※9.『こうばしい日々』
作者 / 江国香織
この人の、優しい言葉が好き。
私は、江國香織さんを読むと、もっと優しい言葉を使える大人になろう、って思ったりする。
児童文学から書き始めて、その後大人用の本を書き始めるようになった、その後もずっと、優しい言葉を選び続けている、江国さん。
この辺り、何気ないようでいて、スタンスと強いこだわりを実は感じる私だ。
短編集が二つ収録されていて、『こうばしい日々』と、『綿菓子』。
一つ目の『こうばしい日々』は、アメリカに住む少年の話。
二つ目の『綿菓子』は、小学6年生から、中学1年生になった少女の話だ。
子供目線というのがとっても好き。まっすぐで、曲がってなくて、分からないこと、分かりたくないこと、素直に感じたままをみずみずしく捉える感覚。
みのりは、思う。
「矛盾のない恋に生きようと思った」。
そう言えば、こんな風に私も思っていたっけな〜と思う。みのりの気持ちは分かるのに、でも、もう少し灰色の、大人の気持ちも、実はちゃんと純粋だったり、辛い経験をいろいろしたり・・・。
そうした結果、こんな風に思うようになったんだ、ってことが、今の私は知ってたりもする。だから、そんな大人の気持ちも痛い。
この人の目線は、本当に優しい・・・(泣)
ここに収録された二つの物語は、どちらも、テーマがある種似通ってて、彼らのそれぞれのお姉ちゃん、目上の人の恋愛を通して、主人公たちがいろいろなことを感じたり。
そして、自分たちの、子供ならではの、かわいらしい精一杯の恋愛話を通して、彼らがほんの少〜し成長すること。
そんなことが描かれている。
要するに、人生そのもののスケッチ。
「繊細さってものは、ボクにはまるで分かりません」
・・・という人でさえなければ、江国さんの優しい言葉が、心地よい痛々しさでもって、心にきゅんきゅん響くと思うのだけど。
切なくて、優しい文章。
私も、人を傷つける言葉は、もう選びたくないな。
2007/05/29 | 本
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コメント(5件)
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とらねこさん、こんにちは☆
記事を見て読みたくなって読んでから再度のお邪魔です。
初めて読んだのは十代後半くらいだったんですけど、何回読んでも色褪せないし何度でもきゅんきゅんしちゃいます
子供目線の恋愛なんですけど、切なくなっちゃうんですよね。
ダイ目線の「僕は、あやまるかわりに〜」てとこは、なんか嬉しくもなっちゃいます☆
「優しい言葉」ってその通りなんですよね。痛みも伝わってくるんですけど、でも傷つけられるわけではなく。子供の頃の心細い不安な気持ちを思い出したりもするんですよ。
なんか訳分からなく長くなってしまってごめんなさい
ヨゥ。さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
ヘヘヘ・・・ちょっと、バレバレでした?
実は、ヨゥ。さんがお尻の痛い思いをしながら、連日ギドクを観ていたのに感激してしまいまして。
お礼っていうか変ですけど、私もヨゥ。さんのフェイバリッツでお返しがしたかったのでした〜♪
しかし、たくさんあるんですね、江國さんの本て。
そうなんですよね、痛いんですけど、「普段感じてすらいないようなところが痛い」というか、敏感なところを優しく突き刺すような、そんなピンポイントな痛みなんですよね。
でも、決して嫌いじゃないんですよね。だけど切なさでいっぱいになりますよね・・・
こうばしい日々 江國香織
ウィルミントンの町に秋がきて、僕は11歳になった。映画も野球も好きだけど、一番気になるのはガールフレンドのジルのことなんだ…。アメヮ..
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藍色さんへ
TBありがとうございました。
自分にとってはこれ、とても古い記事で。
読み返すのが怖いですね
TBは、古い記事でも全く気にしないで出してくださって、構わないですよ!