91.LOFT ロフト
黒沢清監督、3年振りの長編映画。
予告編がとても面白そうで気に入って見に行ったのだが・・・
スランプに陥った小説家の礼子(中谷美紀)は、夢から覚めて泥を吐いた。心身症的なものと考えた礼子は、編集部長、木島(西島秀俊)のすすめで、郊外にある一軒家へ引越しをする。
引越し先の向かいに建つ、廃墟のような大学の研究室で、深夜、ビニール袋に入った死体のようなものを運ぶ吉岡(豊川悦司)を目撃。
吉岡は、永遠の美を求めて泥を食し死んだ、千年前の女性のミイラを所蔵していた。・・・
うーん、正直、自分はこの作品ダメでした。
ただ、私はもともと、他の黒沢清作品を見たことがない上、Jホラーに詳しいわけでも好んでいろいろ見ているわけでもないので、私の言うことは当てにならないかも・・・(苦)
“Jホラーの原点に帰った、実験的な作品!”とのことですが。
まず、上映中に、シリアスなシーンで、笑いがしょっちゅう聞こえてきた。
確かに、演出の変なシーンが多くて、笑えると言ったら、笑えるんだけど、失笑、と言う感じの部分を、大きな声で哄笑している人達がいて。
それがまた、一グループだけではなく、あちこちから笑いがでかでかと聞こえてきた。
まあ、確かに、自分も後で友達と話すとしたら、変な部分のあれこれを、面白おかしく話したりすると思うけど・・・それらは見終わったあとの話で。
見ている間くらいは、映像の美しさとか、テーマだとか、そういった部分を見ようと思っているこちらとしては、ヘンテコな演出とか耳につく笑い声ばかりに気が散って、イライラしてさっぱり集中できなかった。
::::::::::::この先ネタバレ:::::::::::
例えば、最初に吉岡(トヨエツ)がミイラを運んでいる車の中で、電信柱の影にいる女の幽霊(安達祐実)を見て、一瞬間を置いてから「ウワ〜〜」
と、大声を上げる。
確かに、急だし反応は遅いし、可笑しいやらビックリやらなんだけど、そこで大笑いする人達。
この調子で、その後も、ミイラをズタボロにするシーンや、思い立って謝るトヨエツにも、笑い声が響くx2。
さすがに私も「動けるんだったら最初っからオマエが動け!!!!」
とミイラに向かっていうのは面白すぎて忘れられないけど。
ふー。とにかく、調子っ外れな演出の多さに、度肝を抜かれたり、唖然とさせられたり。
安達祐実の幽霊が出たあとすぐ、ブツっと画面が切り替わったりするのには、衝撃を受けるはずのところで、すっかり冷めてイヤになってしまった・・・。
安達祐実の幽霊も、実体がそのまま、メイクも最小限で、立っていたりする。これはCGナシの描写でわざと狙ってやってるんだと思うが、いかにも人間の血の通った感じが伝わって来てしまうのはどうなんだろう。
また、安達祐実も、気軽にしょっちゅう出て来すぎ。
そのわりには、礼子(中谷美紀)が2度目に大量に吐く泥のシーンにはCG描写が使われているものの単純すぎて、マンガっぽく見えてしまったり。
また、ミイラをボロボロにするシーンも、いかにも単なる布に見えてしまうのはどうか。
彫り起こされた死体である安達祐実のミイラも、最初は美術さんが丁寧に作ったモノであるのに、その後切り替わって安達になった時に、急に髪がサラサラ、というのも、もう少し・・・泥がついているとか、その前に出てきた死体の美術をもっと活かせないものか。
突然何かに取り憑かれたように、急に恋愛モードになったりするのも、何の脈絡もないように思えてついていけなかった(それを狙っているんだと思うけど)。
沼のミイラに愛の呪いをかけられてしまった男、「事実はこうある」「こうであるからこうなる」というような、物事をとりまとめるでなく散らしてゆくことによるストーリー、そういったテーマは本来嫌いではなくい私なのだが。
ストーリーそのものよりも、観客の想像性に訴えかける物語、そういったものは私、本当は好んで見れたはず・・・ですがしかし。
それにしても、それらの狙いがうまく表現出来ていなかったのが惜しいと言うか、哀しいというか。
これだけ言っておいて最後に、この映画を擁護するとすれば、“映像の美しさ”に満足する人も中にはいる・・・のかな?
・・・・ぶっちゃけ、正直に言えば、私にとってこれまたギャグになってしまったホラーでありました。
前情報を調べない私がいけないです。シネマヴェーラとどっちに行こうか、はたまたX-MENにすべきか迷って、最終的にこれにしてしまったのは非常に後悔。
2006/09/15 | 映画, :ホラー・スプラッタ
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コメント(60件)
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にらさま
おはようございます〜
戻って来ていただき、そして割腹してくださり、
ありがとうございます♪^^
「ひねくれ」は賞賛のお言葉なんですね、にらさまにとって(笑
にらさまとカブって、とっても楽しかったです!
是非またカブリたいです★
LOFT
幽霊に同情しちゃうとまずいらしいけど、安達祐実の幽霊だったらお金をあげれば成仏してくれるかもしれません。
LOFT ロフト
『LOFT ロフト』公開:2006/09/09製作国:日本監督:黒沢清出演:中谷美紀、豊川悦司、西島秀俊、安達祐実、鈴木砂羽、加藤晴彦、大杉漣すごぉーーーく怖かった・・・・・・・効果音が!! ←ホラー好きはよければポチッと♪
LOFT
クソミソいうつもりはないけれどゲロドロ(意味不明)
「叫」(http://sakebi.jp/)が公開中の黒沢清監督が、ミイラをモチーフに描く…という観る前から不安なサスペンス・ホラー。
LOFT ロフト デラックス版posted with
LOFT
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マイベスト映画1位『アカルイミライ』の黒沢清
監督のドッペルゲンガー以来3年ぶりとなる映画『LOFT』
黒沢清監督は3〜4年前からホラー路線で映画を
撮っていくという言葉通り、今回はミイラ。
千年前のミイラを湖から発見
LOFT ロフト
2005年:日本
監督:黒沢清
出演:中谷美紀、西島秀俊、大杉漣、豊川悦司、安達祐実、加藤晴彦、鈴木砂羽
将来を嘱望されている女性作家・春名礼子はスランプに陥り、担当編集者・木島の勧めで、東京郊外に引っ越しをする。森と沼と草原に囲まれて、ひっそりとたたず….
LOFT ロフト
2005年:日本
監督:黒沢清
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将来を嘱望されている女性作家・春名礼子はスランプに陥り、担当編集者・木島の勧めで、東京郊外に引っ越しをする。森と沼と草原に囲まれて、ひっそりとたたず….
LOFT
世界のあらゆるシネフィルが息を呑むであろう美しい画、その中になんの違和感もなく溶け込む中谷美紀の「綺麗」、ノースリーブのワンピースから伸びる二の腕のなまめかしさ、艶やかさ。 時を追うにしたがって観客の知覚攻撃を加速する異様な物語、唖然とさせられるキャラク….
勝手にしやがれ 黄金計画
この映画は、黒沢清のフィルモグラフィー中、最も明るくチャーミングな映画である。 今回のマドンナは藤谷美紀で、おじいさんが残した宝の地図で大騒動というたわいもないお話なのだが、主役の哀川・前田と藤谷の息がぴったりあっている。 このシリーズのマドンナはいつもと…
LOFT ロフト
『その女は永遠の美を求めてミイラとなった。 千年の後、彼女は目覚め、そして私に呪いをかけた。 恐るべき永遠の愛という呪いを。』
コチラの「LOFT ロフト」は、9/9公開になったホラーからサスペンスへ、そしてラブストーリーへと変貌を遂げる黒沢清監督の3年ぶり…