116.unknown アンノウン
とある廃棄工場で目覚めた5人。一人は手錠を掛けられている。一人は殴られ、鼻を骨折している。一人は縛られている。・・・
そして、それぞれ皆、自分が誰なのか、なぜそこにいるのか、記憶がない。
こんなシチュエーション・サスペンス、・・・まあ、『SAW』の出だしにそっくり。だけど、こういうの、好きで好きで仕方がありません。・・・
たとえ、アガサ・クリスティが『そして、誰もいなくなった』で行ったこと以上の進展は、ミステリ界において、もはや今後も絶対望めないとしても。だけどここが新しいとか、このトリックはあの映画とはこんな風に違っている、とか、そうやって、楽しんでしまうんですね。
密室という限られた空間において、それをどう新しくするか、っていうのは、本当に想像力を刺激されるし、そいつが醍醐味なんだよねぇぇ〜なんて、ワクワクwしてしまう、私達ミステリ好きの皆さんなのです。
例えば乱歩の『五銭銅貨』であったりとか、後から考えてみれば、ま、たいしたことはないのかもしれないけど、そういう一つ一つのちょっとしたアイディアに、これぞまさしく求めていたものぞ、と舌鼓を打って、「やっほ、そこは新しいですね」、なんつって、一つ一つ丹念に調べてみては喜ぶ。こういうのって、好きな人にはたまらないんですよね。はい〜。
そういった点で見てみると、この映画は、そうそう「目新しいのか」と問われれば、別段、そこまで新しい、というわけではないかもしれない。
だけど、この映画での始まり方はわくわくするものであったし、鮮やかだったしね。その後の二転・三転も、私は簡単にコロっと騙される方ではあるけれども、やっぱり騙されて、とっても楽しかった〜♪
目覚めた5人が記憶のない状態で、自分が誰かも分からず、どうしてここにいるのかも分からない。それまでの記憶も、ない。そんな状態で、分かったのは、ここにいるうちの誰かが人質で、誰かが犯人だ、ということ。
自分がどっちなのか、それすら分からない、というのがとっても面白い
で、ストーリーが進むにつれ、この密室の中で、それぞれの記憶が断片的に思い出されてゆく。・・・
初めに起き上がった男、これがこの映画の主人公なんだけれど、名前がないので、HPに従って呼ぶなら、“デニムの男”(ジム・カヴィーゼル)、次に起き上がるのが“作業服の男”(バリー・ペッパー)。
このようにしてに呼ぶと、
・“鼻が折れた男”-グレッグ・キニア
・“縛られた男”- ジョー・パントリアーノ
・“手錠の男” - ジェレミー・シスト
で、物語の序盤の鍵となるのが、犯罪グループのボス(ピーター・ストーメア)からの電話と、銃。
この電話に出た“デニムの男”が何の違和感もなく状況を尋ねられることから、どうやらデニムの男が犯罪者側なんじゃないか、ということ。
だが、ここにある唯一の銃を持つのもこの男だ。
そして、この状況の中、そういったことは別として、犯罪者たちが到着する前に、何とかして、この閉じ込められた状況を打開しようと、積極的に動こうとするのも、デニムの男だ。
少しづつ蘇る記憶というものが、次に来る展開を裏切る形で、進んでゆくのがとても楽しい!
で、そういった思い出される記憶が、2転3転するところに、新たな風合いを与えてゆく。
これが、毎度毎度きれいに騙された私としては、とっても楽しかったぁ
:::::この先、ネタバレ気味で進みます::::::
作業服の男に思い出される、デニムの男と知り合いだった、という記憶。
そして、デニムの男が持つ、娘の写真と、妻と娘を愛していた記憶。
こういった思い出を持つ者が、悪者ではないだろう、と、作業服の男がデニムの男に対して、どことなく男の友情のような、「この男は信頼できる、いや、信頼したい」というような思いが描かれる。
こういう男同士の感情、こういうのがグっときちゃうんですよね、私には
それから、“手錠の男”は最初から撃たれ、負傷している。
この設定で・・・いや、やはり、これはうまいこと騙されてしまいました。私。
それから、バリー・ペッパー!
この人は、演技が力強くて、心に残りますね。『父親達の星条旗』にも出演、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』、『25時』や『グリーン・マイル』等に出演・・・
ここでも、なかなかの存在感を発揮していて、前述した男の、男に対する直感というもの、それを、主人公のデニムの男に対し、言うのです。
「よく分からないが、お前だけは信頼できるヤツだ、という気がする。」
で、このセリフが、最後の最後のドンデン返しに、効いてくるのです
そこまではさすがにネタバレは出来ないけど、男同士の基本的信頼感てヤツですか?
相手を良く知らないうちから、なんとなくピンと来るような、コイツは信頼できる、だから信頼する、そんな、言葉では説明できない思いのようなもの。
そういうのって、「オマエ、甘いんじゃないの」なんて、私は思ったりもします。
理性でなしに感情優先な訳でしょう。
だけど、それが、ここのラストでは、そんなバリー・ペッパーの甘さが、彼自身を救った、と言えるんだなぁ〜・・・
く〜〜〜、カッケ〜!
男同士・・・くそっ、羨ましいぜ!!
あとまあ、この、縛られた姿の、ジョー・パントリアーノ。
くふふっこの人がこうしてギャンギャン五月蝿く騒いでいる様・・・
まー、『メメント』の大好きな人は、“記憶”モノで、ジョー・パントリアーノと来たら、
あの、テディを思い出すしかないでしょう!!!!
あー、いいねいいね、懐かしいね〜♪
私『メメント』が大好きだったんですぅ!!!
で、この映画でもやっぱり、何となく信頼できないような男として、一人吠えています。可哀想に、誰も助けようとしない。
「縛られているのは、それ相応のことをしたからに違いない」とかって、最初っから、信頼されていないのです(笑)!で、縛られたまんまで、ほとんど彼抜きに話は進む(笑)。
で、やっぱり、正体が分かっても、ただの・・ムググ。
ま、そんな訳だけど、彼が出て来て、オイラ嬉しかったよー!うふ。
2006/11/10 | 映画, :サスペンス・ミステリ
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コメント(63件)
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unknown(アンノウン)@我流映画評論
unknown(アンノウン)@我流映画評論
unknown (アンノウン)
久々の・・・いや、今年見た中で一番面白かったんじゃないか?って傑作でしたよ。
(*´∀`*)マジマジ
unknown アンノウン監督:サイモン・ブランド出演:ジム・カヴィーゼル , グレッグ・キニア , バリー・ペッパー , ブリジッド・モ…
(*´∀`*)はじめまして
これはホント面白かったですね♪
バリーペッパーは、後半ぐらいまで犯人側に思えて仕方なかったし、主人公デニムが犯人側だと分かった時のショック・・・でもまださらに!って、最後まで大どんでん返しが楽しめました
TBさせていただきました♪これからも遊びに来させていただきます(*´∀`)
HARRYさんへ
初めまして!コメント&TB,ありがとうございます!
遊びに行って気がついたのですが、HARRYさんは、SGA屋さんのお友達だったのですね〜☆
ウルトラマンがお好きとは、奇遇ですね!
私今日実は、ちょうどウルトラマンマックスを見ていたんですよ〜。
後で、遊びに行かせていただくかもしれません。
で、話は戻ってこの映画ですが、これなかなか見所のある面白い映画でしたよね。
私はこういうの、結構丁寧に作られているのって好きなんです。
こちらこそ、これからもどうぞ、よろしくお願い致します〜!
unknown アンノウン
2005年:アメリカ
監督:サイモン・ブランド
出演:ジム・カヴィーゼル、グレッグ・キニア、バリー・ペッパー、ブリジッド・モイナハン、ジョー・パントリアーノ
閉ざされた廃棄工場で目を覚ました5人は、なぜか全員記憶を失っていた。わずかな手がかりから、彼らのう…
unknown アンノウン
レンタルで鑑賞―【story】廃棄工場に閉じ込められた状態で目覚めた5人の男たち(ジム・カヴィーゼル、グレッグ・キニアら)は、記憶を失っていた。それぞれの記憶が曖昧に蘇ってくる中で、自分達は誘拐犯と人質であることが分かる。誘拐犯のボスが戻ってくるまでに、自分達…
とらねこさん、こんにちは!
期待しないで鑑賞したのですが、とっても面白かったです!
特にラストが好みでした〜♪
ちょっと中だるみもあったかなぁ〜とは思いますが、結構ハラハラしましたよね〜
こういうサスペンス物って大好き♪
由香さんへ
こんばんは〜♪コメントTBありがとうございました!
おおーっ、楽しめましたかぁ!
そうそう、あのドンデン返し。
人によっては、いまいちって人もいるんですが、私はやっぱり、男同士のシブさを感じられてホッとしたんですよ!!
本当ああいう時って女ってヒドイわあ。
女なんか信用できないわ〜ってね♪
unknown アンノウン
【unknown】2005年/アメリカ
監督:サイモン・ブランド
出演:ジム・カヴィーゼル、グレッグ・キニア、バリー・ペッパー、ブリジッド・モイ…
目だったスターが出ていないこういう作品でも
十分楽しめるのが嬉しいですね〜
私もどんでん返しにはびっくり。
あれは何!?
やられましたね。
5人が5人とも怪しげな人物で
本人たちも悪なのか善なのかわからず
見ているこちらもいっしょになって推理しながら
進むのがスリリングで面白かったです。
ジュンさんへ●○
こちらにもありがとうございます♪
そうそう、この作品て、雰囲気がバッチリでしたし、妙に男だけの空間が異様で、なんだか良かったです。
あのドンデン返しには、おっそう来たか!と二転三転して。
この辺りは好き嫌いがあるのですが、ヤラれましたよ私。
あ、確かに5人がみんな怪しそうな顔してました^^
映画『unknown/アンノウン』
原題:Unknown
まるで「ソウ」かと見間違うようなオープンング、徐々に、同じ雰囲気を漂わせているのは最初なだけだと分かる・・5人の疑心暗鬼が渦巻く密室スリラー・・
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