#84.プレステージ
随分前に知ってから、ずっと楽しみにしていた、この作品。他にもたくさん、注目作品はあれど、この作品ほど楽しみだったものは、自分にとってはなかなかないくらい!
あんまり考えてしまうと、楽しみで居ても立ってもいられなくなってしまうから、出来るだけ普段から忘れるようにしていたくらいです(笑)
何せ、『メメント』が大好きだったのね。・・・この作品には、取り憑かれた。obssesedという単語を使ってもいいかな。
見終わった後、一緒に見た人と、2時間余裕で超すくらい、飲みながらこの映画について色々と話し合った。
「映画の上映時間と同じくらい、その映画について語れる、そんな映画は、傑作だ」なんて言うじゃない?
これがまさに、自分と相棒にとっては、そうだったのね。一緒に見た人が、私と同じくらい、この映画にハマってくれた人で、本当に嬉しかった。
アッと言う間に、眼の前の酒は減り、時間が過ぎていった、・・・そんな、楽しい思い出。
映画自体は、暗くて、重い映画だったかもしれない。
だけど、その重さを、一緒に分け合えて楽しかったな。
ところが、さらに私は、3日間、この映画『メメント』について取り憑かれたように考えていた。
3日目の夜、シャワーを浴びながら、頭の中で、この映画の細部を反芻し、巻き戻ししながら、時間軸に沿って、映画をもう一度自分の中で再構築する、なんてことをしていて・・・
そこで驚いた!!!!
いきなり、この映画のラスト部分の“あのこと”について、そのドッシリとした重い意味を、急に“覚醒”したの。何となく分かっていたつもりだったのだけれど、その重い意味、主人公の苦しみ、そうしたことを追体験したような気になったのね。
・・・なんて言ったら大ゲサのように思えるんだけど、シャワーを浴びながら、「うわあああああwwwwww」って感じだった。もう、本当、ビックリしちゃった。
それまでも、結構、映画を見てきたつもりで、『ユージュアル・サスペクツ』なんかのような、ちょっと変わった設定モノの映画が大好きな私だったから、こういう映画はまさに「自分の好み〜」という感じではあったんだ。
だけど、こんな風に、3日も経ってから思い出して更にそこで感動するなんて、私のそれまでの映画好きの経歴からしても、かつてないことだった。
うーん、この感動については、うまく伝えられているかしら?
もしかしたら、その時の感動が伝えたくて、こうして今、ブログをやっているのかもしれない・・・
なんて思ったりもする。
で、その後、『フォロイング』もフォロイングして(追いかけて)、更にのめり込み!
続く『インソムニア』では、大好きなアル・パチーノが出るってことで気合が入りすぎていたためか、この作品の完成度には、あまりにガッカリして、怒り出しそうになった。
でも、『メメント』『フォロウィング』の良さは、クリストファー・ノーランが脚本を書いていたからじゃないか。
なんて思って、気を取り直した私だったのでした。
(弟のジョナサン・ノーランと共同脚本。)
監督としての手腕、と言うよりも、脚本が素晴らしいのがこれらの作品なのかも。
(なんたって、『バットマン・ビギンズ』の素晴らしいこと!期待全くしてなかったのに、最高だった〜。アメコミの中で、私のナンバー1ですね♪・・・で、ここでも、クリストファー・ノーランが脚本を書いている。)
えと、前振りが長くなり過ぎました。
なので、この話に関しては、サックリと。
なんたって、ネタバレしちゃ、絶対いけない作品だからね。
映画の冒頭に。この監督からの、そうした注意書きが書かれるような、
そんな、『シックス・センス』の時のM.ナイト・シャマランみたいな事を言うのも、伊達じゃない。
だって、この映画は、(そして『シックス・センス』も)、オチが全ての映画じゃないから。
「騙されるな。この映画こそが、トリックなんだ」と語った、クリストファー・ノーランだけど、そう言いたくなるのは、オチだけで判断する人がいるからかな。
この映画全体にこうしたトリックが散りばめられていて、伏線が貼ってある。
『メメント』みたいに、一度見ただけでは、きっとその真価が分からない映画、・・・のように思ったりする。
これは、obsessionについての映画だ。
人が何かに取り憑かれ、妄想を抱いて生きていくのは、ハッピーな人生ではないかもしれないけれど・・・
生き甲斐、というものすら超えて、そのために生きているかのようなこの感覚。
それは、幸せも不幸せも超えたところ、究極に位置していて、それこそ、普通に生きる私達には手の届かない何かで・・・
だからこそ、私はこの映画に取り憑かれて(obsessed)しまう。
妄想についての、デビッド・ボウイ(ニコラ・テスラ役)の、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)に向けてのセリフ、そこでハッキリとobsessionについて語っている。
そういえば、『メメント』もテーマが同じだったな、なんて考えたりした。
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2007/06/11 | 映画, :とらねこ’s favorite, :サスペンス・ミステリ
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