#19.鉄コン筋クリート
“宝町”を根城に徘徊している、“ネコ”のシロ(声:蒼井優)とクロ(声:二宮和也)は、親のいない子供たち。いつもかっぱらいとか、ケンカとか、とにかくこの辺りで一番の強いのだ。
昔なじみのヤクザ、“ネズミ”-鈴木(声:田中萊)が帰ってきた辺りから、宝町の空気には不穏なものが感じられ始める。
それは、今度、この宝町に建設予定のレジャーランド“子供の城”プロジェクトがどうやら関係しているようだ。
“蛇”と、3人の無慈悲な殺し屋、龍・蝶・虎がやって来る。
シロはこの街を「自分の街」と言って、守ろうとする・・・
もう、理屈じゃないのね。なんか好きなんです。
シロとクロが、本当に好き。
松本大洋の世界が、なんだか好きなんです。
青い色が、すごく綺麗な抜けるような色じゃなくて、抑えた柔らかい色の水色なの。
街の色彩も好き。肌色とか、やわらかい温かみのある、どことなく懐かしさを感じさせる色で揃えて、街全体の配色に、とっても気を配っているのが分かる。
シロとクロが縦横無尽に飛び回るのも好き。
子供は、いつも自分の街をどっかで「自分のものだ」と思っていると思うんだけど、こんな風に、自由に無敵に飛び回れたら、さぞかし気持ちがいいだろうな。
「そこから何が見える?」
というセリフも、なんだか好き。シロとクロは、どっちか片一方が見える風景を、きっと一緒に見ていたに違いないと思ったり。
なんだかうまく言葉が見つからなくなる、松本大洋の世界を、こうして、画面いっぱいに見ているだけで、なんだか幸せな気持ちになる。
あったかい町の風景が、壊されてなくなってゆく、そう考えるだけで、切なくなる、守ろうとする、クロの気持ちになったり、シロがかわいくて、何としてでも守ってやりたくなったり。
でも、基本的には、あまり人にオススメできる感じのアニメではないかも。
松本大洋が大好きな人とか、
シロとクロみたいに、大好きな友達が居た人とか、でないと、絶対分からない感情なのかなぁ。
「クロは、ネジがいっぱい、ない人なの。
シロも、ネジがいっぱい、ない人なの。
でもね、クロの足りないネジは、シロが持ってる。
シロの足りないネジは、クロが持ってる。」
その相手がいないと、世界が成り立たないような、肉親よりずっと強い愛情で結ばれている感じとか、言葉で説明してもきっと分からない類の感情に駆られた。
だから、シロとクロに、全く感情移入が出来る人でないと、分からないんじゃないかな〜って思います。
大人には分からないような気もします。
子供の頃って、なんでか高いところに登るのが好きで、とても身軽だったのに、なんでだかいつの間にか、地面にぺったり張り付いて生活するようになっちゃったなあ。
なんだか体が重くなって、いつから高いところに登らなくなってしまったんだろ。
そうそう、空に近い存在が、子供たちなんだよなあ、なんて。
生理が来たくらいかなあ、なりたくなかった大人に、いつの間にかなってしまったんだな、なんて取りとめもなく考えていたら、なんだか悲しくなってしまいました。
友達のために何でも出来たのに、いつの間にか自分のことしか考えなくなってしまった自分が嫌にもなったり。
シロとクロみたいに、自分たちの世界を作り上げて、見える世界っていいなと思った。
昔の友達に、会いたくなりました。
ところで、タイトルの鉄コン筋クリート。
原作を読んだ、という『Mani_Mani』さんがおっしゃっていたのですが、松本大洋が子供の頃に、遊びで何度も言っていたセリフなんだそうです。
子供の頃って、そういう言葉遊びみたいなものを、ただ意味なくずーっと言ってたり、しますけど、そんな感じなんでしょうかね。
町に住む子供には、土よりも鉄筋コンクリートの上で遊ぶのでしょうね。
コンと筋を逆にしての、いかにも子供らしい発想。
素晴らしいタイトルだなあ、なんて思いますよね
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(59件)
前の記事: #18.うつせみ
次の記事: #20.グエムル -漢江の怪物-
鉄コン筋クリート
『ソコカラ、ナニガ、ミエル?』
コチラの「鉄コン筋クリート」は、12/23公開になった「ピンポン」の松本大洋の原作コミックをアメリカ人監督のマイケル・アリアスがアニメ映画化した作品なのですが、観てきちゃいましたぁ〜♪
何と言っても注目は、豪華な声優陣!…
とらねこ様
TB有り難うございました.
この映画何とも言えない豊かなイメージが好きです.
シロとクロの絆にも感動しました.
見応えのあるしっかりした映画だと思います.
ほんやら堂さんへ
こちらにもありがとうございます♪
こちらこそ、TB&コメント、ありがとうございます。
私も、この作品は、広がりのある映画だと思います。
イメージがどんどん広がってゆくような・・・
アニメでも、こうした広がりをもつ世界観て、いいですよね。
≪鉄コン筋クリート≫(WOWOW@2008/01/19@032)
鉄コン筋クリート
公式HP
詳細@yahoo映画
松本大洋原作による伝説的な超人気漫画の劇場版アニメ
豪華な声優陣がウリになってたけど、その前にこの映画の「絵が苦手!!」
まずその世界観に慣れるだけで精一杯
なので先にどの声が誰なのかを…
鉄コン筋クリート
{amazon}
映画『鉄コン筋クリート』を鑑賞。少年のクロとシロが住む宝町は
昭和30年代的な老若男女が共生する町。またしてもノスタルジー
チックな作品かと思えば、そうでもなかった。
鉄コン筋クリート…個人的には壁紙にしたい(だけの)映画?
昨日は夕方から夜半まで仕事でした。
で、今日{/kaeru_fine/}はゆっくりしよう…と、思っていたんですが突然朝10:00頃に鳴り響く携帯電話{/handyph_pink/}{/kaminari/}。
「○○社(某車ディーラー)のSです。本日朝9:30よりお車の点検の予約だったと思いますが、どうかさ…
『鉄コン筋クリート』を観たぞ〜!
『鉄コン筋クリート』を観ました昔の面影を残し混沌に満ちた街“宝町”を舞台に、そこに生きる親を知らない2人の悪童少年が、不穏な再開発計画に反逆する姿を描く長編アニメーションです>>『鉄コン筋クリート』関連製作年度: 2006年ジャンル: アドベンチャー/アクシ…
【映画感想】鉄コン筋クリート(声優;二宮和也/蒼井優)[2009-018]
作品名、間違いやすいですな。鉄筋コンクリートじゃなく、『鉄コン筋クリート』です。
「ビッグスピリッツ」に掲載されていた人気漫画の映画化作品を今回は鑑賞してみました。
鉄コン筋クリート
ソコカラ、ナニガ、ミエル?