#25.マジシャンズ
大晦日の夜。江原道(カンウォンド)の森に集まる、3年前に解散した、かつての仲間たち。
林を抜けて辿り着く、山荘のカフェ・マジシャンズ。
95分ワンカット、夜のオープンセットという実験的作品だ。
小さい演劇小屋みたいなところで見たら、こんな気持ちになるんだろうか。夜のアングラ演劇の舞台を見ているかのような気持ちになる小作品。
かつての仲間たち。熱い気持ちを持っていた頃の、3年前にバラバラになった、バンド仲間。
忘れられない辛い出来事を経験して、別々になって、そして、久しぶりの“再会”。
なんだか自分自身が経験したかのような、個人的な思いを呼び起こされる作品でした。
95分ワンカット、長回し・・・なんていうのが、正直恐ろしくて、見るまでドキドキしてしまったけど、映画と演劇を同時に表現しようとした、実験的な作品ということで納得してしまった部分があったのでした。
私どうやら、演劇的な手法、というものが好きみたいなのです。
こんな小作品も、いいな、なんて思ってしまう。
ライトの当たり方が、とっても好きでした。
ときどき煌めく、色とりどりのガラスの部屋飾りが、とっても魅惑的。
友達の家みたいで。
3年前に別れて久しぶりに会った、仲間たちも、バンドをやっていた人達なので、大げさな身振り手振りをしたり、表情がクルクル動いたり、そういうのがとても好き。
それから、他の仲間には決して見えない、今はそこにいるはずの仲間が、いつの間にか集っている、という演出。
そこにある現在、それにうつつの世界が不思議と交じり合っているんです。
初めに江原道(カンウォンド)を、ふわふわ歩きながら、今は亡き仲間の、ジャウン(イ・スンヒ)がやって来る。カメラもジャウンの動きに合わせたかのように、ユラユラ揺れ動いて、なんだか、夢の世界に辿り着いたみたいだ。
この先、ネタバレで進みます::::::::::::::::::
その他の登場人物、ジェソン(チャン・ウンイン)とミョンス(チャン・ヒョンソン)、二人の、男同士の、山荘のカフェにて久しぶりに酒を交わす姿。
かつて心を許し合っていた、仲の良い二人だ。
ソン・イルゴン監督はこの作品についてこう言っている。
“一編の面白い演劇をワンカットで撮ってみたかった。
過去に戻るシーンは、鏡の前で衣装を着替えることにより、演劇的な感覚と映画的な感覚を同時に表現しています。”
私は、いつも何も知らずに行くので、見終わった後で、この監督の意図を知ったのだけれど、悲しいかな。
この死んだはずの女性、ジャウンが、生きているのか、死んでいるのか、今は現在なのか、過去なのかを、途中でようやく気がついたのでした。
そもそも、生きて動いている姿と、全く同じだったので、そこが見分けが難しかった(途中まで)。
皆、少しだけピエロのように、顔に道化風メイクを施しているので、死んだジャウンだけがそのメイクを施しているのであれば、もう少し早く気がついたと思うのだが、残念だ。
何しろ、話が進んでいく中で、登場人物のそれまでの経緯と、人間関係が分かるようになっているので、なおさら、最初からは、前知識のない人は、誰も分からないと思うんだけど・・・。
また、残念なことに、ジャウンの説明が、チラシには“ガラスのような繊細さから、自ら死を選んだ”とあるのだけれど、この過去の回想シーンそれだけでは、正直、それがあまり感じられなかった。
この辺りをもう少し感じられたら、まるで自分のかつての友達のように、感じられたはずだ。
でも、最後は、じんわりと胸にくるエンドロールが来る。
監督がこの曲から、この物語をインスパイアされたという、loveholicというバンドの、“Sylvia”という一曲だ。
生演奏だったら、どんなにかいいのに〜、と考えてしまうのは、私が昔バンドをやってたせいだと思う。
映像コチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=4ypB3iIwSVc

・マジシャンズ@映画生活
2007/02/12 | 映画, :カルト・アバンギャルド
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コメント(15件)
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『マジシャンズ』
渋谷・ライズXにて、ソン・イルゴン監督。
誰の心の中にも、熱くときめいていた“あの頃”や魔法のような“瞬間”がある…。
マジシャンズと名付けられたバンドが、ひとりの仲間の死によって解散した。
残されたメンバーたちは3年振りに大晦日に再会することになり、一緒に…
魔法のような一時
28「マジシャンズ」(韓国)
大晦日の夜。山奥深いカフェで二人の男が語らう。3年前に恋人のジャウンを亡くし、カフェのオーナーとして山奥深く身を潜めたジェソン。その友人のミョンス。彼らはボーカルのハヨン、そしてジャウンと共に??マジシャンズ??というバンドを…
毎度こんばんは〜 こちらにもTB&コメントありがとうございました。
ジャウンの設定は鑑賞前から知っていたので、すんなりと入っていけました。
バンド仲間意外に登場する唯一の人物がどういう役柄なんだろうと考えていて、もしかしたら彼によって今のジャウンが明らかになるのでは? と思ったりしたんですが・・・
それにしても何と言うか、穏やかな、暖かい気分にさせてくれる作品でした。
ジャウンを含めた仲間での演奏「Syivia」
この曲良かったなぁ〜
マジシャンズ:95分間ワンカットの感動 ライズX
この映画95分間ワンカットで撮影したという。実験映画で面白かったためしはあんまりないが、おまけにスクリーンが見にくいRIZE Xだし・・・ タイトル:マジシャンズ 監督・脚本:ソン・イルゴン 出演:チョン・ウンイン/チャン・ヒョンソン/イ・スンビ/カン・ギョンホン/…
インサイド・マン
映画を見た感想を書いています。今後もどしどし記事を増やしていこうと思っています。
『マジシャンズ』
マジカルに魅惑的。
大晦日の夜、江原道(カンウォンド)の森。山荘のBAR”カフェ・マジシャンズ”で2人の男ジェソンとミョンスが酒を酌み交わしながら語り合っていた。95分ワンカットのマジック。長回しをすればいいってもんじゃないけれど、映し出された世界が遮断される…
CINECHANさんへ
こちらにもコメントありがとうございます!
そうですよね、僧侶が出てきたところで、ジャウンの霊が、とはならなかったですね★
ウン、その通りだと思います♪
とてもホンワカした、気持ちになりましたよね♪
設定が大晦日だったので、次の一年はいい未来が築ける、という感じがありました!
loveholic、いい曲だし、素敵な声で、表現力もありましたよね。いいシメでした♪
こんばんは。
もう1回ぐらい観てもいいかなぁ・・・
そう思える映画なんですけど、
ライズⅩじゃもうゴメンこうむるです(笑)。
イメージフォーラムならいいかな。
これをワンカットって、
相当気合いがいると思うんですけど、
力んでる感じしないのがまたよかったと思います。
みんな舞台役者なのかな・・・?
ジャウンを見てて、名前なんだったかしら、
鈴木いずみ(?)を思い出しました。
最近じゃ見ないタイプのミュージシャンですよね。
映画という魔法、青春という奇蹟… 『マジシャンズ』
烈火の如く燃え盛った“韓流”ブームも早昔―。
(ヨン様は相当、儲けている様子だけど…)
今じゃわずかな数の韓流残党マダムたちが、
焼け跡の炭火で焼きイモをしているぐらいの印象だけど、
しかしブームの効果も手伝って、
「韓国映画」はひとつのジャンルとして日…
栗本東樹さんへ
こんばんは♪コメントありがとうございます!
ライズXはどうにも好きになれない映画館なんですよね・・・(泣)
あの圧迫感がどうもだめなんです・・・。
改装中ですが、新ピカ4(新宿ピカデリー)なんかも、天井がやけに低かったりして、圧迫感があったりすると、本当に見てて疲れてしまうんですよね。
そうですね、俳優が自然でとても良かったですよね☆
ジャウンその他、ここに出ている人はミュージシャンじゃなくて俳優みたいですね。
ちなみに、loveholicのメンバーは、Kang Hyunmin(ミン)、Lee Jaehak(ハキス)、Jisun(チソン)だそうです。
ちなみに画像こちらで見つけました↓
http://www.youtube.com/watch?v=Vqbcjj1o1sA
マジシャンズ
韓国
ドラマ&青春&音楽
監督:ソン・イルゴン
出演:チョン・ウンイン
チャン・ヒョンソン
カン・ギョンホン
イ・スンビ
大晦日の夜、森の中にある山荘のカフェ。2人の男ジェソンとミョンスが酒を
酌み交わしながら思い出話…
こんばんは♪
眠くなるを覚悟で観に行ったのですが、目蓋を閉じてるヒマなんか
ないくらい惹き込まれてしまいました。
浮遊感のある展開&映像もさることながらラストの「シルヴィア」の
綺麗な歌詞&メロディラインなんか最高で【芸術】と言っても過言じゃ
ない素晴しい作品でした♪ (゚▽゚)v
風情さんへ
こんばんは〜♪コメント&TB,ありがとうございました☆
本当、別世界のような感じがあったんですよねー。
夢みたいな体験でしたヨ♪
ラストのシルヴィア、本当いい曲でしたよねー☆
たしかに芸術的な作品でした!風情♪さんも、満足でいらっしゃるのですね☆
真・映画日記『マジシャンズ』
2月18日(日)
午前10時頃起きる。
外は雨。
こんな日にマラソンをやるとは……。
しばらくその「東京マラソン」を見てまったりする。
11時過ぎに家を出る。
午後1時、時間どおり目黒駅にて「CHEAP THRILL」に投稿してもらっている及川亜希さんと会う。
電話で…
マジシャンズ
ソン・イルゴン監督作品という予備知識だけで観に行った。
てっきり奇術師のお話と思い込んでいたけど違った。でも作品はマジックです。
ソン・イルゴン監督の長編デビュー作「フラワー・アイランド」は2001年東京フィルメックスで最優秀作に選考されたが、残念ながらわ…