120.IZO
“人斬り以蔵”と呼ばれ、磔刑にされた以蔵は、憎しみが怨念となって現代のホームレスに乗り移り蘇る。時代時代を飛び回り、出会うもの全て、特に権威あるもの全てをその刀の餌食にする。
だが満たされない。そのため何度も蘇る。不完全なる矛盾として。
怨念とは諸悪の根源。美しいものも、目の前に広げられる全てを、斬ってゆく怨念=IZO。
’04年、三池崇史監督。ネタバレです。
権力を、権威ある全てのものを、神仏を、目の前で、時にはそのものの実体を斬り捨ててゆく。憎しみそのもの、怨念として生きる以蔵。
この世にある全てを憎み、己の生を憎み、実体ある肉体を拒否する。食卓の風景、性の衝動は、この世において生の楽しみを感じるはずのものだがそれすら拒絶する。
“どれだけの時を経たら不完全が完全になるのか。”
救いは求めど得られない。どこまでも妥協のない救いのない映像が延々と続き、以蔵と時空を彷徨い共感を感じた。
いい加減辛くなり、だがなかなか答えは得られない。生き地獄を現代に置き換えればこうなる。妥協することなく描く様は、観ている我々に苦しみしか与えない。
だが“徹底して救いを持たせない描写である”と考えれば、それほど難しい作品ではなく、この長さも無駄には感じない私だった。すぐに救いなど見つかるはずもないではないか?
一つ一つの映像を楽しんで、より苦しんで、自分も以蔵の孤独の深さを測ろうとするが、せいぜい自分には共感しようという努力しか出来なかった。だがこの世の理に疑問を感じ、時代時代における権威にも疑問を感じ、生の意味を見つけようと思えばどのような映像になるかなんて、無間地獄を地球に、時代性のないそこに置き換えようとするなら、それを表現しようとしたら、そこを肯定的に評価したい。
メタモルフォーゼが始まりようやく変わりつつあるところで、周りの風景の美しさが心に沁みる。ギター一つで魂に触れる歌を歌う詩人には、涙した。心をしめつけられるような歌声だった。歌い方が好きだ。フォークという魂をえぐるジャンルと、魂を揺さぶる風景と映像。
永年の孤独を彷徨い、メタモルフォーゼが始まってようやく、出会えなかったもう一つの魂にスレ違う。
最後、あの方に到達する前に斬って捨てたのは悪魔か。rebirthそれが答えなら、生の意味を考えあぐねた結果なればこそと思いたい私だ。
PS・・・『人斬り以蔵』司馬遼太郎作品は未読だが読んでみたくなった。確か、以蔵の持つ剣には妖が宿っていて、血を吸ってキラリ喜び光ったそうな。どっかで読みました。江戸時代のサイコキラー。ちょっと興味湧きますね。
【本音】誰にも分かってもらえないかも。でもボブ・サップは必見です。無間地獄を彷徨うと、英語を使えるようになるらしい?
2006/11/18 | 映画, :アート・哲学, :三池崇史(今月の三池さん)
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コメント(7件)
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こんにちわ♪
「意味のない破壊と答えの無い再生」の繰り返し。
これがテーマだと勝手に解釈しました(笑)
だって、難しいからちょっと思考停止状態に…。
それよりも身体を張った殺陣シーンに拍手ですね(笑)
まあ、三池崇史監督だから完成した作品という事で。
てな感じで、TB&コメントありがとうございました。
IZO
製作年度 2004年
製作国 日本
上映時間 128分
監督 三池崇史
脚本 武知鎮典
音楽 遠藤浩二
出演 中山一也 、桃井かおり 、松田龍平 、美木良介 、高野八誠
(allcinema ONLINE)
解説: 幕末の悪名高い人斬りが怨念と化し、時空や次元を超え大殺戮….
耕作さんへ
こんばんは!コメントありがとうございました。
耕作さんは、脚本もご存知だったのですよね。
すごい!やっぱ、三池さんの技ですかー♪
そうですね、殺陣シーンも迫力でした!
>意味のない破壊と答えのない再生
私は、以蔵の魂も自分なりに考えた、と考えました。
あのままの生をもう一度繰り返すとは思いたくなかったのかもしれませんが
IZO 06年106本目
IZO
2004年 三池崇史 監督 今このHP行ったら、カウント123491だった、、、123456、惜しい、、、
中山一也 、この人、知りません、、、なんかすごい人みたい、、、あとは、、、桃井かおり 、松田龍平 、美木良介 、高野八誠 、ビートたけし 、…
IZO
豪華キャストが集結した、三池監督のアクション大作。内容はよく知らなかったが、人斬り以蔵が時代を超えて、現代に甦る話らしい。面白そうなのでDVD借りてきた。
「IZO」
IZO
「IZO」 ★★
(2004年日本)
監督:三池崇史
キャスト:中山一也、桃井かおり、松田龍平、美木良介、高野八誠、原田龍二、石橋蓮司、山本太郎、秋野太作、大橋吾郎、原田大二郎、ミッキー・カーチス、遠藤憲一、寺島退_pi
IZO
DMMでレンタルする あらすじ:1865年5月、岡田以蔵…彼は今、磔刑架に磔にされ処刑されようとしていた。以蔵の体を仕置人が槍で何度も刺し貫く。以蔵は死に絶えた…享年28歳。が、しかし…..