#114.遠くの空に消えた(舞台挨拶つき)
HNが猫仲間の、『ノラネコの呑んで観るシネマ』のノラネコさんより呼んでいただき、舞台挨拶つきのマスコミ試写に行って来ました。ノラネコさん、ありがとう〜!
まず、舞台挨拶の模様から。
舞台挨拶には、行定勲監督、神木隆之介くん、大後寿々花ちゃん、ささの友間くんが来ていたよ。
そしてその日は、大後寿々花ちゃんの誕生日だった、ということで、憧れの人だという、コン・リーからのビデオ・レターが。
いかにも子供らしくなく、しっかりしてそうに見える大後寿々花ちゃんだったのに、それを見た途端、本気で泣いてしまっていた。・・・なんだかこっちまでキュンとしてしまいました。
それから、神木隆乃介くんは、「奇跡を信じますか?」との質問に、信じます、自分がそうだから・・・と話し始め、子供の頃、自分は大きな病気にかかったことがある、ということ、
そして、その回復の思い出に、お母さんが芸能界入りを応募したと、話していましたよ。奇跡のボーイだったのですね。
ささの友間くんは、この映画の中でも、ノビノビと素晴らしい演技を見せていた子だったのだけれど、実は、お父さんが、俳優、笹野高史。こうした大きな役は、ほとんど初めてのようなもの、という割に、あまりに堂々とした本編での演技。思わず納得してしまう。
神木隆之介くん、大後寿々花ちゃん、この二人のことをどう思いますか、と質問された時、「有名で、上手い子役だなあ」と思っていた・・・なんて、自分だって子役なのに!思わず噴き出してしまいました。映画を見た後には、この子が一番輝いていたな、って思ったけど。
私は、『妖怪大戦争』(’05年)で見て以来、神木隆之介くんが大好き。だって、めちゃめちゃかわいいじゃん!先日見た『キリクと魔女』でも、神木くんが主役の吹替えをしていたのだけれど、その時の舞台挨拶の様子を、見たばっかりだったので、その時の違いと、5年後の今で、成長するもんだな〜と、つくづく実感しました。神木くん、ずいぶんと大きくなりましたね〜。
ストーリー・・・
緑が広がるのどかな村に、都会から一人の少年、亮介(神木隆之介)が転校してきた。おかしなギャングの集団がいたり、怪しげなバーがあったりと、一風変わった村だったが、住民たちは皆幸せに暮らしていた。その平和な村に空港建設の話が持ち上がり、反対する村人たちは建設会社と争っていた・・・
この作品は、独特な浮遊感を持つために、好きな人と嫌いな人に、いかにも二分されそう。
そして、大勢の人が出てくる群像劇で、一人一人について、十分な説明を要している、というよりは、人の感覚に訴えるようなセンス。
きちんと説明づけることなく、具象性を排除した描き方は、理解しがたいと思ってしまう人もいそう。
私は、こうした群像劇の良さは、詩情性だ思うのです。会話やその場面毎の一瞬一瞬の内に潜む、その場できらめくもの。
例えば、天体望遠鏡の下に、天秤で使うような皿を置いて、「流れ星を取る機械だ」と説明する少女、ちはる。
「お父さんがそう言ったから、嘘はないはずだ」と、信じて疑わない。
そうやって、信じて星を取ろうとする、その姿が美しいものだと私は思うし、
それを見た同級生の男の子たち、亮介と公平も、「もしかしたら」と思って、流れ星を取ろうとする・・・。
こういうものは、そうした場面だけで「素敵だな」なんて思ってしまうのだ。
それから、ずっと帰って来なかった、公平のお父さんが、突然帰ってきて、本当に喜んで抱き合う親子の姿も好きだし、文句を言いつつも、惚れた弱みでそれを許すお母さんも、本当にいいなって思ったり。
動物みたいに求愛ダンスをして、結婚してしまった、なんて言うのも、なんだか素敵。
子供の世界を見ているときは、心が和んだ。大人の世界と子供の世界が、同時に描かれているけれど、大人は憎しみ合ってても、子供同士は、少しぶつかっただけですぐに分かり合ったり。
大人の世界も、よく見れば単純なもので、喧嘩したりいがみ合いをしたりするものの、本当はちゃんと向き合えば分かり合えるはず。子供の頃の延長線上にあるものなんだナ、っていうのが後で分かるんだね。
奇跡を起こすために、みんなが一つになる姿、そうした姿が一番良かったな。
出来れば、もう少し、この辺りをもっと手前から、伏線として描かれていたら、もっと良かったと思うけど。
あの子供のシンボルも、もっと何度も出て来ても良かったんじゃないのかな、とかさ。『20世紀少年〜』、みたいに。
こうしてみんなで一致団結したことが、一つの奇跡を生んだんだ、といった辺りは、実は少し分かりずらかったかな、と思う。
これが大人とは違う子供の世界で、無条件に何かを信じることが出来る、だから大人には無理だったことも、子供の力でもって変えられたんだ、っていう話だったんだよね。
アコーディオンの音だとか、田舎の夜の風景だとか、宇宙を見渡せるかのような満点の星空、こんなすごく和む風景が好きだったな。
変なロシアっぽいバーとか、どこだか分からない風景も結構好き。
少年と夏と思い出と、っていう、私の大好きなテーマが描かれていたところが良かったな。
もう少しエピソードを減らして、言いたいことをはっきりと表現し、狂騒や喧騒の中に覆い隠すことがなければ、もっと共感が得られたのではないかな〜なんて、思いました。
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コメント(58件)
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遠くの空に消えた
監督:行定勲
出演:神木隆之介、大後寿々花、ささの友間、小日向文世、鈴木砂羽、伊藤歩…
「きみのためなら、ぼくらは、UFOだって呼べるんだ。」
【ストーリー】
一面に鮮.
ひめさんへ
こんばんは☆コメントありがとうございました!
そうなんですよね、おっしゃる通り、エピソードがすごく多かったんですよね。
監督としては、きちんとした映画にしたり、まとめることなしに、壮大な物語が作ってみたかったのかなあ、なんて。
余計なお世話を焼いてしまいました。
きっと、自分の子供の頃の思い出が、痛いぐらいに詰まっているんでしょうね。
mini review 08297「遠くの空に消えた」★★★☆☆☆☆☆☆☆
『春の雪』の行定勲監督が7年間温めてきた物語を映画化した感動作。平和な田舎町で空港建設をめぐる大人たちの争いに巻き込まれながらも、たくましく生きる子どもたちが起こす小さな“奇跡”を描く。都会から来た主人公を演じるのは『妖怪大戦争』などの天才子役、神木隆之介…
TBありがとう。
おっしゃるように、個別の断片的なシーンやエピソードに、リリシズムのようなものはあるんだと思うんです。僕もそういうのが好きですから。
でも、いくら子どもの感覚だとしても、流れが悪いと思うんですね。
ぜんぜん違うけど「銀河鉄道の夜」にしたって、小さいエピソードの集積ですよね。でも、全体として流れているトーンは一定してて、無駄がないんです。
ヨzバンニの孤独とかね。ずーっと作品の中に流れているわけですね。
この作品では、そのあたりが残念だな、と思ったんです。
kimion2000さんへ
こんばんは!こちらこそ、TBありがとうございました。
確かに、これは駄作の部類に入るでしょうね〜。
ただ、自分は、監督にとって、「必要悪な駄作」のように思いました。
この監督にとって、本当に作りたかったのは、むしろ駄作だったのかもしれない、なんて。
きっと、壮大な駄作が一度作ってみたかったんでしょうね。一般受けしないヤツをドカーンと
『銀河鉄道の夜』はいいですね・・。ますむらひろしのですよね?
遠くの空に消えた ─ 和製ビッグ・フィッシュのような世界観 ─
─ 和製ビッグ・フィッシュのような世界観 ─
長澤まさみの熱演で話題になった映画『世界の中心で、愛をさけぶ』や『春の雪』『クローズド・ノート』など意欲的に作品を発表している行定勲が脚本・監督を務めたこの作品『遠くの空に消えた』(2007年/日本/ドラマ)。
…
<遠くの空に消えた>
2007年 日本 145分
監督 行定勲
脚本 行定勲
撮影 福本淳
音楽 めいなCo.
出演 神木隆之介 大後寿々花 ささの友間 小日向文世 鈴木砂羽
長塚圭史 伊藤歩 田中哲司 石橋蓮司 大竹しのぶ
一面に麦畑が広がる美し…
神木隆之介 大後寿々花 / 遠くの空に消えた
ワケもなくババアゾーン
毎度です。 ギャグ漫画ゲリラ・中川ホメオパシーのスガシカオ担当、ブロッケンです。
行定勲脚本・監督の映…