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#172.ロンリーハート

ロンリー・ハートう〜ん、初めっから嫌な予感がよぎらなかったと言えば嘘になる。
どことなしに『ブラック・ダリア』を思い出させるし、さらに言えば、ジェイムズ・エルロイ的な、ノワールなテイストを感じさせるクライム・サスペンスだけに。大丈夫なのかなって、思ってはいたんですよね。・・・

ストーリー・・・
新聞の恋人募集欄を情報源に、夫が戦死した女性や未婚の中年女性から財産を騙し取る結婚詐欺師レイモンド・フェルナンデス(ジャレッド・レト)。ある日、いつもの手口でマーサ・ベック(サルマ・ハエック)に近づくが、裕福でないことがわかり次の獲物へ向かうが、その先でドジを踏み窮地に陥ったレイを追いかけてきたマーサが救ったことから、二人は強い絆で結ばれる。妹と偽り、詐欺に加担するようになったマーサだが、レイへの執着心と、レイが誘惑する女性への嫉妬心はエスカレートしていく。・・・

詐欺師と悪女の忌まわしい結びつき。激しい愛を確かめ合うために、自分を愛することを証明するために、自分の目の前で殺しをせがむ悪女。
間違っていると知りつつ、呑み込まれてゆく男。
破滅へと向かう愛は、シド&ナンシーというより、ミッキー&マロリー(『ナチュラル・ボーン・キラーズ』)だ。
だけど、ミッキー&マロリーと違って、この物語がより陰惨なのは、その殺しの引き金になっていたのが、醜く燃える嫉妬心だったということ。目の前で愛を証明するために、その女を殺させるという・・・

この物語も、実在の連続殺人、ロンリー・ハート事件を元にしたそうなのだけれど、私は後で、これが美しい女性ではなく、醜い女性だったことを知ってしまった。このことは知らない方が良かったかも・・・。

一方、この事件を追い詰める刑事、ロビンソン(ジョン・トラボルタ)も、心に傷を負っている。妻を忙しさから寂しい思いをさせてしまったことで、自殺に追いやってしまい、それ以来、やり手だった彼をガクンと落ち込ませて仕事をする気を奪ってしまっていた。
こちら側の心理も描こうとする。・・・

・・・・・と、いうことが、この映画はどうやらやりたいらしい。
というのはよく分かった。

とは言え、最初に書いたように、この手のセンを狙うと、ついつい一応見てみたくなってしまうのよね・・・。
駄作だと、『ブラック・ダリア』のようだと言い、意外に良いなら、『LAコンフィデンシャル』を思い出しただろうと思う自分の姿を、読めてはいたんだけど。
この手のクライム・サスペンスは、ベタでもいいし、展開が読めても仕方がないとは思ってるんだけど。

ただ、犯人側の気持ちを描きながら・・・、
間違った方向に進んだ愛が故の破滅的結末、だが彼女は一切後悔していないというその姿、これらを生き生きと描き出すわけでもなく、・・・というか、彼らのシーンは少なすぎ。また、トラボルタの刑事側の方も、だからと言ってそれに対抗できるほど、強く描かれていないというか。
捜査がシンプルというのもあるのだろうけど、特に見所がどこか、いまいち分からないというのは寂しいな。
どっちつかずの、編集に迷った挙句に、中途ハンパになっちゃった、という印象かな〜。

犯人側の“悪の魅力”もいまいち伝わってこないから余計、対照的に描かれるはずの、“孤独な女性をほうっておけない刑事”の姿も、いまいち精彩を欠くというか。

まあそんなわけで普通すぎる作品でした。
ブラック・ダリア』のようにJ・エルロイ作品で駄作をやられるよりかは、個人的にマシかな。

ロンリーハート@映画生活
「ロンリーハート」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

 

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コメント(15件)

  1. 映画「ロンリーハート」

    映画「ロンリーハート」に関するトラックバックを募集しています。

  2. 『ロンリーハート』 2008年3本目

    ロンリーハートクラブ…新聞の文通相手募集コーナー。実態は恋人募集コーナー。
    『ロンリーハート』 2008年3本目 1/11(金) 仙台フォーラムにて
    実在した事件や殺人犯をモデルにした映画は結構あります。
    ハリウッドを震撼させた全裸の美女の死体、『ブラックダリ…

  3. こんばんは。
    結構楽しめました。
    殺人詐欺カップルは女の狂気が凄まじく、「愛」を感じる暇はなかったですが、トラボルタは刑事としてのこだわり、父としての弱さ、夫としての後ろめたさ、男としての苦悩、そんなものを感じました。

  4. 健太郎さんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    おっしゃる通り、女の愛はほとんど狂気と結びついていましたね。
    トラボルタも、今までの自分の過去の傷を責任として抱え、苦悩する姿が見えました。

  5. とらねこさん こんばんは
    私も,こんなテーマは個人的にツボなので
    楽しみに観たのですが,おっしゃるとおり
    不完全燃焼のような部分も感じました。
    駄作とまではいかないけど,なにか中途半端で
    惜しいところがたくさんありましたね。
    監督さんは,刑事のお孫さんなので,彼の心理状態も描きたかったのでしょうが
    あれは描ききれてなかったから
    レイとマーサだけに絞って掘り下げてくれたほうが
    わかりやすい作品になったかなぁ。
    俳優さんはみんないいのに,勿体ない。
    でも確かに「ブラックダリア」よりは,いいです。

  6. ななさんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    そうですね!確かに、ちょっと不完全燃焼なところがありました。
    監督は、この刑事のお孫さんなんですね!
    さすが、ななさん、よく調べられていますね。
    なんというか、ちょっと中途半端に感じてしまいました。

  7. 女の嫉妬は恐ろしい…☆『ロンリーハート / LONELY HEARTS』☆

    私の好きなジョン・トラボルタ×ジャレッド・レトー×サルマ・ハエックの三つ巴ってことで、必見だった本作。
    『ロード・オブ・ウォー』ではイケメンくんだったジャレッド・レトーが、本作ではハゲ(^_^;)
    それも最初はウィッグでハゲを隠したイケてる結婚詐欺師のはずが、….

  8. ロンリーハート

    【LONELY HEARTS】R-152007/11/10公開製作国:アメリカ/ドイツ監督:トッド・ロビンソン出演:ジョン・トラヴォルタ、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ジャレッド・レトー、サルマ・ハエック、スコット・カーン
    愛してるから・・・殺す。

  9. ロンリーハート

    アメリカ犯罪史上、最も悪辣な連続殺人犯:動機は孤独──これは実話

  10. ロンリーハート

     コチラの「ロンリーハート」は、1970年にも「ハネムーン・キラーズ」という映画で取り上げられたことのある実在した殺人鬼カップルのレイモンド・フェルナンデス(ジャレッド・レト)とマーサ・べック(サルマ・ハエック)を追う刑事のエルマー・ロビンソン(ジョン・ト….

  11. 『ロンリーハート』を観たぞ〜!

    『ロンリーハート』を観ましたアメリカ犯罪史にその名を残す殺人鬼カップル、レイ&マーサをモデルに描く犯罪サスペンス・ドラマです>>『ロンリーハート』関連原題: LONELYHEARTSジャンル: サスペンス/犯罪/ドラマ上映時間:107分製作国: 2006年・アメリカ/ドイ…

  12.  この「ロンリー・ハート」は
    バラエティ番組「ザ世界仰天ニュース」、「ザ ベストハウス1,2,3」で マーサ&レイ事件の紹介がされていましたので いきさつは おおよそは 把握していますよ。

     このふたり、自分たちのロマンスのために殺人を繰り返したわけですので ムナクソがわるくなります。
    あ~やれやれ(´д`)

      ぜったいこのふたりをアイドル視したり感動してはいけない その正体は ちっぽけなゴミなのだから・・・

     あと 僕は このマーサ&レイ以外のロンリー・ハート事件を もうひとつの事例を 知っています。 次回のコメントで とらねこ様に 教えますよ。

     これ以上 このマーサ&レイについては これ以上コメントは思いつくまい 

     このふたりはゴミのような人間である

  13. zebraさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あ、これTVでやっていたのですね。マーサは、実際は美しい女性でもなかったらしいですね〜。太っていたようだし。

    おっしゃる通り、「自分たちのロマンスを追求していた」ようです。・・・フフフ、この言い方いいですね!なかなか、一言には言い表せないようなことを、一文で表した文だと思います。
    疑心暗鬼になったり、相手を好きであるが故に精神的におかしくなったり、自分への愛を試すような行為を強要してみたり・・
    こうしてみると気持ちが分からないでもないのですが、そのやり方が歪みすぎていて、見ていて気持ち悪くなってくるんですよね・・。
    すごく頭に来るわけですが、なんだか反面、ちょっとだけ、いや、本当にちょっとだけなんですけど、二人だけにしか分からないような価値観がちょっとだけ羨ましかったりして・・・。
    なんて言ったら、zebraさんに軽蔑されるかな?

    マーサ&レイ以外のロンリー・ハート事件の別の事例って、誰のことでしょう?

  14. こんばんは 返信コメントありがとうございま~あす

     実は僕 前のコメントしましたと思いますが
    新聞の恋人募集広告“ロンリーハート・クラブ”にからむ殺人事件を もうひとつ知っています .
    7’8年くらい前に「奇跡体験アンビリーバボー」で 紹介されていた事例です。

    主犯格は アイネーズ・ブレナン 女。
    共犯者は三人の息子 アイネーズは農場経営者。40代半ば。離婚歴あり。

     ニューヨークの新聞コラム「ロンリーハート」に投稿し交際希望者を募集します

     「わたしの農場に来て しあわせな家庭をいっしょに築きましょう」と言葉たくみに言いくるめて自宅を兼ねた農場に引っ越させて

     相手の男性が信用しきったところで 悪魔の本性を現し 農場の裏庭で相手の男性を殺害します。

     殺害の実行犯は三人の息子たちで 殺害した遺体を冷たい農場の土に埋めて 被害者の金品の類を奪います。

     アイネーズとその息子たちの毒牙にかかった男性は3~4人いたそうですよ。

    その後 殺された被害者の親戚が行方不明を不審におもって警察に通報し アイネーズの農場にたどりついて 家宅捜索した結果… 数体の遺体が農場の土の中から掘り起こされて 事件が発覚します

     アイネーズは マーサ・ベックと違い、年齢よりわかく見られる上に美貌を持っていましたが その反面 とても冷たい心の持ち主で 人のお金や物をほしがる貪欲さが強すぎ 
     その強欲さが事件の引き金になったみたいです。

     離婚した元夫も「アイネーズに殺される」と思い 彼女から逃げたのが真実でした!

     裁判の結果 三人の息子のうち アイネーズと 三男は終身刑。ふたりの兄は終身刑を免れました。

     判決に不満だった判事は 「もし やつらを絞首台に 送れるなら それが私のこの上ない喜びだ」 と
    あからさまに言い放ったくらい ひどい事件だったくらいです

     長男と次男は消息不明。三男は出所後 行方不明。 主犯のアイネーズは刑務所で病死。

     これが もうひとつの「ロンリーハート事件」…「アイネーズ・ブレナン事件」の真相です

     ロンリーハートの恋人募集広告は今の出会い系サイトと同じですが、じつはこのアイネーズ事件は1948年 いまから60年も前に 起きた殺人事件です。

     

  15. zebraさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    おお、先だっての予告通り、また別のロンリー・ハート事件について教えてくださり、ありがとうございました。
    確かに、ロンリー・ハート事件と重なる部分のある事件でしたね。
    ロンリー・ハート事件では、男性が恋愛詐欺、その恋愛関係にある女性が裏で糸を引いていたわけですが、こちらは女性が男性を歯牙にかける詐欺事件だったのですね〜。
    判事の露骨な意見が、公判を見ていたものの胸がすくぐらい、胸糞悪くなる事件だったようですね。
    相手の思いを利用し裏切って、得たのはたかが金品ですか・・。
    そんなものは死んだら持っていけないものですのにね。
    私は人の思いというのが一番大事なもので、死んでも残るものだと思ってるものですから・・。
    酷いものです。




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