rss twitter fb hatena gplus

*

#170.ONCE ダブリンの街角で

once物語それ自体ではなく、まさに音楽によって語られるスト-リー。
ありふれた話なのに、全く新しい感動を覚えるのは、見事というしかない。

ストーリー・・・
アイルランド、ダブリン。多くの人が行き交うグラフトン・ストリートでオンボロのギターをかき鳴らし自作の歌を唄う男(グレン・ハンサード)がいる。そこに一人の女(マルケタ・クルグロヴァ)がやってきた。10セントのチップを出し、あれやこれやと男に質問する。挙句、掃除機の修理の約束をさせられてしまう。翌日、壊れた掃除機を持って女が現れた。途中、ピアノを弾かせてもらえるという楽器店に立ち寄った。彼女の腕前に感心した彼は、一緒に演奏することを提案するのだった。・・・

この映画はまさに、どれだけ音楽というものが映像の中で訴える力のある、力強いものか、それを初めから知っているに違いない・・そういう作品だった。
男と女が出会って恋に落ちる、それだけの物語で、きちんとしたミュージシャンを使って作られたら、それがどれだけ強いか。
・・・その凄さを十二分に分かっているのだ。

主演の男を演じるのはThe Flamesというバンドのギター・ボーカル、グレン・ハンサード、女もシンガーソングライターとのことだ。マルケタ・クルグロヴァ。彼女は実際にもグレン・ハンサードと共同制作でアルバムを作ったらしい。そして監督も元The Flamesのベーシストだったことがあるらしい。まさに音楽に特化した、作品だったのだ。

むしろ劇中に、台詞を通さず、音楽でもって説明しようとしているかのよう。
古臭かろうとなんだろうと、音楽が与える感情は、その人の深くへと浸透する。
観客は、初めは少し驚いて見つつも、物語のかなり早くのうちから、ストーリーを追いかけるのを途中でやめてしまうだろう。
そしてそうすることが、この映画を楽しむコツだ。

シンプルな歌詞はいかに幅広く、それぞれの心のサイズにぴったりフィットするものだろう。
歌詞そのものもシンプルと言えばシンプル、もちろん音楽もシンプルなもの。

ところで、久しぶりにシン・リジーなんて名前を聞いてしまったよ・・・。
シン・リジーのコピバン専門て(笑)日本じゃそーとーマイナーなんですけど、アイルランドじゃ違うのかな(笑)
オリジナルを作ったこともなければ、レコーディングをしたのも初めての連中という設定のバンドと組んでのレコーディング。ドラムにマイクをかぶせることすら知らない連中、へっ、・・新聞でも読むか、とプロデューサーが一瞬バカにした後。いざレコーディングが始まって彼らの音楽が鳴り出し、サビの辺りに来て、プロデューサーの目の色がすっかり変わる。このシーンは好きですね〜。
このプロデューサー、まるで坂本龍一に見えてしまった。・・・なんとなく似てない?

でもさ、初めの楽器屋での初セッション。Cコードで「ドレミレ・ドレファミ・ドレミレド♪」って、いくらなんでもストレートすぎるんじゃ〜〜〜って、ツッコミが入れたかったの私なんですが、気がついたら映画見終わって何日も経つのに、まだ歌える・・・これなんですよね〜。

何よりやっぱ、この切なボイスがいいんだよね〜。コーラス部分で思いっきりシャウトするのがこの、グレン・ハンサードのスタイルなのかな、それに対して、Aメロの出だしはまさに繊細で、誰もが聞き入りたくなるよう。
語るように歌うけれど、それが映画すら凌駕して、音楽の持つ世界にのめり込んで行く自分を感じた。
女性の方のマルケタ・クルグロヴァも、この声で男が惚れてしまうのも分かる〜。
もっともっと聞いていたくなってしまった。消え入りそうな声が心の繊細なところを、ビシビシ弾いてくる。おおおおっ、良いな良いな♪

この物語のラストは・・・。もしかしたら、物足りなさを感じる人もいるかもしれない。二人とも純粋な大人で、それぞれの思いにスレ違いがあって。
この恋は、映画みたいにハッピーに成就するわけではないのだけれど、この切なさがまた、自分の中で何かを刺激するわけですよ。

出会ったときめきが膨らむ瞬間と、心の痛みが甘さを伴う切なさ感。
何よりこの音楽が、自分の中で普遍のメロディになって、溶け出して流れ込んできました。

※注 コメント欄は、ネタバレしています。まだ見ていない方は、スルーしてください!

ONCE ダブリンの街角で@映画生活
「once ダブリンの街角で」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む

『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン

心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む

4,974

コメント(75件)

  1. once ダブリンの街角で

    11月24日(土) 17:05?? チネ3 料金:0円(ポイント利用) パンフ:700円 『once ダブリンの街角で』公式サイト 大人の男女の純愛。素晴らしい作品だ。何も言うことは無い。onceという言葉が、ハリウッドのペラペラなラブストーリーと違うことを語っている。 主…

  2. Once ダブリンの街角で♪

     ふたりをつなぐ、愛より強いメロディ♪
     
    2月1日、京都シネマにて鑑賞。
     
    非常にシンプル&ナチュラル?な映画でしたね。えぇ〜とシンプルもナチュラルもいっしょ意味ですかね。
     
     
    あらすじ
     
    ONCE、たった一度の出会いある日、あ…

  3. 「ONCE ダブリンの街角で」

    「ONCE ダブリンの街角で」、観ました。
    「いつDVDになるんだ」と思って調べたら、まだやっていたので、観ました。
    そしたらこれ、今年のギ..

  4. 映画「onceダブリンの街角で」を観ました。2008年55本目。

    製作年 : 2006年
    製作国 : アイルランド
    主演;グレン・ハンサード 、 マルケタ・イルグロヴァ
    ダブリンの街角で、ある男が街頭でギターを弾いていたら、女の子が近づいて来た。
    彼はいろいろ質問攻めにあったので、うっとおしかったのだが、なぜかお昼ご飯を一緒に食べるこ…

  5. once ダブリンの街角で

         
    = 『once ダブリンの街角で』  (2006) =
    ダブリンの街角で、毎日のようにストリートでギターを弾く男(グレン・ハンサード)が、ある日、チェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会う。
    ふとしたことから、彼女にピアノの才能があることを知っ…

  6. No.104 ONCE ダブリンの街角で

    自分の夢とか別れた彼女の事とか、曲で表現
    していました。耳をすましていると
    こんな風に別れたのかとか心象風景が見えてきた。

  7. mini review 08309「ONCE ダブリンの街角で」★★★★★★★★☆☆

    アメリカでわずか2館の公開から口コミで動員数を増やし、最終的には140館での上映となった話題のラブストーリー。ダブリンの街角で出会ったストリート・ミュージシャンと音楽の才能を持つチェコ移民の女性が、音楽を通して惹(ひ)かれ合っていく様を描く。アイルランドの実…

  8. ONCE ダブリンの街角で

    2006年 アイルランド 2007年11月公開 評価:★★★★☆ 監督・脚本:ジ

  9. 【映画感想】ONCE ダブリンの街角で

    ONCE ダブリンの街角で デラックス版グレン・ハンサード, マルケタ・イルグロヴァ, ジョン・カーニーおすすめ平均 手作り的な小品でも心に残る作品が創れるという証まさに運命。FALLING SLOWLY静かな映画人には夢が必要です。(>oAmazonで詳しく見る by G-Tools

  10. http://apablog.cocolog-nifty.com/diary/2008/08/post_2d4a.html

    日記:2008年8月某日 映画「ONCE ダブリンの街角で」を見る. 2006年.監督:ジョン・カーニー. 出演: グレン・ハンサード(男),マルケタ・イルグロヴァ(女),ヒュー・ウォルシュ(ティミー

  11. とらねこ様
    TBありがとうございました.
    これも周回遅れですがコメントさせていただきます.
    僕が意外と受けたシーンは,銀行の融資係が(実は俺も)とばかりにギターを抱えて歌い出したシーンですね.
    とにかく全編に音楽に対する愛情があふれた作品で,音楽が好きな人の心を打つのも当然だと思います.

  12. ほんやら堂さんへ★
    こんばんは〜♪こちらこそTBありがとうございました。
    いつも“周回遅れ”とおっしゃるんですが、それはDVDでご覧になっているから、ということでしょうか?(笑)
    だとしたら、全く気にしないで下さい、こちらは全然大丈夫ですので!
    誰もが共感出来るような、オーソドックスな歌詞、オーソドックスなメロディラインのおかげでしょうか。
    音楽の嫌いな人なんていないですよー。

  13. 『ONCE ダブリンの街角で』

    ONCE ダブリンの街角で デラックス版(2008/05/23)グレン・ハンサードマルケタ・イルグロヴァ商品詳細を見る
    監督:ジョン・カーニー CAST:グ…

  14. 『ONCE ダブリンの街角で』

    2007年のアカデミー歌曲賞も受賞している話題作、『ONCE ダブリンの街角で』をやっとDVDで鑑賞。
    音楽の素晴らしさもまた身をもって感じたけれど、ストーリー自体はあまりに局所的で自分は馴染めなかったかなー。
    ********************
    アイルランドのダブリンを舞台…

  15. 割りと前ですが見ました♪
    いや〜楽器やっている(やっていた)人にはたまらない映画ですね
    ボク的な意見ですが、これは二人の恋愛映画ではなく
    音楽の力で、立ち止まっていた二人が一歩を踏み出す”きっかけ”を描いたエピソードだと思うんです
    彼らが年老いた時に「あの出会いで今の自分があるんだなぁ」って思う
    人生を送ってくれる気がしてならないのです
    曲が頭から離れず・・・なので、初めてサントラ買いましたよ
    でも、アルバムだとイマイチかなー
    楽器屋で合わせた曲とスタジオでやった曲は◎。
    二曲だけでも買う価値あるかな。アコギでかき鳴らして歌いたいです
    問いかけの答えです・・・今頃だけど^^;
    >>何人兄弟だか教えてくださーい。
    二人兄弟の次男坊でーす
    >>秘書が欲しいって・・・秘書が必要なお仕事されてるんですか?^^
    いえいえ、違います。車屋さんです。
    独身男のエロい妄想で(笑)きれいな秘書が欲しいって書いたのでした
    サントラCDのライナーに書いてあったんですけど
    主演の二人は実生活では恋人同士だとか。
    グレン・ハンサード、羨ましすぎるゾ、ちくそー
    今現在はどーなんでしょーかね?

  16. サイさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    おお!サイさんも以前、楽器やられてたことあるんでしたよね♪
    この映画、なかなか良かったでしょう?^^*
    私のリアル友とか、ブロガーさんでも、仲の良い人は、大抵この映画を気に入る人が多いみたいなんですよー
    サイさんも気に入られたとは、すごく嬉しいです!
    >これは二人の恋愛映画ではなく音楽の力で、立ち止まっていた二人が一歩を踏み出す”きっかけ”を描いたエピソード
    ほぅー。そうですか、そうですか
    んーただ、自分に言わせればですが、この物語は、
    “もう少しで恋愛関係になるかもしれなかった”ところが自分にはポイントだと思ってるんですよね。
    「もしかして、時期さえ合えば、恋愛になっていたかもしれない」「だけど、残念ながらそうはならなかった」「でも、素敵な人で、どこか心の中で忘れられない人」
    この辺りで、きっとお互いのことが、二人の心のどこかで残るだろう辺りが、良かったんだナーって。ま、単に自分の好みで言わせればですけどね♪
    >主演の二人は実生活では恋人同士だとか
    そうそう♪これ、CD買った友達も言ってました★
    あ、今度この二人、来日するんですよね。ライブもやるみたいです。
    >アコギでかき鳴らしてみたい
    うん、いいですね♪そして、路上で歌って欲しい(笑)
    二人兄弟の次男坊だったんですね☆ふむふむメモメモ(ぇ)
    >エロい秘書
    『アイアンマン』のグウィネス・パルトロウ、清純な色気でよかったですよね♪
    しかも優秀ってトコがまたいい!
    確かに、エロい秘書は、全男性の憧れかも・・。
    自分は、高校の時に、秘書やりたいなーとか思ったことあります^^

  17. 『onceダブリンの街角で』’06・アイルランド

    あらすじダブリンの街角で毎日のようにギターをかき鳴らす男(グレン・ハンサード)は、ある日、チェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会う。ひょんなことから、彼女にピアノの才能があることを知った男は、自分が書いた曲を彼女と一緒に演奏してみることに・・・…

  18. 映画「onceダブリンの街角で」

    原題:Once
    引き裂かれ沈む夕陽に暮れなずむ2人、一度だけの出会い、一度だけの触れ合いで心を通わす??儚くも切なく哀しい、けれど希望に満ちたラブストーリー??
    ダブリンの街角で今日もギターをかき鳴らし歌声を響かせる男(グレン・ハンサード)、恋人が彼の元…

  19. こんにちは♪
    >男と女が出会って恋に落ちる、
     それだけの物語
    ホント何の変哲も無い話なんですが、
    これがもんスゴイ惹き付けられるス
    トレートで素晴らしい作品でした。
    音楽がまた耳に心地がイイ!
    「ザ・コミットメンツ」も素晴らし
    かったけど、それに負けず劣らずで
    アイルランドの音楽映画の質の高さ
    を再認識したと言ったところです。
    >この物語のラストは・・・。
     もしかしたら、物足りなさを感じる
     人もいるかもしれない。
    いや〜このラスト正解だと思いたいです♪
    (゚▽゚)v

  20. ONCE ダブリンの街角で

     アイルランド 2006年
     ロマンス&音楽
     監督:ジョン・カーニー
     出演:グレン・ハンサード
         マルケタ・イルグロヴァ
         ヒュー・ウォルシュ
         ゲリー・ヘンドリック
    【物語】
     男は穴の開いたギターで毎日のように街角に立ち、歌を歌…

  21. 風情さんへ
    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
    >男と女が出会って恋に落ちる、それだけの物語
    ボーイ・ミーツ・ガールな物語って、なんだかんだストレートだけどやっぱりいいですよね〜
    まっすぐに音楽の良さを感じることが出来る、ナニゲに凄い作品だったと思います。
    人間同士が惹かれあう時に、音楽がそこにあると、なんだか言葉もいらなくなってしまいますね。
    私もこのラスト正解だと思います。
    ただやっぱり、もったいない気はちょっぴりするんですけどね。
    私コミットメンツはまだ見てないんですよ。見てみたいなあと思ってます。

  22. 『onceダブリンの街角で』を観たぞ〜!

    『onceダブリンの街角で』を観ましたアメリカでわずか2館の公開から口コミで動員数を増やし、最終的には140館での上映となった話題のラブストーリーです>>『onceダブリンの街角で』関連原題: ONCEジャンル: ロマンス/音楽製作年・製作国: 2006年・アイルラ…

  23. 『onceダブリンの街角で』を観たぞ〜!

    『onceダブリンの街角で』を観ましたアメリカでわずか2館の公開から口コミで動員数を増やし、最終的には140館での上映となった話題のラブストーリーです>>『onceダブリンの街角で』関連原題: ONCEジャンル: ロマンス/音楽製作年・製作国: 2006年・アイルラ…

  24. ONCE ダブリンの街角で

    ONCE ダブリンの街角で
    ’06:アイルランド
    ◆原題:ONCE
    ◆監督:ジョン・カーニー「オン・ザ・エッジ 19歳のカルテ」(未)
    ◆出演:グレ??.

  25. 「once ダブリンの街角で」 DVD

    この映画は音楽映画で、少し孤独な男、シンガー・ソングライターというより最初は単に路上の弾き語りだったのが、魅力的な女性と出会いつつ、バンド、デモ録音という話だと書いてしまうだけでは、この映画の魅力は語り辛いかもしれない。音楽そのものが心地よいのと、二人の…




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑