#6.ジャケット
未来や過去に行き来する話って、なぜか何度見ても飽きない。特にそれが、この作品のように、タイムパラドクスを扱っていて、しかもタイムパラドクスを生じさせないものであれば、余計にありがたい。
こういった作品は、ケン・グリムウッドの小説『リプレイ』がやり直し系SFの金字塔だったと思うけど、最近だと映画『バタフライ・エフェクト』が記憶に新しいかな。
ストーリー・・・
湾岸戦争で頭部に重症を負ったジャック・スタークス(エイドリアン・ブロディ)は、一度死んだ。だが蘇り、それ以来、記憶障害を患う。その後、とあることから無実の罪で殺人罪の刑を受け、戦争後の精神障害ということで、無罪放免になり、精神病院へ入れられてしまう。
だがそこで、矯正と称して、拘束服を着せられ、死体置き場にある引き出しに入れられる。その中で、戦争後のフラッシュバックにより、とてつもない苦痛を味わうジャックだった。・・・
ジョージ・クルーニー&スティーブン・ソダーバーグ製作の本作。監督は、ジョン・メイブリー。
悲壮感漂う表情を常に浮かべた、エイドリアン・ブロディの表情を見ていると、やっぱりこの人って、上手いんだろか?なんて考えてしまう。少なくとも、(アカデミー主演男優賞を取った)『戦場のピアニスト』やこの作品で見る限りでは、こうした顔がとっても良く似合ってるような。
不条理な状況下に置かれた主人公を演じさせると、逸品という感じがあって、悲しみを湛えた表情がいつもながら抜群だったりする。
身動きの取れない状態で極端に狭く、暗い中に押し込まれると、五感が極度に鈍くなり、そうした状態は人間にとって、命の危険になるほどだ・・・という心理学実験の話を聞いたことがある。
なので、拘束衣を着せられて、それがタイムスリップの原因になる、ということに納得がいく・・・なんて言ったら極端ではあるけど(笑)、一度死んでそこから蘇ったという、スーパーナチュラルな経験があれば、何となくではあるけれども、荒唐無稽な物語に多少もの真実味が与えられているようで・・・
特にこのタイムスリップを起こすまでの時間が長く、あくまでも丁寧に描かれていて、その瞬間の映像描写も、観客にとっては疲れを及ぼすほどのフラッシュバックの映像がこれでもかと映し出される。そうした効果があって、SFというテイストではなく、あくまでもスーパーナチュラルなタイムスリップ・サスペンスに思えてくるのが不思議だ(そんなことは、どうでもいいでしょうか?・・・)。
奥さんを20回も殺そうとした、という、精神病院で出会う患者の一人、ルーディ役が、今をときめく『007 カジノ・ロワイヤル』のダニエル・クレイグでしたよ!
ここでは、自慢の金髪を黒髪に、眉毛も黒く染毛されていて、しかも目つきがアブナいので、一瞬、本人かどうかみまごうほどだった。とてもビックリ。
やっぱり去年の日本の公開作品を見ると、これでもかと、ダニエルさん飛躍の年となったらしい。
とても丁寧に描かれた、なかなかに楽しいサスペンス。
最後、ネタバレになりますが::::::::::::
未来は変えられても、自分の運命が変えられないところが、なかなか余韻を持たせるラストで好き。
未来に行っても、時間が来ると、過去に戻されたように、最後未来に逃げても、死ぬ時間がやってきてしまうという・・。
それを、赤い光一つで表現しているところが、私にはとっても好き♪
追記■ コメント欄、No.7では、ラスト部分について言及しています(私ですがぁ。)
(調子に乗って)追記その2■ ちなみに、私のオススメのタイムトラベルものは、『フラットライナーズ』と、『タイムトラベラー 昨日から来た恋人』!!
これ、とっても面白かったですよー。
SFって、ほんっとに、面白いですよねー^^
2007/01/12 | 映画, :サスペンス・ミステリ, :SF・ファンタジー
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コメント(30件)
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映画「ジャケット」
原題:The Jacket
1992年湾岸戦争で気を許した子供に銃を向けられ、頭部に銃弾を受け一命は取り留めるものの突発性健忘症となる男のスリルと愛に溢れた物語。
ジャック・スタークス(エイドリアン・ブロディ)、故郷に向かう雪道をヒッチハイクの途中で出会った…
ジャケット /THE JACKET
脚本を読んだキーラ・ナイトレイが、
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いよいよ今週土…
ジャケット
【映画的カリスマ指数】★★★☆☆
死をみつめ、希望を託した未来
ジャケット (The Jacket)
監督 ジョン・メイバリー 主演 エイドリアン・ブロディ 2005年 アメリカ映画 103分 サスペンス 採点★★★★ ジャンルとしては大好きなのにも関わらず、心底面白いと身悶えするような作品に滅多に出会ったことのない“タイム・トラベル”もの。「タイムパラドックスがどーた…
こんばんは〜♪
タイムトラベルものの苦手な私ですが、SF云々やパラドックス云々がダメなわけじゃなく、混乱した事態を収拾する手段がキレイゴトだったり自己チューだったりするのがイヤだったりも^^;
でも、本作は良かったですねぇ。画も音も好みでしたし^^
でも、タイムトラベルものとしては観てなかったんですよねぇ、コレ。どっちかと言えば、走馬灯ものに近いニュアンスだったのかなぁと。冒頭で主人公はもうアレしちゃってて、その戦争での罪滅ぼしを別の家族を救うことでアレしちゃう物語にも。まぁ、長々と書くものでもないですけどw
「 ジャケット 」
監督 : ジョン・メイバリー 主演 : エイドリアン・ブロディ / キーラ・ナイトレイ / 公式HP:http://www.jacket-movie.jp/ 監督は、「リメンバランス/記憶の高速スキャン」でLA批評家協会賞/第20回(1994年)のインディペンデント/エクスペリメ…
こんばんわ!
TB&コメントありがとうございました!
エイドリアンは『コープス・ブライド』の
ビクターにしか見えません。
ダニエルは007の見る影もなかったです。
これ、なかなか興味深い内容のタイムトラベルもの
なんですが、いまひとつヒットしなかったんです
よね(苦)。初日がダ・ヴィンチ・コードとカブって
たんでしたわ。
ああ・・そういえば、これを初日に観た日は、
劇場で隣の評論家さんと偶然お会いしたという
出来事もありました。いろいろ思い出されますわ。
いつジャック・スタークスは死んだのか?
116「ジャケット」(アメリカ・ドイツ)
15年後の未来へ行き、自分が死んだことを知る男。「何故俺は死んだのか?」運命的に出会った女性と自分の死の真相を探ろうとする男。
そのストーリーを知って、面白そうなサスペンスだと感じた。さらに製作はスティーヴン…
とらねこさん、こんばんは。
TB・コメントありがとうございました。
? 赤い光ってどこで出てきたんでしたっけ?
どうもこの作品の記憶が曖昧で・・・
それだけ私には難解だったのかな・・?
ダニエル・クレイグ、最初私も似ているなぁと思ってたんですが、最後まで確信が持てなかったです(笑)。
初めまして。ブログは毎日見ていたのですが….、今回とうとうコメントしました。最近映画は御無沙汰で見たいのですがなかなか….。今回の「ジャケット」も、なんだか興味深そう….。これからも面白い映画の紹介をお願いしますね。
たおさんへ
おはようございます♪
コメント、ありがとうございました★
で、そうですか、タイムトラベルものの云々かんぬんがあまりお好きではないのですね☆
私は結構、好きかも・・・でも映画より、小説の方が好きですがー。
で、そうですね、この映画は、タイムトラベルそのものっていう印象ではなかったですよね。
そこが、この映画のうまいとこだなーなんて思ってしまいました。
たおさんも好きでヨカッタ★
睦月さんへ
おはようございます★
>エイドリアンは『コープス・ブライド』のビクターにしか見えません
この一文、爆笑!爆笑!!確かにそうじゃ〜!
友達と一緒に見て、大笑いしてしまいました!!
ありがとう!
>初日がダ・ヴィンチ・コードとカブってたんでした
となひょうさんのとこにもそう書いてありました☆
そして、その日が、となひょうさんとお会いした日だったんですね〜。
>いまひとつヒットしなかったんですよね(苦
何がいけなかったのでしょう・・・私は結構好きです♪
CINECHANさんへ
おはようございます☆
>赤い光
ラストシーンでしたよ。最後、車での運転中に、光が差して、それが夕日かな、と思っていると、最後赤い光だけになって終わるんです。
私は実はこういうジャンルの映画が超〜好きだったりするんですよー♪
ダニエル・クレイグ、本当に、別人に思えてしまいましたよね。
私も、アレー?と思いました。眉毛を染めているのが、印象が全く違って見えた原因だったように思いましたよ。
東北地方のスーパーマンさんへ
おはようございます☆
初コメントありがとうございます!
そして、あなたは、私の友達ですね(爆)
うふふ・・初のリアル友からのコメントだぁ
喜びました〜、ありがとう!
東京に来る際には、是非ご飯でも食べましょうね!
連絡ください。
ジャケット
「ジャケット」 THE JACKET/製作:2005年、アメリカ=ドイツ 103
こんにちわ。
コメントありがとうございました。
ひょっとして、そちらからのTBが上手くのらないのかな・・・ でしたらゴメンなさい。後日、行われるメンテナンスで改善される可能性もありますので、どうぞ変わらずヨロシクお願いしますね。
そうそう、この日は約束した訳ではなく、バッタリ睦月さんに会いました。しかも気がついた場所はトイレの鏡の前に立った時に鏡越しでした。
この作品は気に入った方でしたが。他の方の感想を見ると、余り評判のいい方ではなかったですねぇ(苦笑)。
この作品を鑑賞した後に読んだ雑誌で、「現在と未来?の認識票の誕生日を見比べてみて」と書いてあったの。まだ確認してないけど、とらねこさんまだ手元にDVDあるようでしたら確認してみてくださいな。
隣の評論家さんへ
こんばんは☆
あれ・・・TB,失敗していましたですか!すみませんでした。
後日行われるメンテ、いつでしょう・・・とりあえず、もう少し経ったらその後にまた最チャレンジしてみますね☆
トイレの鏡越しだったんですか!そして、睦月さんが顔バレしていたために、となひょうさんが気づいた・・・という感じなんでしょうか♪
ヘエエエ〜^^凄いなあ〜☆でも、となひょうさんと睦月さんは、よく映画がカブっていらっしゃいますもんね
あれ、これ、他の方はあまり評判良くないんですか。そうだったんですか。私実は、ソダーバーグ&ジョジクルプロデュース作品て、私には結構ツボだったりすることが多いんです、『シリアナ』以外は
>現在と未来?の認識票の誕生日を見比べてみて
エッ?それは一体、どういう意味だったんでしょう〜。もう返してしまったんです。気になります!!
真・映画日記(3)『ジャケット』
(2からの続き)
『博士が愛した数式』を見終え、
少ししてから『ジャケット』を見る。
これ、なーーーんか、都合良すぎるはあ……
愛する(???)女性を幸せにさせる……というラストは『バタフライ・エフェクト』を彷彿させるけど、
なんだか腑に落ちない。
…
ジャケット
【THE JACKET】2005年/アメリカ
監督:ジョン・メイブリー
出演:エイドリアン・ブロディ、キーラ・ナイトレイ、クリス・クリストファーソン、ジェニファー・ジェイソン・リー
タイムスリップものと気づくのにだ
おぉ〜〜とらねこさん絶賛してますね!
すみません・・・私は理解不足でこういうふうな感想とはなりませんでした。
タイムスリップという状況に全く気づかず
死の間際の夢か何かかと思い込んでいたもので^_^;
ちなみに『フラットライナーズ』はとっても面白かったです♪
ジュンさんへ●○
フラットライナーズ面白かったですよね♪
あの心臓が止まった時の、全身の血流をドアップにした時の映像とか、なかなか面白い試みもなされていたのが印象的でした。
この作品でも、妙な映像を使っていましたね。
ジュンさんはあんまりお好きじゃなかったようで。
失礼しました〜。
『ジャケット』
ジャケット
CAST:エイドリアン・ブロディ、キーラ・ナイトレイ 他
STORY:1992年、ジャック(エイドリアン・ブロディ)は湾岸戦争で頭を負傷し、記憶を失う後遺症が残る。帰還後、ある殺人事件の容疑者として逮捕されたジャックは精神病棟施設に移送される。そ…
ジャケット
ジャケット
監督:ジョン・メイバリー
出演:エイドリアン・ブロディ、キーラ・ナイトレイ、クリス・クリストファーソン、ジェニファー・ジェイソン・リー、ケリー・リンチ、ブラッド・レンフロー、ダニエル・クレイむH
私もラスト好きです。
サスペンスらしくなく、なんだかホッとさせてくれましたよね。
ひめさんへ
こんばんは☆コメント&TB,ありがとうございました!
あれはなかなか後を引く終わり方でしたよね。
いいラストだと思います☆
ジャケット 〜DVDにて〜
ジャケット・・・評価 3
5→かなり面白いっ
4→面白いっ
3→ふつーかな
2→まぁまぁ
1→イマイチ
■STORY■
1992年、湾岸戦争で頭部を負傷したジャックは、後遺症で記憶??9
ジャケット
『闇の先、君がいた 1992-2007 着ると運命が見える。』
5/20公開のコチラの「ジャケット」は、「オーシャンズ11」や「シリアナ」、「グッドナイト&グッドラック」のスティーヴン・ソダーバーグ&ジョージ・クルーニーのセクション・エイト製作です。
PG-12の映….
≪ジャケット≫(WOWOW@2008/01/12@019)
ジャケット
詳細@yahoo映画
≪パプリカ≫
・≪悪夢探偵≫
に続いて観たんだけど、これも「夢」関係か?
あっ、でもちょっと違うか…時空物か?どっちにしてもちょっと混乱する内容だったなぁ
まぁ、この日はアニメ映画含めこれが4本目だったから頭が…
こんにちは、とらねこさん
ケン・グリムウッドの小説『リプレイ』良かったですよね(^_^)v
さてこの映画は、主役のエイドリアン・ブロディがぴったりのハマり役でしたね。
あれをタイムスリップとみるか、サイコワールドとみるかは、観る人によって変わりますね(^^♪
ケントさんへ
こんにちは!コメントありがとうございました。
こちらの方も、コメント返しが遅くなってしまって、本当にすみませんでした!
>グリムウッドの小説『リプレイ』
こちらをご存知とは、嬉しいです。
エイドリアン・ブロディ、この頃はどうしても『戦場のピアニスト』のイメージが多いので、初めは驚きましたが、結構面白かったです。