103.記憶の棘
こうしてつくづく、ニコールキッドマンの映画を観ると、こう思う。
「映画の質を上げる女。」
本当に、この言葉の似合う人だと思う。
実を言えば、ストーリー自体は割とシンプルな展開の話だ。だけど、この監督がうまいのか、それともニコールが出ているから良いのか・・・
やっぱりニコールのおかげってことかな、私の結論から言うと。うん。
ニコールは凄い!
ストーリー・・・
夫、ショーンを亡くして10年間、未亡人であったアナ(ニコール・キッドマン)は、それ以来ずっと独身を通していたが、3年前に知り合ったジョゼフ(ダニー・ヒューストン)とようやく結婚することに。
だが、そこへ、とある10歳の少年が、「自分はショーンの生まれ変わりだ」と、名乗り出てくる。戸惑うアナと、親戚の人々。
だが、この少年は、次々と本人しか知らないことを言うのだ。彼は、本当に亡き夫、ショーンの生まれ変わりなのだろうか・・・?
映画自体のテイストとしては、とても丹念に描かれていて、映像美が大変美しいものだった。
物語は、淡々と進む。短髪でシックな装いのニコールがとても美しくて、演技も本当に素晴らしくて・・・何もいうことないくらい、やはりこの人って凄い!
自分は俳優や女優を追いかけるのが実は苦手で、全くしないのだけれど・・・ニコールだけはついつい見たくなってしまうのですよね。
今回も、観る予定はなかったのに、見てしまった。でも、観て良かった!と言える出来。
この人って、なぜこんなに素敵なんでしょう〜!
しかも、ハリウッドの枠に捉われない大きさを感じてしまう。作品選びも、とても面白い。
で、そういう、恵まれた女優って、なかなかいないんじゃないかなあ。自分が出たくても、俳優に比べて女優さんのキャラクター描写って、薄っぺらくて、演技し甲斐のあるものって、なかなかないと思うんですよね。『デボラ・ウィンガーを探して』じゃないけど。
そればかりじゃなく、女優としての地位としても、自分で選びたくても、いい脚本に出会えないことがほとんどないじゃないか、と思う。
その上、冒険心がある脚本選びをして・・・ラース・フォン・トリアーに気に入られてみたり、蹴ってみたり、面白いったら!この監督、ジョナサン・グレイザーも、元はと言えばミュージック・ビデオ界の人。
’97年のジャミロクアイの『Virtual Insanity』で一世を風靡した、指折りの、ミュージックビデオ界の才人ですよ!
同年のMTVビデオアワード監督賞も受賞。
あのビデオは、凄かったなー!画的に、『トレインスポッティング』を思い出さないでもないけど、あんなミュージック・ビデオって、そうは作れるものじゃないと思う。
素人目に見ても、当時の当たり前なビデオ画像と全く違うことをしているのか、それとも素材(ジャミロ)が良くて(変テコ踊りが面白いから)、そのせいもあって画がキレのある才能を感じさせるものになっているのか、全く見当もつかなかった。
で、このジョナサン・グレイザー監督、Massive Attack, BLUR, Nick Cave等のミュージック・ビデオを作り、2000年よりイギリス・インディペンデント映画界入りし、映画監督としてデビュー。この作品は長編としても2作目に当たるとのことです。
で、余計な話が長くなりすみません。映画の話に戻ると・・・
全体の構成としては、とっても単純そのもの。とは言え、ラストが大変曖昧なものになっています。
で、それに比べて、最初に伏線が張られているのだが(クララ役アン・ヘッシュによるもの)、ちょっと分かり易すぎて、大味な伏線というか・・・安直にも感じ取れる。
これって、何でしょうね、狙っているんだろうと思うのですけど。
ラスト、どう捉えるかということになってくると、この伏線の大胆さと、ラストの曖昧さが反比例して、逆に自分には面白く感じてしまいました。
つまり、簡単に見たものに答えを与えない作り、と言えるから。
この後、強烈にネタバレです:::::::::::::::
ラスト、ショーンが生まれ変わりなのか、そうでないのか、それがぶっちゃけ、良く分からないものとなっています。
この映画のストーリーラインが、この辺りについてずっと語っているのに、最後、このように終わるということに、少し驚愕される方がいるだろうと思う。(いや、少しじゃないかな?)
で、このアン・ヘッシュの伏線というものが(これがまたバレバレなんですけどね)、生まれ変わりでなく、少年が手紙を読んだ、という事実を示すものなので・・・生まれ変わりと思えるのに、「あ、違ったのね」と、終わってしまうのよね。何このラスト?ん?・・・ていう。
で、結論から言うと、私は、生まれ変わりだった、と思ってます。
だって、死んだ場所は、手紙に書けないじゃない?
証明、以上。(他は割愛。)
ショーンは、生まれ変わったものの、アナを愛した記憶しかなかったのだ、と思います。ショーンから見て、自分はショーンであるのに、クララを愛した記憶のみがなかった。だからこそ、身を引いた、そう思うのです。
クララから言われて、アナが言われていたらきっと感じたであろう、裏切られたことに対する衝撃。
アナの替わりに、自分がそれを味わうことになった。
それで、「アナを愛していたから、自分が身を引くのだ」という台詞が出てくるのだと思う。アナに事実を告げることはもちろん、出来ないし、葛藤もあったと思う。
ショーンから裏切られたのは、ショーン自身だった。
面白いラストだったと思います。
この記事に評価を下さい↓
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(72件)
前の記事: ※11.『薬指の標本』
次の記事: 歌舞伎町の映画館で
sallyさんへ
こんばんは☆TB&コメントありがとうございます!
「納得」とのお言葉、ありがとうございます☆
>細かいことを覚えている、という意味での記憶でなく、強い想いとして残っていた
そうなんです!私も思いたい感情でこの記事を書いた、という感じなのですよぉ・・・
sallyさんにそう言っていただけてとっても嬉しいです。
記憶の棘
サンタはいない!
記憶の棘 なんとなく棘が抜けない気分です。
タイトル:記憶の棘(原題:Birth)
ジャンル:ミステリー風純愛もの/2004年/100分
映画館:三宮シネフェニックス(238席)
鑑賞日時:2006年11月3日(日)5人
私の満足度:65%
オススメ度:60%
久々のニコール・キッドマン主演作ということで、以前から見たいと思って
いたの…
記憶の棘
■ シャンテシネにて鑑賞
記憶の棘/BIRTH
2004年/アメリカ/100分
監督: ジョナサン・グレイザー
出演: ニコール・キッドマン/キャメロン・ブライト/ダニー・ヒューストン/ローレン・バコール/アリソン・エリオット
公式サイト
アナは10年前に夫ショーンと….
とらねこさん☆
ずいぶん前の記事同士にコメントありがとうございます♪
とらねこさんのおっしゃる通り、二コールの美しさや存在感は「作品の質を上げる」ですね〜。
この作品も二コールだったからこそ、成り立つ作品だと思いました。
だって、ショーンくんただの変質者だもん!
でもアナを思うと生まれ変わりであって欲しい!と私は思います。
きららさんへ
こんばんは〜♪
古い記事にTBすみませんでしたxxx
以降、気をつけます
そうですね、ショーン君はただの変態・・・
あんなに若いのに、困ったやつですね(爆)
ニコール・キッドマン Nicole Kidman 女優特選
Date of birth (location),20 June 1967,Honolulu, Hawaii, USAHeadhunters (2008)
Australia (2008)
His Dark Materials: The Golden Compass (2007)
Untitled Noah Baumbach Project (2007)
The Invasion (2007)
ハッピー フィート Happy Feet (2006) (voice)
…
[ 記憶の棘 ]生まれ変わっても、愛してる
[ 記憶の棘 ]@新宿で鑑賞
「魂はあるのか」。「永遠は存在するのか」。普段ならこんな
問いは不毛だと簡単に片付るだろうが、ここに“愛”が関
わると、多くの人々は真剣に考え、それが叶うように願っ
たりするものだ。この映画を観ると、それがよくわかる。
mini review 07022「記憶の棘」★★★★★★☆☆☆☆
カテゴリ
: ドラマ
製作年
: 2005年
製作国
: アメリカ
時間
: 未入力
公開日
: 2006-09-23〜2006-11-10
監督
: ジョナサン・グレイザー
出演
: ニコール・キッドマン ダニー・ヒューストン ローレン・バコール アリソン・エリオット キャメロ…
記憶の棘
★★★ 原題は『Birth』で、「生まれ変わり」をテーマにしているようだ。しかし邦題のほうもなかなか味わい深い。、ニコール・キッドマン扮する主人公アナは、10年前に亡くなった夫をいつまでも忘れられない。それが棘のように、心の奥に突き刺さったまま離れないか
映画『記憶の棘』
原題:Birth
輪廻転生、前世の記憶が残っているなんて、それは有り得ないことだけど、登場人物もまた不可思議な行動にみえる、だけど、なんとも言えない間がいい・・
アナ(ニコール・キッドマン)の夫は10年前にジョギング中の心臓発作で他界、ジョゼフ(ダニー・…
とらねこさん、ニコール・キッドマンが作品の質を上げるっていう意見、わたしも同感です。 彼女が出ていなかったら全然違った感じになっていたかもと思いました。
<記憶の棘>
2004年 アメリカ 100分
原題 Birth
監督 ジョナサン・グレイザー
脚本 ジョナサン・グレイザー ジャン=クロード・カリエール ミロ・アディカ
撮影 ハリス・サヴィデス
音楽 アレクサンドル・デズプラ
出演 ニコール・キッドマン キャメロン・ブライ…
みのりさんへ
おはようございます〜♪コメントTBありがとうございました。
この作品のニコール・キッドマンは、まさに彼女の美しさを余すところなく表現していた作品だったから、変な話なのに成功してるような勢いを感じますよね!
独断的映画感想文:記憶の棘
日記:2007年11月某日 映画「記憶の棘」を見る. 2004年.監督:ジョナサン・グレイザー. ニコール・キッドマン,キャメロン・ブライト,ローレン・バコール,ダニー・ヒューストン. ネタバレありま
とらねこ様
TB有り難うございました.
この作品のにコール・キッドマンは本当に綺麗でした.
こちらのレビューでは,ショーンの視点からも分析をしていることが印象的でした.
またお邪魔します.
ほんやら堂さんへ
こんばんは〜♪二度目まして!
こちらこそ、TB&コメント、ありがとうございます。
この作品は、本当、人によって色々な解釈をしていると思います。
私は、奇跡を信じたいタイプだったりしますので、物語の上では、ということですが・・・そんなクセが出てますw
記憶の棘:映画
今回紹介する映画は、ニコール・キッドマン主演作品の「記憶の棘」です。
記憶の棘のストーリーニューヨークで家族と暮らすアナは、30代の未亡人。10年前に夫のショーンを心臓発作で亡くして以来、悲しみにくれていたが、最近になりようやく新しい恋人、ジョゼフのプロポ…
『記憶の棘』を観たぞ??!
愛してる──何度生まれ変わっても。少年が本当に愛するショーンの生まれ変わりなのかどうなのか現在の恋人ジョセフと婚約し結婚を控えたアナの揺れる気持
記憶の棘
Movie Plusで鑑賞―【story】10年前に夫のショーンを亡くした未亡人アナ(ニコール・キッドマン)は、長年自分を想い続けてくれたジョゼフ(ダニー・ヒューストン)と再婚することを決意する。しかし、そんな彼女の前に見知らぬ10歳の少年(キャメロン・ブライト)が現れ、「…
こんにちは。ブログ拝見しました。
とても興味深い記事をありがとうございます。
また伺いますのでよろしくお願いいたします。
とりぽすさんへ
こんばんは!初めまして。コメントありがとうございました。
読んでくださってありがとうございました!