#89.あるスキャンダルの覚え書き
誰も、“ホラー”とは教えてくれなかった。・・・
うひゃぁ〜、これ、かなり来ましたよ。
よく、“言葉の暴力”、って言い方しますよね?実際は暴力じゃないけど、それくらいの衝撃がある言葉という意味で。
この映画は、人間ドラマに見えて、ホラーですね、ホラー。
霊は出て来ないし、誰も血だらけにならないけど・・・。
これに似ていると言えば、スティーブン・キングの『ミザリー』を即座に私、挙げちゃう。
あれも、精神的な迫り来る恐怖を描いて、閉じ込められた者の圧迫感がひしひしと伝わってくる小説だった。
で、この物語も、そうしたテイストをすごく感じてしまう。
ホラーなんて言うのは大ゲサだけど、あながちそう言えなくもない。
ジュディ・デンチは嫌と言うほど恐しいし・・・。
何より、この孤独な老教師のリアリティの凄さ・・・壮絶です。
頑固で頭の固い老女教師というのは、誰もがその人生で見たことがあるような人物像、という気がする。
ああいう人っていうのは、どこの学校にも一人は必ず常備されているのでしょうかっ。
生徒である私達から見ても、いかにも性的に干からびてそうというか、「蜘蛛の巣張ってるんじゃないか」なんて、当時よくもま〜、酷いこと言ってた気がする。
だけど、いかにも厳格さだけが取りえの、学校中の嫌われ者、そんなオールド・ミスが、この映画のバーバラ(ジュディ・デンチ)。
それから、全く対照的に、美しくて純真なところのある、シーバ(ケイト・ブランシェット)。
40を過ぎてなお、地に足のつかない、“自分探し”をいつまでもしているかのような人物像で、サムシングを求めているが故に、どこか危なっかしい人。
子供が大きくなり、手がかからなくなって、ある程度自分の人生を振り返る時間が出来、
このまま人生が終焉に向かっていくのを、寂しいと感じている、若さの幻想が崩れ始めたこの女性。
だからこそ、その後起こる、普通であれば呆れてしまうような事件に、シーバがハマりこんでしまったのだろうな、と。
起きる出来事は順行で、次の展開も十分予想がつくものなのに、“サスペンスタッチ”とさえ言えるような、この見事な切り口。
老女バーバラの視点で物語が展開し、ナレーションがつけられているのが、なんともかとも。
見ている方はハラハラしてしまうのが、危なっかしいシーバの“恋愛事件”で、「やめときなさいな、あんたもまた〜」と、かなりシブい顔して観客は見ているのに、次の展開が楽しみで見てしまうことが出来るなんて。
これは、圧倒的な力技がゆえだと思う。
ウマイですよ。
「もう嫌だっ」て言うほど、このジュディ・デンチが、迫力満点でしょ。
それから、もうアカデミーも3度目のノミネート(助演女優賞)というケイト・ブランシェットがまた、確かな演技力で魅せてくれる。
とにかく、予想していた以上にずっとよく出来た、サイコホラー(だと私は思う)。
もう、陰惨な恐怖感をじわじわ叩みかけて行くクライマックス。
よく考えれば、ただ単にスキャンダラスな一つの醜聞を、
まるで悲劇の大転落のように感じさせる、この圧倒的なドラマ作りに感激。
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コメント(68件)
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あるスキャンダルの覚え書き
思い切りネタバレしてます。ジュディ・デンチの演じる女教師バーバラから発せられる異様な雰囲気と彼女が毎日綴る日記の独白に、冒頭から釘づけ。「いったいどんな人物なんだろう?」と、彼女の一挙一動から目が離せない。相手の心を見透かすような冷たいまなざしと、堅く引…
おはようございます。
私も怖かったです。かな〜り。
ストーリーもですが,バーバラの人物像や,表情が。
確かに!ミザリーに似た恐怖ですね。
最初は親切そうに近づき,だんだん意のままに相手を操ろうとし,
それが叶わないと鬼のような形相に変貌するところが。
キャシー・ベイツの名演を思い出しました。
バーバラもバーバラですが,シーバもシーバだとは思いましたね。
彼女,絶対教師に向いてませんよ。
ななさんへ
こんばんは〜♪コメントTBありがとうございました!
うん、怖かったですね、これ。
バーバラは本当に、演技が凄かったですよね。
次が読めるのに、サスペンスとしてちゃんと怖かった・・・なかなかの作品でしたよね。
ですが、サスペンスというジャンルだけでなく、文学的な匂いもするんですよね。
おっしゃる通り、キャシー・ベイツを思い出したんですよ、私も!
確かにあの二人は教師らしからぬ人達でしたね。
あるスキャンダルの覚え書き(-_-;)バーバラが望む歪んだ友情。
バーバラは危険きまわりない人物だった。
10月16日、京都シネマにて鑑賞。上映前からかなり気になっていた作品『あるスキャダンルの覚え書き』。上映時間や、上映回数が少なく・・・・。この日も10:40の1回だけだったようです。
ジュディ・デン…
あるスキャンダルの覚え書き(-_-;)バーバラが望む歪んだ友情。
バーバラは危険きまわりない人物だった。
10月16日、京都シネマにて鑑賞。上映前からかなり気になっていた作品『あるスキャダンルの覚え書き』。上映時間や、上映回数が少なく・・・・。この日も10:40の1回だけだったようです。
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あるスキャンダルの覚え書
【NOTES ON A SCANDAL】R-152007/06/02公開
ジュディおばさま〜恐すぎます。お付き合いはほどほどに。
【製作国】イギリス【監督】リチャード・エアー【原作】ゾーイ・ヘラー 『あるスキャンダルについての覚え書き』(ランダムハウス講談社)【出演】ジュディ・デンチ、…
『あるスキャンダルの覚え書き』
あるスキャンダルの覚え書き(2007/11/02)ジュディ・デンチ商品詳細を見る
監督:リチャード・エアー CAST:ジュディ・デンチ、ケイト・ブラ…
【映画】あるスキャンダルの覚え書き…なんだかガラじゃない映画観ちゃったかな?
たった今“ヤッターマン”のリメイクを観終えたピロEKです。
ナレーションが富山敬じゃないのは残念です{/face_z/}
今日{/kaeru_fine/}で三連休も終わり{/down/}
暇があっても、お金とやる気の無い私(&我が家){/face_hekomu/}は、ついダラダラだけで時間を浪費してしま…
「あるスキャンダルの覚え書き」を観た!
観る前には、初老のベテラン女教師と若い新任の女教師の「同性愛」がテーマの映画かと、僕は勝手に思いこんでいました。ところがどうもそうじゃない、ということが、観ているうちに少しずつわかってきました。アメリカで実際に起こった女教師の事件を基に作られたゾー
『あるスキャンダルの覚え書き』’06・英
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あるスキャンダルの覚え書き
ジュディ・デンチ女史は結構好きな女優です。
脚本ゼミ仲間で作ってる映画を観る会で
この映画を押したら
「えーっ?…」と言われ、却下。
というわけで、DVDで観賞也。(T^T)
ロンドン郊外。
労働者階級の子供が通う中学校で歴史を教える
初老の教師・バーバラ。
…
あるスキャンダルの覚え書き-(映画:2008年29本目)-
監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、アンドリュー・シンプソン、トム・ジョージソン、マイケル・マロニー
評価:90点
緊張感溢れまくりの大女優の競演。火花散る演技がなんとも素晴らしく、時を忘れて見入って….
【映画感想】あるスキャンダルの覚え書き
あるスキャンダルの覚え書きジュディ・デンチ リチャード・エアー おすすめ平均 寂しい女の物語孤独に蝕まれる愛憎いけない事グロテスクな、あまりにグロテスクなとっても面白い!!是非見てみてください!Amazonで詳しく見る by G-Tools
あるスキャンダルの覚え書き
あるスキャンダルの覚え書き
監督:リチャード・エアー
出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、アンドリュー・シン??.
映画『あるスキャンダルの覚え書き』
原題:Notes on a Scandal
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定年間近のベテラン教師バーバラ(ジュディ・デンチ)は孤独なベリー・オール…
あるスキャンダルの覚え書き
2006 アメリカ 洋画 ドラマ ミステリー・サスペンス
作品のイメージ:怖い
出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、アンドリュー・シンプソン、ビル・ナイ
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あるスキャンダルの覚え書き
これは、ある意味変に思える(あくまで思えるとだけしたい)ヒトを描いて実はどいつがどうで・・・みたいな面白さが表面にはあるけれど、実際人間ってこうだと思う。だからオドロオドロというより、あり得るということだしそれはエゴと性癖と社会生活もぶつかりあいというこ…
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