#46.ラスト・キング・オブ・スコットランド
映画ブログを始めて、10ヶ月程経った頃くらいかな?映画を見ながら、どんな感想を書こうかとか、疑問点を感じた箇所や、その理由、そしてそれらが映画にどう作用していくか、なんて、頭の中で感想を組み立てながら見てしまって、最早素直に映画を楽しむ、という余裕がなくなってしまった自分が居るのに気づいた。
だけど、本来はそうしたことは本末転倒で、やはり最初に映画の中に没頭すべき、とは思ってはいるが、なかなかそうはいかなかったりする。
でも、有難いことに、この映画や、『BOBBY』のような素晴らしい作品に出会うと、そうした余計な頭の動きを全く忘れて、映画そのものの中に、埋没してしまった自分に、途中で気づいて、「おお、これは素晴らしい映画なんだな!」と、つくづく実感した。
この作品は事実を元にした映画で、’71年に軍事クーデターにより、イギリスの助けを借りて、アミン大統領がオボア政権を打ち破り、新たな権力の座につく。
初めこそ、カリスマ性を発揮し、人心を掌握して国民の新たな希望の星となるも、暴力を暴力でもって鎮圧してゆく中、次第しだいに狂気と虐殺の恐怖政治を敷いてゆく。
’79年のアミン失脚までに30万人のウガンダ人が虐殺され、“人食い大統領”として恐れられたという。
スコットランドから、志を抱いて医師としてやってきたニコラス(ジェイムズ・マカヴォイ)は、アミン大統領(フォレスト・ウィテカー)の演説を聴き、そのカリスマ性を感じる。そしてひょんなことから、アミンの気にいられ、大統領の顧問医師として働くことになるのだが・・・。
私的には『ゴースト・ドッグ』で忘れられない演技をした、フォレスト・ウィテカーが、今年、’07年のアカデミー主演男優賞にノミネートされた、ということで注目していた作品だっただけでなく・・・
若い、冒険精神溢れるスコットランド医師を演じたジェームズ・マカヴォイも、イギリスインディペンデント映画賞の主演男優賞と、英アカデミー賞の新人賞に輝いた、という作品。
事実を元にした物語でありながら、サスペンスフルに恐怖感をじわじわと感じさせる、とても優れた脚本で、
最後まで緊張感を保ったまま、画面に目が釘づけになる、素晴らしいものだった。
イディ・アミンの、次第しだいに狂気に満ちて、周りの人間を誰も信用しなくなり、パラノイア的になってゆく姿は、テーマが分かりやすくて、見るものに余韻を持たせるし、
虐殺の原因となるものが、彼の抱える恐怖心であり、また、そうした行動をそのままに出してしまう、子供じみた振る舞い・・・
それらを自然に演じたフォレスト・ウィテカーは、役作りのために、’05年から十分に調査した、というだけあって、素晴らしい出来となっている。
その上、このジェームズ・マカヴォイという、医師ニコラスを演じた、今後、要注目に値する俳優が、本当に素晴らしくて、目が離せなかった。
しかも、ルックスもとってもカッコ良くて、オダジョーと、ラッセル・クロウを足して二で割ったような顔している、とてつもないイケメン。・・・
画面を彼一人に釘づけにするだけのオーラを、存分に見せ付けてくれちゃって、もう、私は、すっかりファンになってしまいましたよ・・・。
普段、「イケメンに興味はない」なんて言っておきながら、この、ていたらく。
スコティッシュ訛りが、こんなに素敵なものに感じてしまうなんて〜〜〜。
ウットリ
俳優の演技だけでなくて、何より、これを、サスペンスとして盛り上げてゆくのが、とても上手で、久々にヒットしてしまった。
というか、前言を翻し気味だけど、ジャンル分けをするのも、気が引けてしまうくらい、“サスペンス”というより、リアルなドラマになっている辺り、
ガツンとくるストーリー展開がとても気に入ってしまった。
「アミン大統領の子供じみた振る舞い、それこそが恐怖」、という台詞も、とても納得できるし・・・。
そして、これが恐怖に裏づけされたもの、という、心理をキチンと描いている作品としても、圧巻。
途中に挟まれる、『Me & My Bobby McGee』の曲。歌詞が字幕付きで訳されていた、この歌の歌詞にあるように、
Freedom is just another word for nothing left to lose
(“自由とは、言い換えれば、何をも恐れないということ”・・・とらねこ訳)
この言葉が、とても心に残った。
人に対する不信、そして、虐殺する心理の裏側にあるのが、この、恐怖を抱えた、子供のようなアミンの姿だったからだ。
2007/03/21 | 映画, :ドキュメンタリー・実在人物, :ヒューマンドラマ
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コメント(78件)
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ラストキング・オブ・スコットランド
イディ・アミン。その名前は少しだけ聞いた事がある。実際に何をした人か、どこの国の人かという曖昧さを持ちながらも、始めて知る人物は何とも怖く人間臭い。
時は、1971年。スコットランドの医学校を卒業したニコラス・ギャリガン(ジェームズ….
orangeさんへ
こんばんは★コメントありがとうございます!
>お返事・・・大変遅くなってしまいごめんなさい
イエイエこちらこそ、お忙しいところ、申し訳ないなあ〜と、思っていました!
でも、orangeさんは、ちゃくちゃくといい作品をたくさんご覧になっていて、私も、見たいな〜という作品がいっぱいあるんですよ★
お返事は、こちらはいつでも構いませんので、どうか、負担に感じないでくださいまし。
>どうブログに書こうとか考えてしまうという事は僕も観ていて思ってしまう事がありました
orangeさんもそう考えることがあるのですね!ほっとしました。
そうですね、基本的には、何も考えずに観て、後から考えて整理するのが一番いいとは思っています。
この作品、なかなか見ごたえがあって、キチンと“見せる”のが上手な作品でしたよね。
エンタメ精神と社会派テイストのバランスのいい作品でしたよネ♪
映画:ラストキング・オブ・スコットランド
ラストキング・オブ・スコットランド
「冒険気分でやってきたのか」
予想以上に後味が悪かったです・・・基本的にネタバレは気にしないのであらすじやレビューもちらちら読んでたのもよくなかったです。でもまあアカデミー主演男優賞なんだしやっぱり観とこ、と。
…
真・映画日記(1)『ラスト・キング・オブ・スコットランド』
3月18日(日)
2日続けてゆったりだらだらモードはまずい。
なので、無理矢理外出することにした。
新橋のTSUTAYAで借りたビデオが明日までの返却なので、
まずはこれを返しに行く。
この後、三田線で日比谷に行き、
有楽町駅前にある「スバル座」で『ラスト・キ…
ラストキング・オブ・スコットランド
The Last King of Scotland
1970年代、ウガンダに登場した大統領イディ・アミン。主治医としてアミンの側に仕えたスコットランド人青年の目を通して浮かび上がる独裁者の姿。
緊迫感が最後まで持続する、サスペンス仕立ての構成。もう一人の主人公は権力者に取り立…
ラストキング・オブ・スコットランド
重たい社会派ドラマだと言う事で少し観るのをためらっていた割には、すんなり観る事が出来ました。それは殺りくシーンの多いブラッド・ダイヤモンドを先に観たからかも知れません。それよりも何よりジリアン・アンダーソンをこんなところで観られてびっくりしました。
ブログに凝り出して、楽しくなってくると、記事を書くために映画を観るなんて事になってきて…結構多くの人が陥りやすい流れだったりもします。とりあえず話題作は抑えておかなきゃ…とか。
自分は映画を観るという行為自体が生活の最優先に近いほどのバカなので、全くブログに記事を書けていません…汗
というか見ごたえばっちりでした。魅入ったというより二日酔いの癖してスクリーンに釘付けでした(笑)
八ちゃんさんへ
こんばんは〜★TB、コメントありがとうございました。
>とりあえず話題作は抑えておかなきゃ…とか
どうやら、私には、その傾向はないみたいですよ(笑)
自分が好きそうにないやつは、もう自分では分かってしまうんですね。
失敗しないように、出来るだけ好きそうな作品を選ぶようにしてます。ブログに書くのが面倒で、見たくない作品、なんていうのもあります・・・。
私の場合、ブログをやり始めてからの方が、数見れなくなってしまいました。何しろ、書くのに、時間を割きますから。
それを考えないようにすると、今の私のように溜まる一方になります。ちなみに、『パフューム』なんて、見たの1ヶ月前ですよ!もう・・・遅すぎ。
ラストキング・オブ・スコットランド
1月の「ダーウィンの悪夢」から
2月の「ルワンダの涙」、そして、
4月の「ブラッド・ダイヤモンド」と
僕が見ただけでもアフリカを舞台にした
映画がどんどん公開されています。
未見ですが、「輝く夜明けに向かって」や
大阪ではもうすぐ公開の「ツォツィ」と
し…
ラストキング・オブ・スコットランド
いったん権力のトップに登り詰めた人間が、その権力を固守するために刃向うものを徹底的に排除し、独裁者になり果てていくさまが恐ろしいほどよく描かれています。 た
ラストキング・オブ・スコットランド
かつて「食人大統領」等と称され、ウガンダ共和国を独裁政治で支配してきた悪名高きイ
ラストキング・オブ・スコットランド
最近、流行(?)のアフリカ物ですが、その中で、最も、白人がアフリカで犯した罪に真摯に向き合った作品だと思います。
医学部を卒業し、目出度く学位を取得したニコラスは、ウガンダへ行くことを決めます。それが、1971年、アミン大統領がクーデターにより、政権を取り…
ラストキング・オブ・スコットランド (The Last King Of Scotland)
監督 ケヴィン・マクドナルド 主演 フォレスト・ウィッテカー 2006年 イギリス映画 125分 ドラマ 採点★★★★ 中学一年の頃だったか、どういう流れでそうなったかは定かではないが女の子と二人で映画を観ることとなってしまった私。もう一年もすれば頭ん中が女の子の事でパ…
DVD“ラストキング・オブ・スコットランド”
ラストキング・オブ・スコットランド
¥2,993
Amazon.co.jp
医者としてウガンダの診療所にやってきた青年ニコラス。
偶然にも、新大統領アミンの怪我の手当てをしたことをきっかけに
彼とその家族専属の主治医となる。
理想と好奇心か…
ラストキング・オブ・スコットランド
『何よりも恐ろしいのは、人間の本性』
コチラの「ラストキング・オブ・スコットランド」は、3/10公開になったジャイルズ・フォーデンの小説を映画化したR-15指定の政治サスペンスなんですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪
ウガンダの「人食い大統領」と言われた….
ラストキング・オブ・スコットランド
【THE LAST KING OF SCOTLAND】R-15【公開】2007/03/10
←言わ猿・・・
ラストキング・オブ・スコットランド 【2006 The Last King of Scotland】
[[attached(1,center)]]
1971年、スコットランドの医学校を卒業したニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は、診療所で働くためにウガンダにやって来る。
ある日、彼はアミン新大統領(フォレスト・ウィテカー)の演説を聞きに行った帰り道で、偶然にも、大統領の捻挫の…
『ラストキング・オブ・スコットランド』’06・米・英
あらすじ1971年、スコットランドの医学校を卒業したニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は診療所で働くためにウガンダにやって来る。ある日、彼はアミン新大統領(フォレスト・ウィテカー)の演説を聞きに行った帰り道で、偶然にも大統領の捻挫の治療をすることになる…
「ラストキング・オブ・スコットランド」
こないだ観た「バンテージ・ポイント」に出てたフォレスト・ウィッテカー主演。
ナルニアのタムナスさん・・いや、「ペネロピ」にも出てたジェームズ・マカヴォイも出てるし・・・。
相変わらず記事を溜めてるひらりんでーーす。
最近は、おもろいコメディもないし・・・
暗殺ものや、こういうサスペンスが続いてるよーーー。
サスペンス・・・・サスペンション・・・
そういえば、(無理矢理ですが・・・)
クルマがやっと、やって来ました。
予定通り???ひらりんにお似合いのキュートでワイルドなキューブとなっております。
写真をアップしたので、見に来てねーーー。
ひらりんさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
ひらりんさん、そんなにコメディ好きな人だったんだー☆
うん、似合います(笑)
私も、今DVD含めずに、映画5本溜まっちゃってますね・・・
で、サスペンション?!ハハハ、上手く繋がりましたね〜☆
で、キューブとうとう納車したんですね〜
おめでとう〜♪見に行きますね。
<ラストキング・オブ・スコットランド>
2006年 イギリス・アメリカ 124分
原題 The Last King of Scotland
監督 ケヴィン・マクドナルド
原作 ジャイルズ・フォーデン「スコットランドの黒い王様」
脚本 ジェレミー・ブロック ピーター・モーガン
撮影 アンソニー・ドッド・マントル
音楽 アレ…
これは、主演俳優も良かったし前半と後半の違いも印象に残ってます★
後半とか、残虐描写に目を覆ってしまいましたもん(●ノ∀`)゚o。アヒャ
トラバさせて頂きます♪♪
ラストキング・オブ・スコットランド
独裁者へと変貌した実在の人物イディ・アミンを、スコットランド人医師青年の視点から描いた話題作!!
何よりも恐ろしいのは、人間の本性
Maryさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます
これ、去年すごく好きな作品だったんですよ。
私は実はその残酷描写が良かったんですよね〜
フォレスト・ウィテカーが好きなので楽しみにしていました。 恐怖心から次第に狂っていく感じがとても怖かったし、凄い演技力だと思いました。
ナルニア国を観てジェームズ・マカヴォイのファンにもなってしまったのですが、あまりにもナルニア国と顔の感じが違うので最初判らなかったです。
みのりさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
フォレスト・ウィテカー、いいですよね。やっぱ、『ゴースト・ドッグ』ですよね。
ジェイムズ・マカヴォイ好きですよ。
『ペネロペ』で結構ファン増えましたでしょうか?
ラストキング・オブ・スコットランド
何よりも恐ろしいのは、人間の本性