#95.ホワイト・ライズ
切ない恋愛物語でありながら、非常によく出来た、サスペンスタッチの脚本が素晴らしく好み。
正直言って、全く期待してなかったので、見て良かった!と思った。
日本では’05年に公開の、ポール・マクギガン監督作品(『ラッキーナンバー7』)。
ストーリー・・・
ビジネスマンのマシュー(ジョシュ・ハートネット)が、2年前に蒸発した恋人リサ(ダイアン・クルーガー)を目撃する。婚約者も仕事も後回しにしてリサを追うマシュー。しかし、あるアパートにたどり着いた彼の前に現れたのは、同名の別の女性(ローズ・バーン)だった・・・
正直、私の友達のとある映画好きが、ジョシュ・ハートネットの大ファンでして。
私は別にそれほどファンというわけでもないのだけど、友達に誘われて見るはめになることが多いんですね。その割には「ジョニー・デップの映画は、他の友達と行くから、ごめんね」なんて言われていて、なんだかとっても不公平なんだけど。
そんな訳で、この映画は、思わずスルーしてしまいました。「まぁたジョシュ〜??」って感じで。ポスターも何となく面白くなさそうに見えて・・・。
ところが、ポール・マクギガン監督のこの作品は、『ラッキーナンバー7』が結構好みだったので、ようやく見ることに。(『ギャングスター・ナンバー1』の当時は、別に普通だと思ったんだけど。・・・)
前半部分と後半部分と、目線が全く別人で描かれているところが面白い。
前半は、マシューの目線なのだけれども、どこかボンヤリと、物事の輪郭をわざとボヤかした描き方で、正直、退屈で「なんじゃ〜こりゃ〜!」と思ってしまうのですね。
いかにもスカした、“切ない系の、かつ訳が分からない系”に思えてしまう。
もう見るのがイヤだなあ、と思った頃に、
つじつまの合わなかった物語の謎解きが、少しづつ出来てくるのです・・・。
そして、気がつくと、誰の目線で物語が進んでいくか、まで違っている。
ここに気づいた時は、私は何となく『愛している、愛していない』を思い出してしまいました。人によって物事の見方が大きく異なる、というのはそもそも『羅生門』なのかもしれないけど。
(芥川龍之介の『羅生門』ではなくて、故・黒沢明監督の方。
この映画の原作は、芥川『羅生門』と、太宰治の『藪の中』がベースになっているらしく、太宰の『藪の中』の方が、人によって話す物語が変わる、という話なのです。興味ある人は、太宰の『藪の中』を読んでみてね♪)
だけど、この映画のオリジナルは、’96年のフランス映画、『アパートメント』だそうです。ヴァンサン・カッセル、ロマーヌ・ボーランジェ出演。
それから、“誰の目線で物語を語るか”で人の気持ちが交差してくる・・・といったことを、誰かの切ない恋物語にしているところが、
・・・見ている方は、とても苦しくなってしまう。
印象深いのは、“切なく遠くからみつめる誰かの視線”で・・・。
マシューの切なく思い続ける、元の恋人、リサに対する思いも、まっすぐで切なく、苦しくて何かに閉じ込められているみたいに、胸をえぐる。
それから、“とあるもう一人の目線”・・・まるパズルのミッシング・ピース。
気持ちよく解けていくけど、それほど難しい謎ではないので、「ああ、そうだったんだ・・・」と納得がいく感じ。
この作品でも、『ラッキーナンバー7』でも、初めに全てを描いて、後に丁寧に謎解きをする、という印象かな。
誰かを愛すると、誰かが傷つく。だから、誰かの目線で描くと、常に誰かが苦しい。
これは邦題だけど、やっぱり、嘘をついてまで幸せになろうとする人は、やっぱり許せないな。
2007/07/03 | 映画, :サスペンス・ミステリ
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コメント(16件)
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『ホワイト・ライズ』
■監督 ポール・マクギガン
■キャスト ジョシュ・ハートネット、ローズ・バーン、ダイアン・クルーガー、マシュー・リラード
“冬のシカゴを舞台に1人の男と2人の女が繰り広げる切ないラブ・ストーリー”
広告業界で成功を収めたエリート、マシュー(ジョシュ・ハート…
映画『ホワイト・ライズ』
原題:Wicker Park
邦題になっている"White lies"・・真っ赤な嘘ではなくて、真っ白な嘘、優しい嘘、アレックスはマシューに一目惚れ、好きでたまらない・・・だから嘘
物語は、そんなアレックス(ローズ・バーン)と本命の彼女リサ(ダイアン・ク…
ホワイト・ライズ
7点 (10点満点で採点してます。6点が合格ラインです。)
ぶっちゃけ、この手の時間軸を行ったり来たりする映画が苦手だったりします。
だんだん何の事か分からなくなって、終いにはどーでも良くなっちゃうから。
でも!
この作品はかなり入り込んで観れたかも。
確かに…
こんばんは〜♪TB&コメント有難う御座いました♪
むふ♪かなり楽しめたよーですね!
うんうん、前半は「やっちゃったかも・・・」なんて思いが過ぎりますよねw
が、徐々に話が見えてくると一気に面白くなってアッと言う間に惹き込まれてるんですよね〜^^
この作品と、同時期の『モーツァルトとクジラ』からジョシュは凄く良くなったなぁ〜なんて思っております(^^ゞ
後、ダイアン・クルーガーが綺麗だったのも良かったですw(←こーゆーこと言わないとワタクシらしくないのでw)
ではでは〜、これからもよろしくお願いします♪
ホワイト・ライズ
これはプロット一発勝負の映画だけど・・・お、面白い。
Aki.さんへ
こんばんは☆コメントありがとうございます!
そうそう、前半て、あえて事実をボカシた描き方しているので、どうもすっきりしないんですよね。
それが、こう、じわじわ謎が見え出すところが、カッコ良かったですよね♪
あ!Aki.さんも、『モーツァルトとクジラ』ご覧になりました〜?記事あったら、TBくださいよう
ダイアン・クルーガーは、Aki.さんの好みだったんですね☆
二人の恋模様が、すごく悲しくなっちゃいましたね。
<ホワイト・ライズ>
2004年 アメリカ 116分
監督 ポール・マクギガン
脚本 ブランドン・ボイス
撮影 ピーター・ソーヴァ
音楽 クリフ・マルティネス
出演 マシュー:ジョシュ・ハートネット
アレックス:ローズ・バーン
リサ:ダイアン・クルーガー
ルーク…
とらねこさんの記事を読んで、もう一度見直したくなってしまいました。 時が経つと忘れてしまったことが多くて残念です。
「ホワイト・ライズ」(アメリカ 2004年)
『white lies』・・・悪意のない嘘。 ・・・たった一つの嘘から始まったこと。「ホワイト・ライズ」
こんばんは。
私も「ラッキーナンバー7」を観て、おもしろかったので、この監督作品観たくなって観ました。
よりいっそう謎説きのの要素が多く、初めは混乱しましたが、最後にすべてがわかりスッキリ!
ジュシュの切ない眼差しがよくて・・・恋物語としても上級だったと思います。
みのりさんへ
こんばんは★コメントありがとうございました。
時間が経つと、一つひとつの映画について忘れてしまいますよね。
ブログやってなかったら、見た映画のタイトルも、中には忘れてしまいそうなものも
cinema_さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
cinema_61さんがこれをご覧になっていらしたとは、嬉しいですね!
『ラッキー・ナンバー7』お好きでしたか♪
私も、結構好きでした〜★楽しくって、テンポが良くて!
こちらの『ホワイト・ライズ』が悲しいタッチの、恋愛物語のサスペンスで、
『ラッキー・ナンバー7』が楽しいタッチの、犯罪モノのサスペンス。
まるで違う傾向なのに、どっちも堪能出来ました。
本当、恋愛モノとしても素敵な物語でした!
とらねこさん、ヾ(@⌒ー⌒@)ノおはよう
例の件、有難うございました。
忙しい中、送ってくれたのにお返事返せずホント
かたじけない。
ところで!
私、この映画今年になってからはじめてDVDで観たんだけどあの、女友達を装う女にホント頭に来ました(≧ヘ≦ )プイッ!!
そこまでやるか・・・!と思いながら、最後は結ばれるので涙がこぼれました。
人が死ななくてもサスペンスは成り立つんだなぁと
痛感しました^^
でも女って怖い〜〜〜(→o←)ゞあちゃー
とんちゃんさんへ
こんばんは〜★コメントありがとうございます。
例の件ですが、以降、どうなったんでしょうか?・・とんちゃんさんがそうおっしゃるということは、まだ動きはないのかな・・・?
とんちゃんさんも、やっぱり、あの女にムカついちゃいました?私もです!
自分が好きだからって、誰かを不幸にしてまで、自分が幸せになりたい、ってのが、ちょっと許せなかった・・・。
本当、人が死んでないのに、成り立つサスペンスでしたよね。
私も、怖い女は苦手です!
何考えてるか分からない女子とは、昔から親友にはなれないタイプです〜。
男っぽい女が好き♪「私、男に生まれれば良かったのに」って言われる。ぐらいに言っちゃう人の方がずっと好き〜。
女っぽい人に限って、ネチネチしてますよね。
こんばんは。
こちらは記事はありませんが、私も観ました。
で、正直感想としてはこんなもんかな、というぐらいでした。
と言うのは、「アパートメント」はいまだに私の五指に入っているぐらいの作品なもんで。
当時は時間軸を交差させたり、主体を変えたりするのが、結構新鮮にはまってしまいました。
そして・・・結末が結構えげつないんですね。これも衝撃的でした。
モニカ・ベルッチをこの作品で初めて見て、綺麗だなぁ、と思いました。多分モニカとヴァンサン・カッセルはこの作品の共演で、結婚したんだと思います。
と言うわけで、この記事を見かけて、思わずコメントしてしまいました。
ちなみに本日は永瀬正敏の誕生日なんですねぇ〜
CINECHANさんへ
こんばんは〜★コメントありがとうございました!
へえ〜、CINECHANさんは、『アパートメント』がオールタイムベスト5本に入るほど、お気に入りだったのですね〜!
あ、ちなみに、アン・ビョンギの方じゃないですよね^^
(↑あ、分かってます。すんませ〜んmm)
で、『アパートメント』、結末がえげつないんですか!へえ〜。
それは面白そうだ(ぉぃ)♪
>モニカとヴァンサン・カッセルはこの作品の共演で、結婚したんだと思います
ですね〜、自分、初めて彼らを見たのは、『ドーベルマン』だったのです。その時はすでにカップルだったので、その一年前の作品が、『アパートメント』だったんですね〜。
あ、永瀬CINECHANさん、昨日も言いましたが、お誕生日おめでとうございました
たくさんコメントありがとう〜。