ムットーニのからくり劇場
先日にUPした、世田谷文学館(HPはコチラ)で、ガラスの仮面展をやっていたのだけれど。
こちらの常設展示品である、ムットーニのからくり劇場が、なかなか面白かったので、こちらについてもレポしちゃおうかな、と。
この、カーテンの向こうに、箱みたいなのが壁にかかっているんですが、これがムットーニのからくり装置。これを開けると、中の仕掛けが動くようになっている、という、なんともアナログ感覚の素敵なからくり劇場になっているのです。
一つにつき、5分程度で、音楽が流れ、中の人形がそれぞれに動き、そこに、その作品ごとの物語が、展開する、という代物だったのです。
まさに、それは、約5分ではあるけれど、一つ一つが、映画館と言えるかのよう。不思議な感覚のもので、きっと、江戸川乱歩だったら、こういうの喜んだんじゃないかなあ・・・なんて思いながら、私もすっかり、楽しんでしまいました。
せっかくなので、作品を簡単にご紹介。
※『山月記』 中島敦
闇の中から出てくる虎が印象的。クラシックな趣。緑の竹の中から出てくる、黄色×黒の虎がすごく色合いがいいの。
※『月世界探検記』 海野十三
音楽のみで、朗読はナシの作品。ただ、スペイシーな音楽と、妙にチープな月世界が描かれる。
ここに書かれた言葉が好き。
「100年前に想像した月世界とは、どのような世界だろうか。
それはおそらく、100年前に描かれた未来がそうであるように、輝かしい未来の輝きが満ちているのだろう。」
※『猫町』 萩原朔太郎
まるで乱歩みたいな作品で、荻原朔太郎っぽい作品ではないような気がする。
ちょっとだけ宮沢賢治みたい。
猫がとっても大きくて、町の真ん中にポッカリ、ニャーオと現れるのがとっても怖い。猫も、こうして見ると、カワイイばっかりの存在ではないのね、って思った。
こちらも、日常に現れた非日常なのだけれど、この物語の舞台って、下北沢だったんだ。とっくに忘れてた・・・。今は下北には、そんなにたくさん猫、居ないんだろなあ。
※『アローン・ランデブー』 レイ・ブラッドベリ
(『刺青の男』より、『万華鏡』)
一人だけのランデブーというこのタイトル、宇宙に放り投げられた、宇宙飛行士の姿が描かれたもの。ずっと見ていると、たった5分とは思えないほど、思考は遠くに思いを馳せる。
※『漂流者』 夏目漱石
(『夢十夜』より、第7話)
何と、私は、昔読んだけれど、この物語の意味が全く分かっていなかったと実感した!
久しぶりにこちらの作品で遭遇して、この夢の持つ深さに感激。
『夢十夜』の中でも、何と恐ろしい夢の一節なんだろう!
思わず身投げをして、そこでとても後悔する、という夢。
黒い波に呑まれそうになる瞬間が、なんとも恐ろしい、目覚めたくてたまらなくなる、そんな恐ろしい夢だった。
こんな夢、自分も見たことがある、と気づく。
※『眠り』 村上春樹
このからくり劇場の中でも、一番良く出来た素晴らしさが、この作品だった。
ここに書かれた物語の一節がまた素敵なのだ。
無意味に繰り返される、日々、消費、傾向。
それを調整するための眠り。
傾向的消費を治癒するために定期的に眠りを必要とする。だとすれば、私は、そんなものはいらない。
・・・こうして眠りを取らなくなった主人公の話が、なかなか恐ろしい。
箱の中に、鏡があり、その向こうに人が映っているのがポイント。
音楽と朗読がかかる中、こちら側の人間と、鏡に映った人が、微妙にタイミングをズラして、くるくると回る。
そして、ラストの瞬間。・・・鏡の向こう側の自分に変化が起こる・・・!
この瞬間は、思わず凍り付いてしまった。
この作品を、もう一度読みたくなる、素晴らしさ。
※『ザ・スピリット・オブ・ソング』 宮沢和史(『書きかけの歌』〜より〜)
『書きかけの歌』一曲が全てかかる。しどけない天使の姿が愛らしい作品。
これだけ知っていたら、まるでオルゴールみたいに思っただろう作品。
2007/08/13 | アート・美術関連
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コメント(2件)
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ムットーニ情報の掲載誠にありがとうございます。
9月12日〜松屋銀座で開催されます「ムットーニシアター」のご招待券を、ムットーニオフィシャルショップで3000円(税込)以上ご購入の方にペアでもれなくプレゼントしております。
是非、サイトをご覧頂きムットーニシアターにお越しください。
よろしくお願いいたします。
ムットーニオフィシャルサイトさん
こんばんは。なるほど、銀座松屋で開催なのですか♪
このレトロな楽しさは、きっと文学好きの、銀座マダムの目を引くことと思います!
ただ、私としては、銀座より、浅草とかでやって欲しい感じだったりしますけどネ^^
興味ある人は是非とも銀座松屋に足を運びましょう〜♪