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#107.妄想代理人(vol.1〜6)

mousou1私は実を言うと、今まで、どこかアニメを映画より下に位置づけていた。



 


宮崎アニメは社会現象にまでなったので、それ以外のアニメというと、例えば『クレヨンしんちゃん』の幾つかの作品が、映画ファンにやたらと評判が高いのは知っていた。「でも、それはあくまでも、ストーリーが面白いんでしょ」、と、思っていた。ただ、そうであっても、依然としてクレヨンしんちゃんの巨大化した姿を、わざわざ見る必要性を感じなかった。


実は、さっき、巧妙に「今まで、どっかアニメを映画より下に見ていた」と言ったけれど。
これ、「いままで」ってて読むんじゃなくて、「“こん”まで」と読むのが、正解!で、よろしくです。


そう、今敏アニメ、だ。この監督さん初体験の去年の『パプリカ』は、私にとって衝撃そのものだった。
映像のカラフルさもさることながら、奇想天外な物語の、めくるめくイマジネーション、
それを映像の隅々にまで表現する、アニメならではの、実写を飛び越えた世界。
そんなことに、今更ながら心が震えた。
パプリカが夢の中に突然あの魅力的な肢体で飛び出してきて、意味ありげな笑みをたたえながら、丸々と太ってせり出したお腹に、笑顔と共に消えてゆく・・・
そして、次の瞬間には、全く違うコスチュームで、別の場所から現れたりする。
狂騒的でアッパーな、そしてノスタルジーに満ちた、
だけど、すぐその隣に悪夢の怖さを覗かせる夢。

まろみこちらの『妄想代理人』は、’04年にWOWWOWで、放映された、30分づつ×13話のお話。
今敏とマッドハウスと、安藤雅司が初めてタッグを組んだ作品、でもある。

で、これがまた、何とも裏パプリカ、と言えるような内容だった。
妄想なのかリアルなのか、よく分からないままに、被害者のバックグランドが一話完結で語られる。
そして、妄想代理人に関する謎は、だんだん見えてくる・・・
いや、見事に全く逆。全然分からなくなって、いよいよ収束がつかなくなってくるのだ。進めば進むほど。


本人も、この特典映像のインタビューの中で、「途中で自分が迷走して分からなくなってます」と言っているんですね。
おいおいな感じだけど。
記者がウマイこと、「音楽に喩えるなら、インプロビゼーションというか・・・」と、尋ねていたけれど。
※インプロビゼーション(→Wikipedia参照)、即興とも言い換えられるように、その場その場で、発想そのままに、フリースタイルで表現するというか。表現の型にハマらない、きわめて自由なスタイルで、作られている。


とにかく、やったことのないことを、全てやってしまおう!という、この気概が、何よりイイのだ。
芸術家はこうでなくっちゃ!なんて、退屈しない人なんだろう。


物語も、もちろん、そんなワケだから、ちっとも説明がつかないのよ。
パプリカ』と違って、ウワーっと拡がってワケの分からない快感が流れ出す、ソウ的夢ではなくて。
このリアル・ワールドに生きる、コンクリート・ジャングルをさ迷う、隣人に訪れる心の闇。


妄想代理人その心の闇は、ビルの隙間を闊歩して、突如、追い詰められた私達の前に、にやりと笑って現れる。
ローラー・ブレードを履いて、曲がった金属バットを片手に、ベースボール・キャップを被った姿で。

ストーリー・・・
東京都・武蔵野市で発生した通り魔事件・・・。被害者である人気キャラクターデザイナー、月子の証言から“バットを持ち金色のローラーブレードを履いた少年…『少年バット』”が犯人として指名手配された。・・・


 

 

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コメント(10件)

  1. 妄想代理人

    今敏が総監督を務めWOWOWで放映されたもの。
    ビデオがレンタル100円だったのでチマチマみた全6巻。
    妄想代理人(1)posted with amazlet on 07.01.11角川エンタテインメント (2004/04/28)売り上げランキング: 13049Amazo

  2. 僕もコレみました。
    ドキドキする高揚感と短編という形態に夢中になって見てましたが、終盤に向かって失速感があった。
    なんつぅか、健やかに80年代からのヲタク文化を継承しているマンガやアニメの人だなって思った。
    パプリカもそうだった。
    それが悪いわけではないし、ヲタクと切り捨てるわけでもない。アニメをみない人にはたまにみると衝撃のおもしろさに見えるときもある。
    今敏監督は、本来のジャパニメーションの王道の貴重な人だと思う。

  3. mottiさんへ
    こんばんは、TBコメントありがとうございました。
    『パプリカ』がダメな人には、この作品もダメなんでしょうね。
    でも、私は、アニメ・映画問わず、複雑で一筋縄でいかない作品が好きなんですよ。

  4. こんばんは
    おぉ!ご覧になられたのですね
    ちょい毒電波なテイストとやりたい放題感が好きだったんですよね〜(笑)
    >裏パプリカ
    うまい!
    ほんと詰め合わせセットで一緒にどうぞってな感じですよね
    未見のひとにどんな作品かをすごーく説明しづらいんですが、今度からこのフレーズ使わせてもらいますわん♪
    もっとワカンネ言われるのは覚悟の上で(笑)
    なにより素晴らしいのはOPの「夢の島思念公園」!
    コレまた脳にこびりつく師匠節炸裂の名曲なんだな〜
    気がつくと口ずさんでると言う(笑)

  5. みさま
    こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
    そうですね、毒電波
    本当は順番に今作品を見ようかな、と思ってたんですが、みさまオススメの作品を、先に見る方が私にはいいかなって思って!
    みさまは、私にとって、カリスマコメンテイターですからね〜^^
    他の人の意見は、全く聞かないのに!エッヘン
    >オープニングの夢の島思念公園
    そうそう、脳にこびりつくんですよね。
    終わりの時にかかる「まろみのテーマソング」もあれはあれで楽しいし♪
    ポッペケ♪ポッペケ♪
    ところで、その「まろみのテーマソング」の時に、なぜかみんな寝てますでしょう。
    これって、みんなの夢の中の出来事、って言ってるみたいで、意味深でしたよね。
    もちろん、そうは言ってないんですけど。
    終わりを見る前にですね、夢オチ来るかと思いつつ、全13回を見てたんですよ・・・とほほ

  6. 【妄想代理人】を観始めました

    WOWOWで放送された今敏監督の妄想代理人の一話目を観た
    もちろんDVDです
    今敏の監督作品は、パーフェクトブルー、千年女優、東京ゴッドファーザーズ、パプリカですかね
    その中で【千年女優】だけは観てるんですよ、主人公のモデルって田中絹代なんですかね
    現存する世…

  7. コメントありがとうございます
    全話観終わりました…ヤバイこれハマりますね
    面白い!!!
    後半の現実と妄想の境界が崩れていく展開、やられますね
    アニメを通して喉元を掴まれた感じがします

  8. 赤ジャケさんへ
    おはようございます!コメントこちらこそ、ありがとうございました。
    見終わられましたかあ!ハマりました?
    それ聞いてとても嬉しいです♪
    だんだん、めちゃくちゃになってくんですよね☆
    良かった^^
    鑑賞後感想は書かれないのでしょうか?
    また何かお話しましょうね〜☆

  9. 感想はじきに書こうと思いますが、ちょっと衝撃が強かったです
    音楽を担当した平沢進のアルバムを買いにタワレコへ行ったほどです
    8話【明るい家族計画】が、怖かったです

  10. 赤ジャケさんへ★
    平沢BGMは素晴らしいですよね〜!タワレコに走りましたかあ!!
    オープニングの『夢の島思念公園』(これタイトルなんですよね?↑で教えてもらいました)は、肩ゆらしながら友達と鼻歌合戦しましたし★
    まろみのテーマもすごいセンスですよね
    感想はこれからUPなんですね!了解、待ってますよ♪
    『明るい家族計画』これ、印象深かったです。これだけだと『裏・東京ゴッドファーザーズ』なんですよ。




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