#159.ウェイトレス 〜おいしい人生のつくりかた
とっても素敵なミニシアター系佳作
なんだか、古き良きインディペンデント映画、って気がします。
ストーリー・・・
ジェンナ(ケリー・ラッセル)は片田舎の小さなダイナーで働くウェイトレス。素敵な出逢いに心がときめいたり、辛い現実に心が乱れたときに、自分の気持ちを込めたオリジナル・レシピでパイを焼き、食べる人を優しく温かな気持ちにさせる才能を持っている。ところが、嫉妬深い夫アール(ジェレミー・シスト)のせいで、人生失敗続き。家とダイナーを往復するだけの人生を送っていた。密かに家出計画を進行させていたある日、予想外の妊娠が判明する。絶望と困惑に駆られるジェンナの前に現れたたのは、産婦人科医のポマター(ネイサン・フィリオン)先生。挨拶がわりにと持参したマシュマロパイが、ふたりの心を急接近させてしまい・・・。
なんとなくオールディーズ風味がする、古い時代設定のような気がするのだけれど、特に物語設定は現代と違うということになってはいない・・・はず。
古いアメリカ、という感じがして、なんだか妙に気持ちがほっこりするの。
いつの時代設定だとしても、共感出来るような女性のオハナシだと思う私。
女性の自立と、子供を持つ気持ち・・・。
女性に共通するような、いろいろな疑問点を、実際に妊娠中の監督、エイドリアン・シェリーが、同時期に描いた物語。
そんなこともあって、女性の目線というものが、すごく等身大なの。
物語冒頭、あまり笑えないジョークだったり、コメディといってもアメリカン・ジョーク?というような気がして、ノレないような気持ちを抱えているうちに、次第に共感してしまった。
なんともまぁインディペンデント映画、というようなテイストの、懐かしさすら覚えるような空気の流れ方なの。うまく言葉に出来ないんだけど、
昔から単館系映画が好きな人には、見れば分かってもらえそうな気がするよ。
言いたいことも性格上我慢してしまう、主人公のジェンナは、日本人的ともいえるような、古風な性格をしているの。
だんだん好きでなくなってしまったダンナに対しても、ついつい従ってしまう。
ダメダメ恋愛をしたことのある女性に、特に分かると思う(笑)
相手に対して言いたいことがあるのに、つい我慢して、相手の好きな自分を装ってしまう人。基本、人に対して寛容性があって、優柔不断なのかもしれないけれど。
自分の人生に区切りをつけたいと思いつつも、なかなかその一歩を踏み出せない気持ち。
周りの同僚を欠点にも関わらず愛したり、うるさいお客さんのジョー(アンディ・グリフィス)とも仲良くなったり、本当はとても優しくていい人なジェンナを見ているのは、とても気分がいい。
自分のおなかの中に居る子供を、決して好きになれそうにもなかったり、
この主人公がずっと抱えている“不幸な感じ”?
普通の映画にはあまりなくて、これこそローバジェットだからこそ、そんなテイストをひしひしと感じてしまう。
ああ・・・全然この映画の良さを説明できていないなあ。とほほ
主人公が妊娠をして、生まれてくる子供に対して、不安感と責任感に苛まれる。その中で、ようやく自分の不幸な人生に対して、何か手を打たなければいけない、と彼女は思っているのね。
その彼女が、少しづつ成長して、赤ん坊を産むまでの物語。
誰しも、「子供を持つ心の準備」なんて、十分に出来る人間なんかいない。
そしてそんな自分を「ウン、肯定出来る」って、少しだけ思えるようになるまでの物語。・・・ってとこかな。
赤ん坊をもうける、そこに本当は「救済」なんかなかったはずなのに。
そして回答なんて求めていなかったのに、不幸な人生と対決する、というか、自分の中でようやく一つの区切りを、彼女なりにつけていく・・・。
目線がとても優しくて、女性らしい丸さがあって素敵な物語だった。
余計なことを言うようだけど、ケリー・ラッセルがどうしてもジャック・ブラックに見えて仕方が無かった・・・
あと、最後に一言だけ。
最後に流れるテロップで、「エイドリアン・シェリーに捧ぐ」と書かれています。この作品で殺されてしまったという監督である彼女。子供を産み、彼女が書いた脚本のこの映画は、口コミでボックス・オフィスの6位にまで昇っていったというのに。
とても残念です。
安らかにお眠りください。
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ウェイトレス??おいしい人生のつくりかた
うっかり見逃しちゃった「ウェイトレス??おいしい人生のつくりかた」をやっと観ました。
( → 公式サイト
)
出演:ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、エイドリアン・シェリー
上映時間:108分
南部の田舎町にあるダ…
とらねこさん、お久しぶりです♪
やっとこの映画観ました〜。
基本的に不倫大反対派なんだけど、ジェンナ側からだと何となく気持ちはわかるかな。
ただ、産婦人科医からの立場からは理解できなかったけれど。
それでも大好きな映画です。
なかでも一番好きなのは、パイづくり中に歌う歌。
なんて優しくって愛情あふれる歌なんだろって…。
そのワリには歌詞は全部忘れちゃったんだけど。アハ♪
AnneMarieさんへ
アンマリーさん!!!お久しぶり!!
ちょっと寂しかったよ〜!お元気でしたか?
で、この映画、アンマリーさんはなかなか楽しめたんですね、良かったァ!
でしょう、不倫推奨するってワケじゃないんですが、ジェンナみたいに「出口が見えない」、と考えがちな時には、きっと心に栄養になる出来事だったに違いないの・・・。
パイ作りの歌、すごく優しくて素敵でしたね!
それなのに、あんなことになるなんて。。。なんだか、ここまで残酷な死に方もないような気がしてしまった。
映画「ウェイトレス ??おいしい人生のつくりかた」
原題:Waitress
おそらく全人類のうち10億人ぐらいは、酔っ払ってできちゃった子なのではないだろうか、喜怒哀楽にも愛の営みにも??美味しそうでたまらなく面白い物語??
ダイナーで働く仲良しな3人のウェイトレス、ジェンナ(ケリー・ラッセル)とベッキー(シェ…
『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』’06・米
あらすじ南部の田舎町にあるダイナーで働くジェンナ(ケリー・ラッセル)はパイ作りにかけては天才的な腕前を持つウェイトレス。ある日、彼女は嫉妬(しっと)深い夫アール(ジェレミー・シスト)の子どもを妊娠。予想外の妊娠に困惑するジェンナは、アールから逃げる計画…
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映画『ウェイトレス ??おいしい人生のつくりかた』(お薦め度★★★)
監督・脚本、エイドリアン=シェリー。原題『WAITRESS』。2006年米。ラブ
ウェイトレス おいしい人生のつくりかた
彼女は、世界一のパイを焼くふしあわせな女性。