えて、博打(ばくち)という感じもあるしね。


仲間を大切にする三池さんらしくて、温かいなって思ってしまう。
さらに、生涯の敵、竜之介(エンケン)との関係性も、たけしのもの(浅野忠信)とは随分と違っているのです。

敵との確執も、分かり合った上で、その一個の個人として「なぜ世間に対して戦うのか」というもの、それを共有するものとなっているのです。
この瞬間に、私は滂沱してしまった。

一個の人間対人間の戦いではなくて、もっと大きいものになっていく。
ついに果たされる果し合いのその時には、すでに単なる“斬り合い”ではなくて、ヒトとして、生をまっとうして、死んでゆく。
「この相手に倒されるならば本望」と言えるかのような、そんな、男同士なのです。
もはや、「殺し合い」ではなくなってるところが、素晴らしいのですよ。・・・


たけしの『座頭市』もカッコいいですよ。
目を開く瞬間なんて、忘れられないし、音楽の使い方は面白いし。
村おこしが、人間社会の破壊と再生、そういったテーマを、ラストで祭りで昇華してゆくのも面白かった。
ただ、どちらが好きかと言えば、私は三池版の方が好きだ、という話。


東京では、新宿コマ劇場で12/3〜12/16までやっていたけれど、
大阪ではこの後、梅田芸術劇場にて、12/20〜29までやってるそう。(詳細 → HP)
さらに来年には、名古屋、愛知厚生年金会館にて、’08年1/4〜6までやってます。


WOWWOWでももう放送が決定していて、’08年の2月には放送予定だけれど、
是非ともこれは生で体験して欲しいなあ〜。本当に面白かったよ!


ちなみに、客層は、コマ劇なのだから、中高年ばっかりかと思ったら、全然そんなことはなく、若い人ばっかりでビックリしてしまった。
トイレに大行列して、20分の休憩時間の間、ずっとトイレに並んでいたのに、似二部の開演ギリギリになってしまったけど。


千秋楽だったからか、何度も何度もカーテンコールをやって、さらには三池さんまで登場。
みんなに胴上げされちゃって、見ていてとっても微笑ましくなりました。
三池さんの姿をチラっとでも見れて嬉しい!私も思わず立ち上がって拍手喝采してしまったよ〜。


zatouiti映画のプログラムって、今じゃHPの方がよっぽど詳しく載ってるので、普段は一切買わないんだけれど・・・。
『バッド・エデュケーション』以来、とにかく久しぶりにプログラムを購入してしまった。


市が斬ったかのような、刀の後が!
最初から切れてるの。こんなデザインがとっても素敵。
座頭市Tシャツも買おうと思ったけど、カーキのLのみ、後は売り切れになってて残念。


長門裕之もすごく良かった〜。私は出てること知らなかったので、「あのオジサン誰だか知らんが、ウマいなあ〜」と思っていたら、後から調べてビックリ。さすがでした。呼吸からして、全然違うんだものね。


正直、今まであまり好きでなかった哀川翔が、すごく好きになりました。
滑舌は悪いし、声は高いし、三池ファンのクセに哀川翔好きじゃないなんて、
と怒られそうで、今まで言えなかったんだけど。
だって、少なくても、キム・ギドクの初期にとってのチョ・ジェヒョンのような、あれだけ大きい存在感には決して感じないでしょう。
だけど、彼の不器用さ、哀しさ、そういうものを物凄く愛おしいと感じることが出来たな。
三池さんもきっと、哀川翔のこんなところが好きなんだろうな。

 

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コメント(10件)

  1. やっぱり、とらねこさんは観ると思ってましたよ!
    あたしもすごく気になっていて、先日深夜にぴあの特電にかけたんだけど繋がらず…。
    ますます観たくなっちゃいました!
    チケット探すぞ!

  2. 三池監督って舞台の演出もやっているんですね〜。
    舞台って見た事がないんですけど、きっとすごいパワーを感じれるんでしょうね。
    ライブっていいですよねぇ。
    いつか見てみたいです。

  3. ヨゥ。さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
    おお、なんと〜ヨゥ。さんも見たくなりましたか!
    これ、年末年始に見たら、すごく年末気分、もしくはお正月気分が盛り上がるって感じですよね!
    私の方の東京地区では、ちょっと早すぎて、もう少し後に見たかったって感じです。
    年末年始にすごくぴったり
    で、ヨゥ。さんはまだ電話でチケットを取っていらっしゃるんで?
    私は、いつもローソンとかファミマで、直に買っちゃいます。その方が早いですよ!
    電話予約なんて、なかなか繋がらないもの。

  4. ひめさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
    ひめさん、随分とお久しぶりでしたね〜。
    ちょっと寂しかったです(涙)
    で、ひめさんも舞台は気になりますか!
    そうですね、ライブのよさって絶対ありますよね。
    空気がね、なんか濃いんですよ。
    別の時間が流れてるって感じなんですね〜。

  5. こんばんは。この舞台、実は見ようと思っていたんですよ;でもどうしても日程の都合が合わなくて。面白かったんでしょ?うぅ、やっぱりそういうことを聞くと見に行けばよかったと思ってしまうんだなあ。涙
    朝路サキさんのヅカファンも多くなかったですか?
    彼女が退団後初の女役だったらしくかなり噂になってましたよ。
    私ってばそんなに三池監督作品を見てるわけじゃないし好きなのかどうなのかもわからないけど、舞台ならきっと面白いに違いないっって思ってて。
    私が今一番見たいのは実は映画よりも舞台作品だったりするんですよ;まあ現実には映画向きな気質なんですけどね。笑

  6. シャーロットさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    なんと、シャーロットさんがこの舞台をご覧になろうとかお考えだったとはー!
    朝路サキさんのファンもいらっしゃったのかもしれませんね。へえ、退団後初の作品だったのですね。
    確かに普通の映画の作品だったら、シャーロットさんのご趣味には三池監督は合わないのかなあ、と思うのですが、この舞台だったらまた違うイメージをもたれたかと思います。すごく、すごくアツイんですよね、三池さんの作る世界。
    シャーロットさんが一番見たいのは舞台、っておっしゃる気持ちが分かる気がします。独特のテンションというか、視覚的にもフィーリング的にも違うものを感じてみたい自分がいるんですよね。
    映画はいつでも見れるって気がしてしまいますね。
    舞台演出の仕方って、映画と全然違うことをしているなって思いました。それが新鮮だったんですよ。

  7. とらねこさ―んっ!
    たった今、観終わりました!すんごい良かった!良かったよぉぉ!
    とりあえずこの興奮を誰かに伝えたかったんです!

  8. ヨゥ。さんへ
    おお〜〜♪とうとう、見られましたか!
    今良かったでしょぉ??良かったよねぇ!!!
    きゃー、嬉しいな、嬉しいな♪
    舞台、結構高かったと思うけど・・・
    これは、また見たいです!!

  9. はじめまして!
    今日見てきました!名古屋です!僕、三池監督の親戚でチケットも貰いました!
    監督にも会ってたし、楽屋にも連れてってくれました!哀川翔さんにも会いました!!よかったですよー

  10. KYさんへ
    初めまして。コメントありがとうございました。
    三池監督の親戚の方なのですね。
    三池監督、哀川翔に会えてよかったですね!!
    ただ・・・大変失礼ですが、ハンドルネームを少し面白く感じてしまいました。
    偶然でしょうか・・・




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