#29.コースト・ガード
キム・ギドク監督、’02年の作品。
南北の境界線の見張りをする軍人たち。だが、あまりその仕事にはやり甲斐もなく、単調な作業の繰り返しであり、地元民間人からも、「税金の無駄遣い」などと言われたりもする。特に、若者からは・・・。
だが、カン上等兵(チャン・ドンゴン)は、攻撃的な性格で、そうした仕事に就くには、あまりに“軍人的”でありすぎた。
夜の7時以降は、柵の向こうに入った人を、無差別に射殺する、という、向こう見ずな軍のアラさもあって、カン上等兵は、ムシャクシャした気持ちから、柵の向こうに居た人間を射殺してしまう。
だが、それは、ただそこで危険な性行為を行っていたカップルだった。
男はその場で死んでしまい、女は気が狂ってしまう。カン上等兵も、次第に精神的におかしくなっていった。・・・
状況はどんどんと悪い方向へと流れてゆく。カン上等兵の行過ぎる攻撃性も、精神的に病んだ女のもたらすセックスも、どちらも軍紀を乱すものとなる。
だがそれをなんとか誤魔化そうとする軍人の行為も、なんとか軍紀を保とうとする上官も、すべて状況を悪い方向へと押し流してゆくことにしかならない。
描かれていることはそうした全ての否定かもしれない。
キム・ギドクのここでの表現は、救いのないものとなっているが、以降、ネタバレとなるのですが、一番衝撃的な映像は、おそらく、違法堕胎手術後の、血だらけの水槽シーンだ。
「お前らは人間じゃない」という言葉も、本当に人間の悪の部分というより、それは、人間の弱さから来た行為であって、それを隠すために行われたことだったりする。
だが、正直、エグリ取られた痛いほどの真実、という感触はあまり伝わってこないのが残念だ。
だが、こうした感想を私が抱くのも、海の向こうの外国に住む他民族だからなのだろうか。
私は、こうした朝鮮半島の“分断国家”、南北の争いに関してあまり知識がなく、『JSA』を思い出したくらいなのだが、韓国の人達にとって、この映画はどんな風に観たのだろう、と思った。
チャン・ドンゴンは、この作品、キム・ギドクに惚れこんで、破格の安いギャラで出演したのだそうですね。
私はチャン・ドンゴンは、『友へ 〜チング〜』ぐらいしか、観たことはなかったのですが、鋭い目が印象的な、精悍な顔立ちの人だなあ、と思いました。
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コメント(18件)
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映画「コーストガード」を観て
言葉では語り尽くせないのに、語りたくなる・・・それが、キム・ギドク監督の映画。
とらねこさん、TB&コメント、どうもありがとうございます。
この映画の、残酷と思われるシーンは、画面から目を逸らしながら観ました。
私はこの作品、けっこういいな、と思いました。
実際にその「さなか」にいる人と、自分の身に降り掛かっていない人が隣同士にいるとこうなる、という縮図のようなものが描かれていて、秀逸だと思いました。
カン上等兵は、平和な世の中では、とても浮いて見えます。けれど、戦争中は、カン上等兵のような人が大多数で、そうでない人の方が浮いていたと思います。
なかなか鋭い作品だと思いました。
コースト・ガード (原題:海岸線)
嫌い
キム・ギドク監督、チャン・ドンゴン主演ということで、日本語字幕なしにもかかわらずチャレンジした
案の定 聴き取れなかったが、映像だけでもほぼ理解できる内容であった
軍隊で生まれる狂気、、、これってもう必然なんじゃないかって気がしてきた
死と隣り…
映画「コースト・ガード」
原題:海岸線/Coast Guard
北のスパイを警戒するために海岸線に張り巡らされた金網、「夜7時以降の侵入者は北の工作員と見なして射殺する」という上官の方針に忠実に従い、逢引に現れたカップルに銃撃と手榴弾・・そして狂気の悲劇は始まった・・。
休学徴兵の海…
とみさんへ
こんにちは☆コメントありがとうございました!
>カン上等兵は、平和な世の中では、とても浮いて見えます。けれど、戦争中は、カン上等兵のような人が大多数で、そうでない人の方が浮いていた
そうですね。カン上等兵のような人は、戦時中の厳しい中にあれば、もっと彼の攻撃性とか軍人精神を活かすことが出来たのでしょうね。
カン上等兵は、軍の作ったモンスターのようなもので、最後、行き場を失い、民間の中に放り投げられた存在となっていたようでした。
『コースト・ガード』〜狂気は風邪より移る〜
『コースト・ガード』
「韓流シネマフェスティバル2005」公式サイト『コースト・ガード』DVD
監督:キム・ギドク出演:チャン・ドンゴン キム・ジョンハク パク・チア
【あらすじ】(韓流.netより)徴兵され海兵隊員….
「コースト・ガード」 引き裂かれた半島が抱える痛み
キム・ギドク監督 『コースト・ガード』 日本では希薄になってしまった何かが、まだあの国には残っている。韓国の映画を観ていると、そういった印象を受けることが多い。民族や宗教観の違いがそうさせるのかもしれないけれど、戦争によって残された傷跡が、より大きな違いを…
コースト・ガード [RENTAL]
ネットの低いセパタクローのようなスポーツをして、兵士たちはつかの間の休息を楽しんでいる。コートには朝鮮半島が描かれ、ネットによってそれは南北に分断された。彼らは北側からのスパイ侵入を防ぐため、海岸線を警備する。“夜7時以降の侵入者はスパイとみなし射殺す
他民族だからってのは多分にありそうですね。
そういった理解の幅という点で、
洋画は意図するところの果たしてどれくらい分かっているのだろうか、
僕は疑問を持っているであります。
うー。
なんだか今日は飲みすぎてしまいまったのですが、
チャン・ドンゴンの目はすごかったです。
最後の文のちゃ「チャン・ドンゴン」の前に余分な「t」が入ってますよ。
ラストシーンで砂に朝鮮半島を描いたセパタクロー、
隔てたネットが消えるところに否定だけではない姿勢を感じました。
『コーストガード』
『コーストガード』
作品紹介『コーストガード』
監督・脚本:キム・ギドク
出演:チャン・ドンゴン 、キム・ジョンハク 、パク・チア 、
ユ・ヘジン 、キム・テウ
2001年/韓国/94分
『コースト・ガード』も韓流シネマフェスティバル2005で見たかっ…
現象さんへ
こんばんは☆コメントありがとうございます!
そうですね、韓国人の人のこれ観た感想が、是非とも聞きたいとこですよね!
現象さんのコメント、なんか酔っ払っていますね!(笑)キャハハ〜♪
>最後の文のちゃ「チャン・ドンゴン」の前に余分な「t」が入ってますよ
現象さんは、「チャン・ドンゴン」の前に、余分な“ちゃ”が入ってるんですけど、それは加藤茶の“ちゃ”でしょうか^^
いやいや、セパタクローの意味が分からなくて、コメントで現象さんに聞こうと思いつつ、自分で調べようと思いつつ、今こうしてコメントが来て、ようやく調べました^^;
なるほど、隔てたネットが消える。そうでしたか、なるほどです。んむmm
No123「コースト・ガード」キム・ギドク監督
キム・ギドク監督の作品には、いつも狂気がある。
まるで職人のように、自分の美意識、世界観を信じて
映像世界を彫刻していく。
その独特の映像美の世界は、
北野武監督の初期のワイルドな作品を彷彿させ、
韓国の「北野武」とも評される。
小さな頃から絵が好きだったが…
コースト・ガード:対峙せよ!
★原題:海岸線(〓〓〓) ★監督:キム・ギドク(2002年 韓国作品) レンタルDVDにて鑑賞。 昨…
こんばんは、コメント・TBありがとうございました。
お返事が大変遅くなり、ごめんなさい!
チャン・ドンゴンといえば、私は朝鮮戦争を描いた『ブラザーフッド』を思い出します。劇場で見たときは涙が止まりませんでした。そのせいか、彼が軍人・兵士を演ずるとなれば自然に見る方も力が入ります。目つきの鋭さは格別でしたね。
血なまぐさい描写の多い作品でしたが、私の一番印象に残っているのは、気のふれたヒロインが海岸でひとり戯れるシーンでした。救いようのない物語なのに、ふっと美しさを感じさせる描写を入れるところが、キム・ギドクらしいセンスだなと思っており、好きです。
あっ、ブログペットの背景が龍平くんになっていますね。
私は先日『悪夢探偵』を見てきたばかりなのです。ではまたおじゃまします。
こんばんは☆コメントありがとうございます!
そうですね、気のふれたヒロインが海岸で一人戯れるシーン、とても綺麗で印象深かったです。
はい、ブログペットの背景画像は龍ちゃんに変更です。式神くんも、居心地が良さそうです。
こないだ観た『長州ファイブ』もすごく龍ちゃんが素敵でした。
『悪夢探偵』は、あんまり気負わずサクっと書けるんじゃいないでしょうか?
TBお待ちしてますね〜♪
映画「コースト・ガード」
?エスピーオー コースト・ガード
韓流四天王の一人、「ブラザーフッド」のチャン・ドンゴン主演、そして「春夏秋冬そして春」のキム・ギドク監督の作品。
全編に重い雰囲気が漂うのは、この作品全体の、現実にある不条理な世界を見せつけられるため。
韓…
コースト・ガード
『海岸線に響く狂気の銃声。』
コチラの「コースト・ガード」は、南北境界線沿いの海岸警備隊所属の海兵隊員が、誤って民間人を射殺したことにより崩壊してしまう姿を描いたR-15指定のサスペンスです。
監督は、「魚と寝る女」、「サマリア」のキム・ギドク監督。
…
『コースト・ガード』
引き続き、本日2本目の映画。キム・ギドク監督作品「コースト・ガード」この監督作品はけっこう衝撃を受けますが今回は上映前から。。座って気づいたのですが女性率(特にマダム率)高い!その訳は、チャン・ドンゴン主演だからです。ギドクとドン様(お隣りのマダムがそう…