#110.レミーのおいしいレストラン
今から、去年と同じことを言う。だが、そう言う喜びを、噛み締めてもいる。それは次のセリフだ。
「もし一年に、
一度だけしか映画館に行けないとすれば、
私は迷わずピクサー作品を選ぶ。」
・・・き、決まった・・・。
そして、その一年にたった一度の季節がまた、今年も訪れたことを、とても嬉しく思う・・・。映画の神よ、ありがとう〜
・・・“ピクサー(ディズニー)”と言わないといけないのが、少し残念だけど・・・。
でも、基本的には、ピクサーのやり方をこれまで通り、きちんと維持できる、と、私は無条件に信じてますよ!
さて、去年の『カーズ』で、車のフロントガラスに顔が書かれている、という、“擬人化した”表現が、見る前に少し不安だったのと同様に・・・。
今回は、ネズミがあまり可愛く見えないのと、“人間”が出てくることに、少し不安を覚えていた私だった。
とは言え、初めて人間が出てくる、ということで、かなり不安でたまらなかった『Mr.インクレディブル』の不安は、完全に取り払われた経験がある。
もはや、“不敗のピクサー神話”を、一心に、そして無条件に信じている私は、前述↑のようなことが、堂々と言える、ってワケなのだ。
しかし、これは、モノづくり、という立場からすると、奇異とも、驚異とも思えることで、本当に珍しいことだ。ありえない、とすら言える。
これほどまでに素晴らしいクリティカルヒットを打ち続けることが出来るのは、一体どんなレシピがあるのだろう、と・・・、
およそクリエイティブな仕事をする全ての人が、心底恐れずにいられないだろうと思うのだ。
今回は、そうした、“ピクサーのレシピ”、隠し味が一体どういったところにあるのか・・・。
そういったことをテーマにした話のように、私には思えた。
ストーリー・・・
すぐれた鼻と舌を持つネズミのレミーは、一流シェフになるのが夢。ひょんなことからパリにたどり着いた彼は、今は亡き名シェフ・グストーの幽霊に出会い、彼のものだったレストランへ導かれる・・・
前述したように、ピクサー作品は、どうやら、毎度毎度、何かしらタブーというものに、挑戦してもいたのだ・・・。そして、それが最大の、答えだったようだ。
この作品で初めて、そう気づいた私は、なんて鈍い人間なんだろう。
いつも、いつも、どの作品でも、挑戦していたのだ。タブーというものに。
わざわざレストランの天敵であるネズミ、不衛生の極みである、ネズミをあえて使用して・・・
物事を、自由な発想で考えることが出来ない、そんな大人たちは、その不衛生さに、たまらなく嫌悪感を抱くだろうと、難なく予想することが出来る・・・。
これを、夢がある、と考える人と、いちいち現実レベルでありえない、と考える人が居そうなのは、すぐに予想がつきそう。
「人が文句を言わないような作品を作る」、ということを前提に考えたら、こんな物語は思いつきませんね。
その辺りが、「ピクサーの答えだ」と思ってます。
人の納得いくような範囲内であれば、確かに優等生的な物語になるでしょうね。
でもあえてそうしない、それがピクサーの挑戦するところなのである、と。
そして、それが、モノづくりの、隠し味だったのだ。
それから、批評家、というものに対しても、モノづくり、という視点から、一言言っているように思えた。
鈍感なように思えたリングイニの、鋭い一言。
「アナタは、食べ物が好きな割に、とても痩せてますね。」
リングイニにそう言われたイーゴは、
「自分は、食べ物を愛するが故に、愛する物しか喉を通らないのだ。」といい訳をするのだけれど。
こうした態度は、世の批評家全ての言い訳のように私には思えた。
「辛口に批評を書くほうが、自分も書いていて楽しいし、読んでいる方も、喜んでもらえる。」
物事を、批評するというのは、簡単なものだ。
自分はクリエイティブな行動、ということ一切せずに、人の作ったものを、ただ意見を言うだけなのだから。
ちなみに私も、映画に愛情の感じられない、辛口評論、てやつが大嫌い!
(まあ私も時々歯を剥く時はあるんですけど。)
ついでながら言いますと、私、映画雑誌と言うものは、ほとんど読みません。
『キネマ旬報』は一度も読んだことがないのは自慢。
『映画秘宝』も、一度だけ読もうとしたけど、途中で放棄した。
新聞の評論なんかも、全く読みません。
「どんなに下手でも、自分が作る側である方が、何倍も偉いことだ」、とセリフにあるけれど、
ここが、「誰もが料理が出来る。」という、メッセージと相まって、ピクサーのやり方のように思え、とても私は嬉しくなった。
そしてイーゴも、最後には、決して皆が信じないだろう、ある事実を隠した上で、
自分もとうとうレストランのオーナーになる・・・。
ラタトゥイユという、お母さんが作った料理の味は、イーゴにとって、忘れかけていた原点だったのね。
ラタトゥイユは私食べたことあるんだけど、安い家庭料理って感じかな。
名前だけで食べたくなって頼んだんだけど、その時は、初めて食べたので、「これのどこが美味しいんだ?」なんて思いました。
たぶん、フランス人のココロの中で、誰もが知ってる味なんでしょうね。
日本人にとっての“肉じゃが”とかそんな感じで、「家庭料理の温もり」という感じ?
誰もが、夢を見ることが出来る。
このシー
2007/08/09 | 映画, :とらねこ’s favorite, :アニメ・CG等
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コメント(70件)
前の記事: ガラスの仮面展
ディズニーは興味ないくせにピクサーに限っては大好きというひねくれ者です。今回も力技が炸裂してましたね〜
>タブー
ネズミってアニメの場合これでもかってくらい可愛らしくデザイン化されるもんですが、レミーはネズミ本来の不気味なフォルムが残されていてなかなか良かったです
>映画に愛情の感じられない、辛口評論、てやつが大嫌い!
うんうん、わたしも辛口料理って本当苦手!(←ツマンネー)
たまに不満もぶーたれてますが、ウチのブログのモットーは、「なまぬるく」「うわべだけの優しさを大切に」です(笑)
>イーゴ氏
吹き替え版は家弓家正氏の渋い声が素敵でした。個人的にピクサーは吹き替えの方が楽しいです
>レミーの群れ
一個ちょーだい
チュウ文の多い料理人 ブラッド・バード 『レミーのおいしいレストラン』
ドブネズミみたいに たくましくなりたい 写真には写らない 香ばしさがあるから 終
>SGA屋伍一さんへ
こんにちは〜♪コメントTBありがとうございました。
>ディズニーは興味ないけどピクサーは好きなヒネクレ者
私もです!ディズニーとピクサーの結婚は、私から見るとさながら
“富と権力をふんだんに持った、歳老いた王に、輿入れする、若く光り輝く美貌の娘”
って感じです☆
>一個ちょうだい
これね〜!実は手元に一個もないんです。
私は三つ取ったんですが、一匹は食い意地の張った弟の方で、ちっともかわいくなかったんで、お母さんにあげました(そんなに喜んじゃいなかったけど)。
後の二匹のレミーは、淳ちゃん(妹)の持ってる一匹とトレードしました。スプーン持ってるレミーが1番かわいかったんで。
だけど、電車の中で眠りこんでしまい、乗り換えた時には手元にありませんでした。
そんな訳でせっかくの一匹を、置き忘れてしまったのでした。ちゃんちゃん。
>ウチのブログのモットーは、「なまぬるく」「うわべだけの優しさを大切に」です(笑)
うーん、SGAさん、私もかくありたいものです。
大切ですよね、うわべだけの優しさ(微笑)
レミーのおいしいレストラン
名実ともに、ブラッド・バードは現代最高のアニメーション作家になったと言っても、微塵もオーバーではないだろう。
多くの人に、ブラッド・バードをアニメーションの演出家として印象づけたのは、もちろん『アイアン・ジャイアン
頭の小さなシェフ
217「レミーのおいしいレストラン」(アメリカ)
ネズミのレミーは天才的な味覚と嗅覚を持ち、いつか一流のシェフになることを夢見る。彼の愛読書はフランス料理界の名シェフ、グストーの「誰でも名シェフ」。
ある嵐の日、レミーは家族とはぐれてしまう。彼が辿り…
こんばんは。
ネズミと料理ベタが世間を驚かせる、という設定が面白かったです。
考えてみれば、CGアニメが最近はたくさん作られてますが、他は似たような設定やテーマばかりですね。
よく考えられたストーリーというのも
ピクサー作品の面白さかもしれません。
ピクサー信奉ではない私としては、思ったより面白い一作でした。
CINECHANさんへ
こんばんは〜♪コメントTBありがとうございます。
そうですね、すごく見ていて幸せな感じのする映画でした。
おいしそうな料理、って観てるだけでいいもんだな〜なんて、思ってしまったんですよ。
ピクサーの映画ってあまりにも良く出来すぎたものが多いですから、ダメ料理人がダメなまんま、っていう、この話は、実はこれはこれで、外れたものだった、という気がして逆に私なんかは好きでした。
「レミーのおいしいレストラン」 志向しているのはナチュラルさ
よい食って人を幸せな気分にしますよね。 食べるのももちろんですが、お料理を作って
とらねこさん、こんばんは。
遅ればせながら「レミー」を観てきました。
>毎度毎度、何かしらタブーというものに、挑戦してもいたのだ
ピクサーの作品が、数多ある作品と違うのはこの点ですよね。
僕もいつも観る前は不安になってしまいます(なのでいつも観に行くのが遅い)。
車?ネズミ?大丈夫か・・・。
こんどはピクサーはこけてしまうのでは・・・?
という杞憂を吹き飛ばしてくれるのが、ピクサー作品のすごさですよね。
はらやんさんへ
こんばんは〜♪コメントTBありがとうございました。お元気していらしたでしょうか。
レミー、まだやってたんですね・・^^;
なるほど、でも、「いつも見に行くの遅い」作品て、分かります。
私にとっては、多分『シッコ』です。
で、今回、はらやんさんにとって、杞憂を吹き飛ばすことが出来ましたでしょうか?
ふ〜ホッとしました
長島茂雄と、長島一茂は別人●レミーのおいしいレストラン
銅メダルは、ダメなの?
偏見なき適材適所。
『Ratatouille』
『レミーのおいしいレストラン』 ウィキペディア(Wikipedia)
すぐれた鼻と舌を持つネズミのレミーは、一流シェフになるのが夢。
ひょんなことかむ0
レミーのおいしいレストラン☆吹替え版
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先日も書きましたが、毎週日曜日は「ふしぎの海のナディア」の再放送(福岡の地方局で再放送中)で起床するピロEKです。民放での再放送枠だと予告とエンディングテーマ曲がカットされるのは残念な点です(元がNHK尺だから?)。
今日の天気は曇り{/hiyoko_cloud/}or晴れ{/…
レミーのおいしいレストラン
ディズニー/レミーのおいしいレストラン
¥3,360
アメリカ 2007年
声:パットン・オズワルド、ブライアン・デネヒー、ブラッド・ギャレット、ジャニーン・ガロファロー、イアン・ホルム、ピーター・オトゥール、ルー・ロマノ、ジョン・ラッツェンバーガー、ジ…
いつもTBさせていただいています!
ずっと観たいと思いながら
今頃の鑑賞になってしまったこの作品
イーゴの表情がとても柔らかく
デザートを注文する時の顔が子供みたいにワクワクしているのがとてもよかったです♪
料理と映画
ジャンルは違っても、作り手の気持ちはきっと一緒ですね♪
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
こちらこそ、いつもTBありがとうございます★
うんそうですね!
最後、イーゴの表情がすっごく良かったですよね!
おかげで、それまで悪役として登場していた悪い印象を、すっかり拭い去ってしまいました。
こういうところがまた、私にはたまらなかったりします。
映画も料理も「ものづくり」なんですね♪
ピクサー新作 Wall-E の 監督解説付き予告編
New Four-Minute Featurette for Wall-EWall-E監督のアンドリュー・スタントンの解説
レミーのおいしいレストラン
何だかこのアニメ、
評判良いので観てみました。
吹き替え版を鑑賞也。
フランスの片田舎で暮らすネズミのレミーは
天才的な嗅覚と味覚をもち、
一流のシェフになることを夢見ていた。
ところがある日、
家主に見つかり一族は古巣を追われ、
家族とはぐれたレミー…
レミーのおいしいレストラン(感想104作目)
レミーのおいしいレストランはWOWOWでし鑑賞も
結論はが料理と考えなければ満足が出来るね
内容は嗅覚&味覚が凄いがグストーの導きで
はグストーの店でダメと出会うなど展開だ
&ピクサーの最新作でが料理だったけど
リングイニは出会い中身は成長した感じ
レミーのおいしいレストラン
RATATOUILLE
2007年:アメリカ
監督:ブラッド・バード
声の出演:パットン・オズワルト、ブライアン・デネヒー、ブラッド・ギャレット、ジャニーン・ガロファロー、イアン・ホルム、ルー・ロマノ
天才的な料理の才能を持ち、一流レストランのシェフになる夢を抱くネ…