#36.BOBBY ボビー
ロサンゼルス、アンバセダーホテル、1968年。
ロバート・ケネディ、通称BOBBYの暗殺事件の際に、偶然居合わせた22人の物語。
この群像劇というものに、アメリカの歴史として衝撃的な、運命的な日にちというものがあるだけに、そのバラバラな個々のストーリーを編み上げる、“一つの視点”というものが、焦点を絞られていて、その手腕は見事だ。
歴史を見た、というその力強い表現が、リベラルでありあくまでも人間性、ヒューマニズムを訴えかけているだけでなく、
何より、この群像劇の底辺に流れているもの、それは間違いなく叙情性だ。
この詩情豊かな感情表現が、台詞の美しさを引きたて、その一瞬一瞬を、きらめく一つの“詩”にしている。
また、まるで一つひとつが短編のように絡み合っている様が見事。
去年の『クラッシュ』とどことなく似ているような感じがあるのは、『クラッシュ』において“交通事故”というものが人間のコミュニケーションの有様を、あらゆる視点からシンボリックに描き出していたが、
この映画においては、“ボビーの暗殺事件”という、一つの歴史的に揺るがない一大事として、人々の心に大きな“交通事故的ショック”を与えていたためだ。
この一つの大きなタペストリーに、それぞれの人たちの、どこにでもありそうな日常的な模様が描かれる。
その時代のそこにある、人種間の考え方の相違や、ベトナム戦争で世相が暗くなる中、自由への人々の願い・・・
ボビーの選挙、というものに対して人々がこめた、祈り。
そういったものが、一つひとつの糸が、細かに編み上げられてゆき、そして、そのタペストリーは、無残にも一個の銃弾の前に倒されてしまう。
でも、そこにはかつて間違いなく、流れていたものはあるのではないか?
その時代精神の中に溢れていた、人々の感情というものは、自由への願いというものは、では、一発の銃弾でもって、無残にも踏み潰され、引きちぎられてしまったのか?
そうではないはずだ。今からでも、取り戻せるはずだ。人々の願いがあれば、なんとかこの状態を、きっと変えることが出来るのでは、と、私は思った。
あからさまに政治色の強い作品ではなく、こうして良質のドラマとして、叙情豊かに描かれた、この物語。私はかなり好きだ。
いろいろな人達の物語がある中、司会役として、この映画の要の役を演じ、ひときわ際立っていた、ジョシュア・ジャクソン(←写真左)。
出演者は、まず、この作品の監督であり、脚本も書いた、エミリオ・エステベス、ヘレン・ハント、ウィリアム・H・メイシー、アンソニー・ホプキンス、シャロン・ストーン、イライジャ・ウッド、マーティン・シーン、リンジー・ローハン、クリスチャン・スレーター、ローレンス・フィッシュバーン、デミ・ムーア、フレディ・ロドリゲス(ホセ役←メキシコ系のコック見習い役、チケットを売った方)。
それから、若い報道記者、シャイア・ラブーフ(私的にチェックが入りました)。
あと他には、私的に嬉しかった、ニック・キャノン(ロバート・ケネディと、最後に会談する光栄を得た人)。
この人、『ドラムライン』で主役やった人です。
みんな、覚えてくり〜!
あと、一番笑ったのが、アシュトン・カッチャー!
この人には、爆笑させてもらいましたアシュトン・カッチャーは、絶対そのうち、ドカーンと来ると勝手に確信しちゃいました。
まるで、『トゥルー・ロマンス』の時の、ブラピのようじゃありませんか〜?(何がって、物語中であまり意味のない、イカレたstonedブリが◎なところがっ!)
「何を求めているのか?
・・・いや、君は逃げている。
何を求めているんだ?」
まるでLSDを偶然発見した、ティム・リアリー博士のようでしたよ。(・・・あ、ちなみにこの、ヒッピー文化の立役者になった博士、ウィノナ・ライダーの名づけ親って、知ってました?)
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・ボビー@映画生活
2007/03/05 | 映画, :とらねこ’s favorite, :ドキュメンタリー・実在人物
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コメント(53件)
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独断的映画感想文:BOBBY
日記:2008年3月某日 映画「BOBBY」を見る. 2006年.監督:エミリオ・エステヴェス. 出演:アンソニー・ホプキンス(ジョン・ケイシー),デミ・ムーア(ヴァージニア・ファロン), シャロン・
ボビー
こんなに大物集めちゃって大丈夫なの?
ともかく豪華ですねー。
スターが集まると一人一人の見せ場が必要になって
失敗したりするのですが。。。
監督は、あの、エミリオ・エステベス!
お手並み拝見。
DVDで観賞。
1968年6月5日、カリフォルニア州ロサンゼルス。
…
『ボビー』を観たぞ〜!
『ボビー』を観ました1968年のロバート・F・ケネディ暗殺事件当夜、アンバサダーホテルに集った22人に焦点を当てた人間ドラマです>>『ボビー』関連原題:BOBBYジャンル:ドラマ上映時間:120分製作国:2006年・米監督・脚本・出演:エミリオ・エステヴェス製作総指揮・出…