#126.地球で最後のふたり
『インビジブル・ウェーブ』のペンエーグ・ラッタナルアーン監督+クリストファー・ドイル撮影作品。
’03年の作品。
ストーリー・・・
バンコクの日本文化センターに勤めるケンジ(浅野忠信)は、毎日自殺を考えている。今日も部屋で首を吊ろうとしていると、日本でトラブルを起して逃げてきたヤクザの兄のユキオ(松重豊)がやってきた。一方、まもなく大阪へ働きに行く予定のタイ人女性ノイ(シニター・ブンヤサック)は、男の問題で妹のニッド(ライラ・ブンヤサック)とケンカをしてしまう。車を飛び出したニッドの目の前には、川に身を投げようと思案しているケンジの姿があった。悲劇がきっかけとなり、ケンジとノイは出合い、2人のストーリーが始まった。・・・
映像で語る映画。
このタイトルもなんだか好き。原題は、「Last Life in the Universe」。
一人で生きるヤモリの姿に自分を重ねて見るケンジ。
絶望したわけではなく、失恋したわけではなく、ただ死を選んだはずだったケンジ。全く逆の二人が出合って、心を通わせてゆく。
体が、という簡単なものでなくて、ギリギリの状況でなんとなく心が自然に通ってゆく・・・そういうものを描きたかったのかな。
映像だけで語るのは私は結構好きなタイプの映画だ。
強迫神経症的で、部屋が片付いていないと気がすまないケンジは、部屋のそこら中が汚いノイの部屋に居て、片付けたくてたまらないのが伝わってくる。
だけど、相手のことを思って、なんとなく言えなかったり。それは彼の優しさなんだなって思う。
正直、そこまで「酔える」、というほどのストーリーでないのが、少し残念かな。
熱くは決してならなくて、「ただ男と女がそこに居る」、という話。だけど、彼らは、心の奥が、すごく疲れてる。乾いている。コミュニケーションも面倒だったりするの。恋するほどの力もない。
・・・だけど、そこにいる。
そういう話でした。
もう少し、こう、感じるものが欲しかったのだけど、
ドラマツルギーのないところに、この作品の特徴があるのかも。
ところで、浅野忠信は、この次の『インジブル・ウェーブ』でも、この作品のチーム、監督のペンエーグ・ラッタナルヤーンと、撮影のクリストファー・ドイルと組んでます。
ペンエーグ・ラッタナルアーン監督は、浅野忠信のことを、「『殺し屋1』に出てくる、マゾのヤクザだと思ってたら、全然違ってマトモなヤツだった」と、評してました(笑)笑った〜。
浅野忠信は、この作品で、やっぱり独特の空気感を醸し出してます。彼、こういうの、ウマイよね。すごくいい。
あと、最後に大事なこと。
チョイ役の三池崇史は、ヤクザの役をやってます。セリフもちゃんとあります。
だけど・・・
セリフ、なんて下手なんだ・・・三池さん・・・。
・地球で最後のふたり@映画生活
2007/09/07 | 映画, :ヒューマンドラマ, :三池崇史(今月の三池さん)
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コメント(3件)
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地球で最後のふたり
ヤモリと灰皿・・・見事な伏線。禁煙中の身でも耐えられる喫煙シーン。「おい!タバコ吸うなら、灰皿を用意しとけよ!」と叫びたくなる映画だった。
地球で最後のふたり:地球で最後のやもりは何を思う WOWOW
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『地球で最後のふたり』(2003/ペンエーグ・ラッタナルアーン)
Ruang rak noi nid mahasan(2003/タイ・日本・オランダ・フランス・シンガポール)
【監督】ペンエーグ・ラッタナルアーン
【撮影】クリストファー・ドイル
【出演】浅野忠信/シニター・ブンヤサック/ライラ・ブンヤサッ