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#93.キサラギ

キサラギ文句なく面白い!最近で一番面白かった邦画は?と聞くと、これ!と自信を持って答える私が居ることでしょう!
ワンシチュエーション、舞台劇のようなソリッドな空間の、絶妙なコメディ。
こういう邦画を待ってた!!という感じでした。

ストーリー・・・
知る人ぞ知るアイドル如月ミキが自殺をして一年が経ち、一周忌追悼会に集まった5人の男たち・・・家元(小栗旬)、オダユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅ードランクドラゴン)、イチゴ娘(香川照之)。ファンサイトの常連である彼らはそこで初めて顔を合わせた。それぞれオタク心を通わせながら、彼女の思い出話に花を咲かせる。誰しもが「自殺なんかする娘じゃない」と思っていた。そして誰かが「彼女は殺されたんだ」と。この発言をきっかけに、男たちの侃々諤々の推理が始まった・・・。

監督・佐藤祐一。
原作&脚本、古沢良太(『ALWAYS三丁目の夕日』)

 

全編通して、物語が、一幕劇のような、密室で全て展開される。
死んだアイドルの如月ミキの1周忌追悼イベントに集まった、ファンサイトで知り合った男達、5人の会話で展開していく。

この絶妙な会話の面白さ。これがこの映画が持つ一番の魅力だった。
この脚本の持ち味!こういう映画って大好きだ。

今ここにいない死んだアイドルの、死の真相を探る・・・。
それぞれが知っていた、如月ミキのいろいろな情報を持ち寄って、全体像が浮かび上がるところも面白い。
まるで、不在裁判だ。

この映画のテイストは、三谷幸喜の『12人の優しい日本人』を思い出すだろうと思う。それから、この幸喜ドラマの元々のアイディアになった、アメリカの映画『12人の怒れる男』をも、知っている人は思い出すに違いない。(もともとは舞台劇。)

この日本・アメリカそれぞれの『12人〜』に共通するのは、不在裁判で、
1.ここにはいない誰かについて、
2.今ここで出会った他人同士が、想像性をめぐらせ、その状況について推理をする、
ワンシチュエーションもの。・・・

極めて限られたシチュエーションのものだ、と分かってもらえるかと思う。
私が、一番好きなのは、こうした、脚本の良さ一つで出来上がっているような、ワンシチュエーションの舞台劇タッチのような物語だったりする。それというのも、この『12人の怒れる男』を知ってからで。
そして、先ほども述べた、このアメリカの歴史に残る、素晴らしい脚本は、三谷幸喜がそれにならって『12人の優しい日本人』を作る、アイディアになったものだ。

英文科出身で演劇専攻の私にとって、『12人の怒れる男(Twelve Angry Men)』は、本当に好きな脚本劇だし、三谷作品の方は、それを、随所随所に含まれる笑いで包んでいて。・・・
そこがまた、三谷作品らしくて、とても好きだったりする。

この『キサラギ』は、三谷作品のその面白さを踏襲して、この映画ならではのオリジナリティを持った(そしてアメリカの『12人の怒れる〜』から抜け出した)、極めて素晴らしい脚本だ。
上記に挙げた、そうしたソリッドなシチュエーションでもって、脚本を作るというのは、いかに難しいことか、分かるだろうか。

全く知らない見ず知らずの他人同士、という設定に、ネットで出会ったファンサイトの住人たち、というのも極めて現代的だ。
オフ会をしたことのある人には、初めの出会いのシーンの、ハンドルネームのやり取りの辺りなんて、面白く見入るだろうと思う。

こうした劇の構造だけでなく、笑い、という観点から見ても、文句なく面白く、そこが第一の魅力。
声を上げて笑っている人がとても多かった。

こうした掛け合い、呼吸一つ一つが大事になってくる、難しい演技なのだけれど、この5人のコラボが絶妙な変さ加減で全体のバランスを保っている。
ドランクドラゴンの塚地が入って、その場の笑いをかっさらっていくのも楽しいし、小栗旬が全体をまとめるの様も極めて好印象だ。

物語が進んでいくに従って、それぞれの背景が少しづつ小出しに分かり、そこに居る男達のお互いの関係性が、交差したり、ぶつかり合ったりする。
そして、全員の持ち寄る情報が一つの形になった時、大団円を描くその様子は、見事!!アッパレな脚本だ。

キサラギ@映画生活
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コメント(106件)

  1. 『キサラギ』’07・日

    あらすじ売れないグラビアアイドル如月ミキが自殺して1年彼女のファンサイトの常連である5人の男が追悼会に集まる。5人は、思い出話で大いに盛り上がるはずだったが「彼女は殺された」という言葉を引き金に、事態は思わぬ展開を見せ始め・・・。感想5人の怒れる日本人…

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  3. キサラギ

    自殺したアイドル如月ミキの死の謎を描いた作品。監督は佐藤祐市、脚本は古沢良太、キャストは 小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅、香川照之ほか。
    <あらすじ>
    知る人ぞ知るアイドル如月ミキが自殺をして一年が経ち、一周忌追悼会に集まった5人の男たち…

  4. キサラギ

    自殺したアイドル、如月ミキの一周忌 男、5人、この部屋で事件は起こる──

  5. キサラギ

    自殺したアイドル、如月ミキの一周忌 男、5人、この部屋で事件は起こる──

  6. キサラギ

    誰に 誰のための 存在す
     自殺したアイドルの一周忌にネットで知り合った男5人が集まり、自殺の真相を突き止めていく、という話なんだけど、集まった人物が、単にネット仲間でない!?
     その真相が解き明かされながらも、要所要所に散りばめられた驚愕と笑いは、…




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