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舞姫(テレプシコーラ)1巻〜10巻

テレプシコーラ山岸涼子先生、’07年、手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞、おめでとう!
う〜ん、今年のことだったのに、お恥ずかしながら知らなかった・・・。


山岸涼子先生は、萩尾望都・大島弓子・竹宮恵子と並び称される、ベテランの中のベテランの漫画家だったりします。ただ、私は今まで生きて来て、「山岸涼子が好き」という人には、会ったことがないんですよね。私の周りにはいなかった、ってだけの話なのかもしれないけど。女の子だったら、いくらでも漫画に詳しい子は居るのに、さすがに古い世代の漫画家に詳しい子でも、この先生のコミックを全部持ってる人はちょっと聞いたことがない。辛うじて皆『日出づる処の天子』だったら、聞いたことがあるとか、数冊読んだこともある、という程度かな。
それにしても『日出づる処の天子』はすごい。誰が聖徳太子を主人公に、こんな奇天烈な話を思いつくっていうの?彼女はまさに天才なのです。


山岸先生の描く分野というのは、なんというか、特殊なんですよね。
ギリシャ神話を題材に取ったもの、古代の日本や、古代エジプト。精神病者の世界や、死後の世界を、死者の目線から描いたものなど、異次元を描いたものが特に好き。極めてアート性が高いです。絵は繊細なのだけど、その抱える奥深い世界観はすごいものがある。
あと、得意なのがバレエ漫画。今回のこれもそうですが。
他に、社会派のものは現代日本社会を鋭く切り取ったものだったり、怪談なんかも好きみたい。
彼女自身、霊感があるらしいのだけれど、彼女の描く怪談は、他の漫画とはちょっと違う。ざっくばらんに、雑談口調で、「こんなことがあった・・・」と、気楽にアシスタントの話を始める。常に“身近な”話を描くから、余計リアリティがあって怖いのね。どっか聞いたことのあるような怪談話ばかり、と言えばそうなんだけど、実体験てのがね、もう背筋がゾゾっとするんですよね。


この物語は、バレエの専門的知識の豊富な山岸先生が、大昔に人気を博した漫画『アラベスク』以来、久しぶりの長編漫画!
この『アラベスク』は、これがまた、ロシアを舞台にした、大掛かりな物語。当時から、普通の少女漫画にはなかなか見ない専門的な描き方と、マニア垂涎の、明らかに時代を先取りしすぎた腐女子たちに、カルト人気を博したそうです。
で、バレエから少し遠ざかっていた山岸先生が、久しぶりにノリノリで、ヤル気満々。第一巻から長編を目論んだ作りになっています。その長編も、ようやく10巻。


前述したように、今年の手塚治虫文化賞マンガ大賞を取った、ということで、朝日新聞に載ったらしく、読んだ人がさすがにこの完成度の高さを褒めてます。
にも関わらず、相変わらず残酷さを感じてしまったりするところもあって、ファンとしては嬉しい。

ストーリー・・・
バレエを目指す小学生の女の子の姉妹、千花(ちか)と六花(ゆき)。母がバレエの先生で、家がバレエ教室を開いていることもあり、子供の頃からバレエの英才教育を受けていた二人。
ある日、転校生として、六花(ゆき)のクラスに須藤空美(すどうくみ)がやって来る。彼女は全く男の子にしか見えない、醜い少女で、家が超ド級に貧乏。生活保護を受けているのに、父親は酒飲み、おまけにDV。壮絶な家庭。生活費のために、空美に児童ポルノに出演させる母親。
だが、父の姉の須藤美智子は、元・天才プリマで、厳格なワガノワ・メソッドを、空美(くみ)に教えこんでいた。最近ボケが始まっているのだけれど、バレエのこととなると、とたんにシャキっとするのだった。・・・

この空美(くみ)ちゃん、3巻で失踪したまんま、顔をその後一度も出さない。空美ちゃんがいつ、どんな登場の仕方をするのか、楽しみで仕方がない。
で、残された姉妹の話はまだまだ続きます。さすがに長くなりそうで、ここでは語れませんのであしからず。単行本を買ってくださいw
しかし、このドラマ性はさすが。ちょっと普通には考えられないでしょう。『昴(スバル)』をご存知の人には、是非とも読んで欲しいな。こっちも、大河ドラマ的バレエ少女漫画なので。
すごい面白いです。唸ってしまう。・・・とは言え、さすがに10巻はググ〜っと落ち込んじゃったな。第一部・完なのだけれど、途中の物語の展開は、あまりに苛酷。読んでてちと思い出すのがキツイです・・・。でもこれがこの人の真骨頂。
苛酷な残酷さがたまらない。

 

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コメント(13件)

  1. とらねこさん、はじめまして〜☆
    映画はぼちぼち好きですが、なかなか時間が作れなくて、おまけに地方に住んでいるために、遭遇できない映画も多く…という私。 どうぞ、ヨロシクお願いします〜♪
    映画中心のサイトかしら?と、ときどき覗かせて頂いていました。今日は、昔よく読んでいた、山岸凉子先生の話題で、引き寄せられちゃいました〜笑
    作品全部読んだわけではありませんが、ヒンヤリするような独特のタッチは覗かずにはいられないです。
    『日出づる処…』には、はまりにはまりまった記憶が…しばらく、太子のファンでしたから…爆!
    『舞姫』も面白そう〜☆ ご紹介ありがとうございました〜♪ (パラパラと立ち読みしたこともありましたが、じっくり読んでみたくなりました!) 

  2. パピヨンさんへ
    初めまして!コメントありがとうございます!
    とっても嬉しいです!ここは誰も来ないんじゃないか、と思ってたんで・・(泣)
    山岸涼子がお好きな人と、自分のブログで話が出来るなんて、とってもとっても嬉しいです(滂沱)
    へえ、前から読んでくださってたなんて♪お話に来てくださればよかったのに〜☆
    で、確かに山岸涼子先生って、独特の冷たさ、というものが底辺に流れているんですよね。
    私も、『日出づる〜』はものすごく好きです!
    やっぱ厩戸王子ですよね。あれは神と思いました!
    『舞姫』も、きっとハマると思いますよ〜。
    今まで山岸涼子先生を知らなかった、っていう感想をいくつも読みましたが、その多くが絶賛してましたヨ☆
    是非是非、読んだら感想また聞かせてくださると嬉しいです!途中まで読んだとかでもいいですし☆
    ではでは、またよろしくお願いします!

  3. 山岸涼子先生といえば、ホラーも外せません(笑)
    「汐の声」「わたしの人形は良い人形」とか、もう
    ちびりそうに怖いよぉ〜
    でも傑作。

  4. 珍しい漫画ネタ。
    なのに山岸涼子!
    ここ最近のネタの並び(パンチ効いてるよネ☆)としては順当だけど、
    さすがあえてのとらねこ流!ディープ!
    白鬚も山岸トランスワールド好き者だけど、ジャンル:バレエだけは未見
    あの、どっか暗黒を纏うビジュアルとバレエが
    どーもわしの中で噛み合わなくて・・・
    犬フグリの話とかはね、もー炸裂って感じで、
    その白い虚無さがかえっていいんだけど。

  5. ochiaiさんへ
    こちらにもありがとうございます♪
    『汐の声』!怖かったですね〜。
    こればっかりは最大の傑作の一つですよね。
    いやあ、これをご存知なんて、さすがだわ。
    私は、一番好きなホラーでしたよ。カリスマ的な作品でしたよね〜。
    『私の人形はよい人形』もね、ありがちな話なのにやっぱ怖いんですよね。うん。
    『鬼』なんかも結構背筋が寒くなりますよ。心が冷たくなるというか。

  6. 白髭タン
    ムッシュ〜!ボンジュール!元気してた?
    もうもう、白髭タンたら、全然更新しないんだモン!
    重くなるのも嫌だから、ちょっといいずらかったけど、ここ最近はさすがに寂しかったんだよぉぉぉぉ。
    でもでも、遊びに来てくれてありがと♪嬉しいよ〜!
    そうなのです、トレンドリーダーの白髭タンには、確かにバレエ漫画は、ちょっちナウくないかもしれないデスね(爆)もう、クラシックな匂いがプンプン!でもでも、この『アラベスク』!私もなかなか手に取れなかったんですが、見たらこれすごく面白かったんですよ!是非とも見て欲しいナ〜。
    そう、他の作品でも、この人の基本的残酷さは、かなり来るものがあるんですよね。私は大好きなんですよ♪

  7. すいません、こちらにもお邪魔いたします^^♪
    これ全巻持っております(^ー^* )フフ♪
    4〜5回は読み直したでしょうか^^
    ついこの前出た「ヴィリ」も買って読みました(^▽^)V
    またしてもバレエ題材で嬉しかったですが
    1巻だけで完結だったので、また舞姫(テレプシコーラ)の続きが読みたいです♪
    そうそう、空美ちゃんのその後も知りたいですよね〜。
    実は私、山岸凉子先生の大大大ファンなんです〜〜〜〜♪
    多分、ほぼ全部?!彼女のコミックスは持ってるかと(^ー^* )フフ♪
    とらねこさんもファンと知って、めちゃくちゃ嬉しいです♪♪♪♪♪

  8. おーい、ムッシューじゃねぇぞー!
    白鬚、レディレディだゾ☆ 知ってた?つか知ってて!
    いやぁ、仕事で資格取んなきゃいけなくて勉強してたんだけどー
    読み物とお遊びの時間は減らせないので、
    必然的にwebの時間が減ってたんだけどさー
    そーなると、もう面倒くさくて
    人のは見れるし、いーかなー?ってんで、とらねこリーナのトコも
    回ってきてカラオケのトコでほくそえんだりしてました。
    アラベスクは完結してるし、トラリコメンドだし見たいなー!

  9. メルさんへ
    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    きゃあ〜!メルさんもそんなに山岸涼子のファンでしたかあ!
    それを聞いてとっても嬉しいです!素敵〜
    うんうん、私も新刊出るたび、読み返してしまいます。あ、私の場合は忘れているだけ、ってのもありますけどねw
    『ヴィリ』読みましたか☆
    ハイハイ!ついこないだでしょうか?
    私も読みました。今回のパターン、「あ、そうだったんだな」って思いましたよね☆
    源氏物語の東十条の君、でしたっけ?
    いやあ、こちらこそメルさまのカミングアウトをお聞きして、とっても嬉しかったです。
    実は私も、『レザボアドッグス』を見ているなあ!と思ってついついコメント書いてしまったんですが、山岸涼子までそんなにお好きとは〜!!
    もう嬉しくってしょうがないです!!にゃは☆

  10. 白鬚タン
    >白鬚レディ
    あ、そこはもう以前私さ、ちょこっとイタイ思いをして・・大丈夫よ〜!久しぶりな人にサ、ホラ、呼びかける言葉みたいな?
    「ムッシュー久しぶり、」なんて言うとゴロがいいっつーか。娘さんはドイツ語で「フロイライン」?ちょっと言いずらいデスね〜!
    仕事で資格試験の勉強があったのね!了解、納得納得!私も、合格をイノッチイノッチって、祈ってる♪(あ、ごめん、ちょっと酔っ払ってる・・。家で飲んでて友達帰ったとこでサ☆)
    >カラオケのトコでほくそえんだり
    エー。コメントくれればよかったのにィ!
    >『アラベスク』
    そうそう、すごく面白かったですよ〜。白鬚タンはきっと分かるはず!
    あと、できれば『汐の声』も・・・♪

  11. 遅ればせながら(笑)
    >私は今まで生きて来て、「山岸涼子が好き」という人には、会ったことがないんですよね
    ですか。わたしのみたところ『日出処の天子』のファンはけっこうおられるようです。これが好きでも「他の作品も読んでみよう」という人はあんまりいないのかな?
    話に聞いたところでは『アラベスク』でも「振付け師」がかなり重要な役を務めるそうですね。振付け師というとラッキィ池田(古い・・・)くらいしか知らないけど、バレエにおいてはそんなにも重要なポジションなんだなーと
    わたしは1巻から10巻まで一気に読めたからいいけど、一巻からリアルでコツコツと読んでた人は、第1部ラストは相当堪えたでしょうね・・・ もちろん「辛い」だけではなく、それを越えた感動もありましたが
    こないだ続きが気になって『ダ・ヴィンチ』を立ち読みしたら休載してました(笑) 完結はいつのことやら

  12. ペプシじゃなく ましてやコカでもなく 山岸涼子 『舞姫テレプシコーラ』

    昨年の手塚治虫文化賞に輝いた山岸涼子氏の本格バレエ漫画。前々からいろんなとこで絶

  13. SGA屋伍一さんへ★
    おはようございます★コメントありがとうございます!
    >日出る処の天子
    そうなんですよ、知ってる人でも、この辺ぐらいなんですよね。
    まあこれが一番有名なんで、少女漫画をかなり読む人だったらこの作品ぐらいは知ってる、という人はかなり居ます。
    山岸涼子が好きという人に会ったことがない、というのはリアルの話なので、ネットの世界だったらもちろん話は別でしょうね。
    >アラベスク
    これまた山岸漫画のバレエを描いた、別の傑作ですよ!
    SGAさん、ちゃんと下調べしてくれてるんですね!
    これもブラック・スワンもバレエ漫画として最高に面白いです。
    もちろん振付師も出てきますよ。
    この人、いつも一話終わるごとに休載するんです。




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