#32.長州ファイブ
何も幕末好きでなくても、とても楽しめる佳作!
幕末藩士を描いた作品として、ちょっと違ったこういった視点で見るのは、すっごく新鮮でとっても良かったです!!
“歴史を学ぶ作品”、ではなくて、男気を学ぶ“人間ドラマ”。
なかなかの傑作。
ペリー黒船来航後、幕末は精神的に乱れていた。“攘夷運動”として在日外国人を斬り捨てられる事件が相次いでいた。
「本当の攘夷運動は、ただ単に外国人を切って捨てるだけなのか?」
と疑問を抱く、長州藩士の志道聞多(後の井上馨・北村有起哉)は、異人館爆破には加わらず、鬱々とした日々を送っていた。
佐久間象山(泉谷しげる)などの学者は、「外国の技術を学び、技術を身につけることあっての攘夷運動」と言っていたが、この時期にはこうした考え方は、ある種「お上に逆らうもの」として排斥されかねない思考だった。
だが長州藩より、「外国で技術を学び、それを伝える、“生きた機械”となって戻って来い。」と言われ、俄然未来への一筋の光を見出す、井上馨。
そこで、早速人集めを始め、後の伊藤博文(伊藤俊輔・三浦アキフミ)、山尾庸三(松田龍平)、後の井上勝(野村弥吉・山下徹大)、遠藤謹助(前田倫良)とともに、イギリスはロンドンに向かう資金集めから始めるのだった。・・・
“長州ファイブ”と呼ばれた5人の男達。
初めこそ、「自分の手で藩を盛り立てて行こう」と、藩のためを考えていたが、外国の圧倒的な技術を目の前にして、「日本の将来」について考えるようになる。
「攘夷より富国」という考え方に傾いてゆき、「では富国のために何が出来るか」と具体的に考えが及ぶようになる。
こうして一言で言ってしまうと、なんて簡単に聞こえるんだろう。
だが、これを実現する、というのがとても難しい、江戸200年に及ぶ鎖国の後のこの時代の男達なのだ。
一から学ぶことの多さに、圧倒され、気押されてしまうことが多かったに違いないと思う。
あくまでも未来をひたと見据えたこの姿勢、前向きで努力を続ける男達が、エラく眩しい。
ニートや、受験生、就活の学生たちに、声を大にしてオススメと言いたい。
なんかね、見たあと、やたらと「頑張るゾ〜〜〜」って、前向きな気持ちになってくるんですよ。
それから、やたらと勉強したくなってくる。
明るくて、まっさらな気持ちになって、劇場を後にしましたよ。
こんなに明るくて、すがすがしい映画に出会えたのは、久しぶり、という気持ちがする。
気持ちがとても凹んでいたりする時とか、ヤル気や方向性を見失ってしまった人がこれを見たら、きっと、
「なんか知らんが、頑張るゾ〜〜〜♪」って、思える、すっごくいい作品だと思いますよ。
後半部分の、山尾庸三を中心にした物語も、すごくいいのです!
いつも優しい気持ちの人なんですよね。
ここに居る人の中で、一番ヒューマニズムを持った人物として描かれているんだ。
この先、ネタバレありの感想となります::::::::::::::
庸三のまっすぐな目線、真摯な姿、それを見て・・・
仲間は喧嘩すらした、薩摩藩士の人々すら、心を動かされて、グラスゴー行きの資金を、皆自分から少しづつ分け与える。
ここに自分は一番感動してしまいました。
誰かと出会ったときに、その人とぶつかる人もいれば、山尾庸三のように、相手を見方にすらしてしまう人物もいる。
それから、マゲを切るシーンはとても象徴的で良かった。
武士の象徴であるマゲを切った、その時こそ、新たなる時代の幕開けだったのだろうと思う。
幕末長州藩のイメージが、変わりました。
長州藩と言えば、攘夷運動が一番激しいところだったはず。
自分は『竜馬がゆく』を読んだ程度の、幕末の知識しかなく、
伊藤博文と井上馨が外国に行き、すぐ帰って来たのは知っていたが、
その他のことは触り程度にしか知らなかったので、とても新鮮な物語と思いましたよ♪
それから、後半の山尾の話もすごく良かったなぁ。
聾唖者であるエミリーも、この庸三の、本当の優しさ、というものを、言葉がなくても伝わるところがすごく好きだったなぁ〜。
そして、後に、東工大を興し、日本の教育を担う人物になっただけでなく、
聾唖者学校を、日本で初めて設立した人物となる。
きっと、本当の教育者って、こんな優しい人がそう呼ばれるべきなんじゃないか、なんて思えてしまった。
あと、この5人が、長州藩の、下関砲撃事件を受けて、二つに考え方が別れるところも良かった。
5人で初志貫徹、ではないにしろ、その時に大事なことはなんだろう、という選択肢が与えられた。おそらくこういった時にこそ、その人の人生をどう生きるべきか、という二つの道だったのだろうなんて思う。
この5人は、それぞれ自分の信じる道を行き、そして、それぞれ自分の道を完成していく。・・・
感慨深いです。
後記、メモ代わりとして。
長州ファイブ、他の4人のその後。
伊藤博文(伊藤俊輔)、初代内閣総理大臣
井上馨(志道聞多)、初代外務大臣
井上勝(野村弥吉)、鉄道庁長官
遠藤謹助、大阪造幣局局長
2007/02/25 | 映画, :とらねこ’s favorite, :文芸・歴史・時代物
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(28件)
前の記事: #31.受取人不明
次の記事: とらねこ×式神対談 2007年アカデミー賞
長州ファイブ/松田龍平、山下徹大
日本の近代史って授業では時間も残り少ない学期末にさらっと教わる程度なのであまり詳しく知らないことって多いんですよね。なのでこういう歴史モノや幕末モノって、とりあえずは観ておきたいなという風に気持ちが動くんですよ。動機が単純なだけにあまり深く考えてないとも….
タイトルだけ聞いて、勝手に格闘モノかと思ってました(恥ずかしい・・・)
大好きな寺島さんと龍平くんが出てるので気になってます。
私の地元では上映されないみたいでDVD待ちです。
ひめさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
ハハハ☆そうですね、普通、長州力を思い出してしまいますね〜w
寺島さんて、誰でしょ?・・・ごめんなさい。
“寺島さん”はこの映画、出てないかもです^^
おそらく、全国では、順次公開になると思うのですが・・・違うかな
龍平はと〜っても良かったですよ
私、龍平だけで見に行っちゃいましたから
とらねこさん、こんばんは☆
あたしも観ましたよ!(龍平くん目当てでしたが★)
とらねこさんが観るとは思わなかったので、ちょっとびっくりしました(笑)
「日本を変える」と言う熱い意志がある彼らが羨ましくなりました。
今の日本があるのは彼らの功績も大きいんでしょうね。
正にとらねこさんが言うとおり前向きになれる映画でしたよね☆
ほんと若者たちに観て欲しいです。
ちなみにあたしが観たときはお客さんがあたしを含めて二人だったんですよ。
なんかもったいないです……。
生きたる機械となるために
37「長州ファイブ」(日本)
1853年ペリー率いる黒船が浦賀に来航して以来、日本は開国か攘夷かで揺れていた。それは江戸300年の泰平が破れようとしていた時代でもあった。
1863年「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という孫子の発した故事と吉田松…
こんばんは。
幕末の物語としては変わった視点で描かれていたので、それは興味ある話でした。
ある程度史実に基づいているので仕方ないんでしょうが、終盤は山尾の話だけになったのはちょっと不満かなぁ。
日本のために、と勉学に励んだ彼らの日本での活躍もちょっと見たかった。
それにしても5人が5人とも功績を残したというのは、彼らの意気込みの為せる業だったんでしょうね。そのあたりは見習うべきところかな。
ヨゥ。さんへ
おはようございます〜☆コメントありがとうございます!
ヨゥ。さんは私が見てビックリでしたか♪
私も実は、ヨゥ。さんと同じで、龍平目当てで見ましたぁ!
でも、意外にいい作品で、とっても満足しちゃいました〜
そうですね、「今の日本を変えてやろう」という、熱い志」。
文句言うだけでなく、そうした志があるのは素晴らしいし、そうするための実行力があった彼らのおかげで今があるんだなあ、と思いました!
CINECHANさんへ
おはようございます☆コメント&TB,ありがとうございました〜!
そうですね、こういった視点で描かれるというのが、とても新鮮で、「これはこれでアリ!」なんて思ってしまいました〜♪
そうですね、後半は、山尾の物語だけに焦点を絞っていましたね。
5人を均等に描くには、尺が足りない、といった感じだったのでしょうね。
これ、シリーズ化したり、ドラマになったら、面白そうだなあ♪と思いました。
長州ファイブ
パソコンで「ちょうしゅう」と打って変換するとなぜか先に「徴収」と出てしまいます(笑)なんの徴収だよ!!・・・って、そんなことはどうでもいいですね。
とらねこさん、こんばんは♪
見始めたときは途中で飽きちゃうんじゃないかと、ちょっとドキドキしてたんですが最後の最後まですごく楽しめました♪
マゲを切るシーンはウルウルきてしまいましたよ〜。なんかもう彼等の気持ちが伝わってきちゃって・・・。一番、印象に残ってるシーンですね、私にとっては。
あざみんさんへ
こんばんは〜♪コメント&TB,ありがとうございました☆
なんだか、久しぶりな気がしますね〜!
そうですね、史実ものの退屈な感じかせず、すごく身近な感じで描かれていたんですよね。
なかなかの手腕だな、なんて思いました!
マゲを切る時は、夜の夜中でしたが、その後、まさに夜明けが来るんですよね。あのシーンは象徴的だったと思います。
あっ、寺島さんは寺島進さん。
高杉晋作役みたいです。
私のとこでも映画館でやってくれるとうれしいです。
悪夢探偵は4月からこっちでやるみたいです。
龍平くん目当てで行きます♪
ひめさんへ
こんばんは〜☆ああmそうだったのですか!
高杉晋作役の人!彼は、友情出演だったのでしょうか、チョイ役だったんですけど、すごくソックリでビックリしました!
ひめさんは、大好きな俳優さんだったのですね☆
ううーんm私はつい、寺島しのぶだと思ってましたぁ。失礼しました〜
『悪夢探偵』4月なんですね☆おお〜、見てこられるとは嬉しいです!是非TBくださいねん。
ひめさんはどちらにお住まいなんでしょ?
新潟でーす。
去年までは東京にいました。
東京だと単館モノとかやってる所がいっぱいあっていいですよね。
それだけが心残りです〜。
ひめさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
ひめさんは、新潟の方だったのですね☆
これ、名古屋ではやってるみたいなんですが、新潟の方が遅いのですね・・。
やっぱり、ミニシアター系になってしまうんですね、これ・・・悲しい。
もう少し拡大して欲しい映画なんですが・・。
去年まで東京にいらっしゃったのですね☆
新潟はお米が美味しいですよね^^
長岡の花火大会に3年前に行ったのが私は最後です〜。
【映画】長州ファイブ
観たーッ!
観たかったのよ!
最近、仕事の都合上で行けなかったりなんだりで
しかも上映しているところが少ない!
おまけに上映期間も短い!上に上映回数も少ない!
何でやねん!日本人なら観なあかん内容やろ?とも思う映画ですが。
先週のスマステのツキイチゴ…
長州ファイブ
満 足 度:★★★★★★★★
(★×10=満点)
監 督:五十嵐匠
キャスト:松田龍平
山下徹大
北村有起哉
三浦アキフミ
原田大二郎
榎木孝明 、他
■スト
とらねこさん、お久しぶりです。
今、司馬遼太郎の「竜馬が行く 全8巻」を読んでいるんですが、まさにこの時代。。。
観たい〜。キャスティングもなかなかですね。
いろんな意味でみごたえありそうな作品。
ヘーゼル☆ナッツさんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございます!
『竜馬が行く』を読んでいらっしゃるのですか〜!
私、これ大好きな作品です。自分は、幕末ではなんといっても竜馬に限ります。
実は、3年前に京都に行った時は、竜馬の墓参りが一つの目的でした。
この作品、あまり観ている人は少ないのですが、私は小粒ではあるけれども、すごく良作だと思います。
映画「長州ファイブ」
いろいろ映画の感想書くよといってた矢先にまた違う映画を見て来てしまいました。
「長州ファイブ」
――幕末の世、日本の未来のために刀を捨てた、サムライがいた――
幕府の禁を犯して英国に密航した、後に長州五傑(※)と呼ばれることになる5人の若者…
[ 長州ファイブ ]命をかけて、日本の近代化を築いた5人の志士たち
[ 長州ファイブ ]をシネマート六本木で鑑賞。
実在の人物を主人公に、感動の物語を作り上げる。
たぶん日本ではこの監督はまさる人はいないだろう。
その名は、五十嵐匠監督。
戦場カメラマン・一ノ瀬泰造、孤高の画家・田中一村、
26歳で夭折した天才童謡詩人、金…
長州龍
「長州ファイブ」
「龍が如く」
長州ファイブ
『幕末の世、 日本の未来のために刀を捨てた、 サムライがいた』
コチラの「長州ファイブ」は、攘夷の嵐が吹き荒れる幕末期に、エゲレスに命がけで密航した長州藩の5人の若者を描いたヒストリカル映画です。
昨日は勝手に「龍平Day」として、本作と彼の民放連ド….
長州ファイブ
長州ファイブ
監督:五十嵐匠
出演:松田龍平、山下徹大、北村有起哉、三浦アキフミ、前田倫良、原田大二郎、榎木孝明、寺島進、泉谷しげる….
公開当初からすご〜く見たかったのに、結局、近所ではやっていてなくて、やっとDVDレンタルで見れました〜。
見た後にやる気が出るっていうのが、すごくわかりました。
同感です♪
最初は「ぶんたって誰だろう?」とか思っていたんですが
最後にわかって、そっかぁ!!となんだかうれしくなってしまいました。
龍平くんもとっても良かったです。
ひめさんへ
こんばんは〜^^あ、とうとうご覧になったのですねw。
内心、まだ見ていらっしゃらないのかナーと思っていたんです(泣)
そっか、ひめさんのところでは上映がなかったのですね(泣)
あ、確かに人は一致するのがちょっと大変だったかもしれませんが・・・
ま、歴史モノというより、人間ドラマとして見るのが正解でしたよね^^
龍ちゃん素敵だったでしょ!
はじめまして。
小学3年の娘と見ました。プロローグは大人っぽいシーンもあったので渡航前あたりから見せました。
どの場面も小物から衣装から舞台が とても丁寧に作ってあり 見応えがありましたね。 史実に基づく映画としては解りやすくて親子で十分楽しめました。
ところで 登場人物のその後が気になって色々調べていたのですが フリーメーソンの話があったり この映画自体に政治的な意図があるのでは・・ と多方面から その後も楽しめる映画です。
子供はエミリーとの恋の行方を気にしていたのですが これは架空の人物で その後はない、という話をしたら残念がっていました。あと、よーぞーはどうして一度も笑わないのか 気にしてました。
松田優作さんが長州出身(萩市)であることも驚きで龍さんの役への思い入れも理解できました。
とても素敵でしたよね。暴漢からエミリーを救う場面では目がハートになってしまいました。
とんとんさんへ
こんばんは〜♪初めまして!ご訪問ありがとうございます!
コメント、ありがとうございました!
旅行中で、コメントの返信遅れて、申し訳ありませんでした!
この作品は、私はとても好きで、ご丁寧なコメント痛み入ります。ありがとうです
お子さんとご一緒にご覧になられたのですね!いいなあ〜。
確かに、この作品なら、親子で楽しめそうです♪
「よーぞーはどうして笑わないのか」ですかぁ!なかなか鋭い指摘ですね(笑)
確かにお子さんから見ると、龍ちゃんは少し無愛想かも
登場人物のその後の話なんかも、いろいろあるのですか。ふむ、フリーメーソン・・。なかなかミスリアスですね!
松田優作、龍ちゃんのお父さんの出身地が萩だったのですか!なるほど、龍ちゃんにとっては思い入れがありそうです♪
教えていただき、ありがとうございます☆
PS.とんとんさんは、「とんとん・にっき」のとんとんさんではありませんか?
もし違っていたら、申し訳ありません。