96.女獄門帖 引き裂かれた尼僧
’77年、牧口雄二監督作品。
間違いなくカルトど真ん中の、ものすごい怪作。
ごった煮エログロ殺人尼寺・・・めちゃんこ楽し〜
★★★★★★★★★★
ストーリー・・・
女郎のおみの(田島はるか)は足抜けをし、途中、山男に犯されたりしながら、やっとの思いで愁月院という、尼寺に辿り着く。
ここは縁切り寺で、俗世間から、男から離れ、心清らかに3年という歳月を過ごす・・・はずの寺だったが、その実体は殺人尼寺だった。
ここでは男は殺され、寺男の作造(志賀勝)にバラバラにされ、でっかい大鍋でグツグツ煮込まれてしまうのだった。
そこへおみのを追って、女郎の元主である亀(佐藤蛾次郎)、くちなわの弥多八(牛路章)がやって来た。・・・
とにかく凄くたくさんのエログロ描写が満載で、凄すぎる怪作。面白すぎっ!
レイプ、殺人、レズ、女同士の取っ組み合いの喧嘩は、泥ンコプロレスに見えなくもない。あと、バラバラ死体の、釜ゆで・・・食べちゃう!
次から次へと様々な描写がある中でも、その展開がとても上手で面白く見れ、現代の映画しか見たことのない人や、昔の作品に興味があまり湧かない人でも、この作品であれば無理なく見ることが出来ると思う。
それはこの作品の持つ底力だと思うので、私としてはこの作品はとってもオススメ♪かなりクオリティの高いエログロ作品で、是非海外に流出して欲しい。
::::::::::この先、強烈にネタバレ含む感想::::::::::
一昔前の時代の作品というと、女性が女郎だったり、手酷く扱われていたり、というのが割と当然のように行われていて、自分としては少し不快な感じがあるのは否めない。
なので、この作品のように、男を皆殺しっ!!!というのが、も〜、楽しくて・・・と言ったら言い過ぎだけど、そう言った意味でも、男女平等?・・・というか、悪い男が殺されるんだからいいのでは?時代を先取りしている。
死ね死ね〜!!皆殺しだ〜!と、お喜びした私はやっぱりサイコさんかな。
むしろ、殺人尼寺に就職してもいいなぁ〜。
愁月院の二代目尼僧、おかじ(ひろみ麻耶)を初めとしたここにいる尼達は男に酷い扱いをされた過去があり、その恨みがあるために、この寺で殺人を犯すわけだ。
だが、何の罪のない、優しい心の持ち主である、岡っ引きの留吉(片桐竜次)さえ首なし死体にいきなりされてしまう。おみのと情を通じたがために。
そこで、おみのの復讐が始まるわけです。むふふ・・・
最後、寺が焼き払われてしまう際に、おかじその他の殺人尼僧たちは倒されるが、おみのを追ってきた佐藤蛾次郎、牛路章は殺されない。佐藤蛾次郎はおみのとしようとしても、「勃たねぇよぅ〜」といって、役に立たない下半身を恨んだりして、そこら辺が笑えるんだけど、そういった人達はちゃんと最後まで生かされている。まあ、下半身を取られてしまうのではありますが・・・
で、ラスト。全てを背負う形でおみのに審判を下すのが、まだ小さい、寺の使い走り、お小夜(佐藤美鈴)だったりするのだが、おみのを殺した時に、初潮が始まるのだ。
つまり、まだ“女性”という業を背負っていない存在だったからこそ、と言える。
男にも女にも生きてこそ罪があるこの世で、いまだ女になっていないお小夜だからこそ、と私には思えて、そこら辺がこの作品がエログロ・カルト・モンドであろうと、ナンだろうと、うん、腹の底から納得できる、深い思いを残す秀逸なラストだったのであります。
で、一個の女性としてお小夜が旅路を始めるのが、「またせちがらい世の中だねぇ〜」、なんて思っちゃうわけですけれども。
それから、おみの役の田島はるか、演技が素晴らしく上手いです!!
難しい役だと思うけど、体当たり演技が、本当に素晴らしい!
顔の演技のすごくいい女優さんで、なかなかここまで上手な人ってそういないのでは。
他の色々な作品や現代の女優さんと比べても、とっても上手な演技で、とにかく良かった。
(本音を言うと、これまで観たエログロ作品の中でも、この作品が自分は一番好きだっ!
展開は凄いし、飽きさせないし・・・『〜ゴケミドロ』『奇々怪々〜』『黒蜥蜴(とかげ)』は、少しジャンルが違うので、比べられませんが、それらは別にして、・・・エログロ作品の中では、という意味ですが。)
2006/09/27 | 映画, :カルト・アバンギャルド, :崇拝映画
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コメント(11件)
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どうも。「LOFT」の時にコメントした者です。
特集最後の日にやっとヴェーラ行って来ました。
むちゃくちゃハイテンション・ハイスピードな展開なのに、妙にしんみり来るラスト、よかったですね。噂に違わぬ怪作でした。いやはや。
>一昔前の時代の作品というと、女性が女郎だったり、手酷く扱われていたり、
ですよねえ。だからこういう映画を女の人が観に来てるのをかなり不思議に思ってたんですが、
>死ね死ね〜!!皆殺しだ〜!と、お喜びした私はやっぱりサイコさんかな。
そんなこと言ったら「忠臣蔵」好きのお父さんたちもみんなサイコになっちゃいますよ!
そうそう、だから↑の疑問も、こっぴどく仕返ししてスッキリ、ていう心象なのかぁ、と思うと少し納得した次第であります。
「恐怖奇形人間」/「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」
シネマヴェーラ渋谷で9/2からやっていた「妄執、異形の人々」特集。「マタンゴ」「吸血鬼ゴケミドロ」「怪猫トルコ風呂」「獣人雪男」等々の1960??70年代作品から、最近のだと亡くなられた丹波哲郎大先生の「大霊界2 死んだらおどろいた!」や「ゆきゆきて、神軍」、三池崇…
キイチロさんへ
こんばんは!コメントありがとうございます。
おお、昨日観られたのですね!私も、実は近くをウロウロしていました。ニアミスしていたかと思います。顔バレしているので、気づいたら声かけてくださいね!
そうですね、この作品、この短い中に、本当いろいろ詰め込まれてて、とても面白かったですよね!
そうなんです、男は殺してしまえ、っていうアイディアが特に気に入っちゃったのです、うへへ。
『忠臣蔵』好きのお父さんたちもやはり、・・・
いやいや、そうですね、違いますよね(笑)
破滅に向かってゆく姿に一種の美を見出す、日本人のカミカゼ魂ってのも、自分はどっか大好きなんです。うふ
そろそろオハヨウゴザイマス。
>>かなりクオリティの高いエログロ作品で、是非海外に流出して欲しい。
この手のモンド系邦画は、海外のマニア間のが有名かもしれないです。
たしか、オランダかどっかに、日本ではソフト化されていないエログロ邦画を多数リリースしているレーベルがあったような。海賊版かもしれないですけどね。
牧口雄二はエログロにも叙情があって好きです。
bambiさんへ
おはようございます、コメントありがとうございます。
そうだったんですか、オランダ他海外の方がカルト作品が有名なんですね!それは凄いです!
嬉しいですね、日本映画の誇りたるこんな作品が、海外で出回って日本がこんな国だ、と思われるなんて、こんなに嬉しいことはありませんね!
牧口雄二、もう私、大好きっ!になりましたよ。
早く他の作品が、特に『徳川女刑罰絵巻 牛引き』が観たいです!
「妄執、異形の人々」総まくり
ここしばらく新作はごぶさたしてたんだけれども、じつはシネマヴェーラ渋谷の「妄執、異形の人々 Mondo Cinemaverique」には何度か足を運んでいましたですよ。
ちょっと鑑賞から時間が経っちゃったのもあるんで、ここは一気にいかせてもらいます。…
『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』
色々な映画関連の本や雑誌に目を通していると映画好きの方ならきっと「死ぬまでにこれだけは観ておきたい!」という作品に遭遇することもあるかと思います。
実は牧口雄二監督の『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』は僕にとって「死ぬまでに観たい」作品の中の一本だったわけ…
この作品はどうすれば購入できますか?
海外でしょうか?ヒントでも結構ですので教えてください。
お手数ですがよろしくお願いします。
whiteさんへ
こんにちは!コメントありがとうございました。
ごめんなさい、私この映画劇場で見たのです。シネマヴェーラの特集です。
ここにコメントくれてる方、TBくれてる方、全部ヴェーラなんです。
購入できるかどうか、海外のアマゾンを調べてみたのですが、『女獄門帖〜』はありませんでした。どうやら、IMdbにも載っていないようです。
『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』の方は見つけたんですけど。と言っても現在はないようですが・・・。
http://amzn.to/bjqhY0
もしかしてもうこちらはご覧になられてますかね?
『女獄門帖〜』の方は見つからなかったです・・ゴメンナサイ。
ボクもこれいったっち。。。お目当ては『奇形人間』だったので、途中で抜け出して、ご飯たべにいっちゃって、最後の方しか見れなかったのだが。。。こっちの方がおもしろそうだったなぁ。。。おなかペコペコだったから。。。
初潮前の少女が殺人を犯したうえに人肉を食べる。。。そんなアンモラルな展開が満載されているこの作品がソフト化されるはずもなく、現在、視聴困難である(『放送禁止映像大全』より)
くだらねーアニメとかマンガはとっとと条例で禁止して、こういう映画を解禁してほしーよね、石原慎太郎先生!!
ちなみにオランダのメーカーってここじゃない?
http://www.japan-shock.com/
裏山&さんへ&
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
おっ、裏山ちんも行かれてたんですね。『奇形人間』との二本立てというと、’06年の妄執・異形の人々特集の最終日だったっけ。
私、実はこれ見に行く予定だったのに、『マーダーボール』の試写が当たってしまって、そっちに行ってしまった・・・。後に何年も後悔することになるとはつゆ知らずに・・・
オランダの日本カルト映画のサイト、すごいね!日本語タイトルが分からなくて、何の作品かも分からないぐらいだ・・・。
しかもオランダ語オンリーなんだね。
教えてくれてありがとー。
http://www.japan-shock.com/japanesecultcine.html