#50.ドリームガールズ
1962年、デトロイト。プロの歌手としてのデビューを目論む、ディーナ(ビヨンセ・ノウルズ)、エフィー(ジェニファー・ハドソン)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の3人から成る、女性歌手トリオ・ドリーメッツ。
彼女たちに目をつけた、敏腕マネージャーのカーティス(ジェイミー・フォックス)は、R&B歌手、ジミー・アーリー(エディー・マーフィー)のバックコーラスとして、彼のツアーに参加させることに成功した。
だが、ジミーが流行から次第に取り残されていくのを、敏感に察知した敏腕マネージャーで、冷血なところもあるカーティスは、ジミーのバックコーラスから、彼女たちをデビューさせることを英断。
“ザ・ドリームス”として、音楽もPOPなものにし、大衆受けを狙う。さらに、歌唱力が特に優れたエフィーではなく、ルックスのいいディーナをメインに据えて、商業的成功に賭けた。
商業的成功の裏で渦巻く人間模様、当時の’60年代〜’70年代のMOTOWN全盛期の音楽業界・・・。
これって、そんなに絶賛するほどの映画だったかな・・・?
そもそも、MOTOWNの成功逸話だったりするなら、もっと以前の、ソウルやR&Bの、本格的な方が好きで、アレサ・フランクリンなんかが、大好き。
ジェニファー・ハドソンの歌が、どこかアレサを思わせる力強い歌声だったのは、初めグっときたのだけど。
でもだんだんその歌のうまさにも慣れてくると、歌唱力はあっても、押すばかりで引きがなくて、聞いていて飽きる。CDで聞いても、きっと飽きるだろうなあ・・・。
この映画自体も、ちょうどこの彼女の歌と似たような印象で、派手ではあるし、見所もあるんだけど、とにかくパワーだけで押しまくる映画というか、一本調子でずっと派手派手なので、ちょっと食傷気味。
作曲家のエフィーのお兄さんは、見ていてかわいそうだったなぁ。
「俺からファンク精神を抜いた、味気の無い音楽を作らせるのはもう勘弁だ!」というセリフが出て来た時は、いかにもそうだろうなあ、なんて、納得してしまった。
マネージャーのカーティスは、敏腕で、どういった音楽が売れるか、という鼻が利くのだろうけど、ミュージシャンの気持ちを理解せずに、商品としてしか見ていない。でも、こういう人は、今でも、音楽業界の上層部に、いかにもいそう。
R&Bやソウルという音楽から、一般受けを狙った、商業的成功のために、つまり、ソウルから魂、ソウルを抜いた音楽を作るなんて、一番つらいことだろうな。
成功したい気持ちはあっても、ミュージシャンとして、自分の納得いかない音楽を作り続けなければいけないのは、つらいことだろうと思う。せっかくの才能が台無し。
「そんな魂を売るような音楽は、作りたくなんか、ないでしょう?」
なんて、そっと肩に手をやりたいような気分でいっぱいだったー・・・。
どっかの誰かのミュージシャンが言ってたのだけれど、
「一度成功したら、ずっと同じ曲を作らせ続けられる。リフを多少変え、歌詞だけ変えて、ずっと同じ曲を。でも、俺はそんなのはごめんだ。」
そんな言葉を思い出した私だった。・・・
とかまあ、そんな事を言いつつも、現在の私は、ビヨンセや元デスチャなんかは大好きだったりもして、それは、商業的大成功を収めてもいるので、「それはどうなんだ」、なんて言われても言い返せないんだけど、それこそが、この音楽業界に所詮踊らされている、観客の一人だ、ということなんだろうなぁ。
そして、この時代と今とは基本的に異なるところもないのだろうと思う。ただもっと、現代の音楽シーンでは、特にメジャーどころの、中心に据えられたアイコンなんかだと、トラックや編集に力を入れられたものが、そのTOPの座には、与えられるというか。
例えば、マライア・キャリーにしても、なんだかんだ言って、出す毎ごとに新作のアルバムが大ヒットするのは、目抜きアーティストとして、お金もかけまくられて、一流の作家をあちこちから探し出したりなどして、楽曲なんかにも力が入れられているなあ、と納得する内容だったりする。
日本で言えば、SMAPなんかが、やはり同じように、一流の楽曲を作るために、あらゆる有能な作曲人を厳選していたり、周りのスタジオ・ミュージシャンにしろ、演奏するミュージシャンにしろ、本当に一流どころを取り揃えていたりする。そんなのと一緒だと思う。
ビヨンセにしても、成功を得た今でも、次から次へと新しい才能を発掘するのに躍起になっていて、今旬、と思われる、新しいミュージシャンやプロデューサーを、次々に起用する。
そういった、人々に飽きられないための戦略が、うまいこと成功して、今現在としては軌道に乗っているのだなあ、と思ったりした。
日本なんかと違って、アメリカではアイドルにしろ、歌もちゃんと上手かったりして、“上手い”ってだけじゃ、生き馬の目を抜く業界で、勝ち続けることは出来ないんだろうし・・・。
そんな中、現在の音楽シーンに堂々と君臨する、ビヨンセは、本当にこの役にピッタリだったとも言える。彼女こそ、現代のダイアナ・ロスと言えるし、その成功は本家をとっくに抜いてもいると言えるので。
彼女が大好きな私にとっては、元デスチャのPVでも、ビヨンセのソロになってからのPVにしても、いつも真ん中で、一人輝きまくっている、そんなビヨンセが、人の後ろで歌っていたり、踊っていたりするのを見るのは初めてだった。・・・
ビヨンセには吸引力があって、人の眼を引きつけずにはいられない圧倒的なステージパフォーマンスをする人なだけに、この映画で、わざわざその魅力を殺して、歌も踊りも控えめにしている姿を見ると、悲しくて悲しくて仕方がなかったわ。
まあ、人とズレまくっているんだろうけど、最初に出て来たステージの時からして、他の人はいいから、ビヨンセが見たい!とばかりに、ひたすらビヨンセを追って見てしまったのが、そもそもの大間違いだったとは分かってるんですがね。
なので、途中で“ディーナ”を真ん中に据えて・・・なんて言われても、「そんなの、ビヨンセが真ん中に決まっているでしょう」とい
2007/03/27 | 映画, :音楽・ミュージカル・ダンス
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『ドリームガールズ』’06・米
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ドリームガールズ
『夢は永遠に生き続ける』
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アカデミー賞最多ノミネート(6部…
≪ドリームガールズ≫
ドリームガールズ スペシャル・コレクターズ・エディション
¥2,925 Amazon.co.jp
(DVDレンタル@2007/11/09)
原題 DREAMGIRLS
製作年度?2006年
製作国 アメリカ
上映時間?130分
監督 ビル・コンドン
出演 ジェイミー・フォックス(カーティス・テイラー…
ドリームガールズ 07202
ドリームガールズ Dreamgirls
2006年 ビル・コンドン 監督ジェイミー・フォックス ビヨンセ・ノウルズ エディ・マーフィ ダニー・グローバー ジェニファー・ハドソン アニカ・ノニ・ローズ キース ロビンソン シャロン・リール ヒントン・バトル
….
TBありがとうございました!
もしや?と思って、早速来てみると、、、
ぎゃははは!!
>そんなの、ビヨンセが真ん中に決まっているでしょう
>それぞれいがみ合うシーン。これも、うるさくて一本調子で、閉口した。
この映画をベストに入れている人たちって、書いちゃうケド、
3ディグリーズもシュープリームスもポインターシスターズもシスタースレッジも、何も聞いたことがない人なんじゃないかな?ストーリー的に「良い映画」というのは、絶対にないしね。良いというのであれば、音楽しか考えられない。その音楽も、喧嘩ばっかりじゃねぇ、、、
ホント、さいてー映画だと思いますyo!
猫姫少佐現品限りさんへ
こんばんは〜☆コメントありがとうございました。
そうなんですー、私この映画、大嫌いだったんです〜。
何がどう面白かったのか、世間の意見が、本当理解不可能。という感じでした。
本当は、ここで音楽を作曲しているのが、ビヨンセだったりするのに、
ビヨンセの歌は、存在感がなくて、上手くない、そしてちょうどこの映画のダイアナ・ロスみたいに、才能がなくて、歌も下手。なんて言われちゃうのも、私にはとても嫌なことでしたー。
ビヨンセの歌を今までちゃんと聞いたことがあるのか?って感じ。
(あれ、微妙に噛み合っていない気が・笑)
とにかく、何も面白くない映画でした。
ドリームガールズ
夢は永遠に行き続ける
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