#176.アヴリルの恋
真っ白いキャンバスみたいな少女。
彼女は一体、何色で、そして何を描くのだろうって、一緒にワクワクした。
ストーリー・・・
人里離れた修道院で育った21歳のアヴリル(ソフィー・カントン)は、神への永遠の忠誠を誓う儀式を目前にしたある日、双子の兄(クレマン・シボニー)の存在を知らされる。赤ん坊の頃に生き別れになった兄を探すため、修道院を抜け出した彼女は、一人の青年、ピエール(ニコラ・ドゥボシェル)に助けられ、まるでこの世の果てのような海辺にたどり着く。・・・
これ、原題は、「アヴリル」だけなのだ。タイトルに何も“〜恋”とかつけなくたっていいのになァと、それだけが残念ではあるけど。でもやっぱり、アヴリルの無垢さは、見ていてとっても心地がいい。
これまで厳しい戒律と静寂の中で暮らしてきた彼女。社会の汚れを知らないというのは、都会の現代社会に住む私には、どんなものなのか、全く予想がつかない。彼女は、たった2週間で、一体何を学ぶんだろう、って。
だけど何より、彼女の笑顔がとっても良いの。普通の時から、いかにも親しげな、それでいて無垢さをどこか感じさせる表情。
彼女の表情で、アブリルらしさ、というものを感じることが出来たからこそ、すんなりとこの世界に入って行けるんだろうな。
出会ったお兄ちゃんのダヴィッドは、まさしく正反対だった。せっかく話してたのに、すぐ自分の世界に篭ろうとするアヴリルに対して、初めはどことなく煩わしそうだけど、だんだんと理解と優しさを示してくれるところが良かったカナ。
ピエールとの恋は、タイトルに謳っているほど、一番重要になるポイントではなかったの。そこだけがこの物語の言いたいことではなくって、真っ白いキャンバスだった彼女が、何を描くか、決心をするまでの物語なのに。
ピエールの理解の示し方は、あまりにも彼女にピッタリすぎる人だなあ、なんて思ったけど、その実、私から見たって、こんないい男はなかなかいないヨ〜とも思う。
余計な事は言わないのに、大切なことは分かってくれる。何も言わなくても、心が通じる。
人によっては、何か一言喋られただけで、気分がブチ壊しになってしまう・・そんな男の人もいるけど、ピエールは本当に素敵なヤツ。いいなあ、ああいう人。ちゃんと心地のいい静寂、というものをムードに持ってる人って、いいないいな。
ラストの方の展開は、正直言って、こんなにたくさん展開しなくってもいいのにって思った。少しだけこの物語の魅力が正直薄れてしまった感じ。
なんとなく自分的には、『天国の口、終わりの楽園』みたいに、旅と物語のエンディングが、ウマイことリンクするのかなあ、と期待してたの。
アヴリルにとっては、旅というよりも、2週間の試練のようなものだったよね。
でも、希望の残るラストだったので、安心は出来た感じ。
・アヴリルの恋@映画生活「アヴリルの恋」の映画詳細、映画館情報はこちら >>
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コメント(7件)
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アヴリルの恋/ソフィー・カントン
タイトルに「恋」を付けられてしまうとそれだけで気になってしまう単純な私です。でもこの作品はシネ・ラ・セットというちょっと個性的なミニミニシアターによる単館上映。ココでフランス映画を観るのは初めてな気がするんだけど、あまり余所では上映されないマイナー作品を….
とらねこさん、ぼんそわっ。
デキスギなところやヤリスギなところが物語の中にありつつも、なんだかんだいって好きな作品でした。
寓話っぽいからゆるせてしまうのかな。
あるいはアヴリルの無垢さが全てを自然に感じさせてくれたのか。
旅な映画はやっぱりいいです。
さて、修道女と娼婦、なるならどっち?
かえるさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
そうですよね!かえるさんはきっと、この映画の良さを分かってくれそうな気がしてました☆
私は、最後のヤリスギはちょっと待って〜と言わんばかりでしたけど、でもやっぱり彼女のまっすぐな慎み深い表情がなんだか良くて。おっしゃる通り、寓話風とも言えなくもないですよね。
いいですよね、ああいう旅も。
修道女と娼婦ですか・・・。どっちも、一気に老けてしまいそうで、出来るだけなりたくない職業ですね
『アヴリルの恋』
色があるから人生はステキなの。
孤児として修道院で育てられた修練女のアヴリルは、修道女になるために断食・沈黙をしながら2週間礼拝所にこもろうとしたところ、密かに兄の存在を知らされる。静かな山の中に佇むの修道院の風情が好き。と思うのだけど、自由気ままな暮…
真・映画日記『アヴリルの恋』
JUGEMテーマ:映画
11月25日(日)◆635日目◆
午後2時半に起き、3時から外出。渋谷へ。
渋谷Bunkamura前にある「シネ・ラ・セット」に来たのは3年ぶり。ドアを開け受付で整理番号をもらう。午後5時15分の回40分前なのに9番だった。受付後の出入りが自由なためか、…
アヴリルの恋
監督・脚本: ジェラール・ユスターシュ=マチュー(2006年 フランス)
原題:AVRIL
【物語のはじまり】
孤児として修道院で育てられたアヴリヮ..
「アヴリルの恋」
このアヴリル役の女優さんが可愛らしかった