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105.サンキュー・スモーキング

Thank you smoking


知的ディベート☆エンターテイメント


タバコの嫌いな人にもオススメできる本作です☆


スピード感のあるセリフの応酬、皮肉の効いた風刺。
とにかく文句なく楽しめる!


ストーリー・・・
“タバコ研究アカデミー”広報部長、つまりタバコ業界のPRマンとして実力のある男、ニック・ネイラー(アーロン・エッカート)。
一日に1200人を殺す、というタバコのPRマンの彼は、健康ブームまっ盛りのこの時代に、いつでも悪役だ。
矢面に常に立たされているのだが、飛んでくる火の粉を交わし、願わくばこれに打ち負かすべく・・・彼はこれをいたく得意としている。

そんな彼と似た境遇の友達がいて、一人目は、アルコール業界のPRウーマン、ポリー(マリア・ベロ)。
法王にワインを飲ませた女、通称“ワインの聖母”(a woman burgundy・・・だっけ?“woman”の部分を忘れてしまいました。分かる人は教えてください)。
二人目は、銃製造業界のPRマン、ボビー(デヴィッド・コクナー)。
この3人で、通称M.O.Dsスクワット(“死の商人”-Merchant of Deathの頭文字を取っている)を形成し、食事を摂りながら、一般人に言えない、冗談のような本音や戦術を、分かち合う・・・言わば似た者同士だ。
この彼らとのやり取りがまた、楽しいんだw、これが♪


今や離婚して週末のみの擁育権を持つため、息子のジョーイとはたまにしか合えないが、彼も次第に心を父親に傾倒するようになってきた。
 だがある日、嫌煙運動に至極熱心な、上院議員のフィニスター(ウィリアム・H・メイシー)がタバコのパッケージに髑髏マークをつけようと必死になり、彼との諍いが次第に激しくなっていた・・・。


mods squad監督は、これが長編一作目となる、ジェイソン・ライトマン。
原作は、クリストファー・バックリーの『ニコチン・ウォーズ』。
何より小気味いいテンポで進み、見ていてこのクールな知的コメディの世界観にすんなり持っていくのが、とてもウマい。
アメリカ政府の情報操作を余すところなく大げさに描いてみせ、その皮肉や風刺はチクリと刺すようだ。
タバコの有害性を取り沙汰された時に、具体的な科学的数値を一切映画の中で描くことなく(タバコで死ぬ人は一日に1200人、というそれぐらい)、面倒な数字が出て来ないで、そこを“論述の面白さ”ということで明るく描いてしまう。


「自分は本気を出せば、百発百中で、女を落とせる口説きテクを持っている」
と言って、ホームランを打つ映像・・・
そんなことを言われた日には、世の男達は、全員、「ほーおおお???」
と、興味を引かれるのも当然の話ですよね。


そして、タバコやアルコール、銃器の有害性等について、・・・それはいちいち言わなくとも明々白々なもの。
では、それについて、さあ、ニック・ネイラーが次に何を言うんだろか?
どう反撃するんだろか?(「自分だったら、嫌だー」)
と、くるのが次のシーンなのだからして、そりゃ、興味津々だ。
この冒頭がウマイ。

そして、この不可能に果敢に挑戦する有様に、ヤジウマのような気持ちでワクワクしてしまうw


「論述の技術は、自分の正しさを証明するでなく、相手の説を負かすのみ」・・・
そう言われて、なるほどー。・・・なんてアホみたいにこちらは賛同してしまう。
だが、この感覚がなんとも気持ちイイ。
騙されるなら、気持ち良く騙されたい。


以降ネタバレあり:::::::


 


 


この無敵と思われた男が、女好きで足元をすくわれたりするのも、ちょっとトホホで、見ていてとっても可笑しく、楽しい気持ちになってしまう。
日曜にしか寝ないハリウッドのスーパーエージェント、ロブ・ロウと、そのバカバカしい屋敷も最高♪
ここだけまるで『フィフス・エレメント』のゲイリー・オールドマンの近未来の館に来たかのような、現実離れ甚だしい館なのだ♪
日本人的には、和風の庭を作っている職人さんも日本人で、鯉が所狭しと泳いでいるシーンもちょっと嬉しい。


それから、ウィリアム・H・メイシー!!
彼がギャフンという姿が見たいっ!
あの、げっ歯類系な、ハムスター顔のオヤジが、不幸な目に合えば合うほど、
なんか面白いんだよね・・・爆笑ー!!
っていうのは、『ファーゴ』からでしょうか、この人出るたび、彼の巡り来る不幸を期待して、ワクワクしてしまうのは、私だけではないはず・・・♪


息子役ジョーイのキャメロン・ブライト君も、『記憶の棘』で見た時と違って、知的さが好感を持てるように描かれている。
しかしこうして出演作が続々と公開されるなんて、この子に嫌でも注目せざるを得ない。目が魅力的で、オチョボ口の、賢そうな子だ。
年に似合わぬ落ち着きで、いろいろな役がやれそうだと、期待されるのも納得。


で、この息子との関係の修復で、ニック自身も自分の人生を取り戻すのが、感動ポイントだった。
「この仕事をなぜやるのか」、といった質問が何度か繰り返される。
みんなに嫌われ、ストレスをため、時に命さえ狙われながら、なぜこの仕事をやるのか、といった質問に、ニックは何度か答えているが、その都度、答え方が変わってくる。


既存の価値観に縛られず、自分の頭でもう一度考える、というニックは、その実、本音をいうことを、小出しにしているのだ。
息子に面と向かって、「なぜこの仕事をやるのか?」と聞かれたときは、正直に答えている。「これが得意なんだ。」ー“I’m good at.”

そしてこれからタバコ業界を相手取って訴訟を起こそうとするマルボロ・マン(サム・エリオット)に対しては、慎重になる。自分の人間としての浅さを測られているからだ。
だがこのマルボロ・マンに対し、正直に答えたニックは、さすがである。
「食べるためだ。」


ここで格好をつけて、綺麗事を言うでなく、本気で向かってきた相手に対し、率直な自分の意見を言えるのは、大人物だ。
交渉する時に、相手の一歩も二歩も先をゆき、自分の誠実さをアピールするだけでなく、自分の人間の小ささを、惜しげもなく披露し、とことん正直である点において、相手に不信感を抱かせない。
だが、そんなニックが最後に、自分の息子ジョーイとの関係性の中で、もっと大事なものに気づかされ、別の選択肢を選んでゆく。


蛇足ながら、ニコチンパッチは、禁煙を目論む人が使うもので、これ、貼り付けるタイプ。ニコチンのガムや飴なんかと違い、皮膚からニコチンを吸収させるもの。
ニコチンの常習性については、吸ったあとすぐにまた欲するようになるところが特徴なので、常に体の中にニコチンがある、という状態にすることで、ニコチンを体が要求しなくなる、というもの。つまり、離脱症状を起こさせなくすることで、依存を低める。
他のどの禁煙グッズよりに禁煙に成功しやすいとのこと(仙波純一著書より、精神医学、精神薬理学教授)。

テンポが良く面白い中にも、きちんとストーリーがあって、楽しめた。
ところで・・・以前、こんな記事を書いて、禁煙をするべく頑張っていたのですが、1週間節煙を順調にコナしていたのに、今ちょっとタルんでいます・・・
うーん・・・頑張らなくっちゃー

サンキュー・スモーキング@映画生活

 

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コメント(106件)

  1. サンキュー・スモーキング

    サンキュー・スモーキング (特別編)
    監督:ジェイソン・ライトマン
    出演:アーロン・エッカート、マリア・ベロ、デヴィッド・ケックナー、キ??.

  2. サンキュー・スモーキング

    【Thank you for smoking】2005年/アメリカ
    監督:ジェイソン・ライトマン 
    出演:アーロン・エッカート、マリア・ベロ、キャメロン・ブライト、??.

  3. 『サンキュー・スモーキング』を観たぞ〜!

    『サンキュー・スモーキング』を観ましたタバコ業界のPRマンとして巧みな話術と情報操作でタバコを擁護し続ける主人公の活躍を描いた社会派風刺コメディです>>『サンキュー・スモーキング』関連原題:THANKYOUFORSMOKINGジャンル:ドラマ/コメディ上映時間:93分製作国…

  4. 映画『サンキュー・スモーキング』

    原題:Thank You for Smoking
    たばこ1箱の値段を平均1,000円に値上げすると、9兆5千億円の税収増、仮に消費量が3分の1に減っても3兆円の税収増が見込めるという・・落しどころは・・
    この映画にマルボロマンへの賄賂はあっても税金の話はでてこない、テーマは…

  5. <サンキュー・スモーキング> 

    2005年 アメリカ 93分
    原題 Thank You for Smoking
    監督 ジェーソン・ライトマン
    原作 クリストファー・バックリー「ニコチン・ウォーズ」
    脚本 ジェーソン・ライトマン
    撮影 ジェームズ・ウィテカー
    音楽 ロルフェ・ケント
    出演 アーロン・エッカート  マ…

  6. 「サンキュー・スモーキング」―隣んちのアーロン君2

    すべてはローンのため。
    サンキュー・スモーキング (特別編)20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンこのアイテムの詳細を見る
    「サンキュー・スモーキング」(2006年製作)
    監督:ジェイソン・ライトマン
    製作:デヴィッド・O・サックス
    原作:クリストファ…




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