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#42.セレブの種

セレブの種人工授精なんかはまだまだ、私達一般庶民にはあまり縁のない話とは言え、たまに耳にする言葉だけれども、遺伝子工学なんかが進むにつれ、だんだん身近なものになってくるのかなあ・・・?


この作品の話を聞いてまず思い出したのが、確か数年前にヴィンセント・ギャロが自分の精子を100万ドルで売る、なんて言ってた事で、さらに、
相手の容姿をギャロが気に入れば、“本物を行う”と言っていた、あのニュース。
聞いた時は「なんてヤツだ!」と思ったんだけど、
この作品は、そんなこんなを地で行くかのようなお話。


ストーリー・・・
ハーバード大学、他一流大学を出て、エイズの特効薬を開発する、大会社に勤めているエリートの、ジャック・アームストロング(アンソニー・マッキー)。
彼の同僚が自殺をしてしまい、ジャックは企業の内部告発を行ったことで、会社をクビになり、同時に無一文になってしまう。
ジャックの元の婚約者であり、現在はレズビアンのファティマ(ケリー・ワシントン)は、お金を払うから子供が欲しい、と、現在の彼女と共に、ジャックのところにやって来た。元の彼女に未練のあるジャックは、いやいやながらもそれを引き受ける。
すると、さらに、1万ドルの高額収入と引き換えに、“種づけ”をさせてくれという、レズビアン達が彼の元を訪れるようになった。・・・


これまた、なかなかに風変わりな設定が面白い。
“行列の出来る精子バンク”、人口受精でなく、実際行為?!で、「ンナ、アホナ!」
と思いつつも、レズビアンに“種付け”ってことなので、世のためになってもいるし・・・
ジャック役のアンソニー・マッキーが、とってもハンサムで、BOW WOW並のキリっとした目がとてもキュート!
その上、超一流のエリートという設定なので、お金があって、子供をもてる経済力はあるレズビアン達が列をなすのも分かるかも・・・なんて思ってしまう。


話は反れるけれど、バーナード・ショーがどっかの女優さんに言った一言もちょっと思い出したり。
それは、女優に「私のようなルックスで、あなたの頭脳を持った子供が出来たら、最高だと思わない?」と言われて、
「その反対が出来たら困るから遠慮しとく」なんて言った、’50年代のジョーク。


いやしかし、遺伝子工学が発達したら、やはり少しでも条件のいい遺伝子が欲しくなってしまうのも納得できてしまう発想で。
今すぐには無理でも、『ガタカ』のような、劣性遺伝子をより分けて子供を作る時代が来たりして・・・なんて想像が膨らんでしまう。


スパイク・リーというと、『マルコムX』、『ドゥ・ザ・ライト・シング』等の一昔前はゴリゴリの社会派のイメージの強い監督だったのだけれど、『25時』ではほとんどお得意のテーマの人種差別があまり感じられることなく、『インサイド・マン』ではエンタメ色も強いサスペンスで驚いたりしていたが、
この作品は、『インサイド・マン』の前に作られたものだったとのこと。


この作品は、社会性のあるトピックを扱いつつも、エンターテイメント性も豊かに盛り込んだものだったので、最後まで楽しめるような出来で、同監督作では『ガール6』辺りを思い出すような仕上がり。
かつ、人種差別や内部告発、同性愛の問題についても織り込んでいて、見所もあり。
やっぱり、なかなか風味の変わった切り口の映画は、見ていて楽しい。

ブラック・カルチャーについてのたくさんの固有名詞も、いつもながら楽しい。
カニエ・ウェストやジェイZ、LL cool Jやスヌープの名前なんかが出て来ると、毎度毎度楽しくなってしまう。
イタリア人マフィアのドン役のジョン・タトゥーロが、「なぜ黒人のラッパーは、ギャングスタを気取るんだ?」なんていうところは、爆笑ポイントだったりしますw

モニカ・ベルッチが出て来て少し驚いた。
最後、うまく話がまとまっているのも好印象で、エンターテイメントと社会性のバランスがうまく取れている作品だなと、好感触でした。
『インサイド・マン』では、去年、他の人の不評ぶりに驚いてしまった私。自分はとても楽しく見れたのだけど、オチのつけ方がみんなダメだったのかなあ・・・。
私は途中のダイアローグを楽しめてしまったので、特にオチなど気にしていなかったのだけれど・・。
私はこのエンタメ精神のバランスがうまく取れた昨今のスパイク・リー作品がとても好き。これからも追っていきたい監督さん。


私がもしお金持ちだったら・・・うーん、誰がいいだろう?

セレブの種@映画生活

 

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コメント(14件)

  1. セレブの種/アンソニー・マッキー、ケリー・ワシントン

    スパイク・リー監督のが本作でテーマにしたのはなんと生殖ビジネス。R-18指定になったので過激な内容があるのかと思ったらコミカルなタッチだし、さほどでもなかったですヨ。エロスを期待し過ぎないように(笑)
    ところでレッドブルって日本でもアニメでCMしてるドリンクで….

  2. セレブの種(DVD)

    女が求めるのは、超一流の遺伝子!。
    エイズの特効薬の開発会社に勤めるジャックは、一流大学を出て管理職として活躍するエリート。しかし企業の不正を知り、内部告発をしたことから会社をクビになり、無一文になってしまう。そんな彼の弱みを知って、かつての婚約者で今…

  3. 少しでもいい遺伝子、優れた遺伝子を欲っするというのはある意味動物の本能みたいなものなのかもしれませんけど、それがお金の力によって決まるとなると人間そのものの優劣もお金の額で決まってしまいそうで怖い気がしますね。もしある一定の遺伝子のみにニーズが集中していったら世の中みんな似たような人間ばかりが結果的に残るってことなのかな?最終的には顔、形みんな似通ったりして(笑)
    私も「インサイドマン」は楽しめたんですけど、みなさんオチに厳しかったですね(苦笑)

  4. [ セレブの種 ]知的労働より肉体労働

    [ セレブの種 ]@渋谷で鑑賞
    [ インサイド・マン ]に引き続き、
    今年2本目となるスパイク・リーの監督作品。
    テーマが重いのに、観終わるとなんだか気持ちが軽い。
    たぶん、それはスパイク・リーのウイットに富んだ軽快な
    語り口のせいだと思う。私的には[ イ…

  5. かのんさんへ
    こんばんは☆コメントありがとうござます。
    >それがお金の力によって決まるとなると人間そのものの優劣もお金の額で決まってしまいそうで怖い気がしますね
    そうですね、今こうして考えるとまるでSFのような世界ですが、でもそれが実際に実現されるようになる未来はそう遠くないかもしれないですしね。
    皆考えるところはある程度一緒で、やっぱりある程度顔が良くて頭が良くて・・・
    なんて感じになってしまうかもしれませんよね。
    同じような遺伝子ばかりが集まったところで、急にその遺伝子特有の病気が発生して、人類は壊滅・・・
    なんて想像してしまったりする私ですがっ・・・w
    『インサイド・マン』かのんさんは楽しめたのですね☆良かった〜♪私もです!
    PS、かのんさん、
    私このコメント、ずっと前に書いていたのに、今日、3/20になるまで、反映されていなかったとは、ついぞ、知りませんでした。
    気づかず、本当にごめんなさい!!!!!

  6. セレブの種

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  7. 『セレブの種』 SHE HATE ME

    スパイク・リーって、やっぱりエネルギッシュだ。
    盛りだくさんな内容が軽快に楽しく語られて、最後はジーン。
    ハーバードでMBAを取得し、バイオテクノロジー企業で働くエグゼクティブのジャック・アームストロングは、会社を首になり、元彼女のファティマからの“種付け…

  8. こんばんわ。
    たしかみんなが酷評したマイアミ・バイスのときに私は大絶賛して、みんなが大絶賛したインサイドマンのときに私は酷評したという逆行路線をいっていた時期があったのですが・・・・。
    別に気にしません。
    好きなものは好きです。
    この映画の中のリアルな出産シーンがいまだに脳裏にこびりついております。そんなシーンがトゥモロー・ワールドにもありましたね。今思い出しました。

  9. 睦月さんへ
    こんばんは!コメントありがとうございました。
    >みんなが大絶賛したインサイドマン
    アレ?そうだったんですか?
    『マイアミ・バイス』はともかく、私の印象では、あまり芳しい評判を聞かないような気がしていたのですが・・。
    当時私は、まだ、TBを少しの方にしか送っていなかったからかなあ・・・。
    睦月さんの方がいろいろな方の記事を読んでいらっしゃると思うので、私の記憶と違うのかもしれませんね。
    私が一番ズレたのは『ハードキャンディ』ですかね〜。この映画は、酷評の嵐の中、一人絶賛しまくり、ついでに去年のベスト10にも入れてしまうという、さんさんたるズレぶりでした。今でも、誰が何と言おうと、この作品は大好き!
    まだ書いていない『ドリーム・ガールズ』も、ちなみに、おそらく人と全然ズレた感想をUP予告です(まだ誰のも読んでいないのですが)。

  10. セレブの種

    「セレブの種」 2006年 米
    ★★★☆
    コメディだとばかり思っていたのに、ちょっと違うようだ^^;
    スパイク・リー監督と言えば、疎い私も「インサイドマン」の監督だとわかる。
    「インサイドマン」も、観ようによっては奥が深く、また観ようによっては大味…

  11. こんばんは〜トラネコさん★
    私も、「インサイドマン」好きでした。
    でも不評だったので、肩身が狭かったです(笑)
    こっちも面白かったのですが・・・あの精子君に
    ずっこけちゃいました^^
    全体的には好きな映画です

  12. とんちゃんさんへ
    こんばんは〜★コメントTBありがとうございました!
    やっぱし、『インサイド・マン』は不評だったと思いますよね??ね?ね?
    私も肩身が狭かったのですー(泣)
    フフフ・・この映画、ちょっとオフザケ風なところもありましたよね♪
    この展開、「そう来るかぁ〜」と思ってしまいました^^

  13. 『セレブの種』

    セレブの種
    監督:スパイク・リー CAST:アンソニー・マッキー、他
    STORY:ハーバード大を優秀な成績で卒業し大企業に勤めていたジャック(アンソニー・マッキー)は、社内の不正を密告し解雇され全財産を失う。そんなある日、ジャックの元恋人で今はレズビアンのファ…

  14. セレブの種@我流映画評論

    今回紹介するのは、ひさびさに鑑賞したスパイク・リー監督作品の『セレブの種』です。
    先に映画のストーリーから・・・
    ハーバード大学のMBAを取得し、大企業に勤めていたジャックは会社の不正取引を告発し、解雇されてしまう。
    職を失ったジャックに、かつての恋…




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