#83.新・仁義の墓場
私ってば、三池監督が好き、と言いながら、その実、極道映画が嫌いだったりします。
嫌いというか、・・・良さが分からない。
こないだの『龍が如く 劇場版』のような、マトモじゃないヤクザ映画ならまだしも。
そんな私なので、昔からの濃いぃ三池ファンとは、ちょっと違うのかも。
で、今回いきますこの作品は、三池ファンに、なかなか評価が高いとのことだったのだが。・・・
ストーリー・・・
命知らずの行動で、沢田組組員として認められた、極道の石松(岸谷五朗)。キレやすい性格の彼は目上の人間にかみつき、あげくの果てに誤解から組長(山城新伍)を刺してしまう。逃亡を余儀なくされた石松を、さらに過酷な運命が待ち受けていた。・・・
この作品、実在した伝説のヤクザ、石川力夫を主人公に描いた、深作欣二の『仁義の墓場』のリメイク作品、ということだけれど、
残念ながら私は、こちらの方を見ていないので、比べることが出来ない。
だけど、ここでは、石川力夫が“石松陸男”に、名前も変えられているし、エピソードも違うようなので、ここでは、きっと三池さん独自の変更が施され、本家『仁義の墓場』とは一味違うもの、と考えてもいいんじゃないかな、と思う。
ここで描かれている、石松は、全然カッコ良くないと私は思う。
自分の勝手な勘違いから、周りの人間の信頼を次々裏切る。
相手の考えを全く信用しない、考えすぎから勝手な行動を取る。
見終わった後に、イライラしてしまう人も多いだろうと思う。
有森也美の演じた女の役は、何となく興味深かった。
この男に、なぜついて行ってしまったのだろう、と、周りから見ると、理解できない世界なのかもしれない。
全く違う世界の女だったのに、この男に会い、レイプされて、人生が狂ってしまったのだ。
なんとなく、石松は、嵐のようなパワーで、自分に侵入してきた人なのでは、と思う。それに、屈して、従うことを喜びと感じるのだろうか。
自分の頭で考えることも出来ず、相手のパワーでもって気圧されるような、そんな力を持った男に、身を委ねるのが、きっと気持ちが安心するのかもしれない。
一般的な人達は、日々繰り返しの生活の中で、この男を愛しているのかいないのか、と、
時折、日々の暮らしの、平和の有難さを感じることなく、それに浸かりきって、ふと疑問に思ったりすることもあるだろう。
そういった一般的幸せとは、全く縁遠いところに自分が位置してしまった、自分の人生が狂ってしまった、そんな女のヒト。
精神的に弱いタイプの女性には、被虐的な、こういう相互依存関係が成り立っているのかもしれない。
そうやって、尽くすことに喜びを見出しているのかも。
それと同様に、ヤクザ社会の、石山の周りの男達も、彼にとってみれば、優しい男ばかりだ。
みんなにかわいがられ、信頼されて、幸せであるのに、それが享受出来なかった男。
誰のことも信用していないから、相手を信用することも出来ないのだ。
この人のようには決してならないようにしよう。なんて思った。
自分の幸せの意味も分からない、そんな状態で、周りにひたすら迷惑ばかりかけて生きる、本当ハタ迷惑な男。
「キレる人は出世しない」なんて言うが、ヤクザ社会はどうやって成り立っているんだろう。
こんなにキレる人ばかりなら、放っておけばお互い殺し合って、別のものが逆に利益を上げるのでは・・・
それは「漁夫の利」だ。
ちなみに、『Dead or Alive犯罪者』はそんな話だった。
2007/06/10 | 映画, :三池崇史(今月の三池さん), :極道・マフィア
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コメント(4件)
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こんにちは!
『新・仁義の墓場』をご覧になりましたか!
確かに誰も信用する事ができず、本能の赴くまま相手を血に染め、女性を求める狂犬人生は受け入れがたいものがあるのかもしれませんね。
別にこういう生き方をしたいとは思いませんが、何となく破滅に向って突き進んでいく気持ちは分からないでもないかもって気はします。
にしてもやっぱ眉を剃り落とすと顔つきが全然変わりますよね。よきパパを何度も演じている五朗ちゃんも眉を剃るや発狂!本当に死んだ魚のような目をして大怪演!
パンチ岸谷はきっと堪能できたのではないでしょうか?
あれ?『恋愛睡眠』にコメントするはずだったのに誤爆しました(笑)
蔵六さんへ
こんばんは〜♪コメントこちらにありがとうございます!
>誤爆しました
ハッハッハ★私は、こうして蔵六さん用の誤爆装置をちゃんと仕掛けているのです!(爆)
ちゃんと引っかかってくださり、ありがとうございます(笑)
いやあ、三池さんの好きそうな人には怒られてしまうかと思ったんですが、・・・。
>狂犬人生
おっしゃる通り、この何にでも噛み付くあたり、攻撃性を全く隠そうとしないところ、それはそれとして凄いとは思いますが・・・
いかんせん、ずっと怒ったまんまの、FFで言えば、バーサーカー状態がずっと続くわけで。
テクも何もないというか、
あまり変わり映えのしない画ズラと言いますか・・
割と単調に見えてしまいました。
でも!確かに、メイキングで、「ヤクザはパンチだろ」と、パンチパーマをかけたり、ソリコミを入れたり、眉毛も剃って。本当、岸谷五朗は、役者として立派ですよね!
これは、『龍が如く』を見た者としては、必須科目でございました〜。
ヾ(@⌒ー⌒@)ノおはよう
とらねこさん★
ペットを観にきて・・・この記事にw(゜o゜)w オオー!
そうそう、前の記事でUPしてない物の中でリクエストありますか?と書いてあったので、これをリクエストしようと思ってたのですよ^^
私はこ〜いう極道もの好きなんだけど、なんともやり切れない作品でしたよね^^
有森也美、可哀想でしたね〜〜。
何なんだ?この岸谷?むかついてしょうがなかったです。
でも、それだけ演技が上手かったのかな・・・なんて^^;
『龍が如く』観れなかったのでDVD待ちで〜すy(^ー^)yピース!
とんちゃんさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございます!
ペットをわざわざ見に来てくださりありがとうございます♪
←龍ちゃんの隣にちょろちょろしてるのが式神くんです^^
龍ちゃん、イイ顔してるでしょ〜♪
『悪夢探偵』の時の龍ちゃんです★
へ〜、とんちゃんさん、極道モノもイケてしまうのですね★フム〜。
幅広いですね〜。
そうですね、確かに自分勝手すぎてムカツくんですが、そこまで入れ込んで演技している岸谷五朗を、みんな大絶賛してるのが、この映画の救いになってますね♪
『龍が如く』TB待ってますね〜!
こっちの方は、すごく楽しいですよ。
最近の三池さんの方が、ずっと好きです、私