※14.『監督中毒』
「三池ってたくさん撮ってて、一体何がやりたいのか良く分からない」と言われてしまうと、すごく歯がゆいものを、今まで感じてた。
だからと言って、特に反論することもなく「ああ・・・」みたいに適当にうなずくだけの私。それは、「流れる血の味の薄い人に、分かってもらえなくたっていいや別に」、てのもあったけど、
何より私自身もいまいちよく分かってなかったから、というのも本当はあったのですよね。
で、もしそうした疑問を持つ人が居たら、是非ともこの『監督中毒』(クリックでAmazonへ)を読んで欲しい。
もちろん映画業界で働く全ての人と、映画業界を目指す人全てにオススメ、
いや、三池監督に興味がなくても、サラリーマンには必携の良本と言えそう。
さらに、「仕事したくないなあ」と思ってる学生、「自分は夢がないし」と思ってる人、
または、バイトならいいけど手に職をつけるのはちょっと・・・等思っている、ニートさん達にも是非読んで欲しい1品。
読んでいて妙に「頑張るゾ」って気になったり、「頑張ってる人って気持ちがいいなあ」なんて、ユンケルでも飲んだみたいに、元気づけられてしまうんだから。
・・・やっぱ、素敵だなあ。三池さんってヤツぁ・・・
あ、ごめんね。
いつもに増して、オススメモードになっちゃって。
えと、ちょっと冷静になって、溢れんばかりの愛は、控えめに・・・と行くね。
そうじゃないと、ついていってもらえなそうだから。
’03年に発行された、ぴあの発刊の本。てことは、ぴあのコラムなのかな?と考えたのだけど、どうも分からない。そうだとしたら編集され、抜粋されてるものがあるようだ。だって、私が覚えてるコラムが載ってないんだもの。もしくは、違う本に載っているのかな?
横浜放送専門学校(現・日本映画学校)の学生だった頃の話から、『ゼブラーマン』の案を哀川翔と練っていて、撮影にこれから入る、っていう時期で終わるこの本は、
三池監督の映画半生を、自身、割と丁寧に述懐したもの。
三池さんていうと、これだけの忙しさだし、「常に走っている」というイメージがあって、あまり普段“述懐する”なんていう、爺さんがやるようなことをやっていたとは、思わなかったのね。
だけど、最後の方で、ようやく分かってくる。
三池さんは、『極道恐怖大劇場 牛頭』で、自身のリセットを行ったんだ、と。
これ以降の三池さんの作品は、きっと、より彼本来の姿、という風になるのだろう、と予感させる終わり方だ。
言ってみれば、ぺーぺーだった頃から、助監督時代になり、そして監督になった彼が、
ようやく監督としての第二期、ターニングポイントに入ったのだ。
私は正直、生きている人が自分のために書いたバイオグラフィーっていうのは、元来あまり好まない。どれだけうまく書かれていようと、その本そのものが本人のリアリティある姿とは思わないので。ヒトラーの『我が闘争』を考えてみれば分かるじゃない?(いや面白いんだけど)
とか言いつつ、『ゲバラ日記』には感動した私だけど。
てな訳で、本当はあまり読む気がしなかった、本にうるさい私なのに、すごく面白かった!
文そのものにも、すごく味があるんだよ。
朴訥とさえ言えるような、起きた出来事を、それもかなり物凄いことが書いてあるのにも関わらず、淡々と事実を羅列していくような文体。男前だねぇ。
映画の専門学校の学生だった時に、全然学校に通わずに居た、ってのも聞いてて凄く共感するし。
卒業制作に携わっているマジメな学生の、足を引っ張らないように、TV局から来た仕事は、学校にロクスポ通わない学生に回され、
そのために三池さんのとこに回って来た、てのもすごく面白い。
使えない使い走りだった頃から、苛酷な助監督時代。
映画の時代だった頃から、TV主体に移り変わってしまった時の、映画人たちのやるせなさや、難しさ。そうしたものを、まだ下から見ていた三池さんの立場。
フリーのような状態であったがために、東映やら、大映やら、松竹、いろんなところの、それぞれカラーの全く異なる現場を、とにかく体験してゆく三池さん。
助監督(何番目ということは置いといて)という立場から、辛すぎる苛酷な現場において、人といかに協力していくか・・・
上やら下やら、いろんなところに気を使いつつ、やれと言われたことを文句言わずに、かつ標準以上の出来をいつも見せて、とにかくがむしゃらにやって来たんだな。・・・
「その人なりのこだわり」そうしたことは誰もが持っているものだけれど、くだらない理屈をこねて、我を出す代わりに、その現場その現場で、見事に空気を読みながら、人を大事にし、そして協調してやって行く。・・・
言うのは簡単だけど、寝る間も惜しんで、自分のやれる限界まで頑張りながら、かつそれを行うことがいかに大変か。・・・
読んでいる内に、「私って、なんて器の小さい人間なんだろう」と、自分を反省してしまいました
こんな男になりたかった・・・。
今村昌平やら、佐藤佐吉の話、野田幸男の話、etc.etc…。三池さんから見た話は、本当に面白いんだけど。
特に読んで欲しいのは、まだ自分のやりたいことも分からない、若者たちだ。
映画の話ばかりでなく、この前向きでひたむきな姿に、やたらと元気をもらった。
自分のして来たことの言い訳やら、人の悪口、そうした後ろ向きなことが全然書いてないところがいい。
このポジティブ精神と、侠気。これには打たれた。
(顔ばっかりじゃなくて、本当に男前な人だ〜)
2007/10/19 | 映画, 本, :三池崇史(今月の三池さん)
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コメント(5件)
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始めまして〜
最近は今月の三池さん書かれないんですか?
なんだか、読んでみたくなりました♪
監督のファンなんです☆
るかさんへ
はじめまして!コメントありがとうございました。
旅行に出かけていたもので、コメントの返信が遅くなり、申し訳ありませんでした!
なんと、るかさんは、ご自身のブログが三池監督の名前だったのですね♪
嬉しいな〜
うちは、三池監督の『オーディション』の名前で検索してくる人は毎月結構いるんですよw
「今月の三池さん」はずっとサボってました・・・。
でも、今月は『十三人の刺客』ですもんね。楽しみにしてます。
さっき、るかさんのブログへ遊びに行ってコメントを書こうとしたんですが、書けませんでした。
これ、アメンバー限定のコメントしか受け付けない設定になってるんですね。
残念・・・。こちらにて、失礼いたしますネ。
来て下さったんですか><
失礼しました〜
コメントはアメンバーじゃなくてもコメント
して頂けるんですけども、
最近、アメンバー記事ばっかり書いていたもので^^;
ただ、コメントもアメーバに登録はしないといけないのですが、
そこからすぐアメンバーになれますので、
もしよければ><
アメンバーのうち、あたしを含め3人が
ブログのタイトルに三池崇史の名前が入ってる
濃いメンバーなので、楽しく交流出きると
嬉しいです。
あっ、こちらにお邪魔しますので、
無理には大丈夫です><
最近、三池さんを追いかけ始めたところです、爆
また遊びに来ますね☆
るかさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
そうですね、アメブロだと、多くの人に見えないように、限定記事を書くことが出来るんですよね。ミクシみたいに。
アメンバーに登録するのがちょっと面倒だったりしますが・・
私も名古屋に三池好きの友人が居るんですよw
私もまた遊びに行かせてもらいますね〜^^